糸井 矢沢永吉のいちばんダメだった時期っていつ?
矢沢 ん?
糸井 こう、これまでの自分を俯瞰してみてさ、
あの矢沢、ちょっとダメだった
っていうの、ある?
矢沢 ‥‥ダメって、
どこらへんのことをダメって言うのかなぁ。
糸井 自分の判断で。
矢沢 自分の判断でダメだったら、そうだなぁ‥‥。
まぁ、そらねぇ、ダメだったとしても、
酒飲んで、そこでまず一回、
自分のむしゃくしゃしてるもの
一回ゼロにしてまたがんばるってことの
繰り返しでやってたからね。
糸井 うーん。
矢沢 まぁ、酒ばっかり飲んでたこととか、
そういうことはあったけど、
でも、金銭感覚も一所懸命がんばったし、
ビジネスもがんばったし、
先、進まなきゃいけないってことも、がんばったし、
上に行かなきゃいけないってことも、がんばったし、
だから、けっこう真面目だったよ。
糸井 ずーっと。
矢沢 うん。
ずーっと、そういうことの繰り返しだったね。
糸井 人が見てるっていうのもあるよね。
矢沢っていう人は、いつでも誰かが見てるから
「このごろ永ちゃんダメですね」とか、
「レコード出てないですね」って
すぐに言われるわけじゃない。
そういうふうに、みんなが見てるってことが
いい目盛りとして、作用しているところはあるかもね。
つぎのアルバム出ないかなぁ、とかさ。
矢沢 そうね。だから、いつも、手を抜かずに。
糸井 真面目に(笑)。
矢沢 真面目だよぉ。
まぁ、どこまで矢沢に不良のイメージが
ついてるか知らないけどね。
糸井 もう、みんな、わかってるんじゃない?
矢沢 いや、そんなことないと思うよ。
だって、まえに飛行機に乗ったときにね、
ロサンゼルスから東京、長旅じゃない?
で、ファーストクラスなんて座ってると
いろんなサービスがあるわけ。
飲み物だの、食べ物だの。
でも俺、そのとき、やることいっぱいで、
乗り込んだらすぐパソコン開いて
ずーっと仕事してたのよ。
糸井 うん。
矢沢 それで、2時間以上やってたかな、
いまやっとかないとアイディアが消えちゃう
っていうのがあったから、
ずーっとパソコン打ってて、そのあいだに
「お食事、いかがですか?」みたいなこともあったけど、
「すいません、やらなきゃいけないことがあるから」って
食事しないで、ずーっと仕事してたんだけど、
あとから話したら、そのキャビンアテンダントの人、
イメージとぜんぜん違ったらしいんだね。
糸井 ああー、それまで思ってた「矢沢永吉」と。
矢沢 そうそうそう。
だって、フライトしていきなり
「いま食事はいいから」って
パソコン開いて仕事しだして。
糸井 ああ、それはだいぶ違うね。
矢沢 そもそも
「矢沢永吉、パソコンいじるんだ‥‥」って。
糸井 ははははは、しかも、食事もせずに。
矢沢 うん。
で、2時間ぐらいやって、やっと終わって、
すいません、ちょっと白ワインいただけますかって
頼んで、ちょっと話してたら、そういう話になってさ。
失礼かと思うんですけど、イメージがぜんぜん違いましたと。
糸井 うん(笑)。
矢沢 ほんとに申し訳ありませんけど、
矢沢さまって、わたしが最初に思ったイメージは、
どーん座って、「シャンペン、よろしくぅ!」。
糸井 (笑)
矢沢 だから、世の中はね、みんなだまされてるよ。
みんなだまされてる。
糸井 それはさ、永ちゃんがステージとかで、
そういうふうにしてるからだよ。
矢沢 じゃあ、(ステージで)敬語使おうかな、今度。
「みなさま、ノラれていらっしゃいますか?」
糸井 (笑)
矢沢 「あの、気持ちよくほんとに、
 こころからノってください。
 よろしくお願いします」
って、やったらいいのかな(笑)。
糸井 やっぱりステージのときには、
ケダモノだからさ。
矢沢 ケダモノね。
糸井 ケダモノだよ。
どうかしたら食いつきそうじゃない。
矢沢 ガァーオって。
糸井 うん。
で、声の出し方から何から、全部。
無意識かもしれないけど、
あれやられるとさぁ、やっぱり、人は、
「シャンペン、よろしく!」って
思っちゃうんだと思うよ。
矢沢 はっはっは。
糸井 ボトルで飲んじゃいそうですよ、あれは。
矢沢 だからね、おもしろいよね。
俺、今度から、飛行機乗ったら、
必ずパソコン開けて仕事することにしよう。
糸井 (笑)
矢沢 イメージづくりからいかないと。
どう?
糸井 知らないよ(笑)。


(つづきます)





2012-08-15-WED

メールを送る ツイートスル ほぼ日ホームへ