パオパ〜、パオパオパ〜(ほら貝)。
ときは1992年、舞台はフジテレビ。
早朝、さしたる説明もなく
とんでもないすばやさで展開する
CGアニメーションの嵐、
出てきた子どもたちがこう叫ぶ。
「おーきーらーく、ごーくーらーく!!」
1年半の放映期間だったにもかかわらず、
ウゴウゴルーガは伝説の番組となって
そのあとのテレビを
ちょっぴり塗り替えていきました。
あの不思議な世界を作った人たちをお招きして、
番組ができたみなもとに近づいてみたいと思います。
ウゴウゴルーガを知らない人も、
テレビが好きだったら、ぜひ、読んでみてね。
もしも遊びが好きだったら、
仲間と仕事をするのが好きだったら、ぜひ、
読んでみてね!

ウゴウゴルーガってなんだ?
という方は、こちらへGO!

みんな大好き、ウゴウゴルーガ。 フジテレビに行って来たよ の巻
桜井郁子さん
ウゴウゴルーガのプロデューサー。
番組冒頭で「おはようございます」と登場する
「テレビくん」の声は、この方の担当でした。
現在は、フジテレビのCSR推進室というところで
ゼネラルプロデューサーをしています。
福原伸治さん
ウゴウゴルーガのチーフディレクター。
放送当時の年齢は30歳ジャストでした。
現在もさまざまな番組
(斬新な話題作ぞろいです)の
演出を手がけています。
デジタルコミック「少年タケシ」
編集長でもあります。
糸井重里
ほぼ日刊イトイ新聞編集長。
ウゴウゴルーガに
ちょこっとゲスト出演したことがあります。
そして、意味なく打ち上げにも参加。
桜井さんとは、いろんなお仕事で
長いおつきあいをさせていただいております。

以上、3人のおとなで、お送りいたします!

第1回 ヒュー、ヒュー!

イトイ 本日は、かくも賑々しく
おふたりのみなさまにおいでいただきまして、
ありがとうございます。
番組はもちろん、DVDの販売も終了して、
お客さんの気持ちも
だいたい収まったかなぁというこの時期、
すべてがすっかり終わったのを
見計らったようにして
ウゴウゴルーガのお話をしたいと思います。
桜井 まあ、これからも何か展開が
あるかもしれませんけれども、
とりあえずDVD−BOXは完全予約制で、
2007年(昨年)、受付も引渡しも
すべてきれいに終了しました。
イトイ おめでとうございます。
桜井 ありがとうございます(笑)。
福原 ありがとうございます(笑)。
イトイ このDVDが出たときに、
うちのスタッフにも
買った者がおりましてね。
桜井 ほんとに?
イトイ 若い奴らにとっては、これは、
安くはない値段ですよ。
桜井 私の周囲でも、
ルーガちゃんのママや
当時のヘアメイクさんたちが
「早めに予約しといたほうがいいですよね?」
なんて言ってくれていました。
「あげるのに」と言いたくなるくらいに
近い人たちが、そう言ってくれるんです。
イトイ いい話ですね。
桜井 いい話です。
イトイ 僕は思うんだけど、
「言ってくれたらさぁ」のものって、
おそらくいちばん
「いい」んじゃないでしょうか。
福原 近い人たちが
「欲しい欲しい」って言ってくれるものはね。
先日も、栗山千明さんと
仕事でご一緒したときに、
まず第一声が
「福原さん、DVDに出演してましたね!」って。
ちゃんと予約して買ったんだって。
「言ってくれればあげたのに」と
たしかにそのとき言いました。
桜井 ウゴウゴルーガを
DVD化することになったとき、
藤子不二雄先生の事務所に問い合わせをしたら、
「絵の二次利用はもちろんOKで
 使用料は要りません。
 でも、できあがったDVDをぜひください」
と言っていただきまして。
福原 ありゃ、うれしかったなあ。
イトイ そういう自慢話だけ聞いてても、
うれしくなりますね。
だって、こんなにあとあとまで、
ヒュー、ヒュー! 言われる仕事って
そんなにないでしょ?
桜井 番組をビデオ化するセクションの
人たちが言ってたんですけど、
ひとつの番組にかかわったチームが解散すると、
「当時のスタッフに会いたいなあ」
なんて言い出す人は
思ったより少ないらしいんですよ。
でも、ウゴウゴルーガのDVDを
出すことに決まったとき、当時の仲間たちが
やたら勝手に集まってきちゃったんです。
これはめずらしいね、ってことになりまして。
イトイ へえぇ。いいなぁ。
桜井 「みんな制作会社の所属も変わってるし、
 許可とか大変だし、責任とりきれないなぁ」
なんて仕事はしょっちゅうあるんですが、
ウゴウゴルーガは
「やりませんか」「やりましょう!」
と、みんなが集まる。
これはわりと、稀な話なんですって。
福原 少なくとも
「やめてほしい」とか「いやだ」とか
言う人はいなかったですね。
まあ、10年以上経ってるから
ちょうどよかったのかも。
これが2、3年後だったら、
「もう二度と会いたくない」と
言われたりして(笑)。
イトイ 当時は、どちらかといえば、
ハードワークだったわけでしょう?
福原 いまにして思えば、本当にすごかったです。
イトイ まず、番組の放送が「毎日」だったもんね。
福原 週のうち5日間、ずっと
編集か音入れをしてるという、
そんな感じでした。
月曜日に出勤してスタッフルームで会議して、
みんなで桜井さんの作ってくれた鍋を食べて、
あとは編集室にずーっと泊り込みです。
イトイ 不平不満は
出たりしなかったんですか。
福原 あとで聞いたらやっぱり、
いろいろあったみたいです。
というのも、スタッフはみんな若かったし、
20代がほとんどで、独身。
それがずっと閉じ込められたように
なっていたので
1年半、禁欲生活を強いられた、と(笑)。
イトイ ということは、冗談じゃなくて本当に
一歩も出られないような状態だったんですね。
福原 はい。
桜井 あのぅー(笑)、
プロデューサーの立場としては、
きっと効率のいいやり方を
ほかに考えられたんだとは思います。
だけど、福原ディレクターって
効率性をあまり考えないんです。
こう言っちゃ何ですけど、おもしろさと‥‥
福原 おもしろさ(笑)、はい、はい。
桜井 あと、わりとしつこいよねぇ。
粘るよね、最後まで。
イトイ 「いまだから言うけど」(笑)
福原 おっしゃるとおりです(笑)。
桜井 そういうハードな環境だったことは確かですが、
みんな不平不満を言わなかった。
私は私で「効率悪いな」と思ってたけど
言わなかった。みんなが黙ってたんです。
それはまず、
憎まれにくいタイプが集まっていたことと、
それから、本当に誰も
敵を作りたくなかったからじゃないでしょうか。
福原 みんなそれなりに
思ってたと思うんですが、
ほとんど合宿状態の毎日で、
不平を言ってどうなるんだ、
言ったとしても、収拾がつかないってことを
みんなが身にしみて
わかってたんじゃないかなぁ。
(続きます)
2008-05-16-FRI
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みんな大好き、ウゴウゴルーガ! もくじ

第1回 ヒュー、 ヒュー!
2008-05-16
第2回 これ以上できません!
2008-05-19
第3回 私も、おもしろかったです!
2008-05-20
第4回 何かが起こってる!
2008-05-21
第5回 今度「朝」なのよ。
2008-05-22
第6回 荒野を行く人たちを。
2008-05-23
第7回 自分の中の子ども宛て。
2008-05-26
最終回 この人たちがいる会社。
2008-05-27