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- 今回、ANTIPASTさんの
「FLOWER RUG」という靴下生地が
「ほぼ日手帳2018」の手帳カバーとなりました。
これは、いつ頃生まれた柄なんでしょうか?
![](images/ph2.jpg)
![](images/ph1.jpg)
- カトウ
- 2000年代でしたよね。
- ジヌシ
- 2009年の、Autumn/Winter(秋冬)。
![](images/ph3.jpg)
- ――
- この柄が発表されたときのコンセプトが、
ポエムで表現されているんですよね。
![自然はいつも規則正しく、 何か法則があるように見える。 どこか懐かしく鮮やかな色彩になる。 いつも心動かされ、ほっとする。 美しいハーモニーが花々の間を駆け抜ける。](images/poem.png)
- カトウ
- このコンセプトは、ジヌシが書いています。
- ジヌシ
- はい。
なにかアイデンティティがないと
図案ってなかなか出ないものなんです。
だから、最初に文章を書いてみて、
それをイメージして柄を描くということを
するようになりました。
ブランドを立ち上げた頃は、
旅をイメージしていたんですよ。
- ――
- 旅、ですか?
- ジヌシ
- はい。長い航海に出る気分で、
最初はスペインとか、ポルトガル。
そこからイギリスに行って、
北欧へむかって、と、
毎年のテーマを決めていたんです。
「じゃ、今年はイギリスに行っちゃう?」
と決めたら、すこしトラッドな柄をつくってみたり、
北欧だったらそれらしい配色を選んでみたり。
![](images/ph8.jpg)
- ――
- なるほど!
- ジヌシ
- 「今年はインド」というふうにテーマを設けると、
赤一色とっても、選びやすくなるんですね。
- カトウ
- お花のタッチも、イギリスならイングリッシュガーデン、
メキシコならフリーダ・カーロの絵のような激しい色合い。
- ジヌシ
- そうするうちにだいたい世界を一周してしまったので(笑)、
そこからは、
たとえば美術館の絵画に感激した記憶をもとに
「今年は”ロートレック”にしよう」とか、
そのときそのときで自分たちにピンときたものを
テーマにしています。
- カトウ
- 一つ二つのデザインを考えるだけなら
手がかりがなくてもできなくはないでしょう。
でも、わたしたちはシーズンごとに
十数柄を提案させていただいていますから、
それぞれがばらばらではなく、
まとまったイメージをみなさんに感じていただきたいんです。
![](images/ph5.jpg)
- ジヌシ
- 切り口によってぜんぜんできるものが違うから、
奥深いなあ、と思います。
やってもやっても次の何かがやりたくなるんです。
- ――
- そうやって、シーズンごとに
どんどん新しい柄が生まれているんですね。
- カトウ
- 最初の15年くらいは、毎回コンセプトに合わせて
すべて新しい柄をつくることが多かったんですが、
ここ数年はその蓄積もありますし、
それらの柄を作り直すことでまるで別なものが
できあがることもあるので、
過去の柄のアレンジも増えてきました。
ずっと買ってくださっているお客様にも
思い出して喜んでいただけるので。
- ジヌシ
- たまたま「あの柄、今回のコンセプトにも合いそうね」
となったらそれをもう一回出すこともあります。
季節が変われば糸が変わりますし、
色を変えてみたり、
ゲージ(編み目の数)を変えることによっても
雰囲気はずいぶん変わるんですよ。
- カトウ
- 「FLOWER RUG」の柄も、
一度秋冬のコレクションで発表したあと、
Spring/Summer(春夏)でもやったことがありましたね。
![](images/ph_zumen.jpg)
![](images/ph_zumen2.jpg)
- ジヌシ
- 最初は花がパラパラとレイアウトされたもの。
それから、全体にあの花柄が敷き詰められているもの。
次に花の集合部分と、だんだんパラパラとなっていくもの‥‥
と、すこしずつアレンジを加えました。
- カトウ
- 「昔は12色までしか使えなかったけれど、
今ならあと4色使えるよ」という、
技術や機械の進歩もありますから、
それによって昔の柄も新しく生まれ変わったりするんです。
- ジヌシ
- わたしたちが靴下のデザインをはじめた頃って、
たしか14段しか図案が描けなかったんです。
- カトウ
- 14段って、幅にして1センチ強ですよ。
- ――
- たった1センチですか?
- ジヌシ
- その幅のデザインをリピートして
柄をつくるしかないんです。
だから1目1目がほんとうに大切だった。
- カトウ
- できないことが多いなかでがんばるのも、
おもしろかった。
手かせ足かせがあるときのほうが、
おもしろいことができるという感覚はいまも残っています。
![](images/ph7.jpg)
- ジヌシ
- そうそう。
使える色が増えて、デザインの幅はたしかに広がりました。
でも、いいことばかりとは言えなくて。
すこし前だと、職人さんが微調整をしながら
生地をつくってくださっていた時期があったんです。
でもいまはすべてコンピューター制御なので、
使える色数は増えたけれど、
ちょっとした調整がきかず、難しくなっている部分もあります。
- ――
- 機械の進歩によって、逆に細やかな部分が
難しくなる‥‥。
- ジヌシ
- そうなんです。かつてはベテランの職人さんが、
あえて図案をすこしずらすことで伸びをよくする、
といった調整をしてくださったりしていたので。
- カトウ
- 靴下生地ですから、やはり伸縮性がたいせつなんですね。
でも、「FLOWER RUG」のように色数が多いと、
伸びをちゃんとつくるのって難しいんです。
- ジヌシ
- 昔はやれたけれど、
いまはやれなくなってしまったことというのも
出てきているんです。
![](images/ph6.jpg)
- カトウ
- でも、そんな状況だからこそ
できること、というのは必ずありますから。
かわいくて素敵であることは当然として、
はき心地のいい靴下や、着やすい洋服を
提供し続けたいですね。
- ジヌシ
- そうですね。
変化をずっと見続けてきたわたしたちだからこそ、
できることがあるかもしれません。
- カトウ
- 最近、ブランドのロゴを新しくしたんですよ。
「ANTIPAST」には前菜という意味がありますから、
これまでは洋服をメインディッシュとして、
それらを彩る前菜として靴下や小物をつくってきた。
でもこれからは、メインディッシュはあなた自身。
靴下だけでなく洋服も含めて、
「あなた」を彩り、おしゃれの楽しみを刺激する
前菜のような役割を担えるものを
つくり続けていきたいと思っています。
- ――
- ありがとうございました。
![](images/ph_last.jpg)
(おわります)