慶一 |
細野さんもね、1曲だけの登場なんだけど、
つけ髭、買ってきちゃったりするんだよね(笑)。
二人でそれをつけて、本番で歌ったりして。 |
一同 |
アッハハハハ! |
細野 |
ちょっと余裕があるからね。
よくあるパターンだよ。
パターンどおりにやっただけ、あれは。‥‥定石!
なんかねー、芸人魂がくすぐられるんだよね。 |
慶一 |
そう、そう。
「これ、どーお?」なんて(笑)。 |
── |
アハハハ、そういうものなんですか。 |
細野 |
芸人ですよ。 |
慶一 |
われわれが突然、髭を付けて出たら、
バンドのメンバーが吹くだろうな、と‥‥(笑) |
細野 |
そう。まず仲間に受けないとね(笑)。 |
慶一 |
そう、そう! これも、芸人な感じ、でしょ。 |
細野 |
慶一を見るとね、芸人の素質があるから。 |
慶一 |
と、と、とんでもございません(笑)。 |
細野 |
それは、できない人のほうが多いから、今。
ミュージシャンで。 |
── |
それを今回のメンバーは
果敢に挑戦していましたよね。
ハナレグミの永積さんは、
エノケンさんの「これが自由というものか」で
頭にネクタイを捲いて歌われましたし。 |
細野 |
そう、そう、そう!!
伝統的だよ、あれは! 有島一郎とか(笑)。
あれ、すごいよねぇー。 |
佐藤 |
のり平さんにしろエノケンさんにしろ、
みんな、そういうことなんですよね。
つまり、芸人の資質‥‥基本ですよね。
あれがスッとできるなんてね。 |
── |
あっ‥‥演出したんじゃないんですか? |
佐藤 |
誰も演出してないですよ。 |
慶一 |
本番中に、舞台の袖に戻ってきて、
ピッとやって‥‥。 |
佐藤 |
そうなんです。 |
細野 |
あれ、なんでやったんだろ? |
佐藤 |
あれは多分、細野さんたちの髭を見て、
オレも、と思ったんじゃないかな。
彼は前から言っていたんだけど、
「自分が出来ることはどこまでなのかな」と。
「先輩たちは、1曲でも
相当のことをやるんだよね」と。
「僕らの世代というのは、
これでいいや、というところで止めちゃう」と。
そういうのを、自分の欠点だと
前から言っていたから。 |
細野 |
じゃ、一つ‥‥一歩、踏み込んだんだ。 |
佐藤 |
そう、踏み込んだんですね。
「あぁ、やっぱり細野さんも、
ああいうこと、やるんだ。
慶一さんも、やるんだ。ここまでやるんだ」と。
それで最終日にやりましたね。
見事でしたよね。エノケンの素質というか‥‥。 |
細野 |
あれは、高級だよ、われわれより(笑)。 |
佐藤 |
いや、いや‥‥(笑)。
でも、そもそも僕が
このプロデュースを引き受けたのは、
「僕は特急の機関士で」を
彼に歌わせたら合うだろうなと思ったことで、
「あ、これは出来るかもしれないな」と。
それで、彼の音楽の
最近のプロデュースをやっていた鈴木惣一朗が
「あきれたぼういず」をやったりとか、
その手のものに非常に興味を持っているので
相談したら、「出来る」と言ってくれたので、
「これは実現するかもしれないな」と
思ったところから始まったんです。 |
細野 |
そう、そう。 |
佐藤 |
で、彼に相談したら、
「僕でいいんですか?‥‥喜んで、やりたい!」
という話になって。
「じゃ、今度、ゆっくり話をしよう」と言ったら、
翌日、彼から電話がかかってきて、
「あんまり嬉しくて、
細野さんに言っちゃったんです」って。 |
一同 |
アッハハハ! |
佐藤 |
「剛さんからこんな話が来た、
とあんまり嬉しくて細野さんに言ったら、
細野さんが『僕は特急の機関士で』を歌わせろ、
と言ってくれたんです」と言ったので、
「あっ、それだったら、できるじゃない!」と。
これで始まったんです。 |
── |
基本が出来ちゃったんですね。 |
佐藤 |
そうなんです。
永積くんは、鶏郎先生とか、
あの時代の人が普通にやれていたものの
DNAのようなものを、一番持っている人は誰かな、
と考えたときに、たまたま僕の身近にいたので
お引き受けすることが出来たんです。 |
── |
当時の人たちって、
役者でもあった人が、
歌も歌っていたんですよね。
役者の素質のある人たちは
やっぱりうまいですよね。 |
佐藤 |
うん。そうなんでしょうね。 |
── |
今の音楽の人って、なかなか、
そこは‥‥いないんですよね。
それはなぜなんでしょう。 |
細野 |
アーティストになっちゃったから(笑)。 |
佐藤 |
分業化されているから。 |
── |
細野さんや慶一さんは、できるんですよね。 |
慶一 |
アーティストって言われたこと、
なかったものな、昔。 |
細野 |
言われたことないよ。 |
慶一 |
ね! |
佐藤 |
細野さんなんか、そういう意味じゃ
アーティスト中のアーティストなのに、
なにかの時には必ずやりますよね?
YMOの時からずっと。 |
── |
「ひょうきん族」に出てましたものね(笑)。 |
細野 |
やっぱり、憧れはコメディアンだからね。 |
── |
観客席にも、
ミュージシャンは、いたんですか? |
佐藤 |
いましたよ!
YO-KINGとYUKIちゃん夫妻とか‥‥
「ど、どうして、来ているの?!」
という話になったら、
「CDを買ったら、告知が出ていたんで
普通にチケットを買って」と。 |
細野 |
ああ、そう!
|