糸井重里
・ずいぶん昔のことだったけど、
じぶんがいない世界というのを見たことがあります。
いや、あくまでもイメージなんですけどね。
いつものように仕事をし終えた夜中、
疲れてもいたし眠いし、さぁ寝るぞと寝室に入った。
たぶん部屋は暗いままだったと思うのですが、
じぶんの寝るベッドが目に入るわけです。
隣りのベッドではもうとっくに奥さんが眠っていて、
ぼくのこれから寝るベッドにはだれもいない。
ぼくがそこに横たわらなければ、そりゃぁ空っぽです。
なんのことはない、当たり前のことなのです。
ただ、そのときに、ふと、ここで
「ああ、おれのいない世界だ」と思ったのです。
ぼくがいなくなった世界というのは、
つまり、こんなふうなものなのかとイメージできた。
「おれのいない世界」を、幽霊になったぼくが見ている。
それと、いまの目の前のこの空のベッドは同じじゃないか。
わぁ、と、なにかこみあげてきて、悲しくて悲しくてね。
どうしたんだっけなぁ、泣いたんだっけなぁ。
都合の悪いこととして、忘れちゃっているのですが、
それまで知らなかった類の深い悲しみだったことは、
ずっと憶えていて、ちょっと笑いなんかも入れつつ、
何度か親しい人に話したこともあります。
「思えばさ、そこに健やかに眠ってるのは、
おれを失った未亡人だぜ」とか不服そうに語ったりしてね。
だけど、あのときはほんとに悲しかった。
みんなと、みんなぜんぶとお別れしちゃうのかぁ、と。
なにもかもが、ぼくを抜きにしてそこにあるのか、と。
それからは、寝る前にそんなイメージを持つこともなく、
こうして、悲しかったと語れるくらいの話になりました。
いちおう、いまは、そのときのような悲しみはありません。
悲しいというより、さみしいに近いのかなと考えています。
わからないんですけどね、よくは。
先に、この世界にお別れした人たちのことを思うと、
あのときの「おれのいない世界」のことを感じたりします。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
ぼく自身は、元気なんですけどね。黄金週間は休みますしね。
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