扇子のデザインを、というお話をいただいた去年の夏、
私、50日間、娘と電車でヨーロッパを旅していたんです。
旅の途中、「どんな扇子がいいかな」って考えてました。
ドイツとかラトビアで、
白鳥をたくさん見かけたんですよ。
町の中のちょっとした水辺に、いっぱいいるんです。
そしたら、私の中で白鳥ブームが来てしまって(笑)。
そのときにはもう、
「スワンにしよう」っていうのを決めていました。
白鳥は、すごくきれいですよね。
その美しさとか優雅さが、扇子に重なったような‥‥。
扇子をふわっとあおぐ仕草、
涼しげなたたずまい、
そういうイメージが、こう‥‥白鳥につながって。
ですから最初は、
ぜんぶが真っ白い扇子にしたいと思ったんです。
旅先で描いた白鳥のスケッチとか
写真をお見せしながらイメージをお伝えして。
そこから試作を重ねました。
「白い布に白い刺繍をして、果たして柄が見える?」
とか、
やってみないとわからないことが
いくつもありました。
扇子の作り方としては
前例のないことばかりなのに、
「やってみましょう」とおっしゃってくださって、
ほんとうにありがたかったです。
いろいろな課題があったのに、
こうしてちゃんと形になったことが
心からうれしいです。
途中で「扇骨は白くしないほうがいい」と気づいて、
こういう仕上がりにしました。
広がった扇骨が、鳥の羽みたいですよね。
「Swan」の文字が彫ってあるのも、すごくかわいい。
そしてなにより、最終的には、
手作業で白鳥を刺繍していただくことになりました。
すごいと思います。
扇子の中に、白鳥がいる感じがします。
手刺繍ですから、ほんのちょっとずつ、
それぞれに表情が違ってて、それも愛おしい。
どんなかたに使っていただきたいか、ですか?
‥‥それはもう、
これを見て、いいと思ってくださったかた、すべてに。
ごく自然に、日常に入れてほしいと思います。
かしこまらず、
ふつうにオフィスとか公園とかで、あおいでください。