糸井 | つまり肥満に対抗するためには、 徹底的に「NEATを高める」ということが 重要になってくるんですね。 |
高橋 | はい、とっても大事なことです。 でも、1年に1キロ増であっても それを30年続けてしまえば、プラス30キロ。 内臓に20キロもの脂肪が溜まっているという 危機的な状況ですから、 これに対処するにはダイエットしかありません。 |
糸井 | 座って一生懸命考えてるだけじゃ、もうダメ。 |
高橋 | まだ狩猟採取の生活をしていたころには エサの獲れない「飢餓の期間」が 意図せざるダイエットとなっていたわけです。 |
糸井 | そこで蓄積した脂肪を燃やしていた、と。 |
高橋 | ここでもうひとつ、大事なことなんですが‥‥ その飢餓状態を生き延びようとするときに、 われわれは、どうするか。 |
糸井 | どう‥‥というと? |
高橋 | 外からエネルギーが入ってこないのだから、 生体としては、代謝を下げるしかない。 |
糸井 | なるほど。 |
高橋 | つまり、いままでは キャッキャッキャッキャッやったり、 頭をいろいろ使っていたけど、 そういうことをしないようにするんです、 脳が。 |
糸井 | つまり、なるべく動かないで、ぼんやりする。 |
高橋 | そう。 |
糸井 | つまらないですねぇ。 |
高橋 | よけいなことは一切せずに、 エサが獲れるまでじっとしているというのが まっとうな生存戦略となる。 |
糸井 | さっきの話で言うと 「NEATを低下させる必要がある」と。 |
高橋 | そうそう、まさにそう。 でね、エサを食べなけりゃ、腹が減りますね。 |
糸井 | はい、減ります。 |
高橋 | でも、腹が減るのもさることながら、 じつは、それよりも重要なことがあるんです。 |
糸井 | それは‥‥。 |
高橋 | 必須アミノ酸の欠乏です。 つまり、9種類の必須アミノ酸は 体内で生成できないから エサ、具体的にはタンパク質を食べないかぎり、 得ることができないんです。 |
糸井 | ええ、そうでした。 |
高橋 | われわれは、 必須アミノ酸がなくなると死んでしまいます。 だから、外からエサが入ってこない場合、 脳の指令としては、 疲労感や倦怠感、脱力感などを感じさせて 筋肉などの末梢組織が はたらかないようにする。 つまり、エサがないという状況下においては、 キャピキャピ動き回ったり、 いろいろ考えたりさせなくして 「NEATを低下させる」という生存戦略は、 脳として当然のチョイスなんです。 |
糸井 | 少しでもムダ遣いを減らすべく。 |
高橋 | ここに、食事抜きダイエットの最大の問題が はらまれているんです。 つまり、必須アミノ酸の欠乏にともなう 疲労感、倦怠感、脱力感などによって 「なんでわたし、 こんなことになってるんだろう」 という、 なんと言うか‥‥「割の合わない感じ」を 覚えてしまうんですよね。 |
糸井 | つまり、それが ダイエットの続かない理由でもあると‥‥? |
高橋 | そうとも言えるでしょうね。 |
糸井 | ‥‥そうだったのかぁ! |
高橋 | あのね、ぼくは味の素で健康食品をつくるという 仕事をしていますもので、 太ってもまずいし、眠れなくてもまずい‥‥。 |
糸井 | そうですよね、見本ですものね。 |
高橋 | 血圧が高くてもまずいし、 いつでも、元気そうにしてないとまずい‥‥。 |
糸井 | 先生もタイヘンですねぇ(笑)。 |
高橋 | でも以前は、おそらく6〜7キロくらい、 内臓脂肪がついてたんですよ。 |
糸井 | まずいじゃないですか!(笑) |
高橋 | でも、単に食事を抜くというダイエットでは、 いまご説明した 「必須アミノ酸が欠乏する」という理由から、 なかなか、うまくいかないおそれがある。 |
糸井 | ええ‥‥どうしたんですか。 |
高橋 | 昼ごはんというのは、 しっかり食べたら「800キロカロリー」くらいは あるでしょう。 内臓脂肪6〜7キロっていうと、 70日から80日、 昼ごはんを抜くとなくなる計算なんですが、 単に食事を抜いちゃうだけでは、 代謝は下がっちゃうし、 倦怠感は感じるしで、よろしくない。 |
糸井 | ‥‥はい。 |
高橋 | そこで、たまたま、わたしたち味の素に 「アミノバイタルプロ」という 必須アミノ酸をミックスした健康食品があったんで、 それを飲むことにしたんです。 |
糸井 | あの、もともとは競走馬に食わせてたという‥‥。 |
高橋 | そう、昼ごはんの代わりに。 |
糸井 | ああ‥‥そうか! |
高橋 | つまり、必須アミノ酸が欠乏することなく、 昼ごはんをカットして、カロリーを制限できる。 そうやって、6〜7キロの内臓脂肪を、 3ヶ月くらいで減らしたんです。 |
糸井 | へぇー‥‥。 |
高橋 | で、6〜7キロあった内臓脂肪がなくなれば、 減量はおしまい、ということですから 昼の800キロカロリー、 その気になれば 夕ごはんに、そっくり持っていけるんですよ。 |
糸井 | ええ、その気になれば、なるほど。 |
高橋 | そうすると、まぁ、味の素の同僚と 「まあ、今夜はちょっとワインでも飲もうか」 なぁんて言ってみたり‥‥。 |
糸井 | いいですねぇ(笑)。 |
高橋 | 夕ごはんに「800キロカロリーの貯金」が あるっていうのはですね、 なかなかの価値が、ありましてですね‥‥。 |
糸井 | わかりますっ! |
高橋 | はははははは(笑)。 |
糸井 | だって「カツ丼ひとつぶん」じゃないですか。 |
高橋 | それもね、美味しいお店かなんかに行って 800キロカロリーよぶんにOKって、 同じ800キロカロリーでも なんか、オトクな気分がしますでしょう(笑)。 |
糸井 | いや、それは「楽しみ」になりますよね。 |
高橋 | だから、ハチマキをしめてね、 まなじりを決して「食わずにやれ!」って 言われてたら、 絶対できなかったと思うんです。 |
糸井 | つまり、やっぱり「脅迫」じゃダメだと。 |
高橋 | もちろん、厳しい食事制限をやりきれる人が 世の中にいるのは重々認めますけども、 まあ、ぼくらみたいな凡人には、なかなか‥‥。 |
糸井 | できませんよ。 |
高橋 | できません。アミノ酸が足りてなきゃ。 |
糸井 | でも、そうか‥‥そうか。 いま、先生から聞いた「アミノ酸のお話」で、 なんかぜんぶ、わかった気がしました。 |
高橋 | そうですか。 |
糸井 | ええ。 |
<つづきます> | |
2010-10-18-MON |