大瀧詠一さんと、トリロー先生の話を。-三木鶏郎を知ってるかい? PART2-

第5回 アーッ‥‥会いたい! 訊きたい!



── この間のコンサート
「三木鶏郎と異才たち〜Sing with TORIRO」について、
終わってみての感想を
ちゃんと聞いていなかったのですが、
いかがでした?
慶一 本番でも、楽屋でもね、
皆さん、楽しそうにしていたので、
それは良かったですよ。
終わった後に打ち上げがありましてね。
あれが、また、良かったな!
二次会で、出演者が頭の1曲目から、
もう一回、全部やったの。
ウクレレとピアニカだけで、ずーっと。
最初は無伴奏だったけど。
── エーッ!!
細野 すごいよ、それ。‥‥録ってないのかな(笑)。
慶一 携帯で15秒だけ録ったけど(笑)。
慶一 他の人が担当した曲も歌えるし、
覚えちゃってる。
コンサート、楽しかったねー、って言って。
── 鶏郎さんのことはあまり知らない世代の
ミュージシャンたちが、
そこまでハマったというのが、すごいですね。
慶一 「ほんとに知らなかったけど、
 こんなに楽しい音楽があるとは思いませんでした」って。
でも、もうワンステージやるとは思わなかったね。
打ち上げの打ち上げで夜中の1時半から(笑)。
── やる側が十分楽しかったんだな、
ということがわかりますね。
いつでも聴けるトリローラジオ
音が聞こえないときはこちらへ!
『森永インスタントコーヒー』

作詞・作曲:三木鶏郎
歌:畠山美由紀、首里フジコ、今野英明、高野寛
「タララ・プンカ・ポンカ・ピ」より
再生して音が出るまでにしばらく時間がかかります。
慶一 細野さんもね、1曲だけの登場なんだけど、
つけ髭、買ってきちゃったりするんだよね(笑)。
二人でそれをつけて、本番で歌ったりして。
一同 アッハハハハ!
細野 ちょっと余裕があるからね。
よくあるパターンだよ。
パターンどおりにやっただけ、あれは。‥‥定石!
なんかねー、芸人魂がくすぐられるんだよね。
慶一 そう、そう。
「これ、どーお?」なんて(笑)。
── アハハハ、そういうものなんですか。
細野 芸人ですよ。
慶一 われわれが突然、髭を付けて出たら、
バンドのメンバーが吹くだろうな、と‥‥(笑)
細野 そう。まず仲間に受けないとね(笑)。
慶一 そう、そう! これも、芸人な感じ、でしょ。
細野 慶一を見るとね、芸人の素質があるから。
慶一 と、と、とんでもございません(笑)。
細野 それは、できない人のほうが多いから、今。
ミュージシャンで。
── それを今回のメンバーは
果敢に挑戦していましたよね。
ハナレグミの永積さんは、
エノケンさんの「これが自由というものか」で
頭にネクタイを捲いて歌われましたし。
細野 そう、そう、そう!!
伝統的だよ、あれは! 有島一郎とか(笑)。
あれ、すごいよねぇー。
佐藤 のり平さんにしろエノケンさんにしろ、
みんな、そういうことなんですよね。
つまり、芸人の資質‥‥基本ですよね。
あれがスッとできるなんてね。
── あっ‥‥演出したんじゃないんですか?
佐藤 誰も演出してないですよ。
慶一 本番中に、舞台の袖に戻ってきて、
ピッとやって‥‥。
佐藤 そうなんです。
細野 あれ、なんでやったんだろ?
佐藤 あれは多分、細野さんたちの髭を見て、
オレも、と思ったんじゃないかな。
彼は前から言っていたんだけど、
「自分が出来ることはどこまでなのかな」と。
「先輩たちは、1曲でも
 相当のことをやるんだよね」と。
「僕らの世代というのは、
 これでいいや、というところで止めちゃう」と。
そういうのを、自分の欠点だと
前から言っていたから。
細野 じゃ、一つ‥‥一歩、踏み込んだんだ。
佐藤 そう、踏み込んだんですね。
「あぁ、やっぱり細野さんも、
 ああいうこと、やるんだ。
 慶一さんも、やるんだ。ここまでやるんだ」と。
それで最終日にやりましたね。
見事でしたよね。エノケンの素質というか‥‥。
細野 あれは、高級だよ、われわれより(笑)。
佐藤 いや、いや‥‥(笑)。
でも、そもそも僕が
このプロデュースを引き受けたのは、
「僕は特急の機関士で」を
彼に歌わせたら合うだろうなと思ったことで、
「あ、これは出来るかもしれないな」と。
それで、彼の音楽の
最近のプロデュースをやっていた鈴木惣一朗が
あきれたぼういず」をやったりとか、
その手のものに非常に興味を持っているので
相談したら、「出来る」と言ってくれたので、
「これは実現するかもしれないな」と
思ったところから始まったんです。
細野 そう、そう。
佐藤 で、彼に相談したら、
「僕でいいんですか?‥‥喜んで、やりたい!」
という話になって。
「じゃ、今度、ゆっくり話をしよう」と言ったら、
翌日、彼から電話がかかってきて、
「あんまり嬉しくて、
 細野さんに言っちゃったんです」って。
一同 アッハハハ!
佐藤 「剛さんからこんな話が来た、
 とあんまり嬉しくて細野さんに言ったら、
 細野さんが『僕は特急の機関士で』を歌わせろ、
 と言ってくれたんです」と言ったので、
「あっ、それだったら、できるじゃない!」と。
これで始まったんです。
── 基本が出来ちゃったんですね。
佐藤 そうなんです。
永積くんは、鶏郎先生とか、
あの時代の人が普通にやれていたものの
DNAのようなものを、一番持っている人は誰かな、
と考えたときに、たまたま僕の身近にいたので
お引き受けすることが出来たんです。
── 当時の人たちって、
役者でもあった人が、
歌も歌っていたんですよね。
役者の素質のある人たちは
やっぱりうまいですよね。
佐藤 うん。そうなんでしょうね。
── 今の音楽の人って、なかなか、
そこは‥‥いないんですよね。
それはなぜなんでしょう。
細野 アーティストになっちゃったから(笑)。
佐藤 分業化されているから。
── 細野さんや慶一さんは、できるんですよね。
慶一 アーティストって言われたこと、
なかったものな、昔。
細野 言われたことないよ。
慶一 ね!
佐藤 細野さんなんか、そういう意味じゃ
アーティスト中のアーティストなのに、
なにかの時には必ずやりますよね?
YMOの時からずっと。
── 「ひょうきん族」に出てましたものね(笑)。
細野 やっぱり、憧れはコメディアンだからね。
── 観客席にも、
ミュージシャンは、いたんですか?
佐藤 いましたよ!
YO-KINGとYUKIちゃん夫妻とか‥‥
「ど、どうして、来ているの?!」
という話になったら、
「CDを買ったら、告知が出ていたんで
 普通にチケットを買って」と。
細野 ああ、そう!
いつでも聴けるトリローラジオ
音が聞こえないときはこちらへ!
『明るいナショナル』

