愛知県、豊川高校の野球部コーチが、
「ほぼ日手帳」を使った新しい試みをはじめました。
それは、部員全員が野球日誌を手帳に書いて、
コーチと毎日やり取りをするというもの。
「ほぼ日手帳カズン」に記録されている
天気、体調、素振りの数、印象に残った言葉が、
選手とコーチが過ごした歴史を物語っています。
甲子園を目指して日々練習する野球部のみんなを、
ときどき訪問してレポートしていきます。
倉橋幸資くん(新2年生)
キャッチャー
清水稜雅くん(新3年生)
ライト/レフト/ファースト
三浦祐斗くん(新2年生)
サード
倉橋幸資くん、清水稜雅くん、三浦祐斗くん
三浦くんのほぼ日手帳
- ほぼ日
- 三浦くんが「ほぼ日手帳」を書くようになって、
記憶に残っていることや
思い入れのあるページってありますか。
- 三浦
- 日誌を書きはじめたばかりの頃に、
自分が「これはだいじだ」と思ったことに対して、
青山コーチから「レベルが低すぎる」と
書かれて返ってきて、レベルの違いを感じました。
これまでは反省すべきことがあったとしても、
「ダメだった」としか書いていませんでした。
じゃあ、どうしたら次はよくなるか、
書きかたや意識のしかたを教えていただきました。
自分がどう考えるかをコーチに指摘されて、
「あ、そうだな」と納得して日誌に書いています。
- ほぼ日
- 手帳を使うのは初めてですよね。
使ってみて、どうでしたか。
- 三浦
- それまで手帳を使ったことはなくて、
日記みたいなことは書いていたんですが、
自分の本音は、ちゃんと書けていませんでした。
しばらく日誌を書き続けているのですが、
次の日の目標を書けることが役に立っています。
「こうなりたいんだ」っていう目標を、
前日からちゃんと頭に入れながら練習に臨めるので。
あとは、チームメイトの日誌を見たりして、
「ああ、こう思ってるんだ。じゃあ自分もこうしよう」
という刺激を受けることもあります。
- ほぼ日
- お互いに見せ合ったりするんですね。
手帳を見てみると、11月9日のページに
「三浦の歴史になる」と書かれていますが。
- 三浦
- この日誌のことを書いた日です。
前日に「個人の記録」について、
青山コーチから教えていただきました。
それを受けて、
自分が書く記録は、何年経っても見ることができて
振り返ることができると書いたんです。
- ほぼ日
- 三浦くんも、あとで振り返ることを
「これは歴史になるぞ」って思えたんですね。
自分から進んで記録するようになったんですか。
- 三浦
- みんなでお互いに見せ合ったり、
コーチから書き方の指導をいただいたりして
書きはじめるようになりました。
あと、自分の中で印象に残っていることは、
部内の人間関係で反省すべきことがあって、
「悔しい気持ちもあります」と書いたら、
「お前はまだわかってない」と返ってきて。
これは今でも、反省しています。
- ほぼ日
- 野球の技術で怒られるよりも、
人間関係のことは心にズシンときますね。
- 三浦
- 確かにそうかもしれません。
でも、この厳しさが成長につながっているはずです。
野球部では甲子園での全国制覇を目標に掲げていますが、
野球を通じた目的は、社会に通用する人間形成です。
だから、この日誌にコーチからいただくコメントも、
すべてありがたく受け取っています。
- ほぼ日
- 真面目な姿勢が伝わってくる手帳でした。
三浦くん、ありがとうございます。
倉橋くんのほぼ日手帳
- ほぼ日
- 続いては、新2年生でキャッチャーの倉橋くん。
よろしくお願いします。
- 倉橋
- よろしくお願いします。
- ほぼ日
- 倉橋くんの手帳を見ると、11月9日に、
「三浦の日記を見ろ たわけ」と
書かれてしまったんですね。
この日には、なにがあったんですか。
- 倉橋
- 練習にあまり身が入らなくて、怒られた時期です。
コーチから「自分はどうなりたいんだ?」と聞かれて、
日誌に「自分を変える」と書いたんですが、
その内容が悪かったから、「三浦の日記を見ろ」と。
三浦は、体調管理もしっかりできていて、
自分の意識が低かったなと、すごく感じました。
それから日誌の書き方も変えて、
天気、体重、スイング数、ご飯のグラム数とか、
しっかり書いて管理しようという形にしました。
- ほぼ日
- コーチからは、どんな指摘を受けることが多いですか。
- 倉橋
- 視点について教えてもらうことが多いです。
自分が技術面で意識していることを書くと、
コーチからの指摘もあって意見の交換もできます。
日誌を読み返してみると、
調子がいいときに意識していたことが
細かく書いてあるので、わかりやすいですね。
調子が上がってこないときとか、
気分が乗らないときには日誌の行数も減ったり、
内容も「やっつけ」みたいになってしまうので。
- ほぼ日
- 日誌を書くときには、なにを気をつけていますか。
- 倉橋
- まずは、チーム全体のことを先に書くようにしています。
野球はチームスポーツなので、
チーム全体の課題や、その日に起きたことへの感想、
どうした方がいいのかを先に書いてから、
あとで自分のことを書くようにしています。
目標の立て方も、チームでやりたいことと、
個人の目標との2つに分けて作っています。
- ほぼ日
- これは青山先生から伺ったんですが、
1年生は自分のことを書きたがる傾向にあるけれど、
倉橋くんはキャッチャーというポジション柄、
チームのこともよく見えていると聞きました。
