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ポジション・トークに
気をつけて。
武田徹さんに、
「報道」への考えを訊きました。

イラク問題についてのニュースが流れ続けているけど、
情報が増えれば増えるほど、話がわかりにくくなってない?
最近、『戦争報道』(ちくま新書)を書いた武田徹さんに、
この報道を読み解くヒントを、いろいろ訊ねてきましたよ。

7 ポジション・トーク


武田さんは、
『戦争報道』(ちくま新書)と同じ時期に、
『核論』(勁草書房)という本を刊行しています。
この2冊の本については
「双子のようなもの」なのだそうでして……。



「核」論―鉄腕アトムと原発事故のあいだ
価格:¥2,000
単行本: 259 p
出版社: 勁草書房
ISBN: 4326652721



最後は、この『核論』に則して、
報道のありかたについての
武田さんの言葉を、長めにご紹介いたしますね!

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「核に関する議論は、
 いろんな文脈が混ざりあうところなので
 評価が決まりえないんです。
 人によって、核に対しての意見は
 言ってることがまるで違うわけでして……。

 だからこそ、
 そういう『核』をモチーフにしたかったんです。
 どちらとも言えない
 グレーゾーンの議論に対する人間の行動は、
 どういうものなのかを調べる。
 そういう本では、あったんです。
 
 反核運動みたいなものが、
 結局、どういう成果をあげてきたかというと、
 ぜんぜん、成果をあげてきていません。
 反核運動をやろうとするのはえらいかもしれませんが、
 やってると、すぐに生き甲斐になってしまうんです。
 かえって臨界事故みたいなものが起きている。
 そんなにダメな運動だったら、
 もう、やりかたそのものを変えたほうがいいという、
 そういう論理的な展開が、ぼくの考えです。
 事実として、運動の効果がここまでなかったら、
 やりかたが間違えているんだろうという考えが、
 あって、しかるべきだと思うんです。

 もちろん、国が原発推進の立場を取っているのも、
 公がニュートラルではないということが変ですよね。
 国や政治は、できるだけニュートラルなものになって
 行政機能だけに特化していくべきなのにも関わらず、
 国策が原発推進。これも、おかしいと思います。
 『公』の立場がないから、これは全員が
 ポジション・トークをすることになるんです。
 それって、おかしいと思うんですよ。
 
 『公』というか、『第三者性』みたいな位置の
 確立が、これからは非常に大切になってくるでしょう。
 『公』のポジションがあまりにもない核というものを
 モチーフにすれば、
 かなり有効な議論ができるのではないか、
 とぼくは思ったんですね。
 ですから、核推進派にも、反核にも、どちらに対しても、
 非協力的な立場でやるという宣言をして書いたんです。

 そういう中でつくづく思うのは、
 ジャーナリズムって、やっぱり、
 立ち位置を決めないところに意義がある
 というか……。
 自分の位置を決めちゃ、ダメなんですよ。
 常に距離を持って、どんな対象からも距離を持つ。
 自分の立場を決めたら、
 その時から、型にはまってしまいます。
 型を求めたがるのは人間の本性なんだけど、
 意識的に型から離れていかないと、自然と人は
 決まりきったポジションに定まってしまう。
 そうすると、凝り固まった批判しかできない。
 
 『核論』では、自分のポジションを作らない、
 というかたちで書こうと思ったんです。
 もちろん、反核の意味はわかるんです。
 国が推進政策をとっている以上は、
 カウンターパワーが要る。
 でも、批判勢力がひとつのかたちになってしまうことで、
 批判の柔軟性を失ってしまうんです。
 それは、ほんとによく見てきましたから……」


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この短期連載が、
あなたにとっての、何かのヒントになったなら、幸いです。
ご愛読くださり、どうも、ありがとうございました。

このページへの激励や感想などは、
メールの表題に「武田徹さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ろう。


2003-04-15-TUE

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2003-04-08 2 ディーバー・システム
2003-04-09 3 「ナマ=現場」ではない
2003-04-10 4 事実報道の限界の中で……
2003-04-11 5 宗教を報道で扱うこと
2003-04-14 6 知ることで仲間になる