今回、「やさしいタオル」のラインナップに並んだ
大槻あかねシリーズ「禅」。
2006年夏の「すしを見つけた人」、
「すしをめくる人」以来、3年ぶりの登場です。
「ほぼ日」では「あ」の連載でもお馴染みの大槻さんに、
今回のタオルについて、
また、現在の作家活動について、お尋ねしました。
大槻さんがこのタオルシリーズに込めたものとは?
どうぞ、本人のことばで、お読みください。
ほぼ日 | 今回の、大槻さんに描いていただいた 3つのタオルの絵、 すべてが「水」に関係していて、 「線」と「ひと」が出てきますね。 その「ひと」に対して、 タオルの面積がとっても大きい。 ちいさなタオルのなかに、 大きな空間が入っているという感じが とても楽しいです。 |
大槻 | わたしは普段、すごく空間を感じながら 生きているみたいなんです。 自分の心に響くもの、 ぐっとくるものをみつけたいと思うと、 自然と、空間を 意識したものになるようなんです。 だから、このタオルが日常の中にあることで 日々過ごしている空間や、 普段、当たり前にしている行為が 新鮮に、そして、 どこかおかしく、いとおしく 感じられたらいいなぁと思って。 そんなふうに、 人間というもののこっけいさ、 いじらしさ、せつなさを思い出し、 気づけるようなものに なっていたらいいと思います。 |
【バスタオル「せっせ せっせ」】 「湯上がりにこのバスタオルを 身体に巻いたとき、 自分の身体をぐるりと 雑巾がけする人がいる。 そのことで、 身体にタオルを巻くという行為が、 どこかおかしく、愛らしく、 新鮮に感じられるかもしれないと思うんです」 (大槻さん) |
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ほぼ日 | 部屋に、大槻さんのタオルが かかっていることを想像すると、 とてもゆかいな気持ちになります。 いっしょに暮らしている人や 遊びにきたともだちが、 その、いたずらっぽいアイデアに気付いて よろこんでくれたらいいな、 なんて思ったり。 |
【フェイスタオル「無」】 「洗面台の横に、 このフェイスタオルが掛かっていたら、 今までと同じ空間を、ありありと 鮮やかに感じてくるような気がします。 また、水道の蛇口をひねれば 同じように水が流れているから、 うっかり滝に打たれてる人の幻が 見えてしまったりするような‥‥。 そんなふうに、描かれているものの気配が、 いつもと同じ空間を、 新鮮にしてくれるように思います」 (大槻さん) |
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ほぼ日 | ハンドタオルも、 とても面白いです。 「コップからこぼれた水」ですから、 フェイス、バスとくらべて、 実物大に近い表現かと思ったら‥‥。 |
【ハンドタオル「そこも海」】 「このハンドタオルは、 テーブルやイス、 ひざの上なんかに広げたとき、 こぼれた水や人の小さな世界が現れて とたんにそこが舞台になる。 そんなふうに楽しんでもらえたら」 (大槻さん) |
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ほぼ日 | こういったアイディアって、 どこからやってくるものなんですか。 |
大槻 | いつも何かをつくるとき、 何かと向きあうとき、 「あなたは何者ですか? 何故あるんだろう?」って、 その「物」にうかがうんです。 そのことが、理屈じゃなく、 言葉じゃなく、感覚としてわかるような、 そういうところに 辿りつきたいと思っています。 そして、つくった後に思ったんですが すごーくヒリヒリした (何か切迫したような)気持ちで 考えていたのに、 出てきたものは、こんなマヌケで、 「なんでだろう?」と。 たぶん、わたしは、 自分の意表をつきたいんですね。 自分で自分にひざカックンみたいな。 それまで当たり前だったことを、 「これ、おかしい!」って、 新しい概念で破壊したいんだなぁって。 |
ほぼ日 | とてもシンプルな線ですけれど、 こめられた熱量が とても大きいように思えます。 |
大槻 | すごく大きな絵を 描くくらいの熱量で描いてます。 じつは、コップからこぼれてる 水を描くだけでも、 2日くらいかかりました。 水しぶきを描くときは、 水の気持ちになって、というか、 水の言ってることをうかがうと 自ずとどう描けばいいのかわかるんですが、 そういう状態になるのが なかなか難しくて。 |
ほぼ日 | 大槻さんは、 広告、装丁、絵本などで活躍していますが、 タオルをつくるにあたって、 何か意識の違いみたいな ものはありましたか? |
大槻 | いえ、それはないです。 いつもそのときどきの場でしか できないことを したいと思っています。 さっき話したような、 空間に対する感覚があるので、 どんな場でもインスタレーションを しているんだなって思います。 |
ほぼ日 | インスタレーションというのは、 絵や彫刻そのものだけではなくって、 空間そのものを作品として つくることですよね。 そこに、作品を置くことで、 観る人にその空間を 体験させてしまうような。 |
大槻 | はい。ああ、でも‥‥ このタオルを使うことで それぞれの人も自分で インスタレーションをする楽しみを 感じてもらえるかもしれないですね。 知らず知しらずのうちに。 ‥‥そうだといいです。 |
ほぼ日 | では、大槻さんとしては、 「やさしいタオル」は、 イラストを描くというよりは、 インスタレーション? |
大槻 | 私、イラストレーターとして 紹介されているときがあるんですが、 その意識は全然ないんです。 子供の頃に美術館に 連れて行かれたりすると、 絵画より空間を使った 作品に惹かれていました。 大学でも、インスタレーション ばかりしていました。 でも、私、何者でもないんです。 何かを伝えるために、何でもする。 ただ、何かつくる人というか、 ただの伝えたい生き物です。 |
ほぼ日 | 「伝えたい」というのは メッセージということですか? |
大槻 | えっ。いや、そういうのはないです。 何というか、 わたし、いろいろできないことがあって、 こうしてしゃべったりするのも うまくできなくて。 他に人とコミュニケーションを とる術がないから つくることをしているんだと思います。 「言葉じゃないお話」を しているのかもしれません。 ‥‥あの、わかりにくかったですか? |
ほぼ日 | いえ、とてもおもしろかったです。 このタオルを使ってくださるかたにも それが伝わるといいなぁと思います。 ありがとうございました! |
1973年、横浜生まれ。 なお、ほぼ日ウォーマ〜ズのオリジナル・ストーリー ホームページ:http://www.akanet.net/ 大槻あかね展「広告批評」に描いたもの 2009年4月25日(土)ー5月3日(日) |