きりっとした四角い箸です。
かたちは四角です。
四角箸のよいところは、転がりにくく、
箸先まで四角になっていることで、
食べ物をはさみやすいこと。
太いところで約7ミリと、やや細めですが、
木目のこまかさ、密度の高さで、
持つとかなりしっかりした感触と重みがあります。
先端は約2ミリまで細く削っていますが、
頼りなさを感じることはありません。
むしろ、すこしくらい力を入れて挟んでも、
しっかりしなる、強いばねのような弾力があります。
長さは2種類。
約21.9センチを基本に、
すこし長めの約24センチのものもつくりました。
一般的に約21.9センチは女性の手に、
約24センチは男性の手になじむといいますが、
使いやすさは、人それぞれ。
いまお使いの箸の長さとくらべて、おえらびください。
素材は黒檀、磨き仕上げ。
素材は「黒檀」。
正倉院の宝物にも使われたほど、
ふるくからたいせつにされてきた、
銘木といわれる素材です。
原産地のちがい、そして色、木目のようすで、
同じ黒檀でも縞黒檀、青黒檀、斑入黒檀、本黒檀など
いろいろな分類・名称がありますが、
今回は、心材まで黒いアフリカ黒檀(アフリカンエボニー)。
乱伐すると絶滅のおそれがあるため、
ワシントン条約で輸出入が規制されている木材です。
(もちろん許可証をとり、日本に運んでいます。)
なにしろ緻密・重厚・堅固ですから、
これを箸にする加工は、とても難しいといわれます。
今回は、京都の舞鶴・余部上で吉岡木工を営む
木工家・吉岡民男さんが、
材料選び、そしていちばん難しい
箸の形状に切り出す仕事を担当してくださいました。
仕上げは、三角屋の「わたしのおはし」チーム。
つやつやとなめらかな表面は、
漆などの塗料によるものではなく、
黒檀を磨くことで出る自然のかがやき。
それだけで1か月かかるというたいへんな作業を
ていねいに行なってくださいました。
桐の箸箱もつくりました。
「わたしのおはし」1膳がちょうどおさまる桐の箸箱です。
この桐は、国産。
京都・北路桐材店の北路明郎さんが、原木から製材し、
乾燥まで全部自分の目の届く範囲で行なった、
たいへん良質な素材を分けていただきました。
箱の本体は、くり貫きで、
底の部分がまるくなっています。
これは、箸を入れる容器は清潔が保ちやすい形状をと、
北路さんと三浦さんが考えた結果。
蓋は、よくあるスライド式ではなく、
桐に埋め込んだちいさな磁石で
ぱちりと留めるしくみになっています。
外側は、角をおとして、
手になじむやさしいかたちになっています。
この桐箱は「むく」。塗装仕上げをしていません。
口に入るものを容れることと、
呼吸する桐の特性を殺さないようにとの配慮です。
よく、「桐は手垢がつく」と言われますが、
北路さんの桐は、切り出しから、
じゅうぶんに時間をかけて製材をしているので、
極端な変化をすることはありませんが、
徐々に手になじみ、自然に色が変化していきます。
上質な革製品が肌になじんでいくように、
この箸箱も、ながくたいせつに
お使いいただけたらと思います。
なお、桐の箸箱の裏底の焼き印は、
「ほぼ日」と三角屋さんとでつくったしるしです。
北路さんについてくわしくは
こちらのコンテンツをどうぞ。
箸を使う所作が、きれいになります。
細い箸は使いにくい、と思っているかたも
いらっしゃるかと思います。
「わたしのおはし」を担当している
「ほぼ日」のチームのなかにも、
そう感じているものがおりました。
八角箸のように、すこし太めで
しっかり握ることのできるほうが、
使いやすいのではないかと。
以前つくった「青黒檀」の箸、
それはこの「黒檀」よりほんのわずか
細いものだったのですけれど、
使ううちにその考えがかわりました。
じっさいはとても丈夫な木ですけれど、
見た目の細さが、とても品がいい。
そのため「ていねいに扱う」という
きもちがうまれますし、
力強く(おそらくそれまで、過分な力を
入れて持っていたのだと思います)
持つこともなくなりました。
黒檀の色は、ただの黒というよりも、
いくつもの色が重なってできたような深みがあります。
その自然な黒が、いろいろな食材、
そして器と組み合わさったときのうつくしさは、
ただならぬものがあります。
黒檀の箸とうのは、いわば
「ふだん使いだけれど、一張羅の箸」かもしれません。
おいしいものが好きなかた、
料理の好きなかた、
細い箸がお好きなかたはもちろん、
家でごはんを食べることが少なかったり、
料理が苦手だったりするかたにも、
ぜひ、使っていただきたいと思ってます。