糸井 |
田口さんの肩のケガっていうのは、
昔からずっと抱えてたものだったんですか?
|
田口 |
いえ、そういうわけでもないんです。
いわゆる勤続疲労だと思うんですけど。
|
|
糸井 |
じゃあ、ここ数年のこと。
|
田口 |
そうですね。
違和感は薄くあったんですけど、
全力で投げることはできていたので。
それが、去年のキャンプで突然、
「あれ? これ、投げられへんな」
っていう感覚に襲われたんですよ。
で、痛いまま、注射打ったりしながら
シーズンに入ったんですけど、
だんだんひどくなっていって。
|
糸井 |
そうとう痛いんですか、やっぱり。
|
田口 |
うん、痛いですね。
投げること自体が痛かったんで
もうキャッチボールもちゃんとできない。
でも、試合に出ないといけないんで
キャッチボールせずに入って、
試合になったら全力で
1球、2球くらいは投げられるっていう。
で、全力で投げてしまうと
もう、うずくまらないといけないくらい痛い。
まぁ、でも、ゲーム中は絶対、
そんなことはできないので。
|
|
糸井 |
プロ野球の選手って、
そうやって、痛いけど、嘘ついたり
ごまかしたりしながらやってるというのは、
よくあることなんですか。
|
田口 |
ほとんどの選手がそうだと思います。
痛みの強い弱いはあると思うんですけども
完璧な状態でプレーをしてるって選手いうのは
ほとんどいないと思います。
まあ、キャンプインしたころは
みんな元気だと思うんですけどね。
|
糸井 |
ああー、そうですか。
|
田口 |
そこから、やっぱり、
どんどんどんどん、追い込んでいくんで。
|
糸井 |
キャンプ中にもうすでに痛いわけですか。
|
田口 |
はい。
|
|
糸井 |
うわぁー。
|
田口 |
どっかが張ってるだとか、痛いとかいうのは、
みんなつき合いながらやってると思います。
|
糸井 |
やっぱりこう、それ専門に、
身体が変わっちゃった人たちなんですね。
|
田口 |
ああ、そうかも知れないですね。
だから、基本的には痛みに強くないとダメですし
プラス自分の身体を知ってないと、壊れちゃう。
どこまでいけるか、限界を知っておかないと。
|
糸井 |
そのへんは、自分以外に
誰かが知ってるものなんですか。
|
田口 |
自分以外は誰も知らないです。
|
糸井 |
誰も知らないんですか。
|
田口 |
自分でもわかってない人は、いっぱいいます。
|
|
糸井 |
うわぁ、そうですか。
でも、プロの球団なんだから、
トレーナーが管理しているはずですよね。
|
田口 |
もちろん、相談しながらやるんですけど、
隠してやる人もけっこういると思います。
|
糸井 |
はーーー。
|
田口 |
まぁ、ごくまれには、
「ぼく、ダメです」って、すぐ言う人もいる。
|
糸井 |
あ、そういう人も(笑)。
つまり、そんなに痛くなくても‥‥。
|
田口 |
もう、なんかあったら休みたい、みたいな。
|
糸井 |
でも、それがほんとかどうかの区別は
他人にはつかないんですよね。
|
田口 |
あ、でも、だいたいバレます。
|
|
一同 |
(笑)
|
|
糸井 |
その、痛いって言いたがる選手は
やっぱり、信頼失いますか。
|
田口 |
まぁ、失う信頼はありますね。
でも、そういう選手に限って
お金の稼ぎかた知ってるんです。
|
糸井 |
あー、そういう才能が。
|
田口 |
そうなんです。
この試合は出とかないといけない、
みたいなときは、いい仕事するんです。
|
糸井 |
なるほど、なるほど。
|
田口 |
ここで打っとかないといけない、とか。
そういう勝負強さは持ってますよ。
|
糸井 |
やっぱり才能ですね、それは。
ちなみに、ほんとに興味本位ですが、
オフレコで、それが誰だか‥‥。
|
|
田口 |
オフレコですか‥‥。
‥‥‥‥無理です。
|
|
一同 |
(爆笑)
|
糸井 |
そりゃそうですね。
|
田口 |
まぁ、典型的な選手が、
アメリカにひとり、いました。
|
糸井 |
ああー。
長持ちしてるんですか、そういう選手は。
|
田口 |
長持ちしてましたねぇ。
|
一同 |
はぁー。
|
糸井 |
すごいですねぇ。
それは、みんなが知ってるんですか。
|
田口 |
みんな知ってます。
デイゲームになると休もうとしてましたから。
|
|
一同 |
(笑)
|
糸井 |
でも、つまり、メジャーの、
ワールドチャンピオンになるようなチームに
そういう選手がいるっていうことですよね。
|
田口 |
はい。
|
糸井 |
すごいですね、それ。
|
田口 |
やっぱり勝負強い選手なんですよ。
だから、そのへんは、ある意味、
ものすごく「プロ」ですよね。
|
糸井 |
そうですよね。
だから、ぼくもね、最終的には
その選手を褒めたい気持ちがある。
たとえば、社員として考えるなら、
その選手がほかに悪い影響を与えないのであれば、
ちゃんとあてにしますね、そういう人は。
|
田口 |
あ、悪い影響はぜんぜんなかったです。
|
|
糸井 |
じゃあ、やっぱり使われますね、そういう人は。
はー、すごいですね。
(つづきます) |