チーム全体に目を配ろうと意識しているんですね。
- 倉橋
- 青山コーチと意見を交換する中で、
「キャプテンになるか?」みたいな話もいただいて、
先輩キャプテンの話を聞いたりしています。
全体を見られないと、キャプテンの役割はできないので。
自分はもともとキャッチャーではなくて、
入学時はサードだったんです。
意識が変わったのも、キャッチャーになってからです。
- ほぼ日
- キャッチャーに変わったのはいつですか。
- 倉橋
- 11月ですね。その頃は全然慣れていなくて、
試合に出させてもらっても結果が出ませんでした。
「キャッチャー無理なのかな」って迷っていた時期に、
「捕手で出る覚悟はあるか?」とコーチに言われました。
覚悟を決めてやらないといけないんだと気づいて、
自分が変われたんだと思います。
- ほぼ日
- 悩んでいる時期にコーチからの熱いメッセージ、
これはうれしいですね。
過去のページで、読み返す日ってありますか。
- 倉橋
- 去年の12月、静岡県の常葉菊川高校の練習に
参加させていただいた日があって、
意識の違いを目の当たりにしました。
おかげで1月序盤は相当いい感じで取り組めて、
練習中もみんなに声をかけていました。
悩んでいるときに、よかったときのことを読み返して、
どうしたらいいのかなって考えるようにしています。
- ほぼ日
- 常葉菊川は、甲子園で優勝経験のある学校ですもんね。
ところで、裏表紙に書かれた文字はなんでしょうか。
▲「身長-体重=90」など、目標が具体的。
- 倉橋
- ウェイトトレーニングをして、
3年間で絶対に達成したい数字を書いています。
それまでの日誌では毎週紙が変わっていたけれど、
手帳なら、つねに見られる場所に置けるので。
この日誌はもう、自分の日常生活の一部です。
高校を出ても、大人になっても、
毎日、日記は書こうかなと思ってます。
- ほぼ日
- いい習慣ができましたね。
倉橋くん、ありがとうございました。
清水くんのほぼ日手帳
- ほぼ日
- 清水くんは新3年生で、
寮長としてリーダーの役割を担っているそうですね。
これまで、日記を書く習慣ってありましたか。
- 清水
- いや、まったくなかったです。
A3の紙に書いていた日誌はあったので、
手帳も、その紙の延長線上だと思っていました。
コーチからマーカーで線を引いていただいたりして、
あとで読み返す機会も増えましたね。
- ほぼ日
- 清水くんの手帳を見ると、メモがかなり多いですね。
絵でフォームを確認することがあるんですね。
- 清水
- これは、守備の指導をしていただいたときに、
自分のフォームがうまく直せなくて。
自分のダメな例と、いい例を絵で描きました。
そのページに書かれている青山コーチからの言葉も、
よく読み返すようにしています。
「苦しみから逃げる者は永久にその苦しみに追われる
苦しみを乗り越える者は永久に楽になる」
これは特に気に入っている言葉です。
- ほぼ日
- ああ、いい言葉ですね。
自分の日誌から、成長を感じることはありますか。
- 清水
- はい、あります。
あとになって読み返してみると、
時間がなくて何も書けなかったりする日が、
明らかにわかるんです。
自分の中で、その日の目標が達成できている日と
できていない日の差がだいぶあります。
あとは、コーチに指摘していただくことによって、
文章力もだいぶ良くなってきたと思います。
- ほぼ日
- 変化がわかると、うれしいですね。
書いていてよかったことはありますか。
- 清水
- その1日にあったことを読み返せるのがいいですね。
でも、普通に過ごした日は、書くことに苦労します。
何かを見つけなきゃいけない気がして。
- ほぼ日
- その一方で、紙を貼ってまで書いた日もありますよね。
すごい量を書いていますが、なにがあったんですか。
- 清水
- 自分がほんとうにダメで、かなり怒られた日でした。
書きたいことがありすぎて、書いたんです。
しかも、この日の日誌を読んだコーチから、
「書く量じゃなくて、行動で表せ」と言われるし。
- ほぼ日
- 反省している気持ちはうかがえるんですけどね。
でも、それを高校生のうちから指導されることは、
社会に出てから効いてくると思います。
グラウンドでも、寮でも、忙しいと思うんですが
一日の中で、どの時間に日誌を書くんですか。
- 清水
- 練習が終わったら夜ごはんを食べて、
お風呂に入って、消灯の時間になるんですが、
自分は寮の消灯係なので、
寮の電気を全部消してから
学習室という部屋で毎日書いています。
▲コーチから「チームの鑑となる」というメッセージも。
- ほぼ日
- 他の選手に指導することもありますよね。
- 清水
- 洗濯機の使い方が悪かったり、
布団のたたみ方が雑だったりすると
部屋を回っているときに注意します。
- ほぼ日
- その経験も、社会で役に立ちそうですね。
清水くん、ありがとうございました!
4月から新入生も加わり、甲子園を目指して
さらに切磋琢磨する豊川高校野球部のみなさん。
夏を迎える前に、また手帳を見せてくださいね。
がんばれ、豊川高校!
*後日談
このインタビューをおこなったあと、
青山コーチは4月から石川県・尾山台高校の
野球部監督へ赴任することが決まりました。
ほぼ日手帳を使った野球日誌のやりとりは、
4月からも引き継いでいただけるそうです。
春からの新年度、豊川高校も、青山コーチも、
実りある一年になりますように。
<夏につづきます>
2016-03-23-WED