糸井重里
・年をとってから、ごく自然にわかるようなことがある。
他人の力のすばらしさに気づくこと、
そして、それを敬して尊べることである。
山の寺社の参道に、どこまでも続く長い石段があるだろう。
息を切らせながら、なんとか休み休み上がっていく。
そして、上がるだけでも大変なのに、その道を
切り開いて石段をつくった人たちがいると想像する。
どうやって道をつくり、どんなふうに石や木の材料を運び、
どう石段にしていったのか。
いや、それだけではない、もともとこの石段は、
上りきったところに建っている寺や神社のためにある。
気が遠くなるような労力が、ここに集められていたのだ。
いまの時代の機械や道具を用いても、
一朝一夕にできるものではないだろう。
想像しきれないにしても、その大きな仕事に思いを馳せ
尊敬の心持ちになるというようなことは、ぼくの場合、
やっと老人になってからできるようになった。
石段ばかりじゃない、いろんなことで、そんなふうになる。
この敬意をこめた想像力が、
たとえば三十歳代のころに持てていたら、
ぼくの生き方はもっと違っていただろうと、いま思う。
逆に、そういう想像力が足りなかったからこそ、
怖い者知らずの断言や、向こう見ずな冒険や、
無計画な事業をやってこられたのだとも言える。
ぼくの人生のあみだくじは、やり直すわけにはいかない。
いいことも、よくないことも、その角で曲がったからこそ、
いまのじぶんが、いまの場所にいるというわけだ。
ただ、ね、「他人の力のすばらしさ」に気づくことは、
やっぱり若くてもできていたほうがいいので、
年下の人には、ちょっとずつそういうことを言おうかな。
でもあんまり本気でやると老人の説教になっちゃうからな。
ここで、ちょっと書いたくらいのことで、ちょうどいいか。
◆今日の質問no.068は「若いときのじぶんへ」でいいかな。
言ってあげよう。よかったらメールでも送ってください。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
思いやりというのも、「想像力×習慣」だという気がする。
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