糸井重里
・30分弱の距離タクシーに乗って、降りる手前で、
運転手さんがとても遠慮がちに口を開きました。
「こんなふうに話しかけて申し訳ありません。
ただ、どうしてもお伝えしたくて‥」と。
丁寧な前置きに、思わずぼくも「はい」と返事をしました。
「実は、もう亡くなっているのですが、
わたしの母がほぼ日手帳の大ファンで、
何年もずっと大事に日記を付けてたんです。
それがいまも残ってて、お礼を言いたかったんです」。
そんなふうに話されたのははじめてでしたので、
ぼくもなんとお答えしていいのか思いつかず、
「ああ、それはどうもありがとうございます。
お役に立ててよかったです」と言い、
「お母さまは、おいくつだったんですか?」と
余計なことまで聞いてしまいました。
「72歳でした。いやぁ、手帳に思い出がたくさんあって。
わたしがお礼を言いたかったんです」。
うれしい気持ちと、お悔やみのことばを探す気持ちとが
入り混じって、ぼくは「あぁ、そうでしたか。
それはそれは‥‥」とぐずぐずしたことを言いつつ
タクシーを降りたのでした。
なんだろう、ゲームだとか、歌詞だとか、
いろんなことでよろこばれたりすることはあるのですが、
70歳過ぎていまは亡くなっている方の息子さんに、
手帳のことでお礼を言われたというのは、
たぶんはじめてのことでした。
長い間、ほぼ日手帳をつくっていますが、それが、
もう、何世代かの家族につながっているんですよね。
そういえば、お鮨屋で横の席にいたご家族が、
「この娘の中学入学のお祝いに、ちょうど今日、
この手帳をプレゼントしたんですよ」と、
新しい「ほぼ日手帳」を見せてもらったこともありました。
あのときの娘さんも、もしかしたら、
じぶんに娘さんがいるくらいになっているかもしれないな。
◆今日の質問はno.081「親子で続いてるものありますか?」
どうだろう?考えて、よかったらメールも送ってください。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
同じ仕事を長くやってるから出会えることって、ありますね。
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