作詞・作曲:三木鶏郎
歌:鈴木慶一、細野晴臣、坂本冬美、今野英明、
高野寛、畠山美由紀、首里フジコ、ハナレグミ、
小池光子、湯川潮音、奈歩
「タララ・プンカ・ポンカ・ピ」より
再生して音が出るまでにしばらく時間がかかります。
── この試みは、1回じゃ終わらないです、よね?
佐藤 ええ、ええ。終わらせたくない‥‥というか、
これをスタートに、いろんなかたに
カミングアップしてほしい。
「僕も、もしかしたらここから
 何かが始まっていたかもしれない」というかたが、
もっともっと、たくさん出てきてほしいですよね。
細野 こういうのをもっと聴いてもらいたいよね。
僕も聴きたいし。
── ありがとうございました!

(つづきます!)

2006-10-18-WED


細野晴臣さん、鈴木慶一さん、坂本冬美さん、
今野英明さん、高野寛さん、畠山美由紀さん、
首里フジコさん、ハナレグミさん、
小池光子さん、湯川潮音さん、
奈歩さんが参加した
2005年12月銀座博品館劇場での
“Sing with TORIRO”コンサートから、
ライブ音源を4曲収録。
三木鶏郎さんの音楽の、
入門編ともいえるCDです。

●収録曲目
タララ・プンカ・ポンカ・ピ
森永インスタントコーヒー
トムとジェリー
鉄人28号
明るいナショナル
僕はアマチュアカメラマン
小田急ピポーの電車
船橋ヘルスセンター(長生きチョンパ)
バイヤリースの唄 全9曲
2006年9月6日発売
UICZ-4160
¥1,200(税込)
ユニバーサルミュージック
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オリジナルSP原盤、マスターテープ、
一部SPレコードから再録した
鶏郎さんの作品集が発売になりました。
「音楽作品」14曲、「CM作品」14曲、
「アニメ主題歌作品」2曲、
そしてボーナストラックは
なんと1948年にSP盤で発売された
「冗談音楽 日曜娯楽盤」を完全収録しています!
ブックレットには鶏郎さんのもとでいっしょに
仕事をしてきた伊藤アキラさんや永六輔さん、
大きく影響を受けた大瀧詠一さんや
鈴木慶一さんらの寄稿も掲載されています。

2005年11月23日発売
COCP-33435
¥2,500(税込)
コロムビアミュージック
エンタテインメント株式会社
ご注文はこちらへ


先に行われたコンサート
「三木鶏郎と異才たち」を記念して
渾身の! ビジュアルブックができました。
鶏郎さんが活躍した当時の新聞雑誌記事、写真、
鶏郎さん自身の回想とともにふりかえる歴史、
これまでに発売されたレコードジャケットや
作品リストなどが掲載されています。
一般の書店には置かれていませんが、
制作したファイブ・ディーさんでの
通信販売で、入手可能ですよ〜。
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デザイン協力:下山ワタル
いままでのお話
2006-09-06 第1回 80年代、トリローさんは
コンピュータで 音楽を自作していた!
2006-09-13 第2回 ビートルズがやってきた!
2006-09-20 第3回 暗い歌はなんとかしてくれ。
メジャーコードで明るく歌おう!
2006-10-04 第4回 何を聴いて何を受け取って、
それをどうやって自分で消化していくか。
2006-10-11 第5回 アーッ‥‥会いたい! ききたい!
大瀧詠一さんと、トリロー先生の話を。-三木鶏郎を知ってるかい? PART1-
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