神田 |
これがその「バイブル」です。 |
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ほぼ日 |
こ、これが‥‥。 |
神田 |
「バイブル」にはキャラクターの描きかた、
彼ら彼女らとともに使用される
エディトリアルやサインといった
パーソナリティに関する部分など
事細かに書かれています。 |
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ほぼ日 |
そんなことまで書かれてるとは‥‥。
すごく徹底してますね。
あ、ダメな例まで(笑)。 |
神田 |
そう、たとえば
彼の足を尖って描くのはNGなんです。
こんなふうに彼の足は丸くて大きいんですよ。 |
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ほぼ日 |
そうそう、パンみたいに大きいですよね。 |
神田 |
あとミッキーは裸足にはなりますが、
絶対に手袋をはずしません。
どんないかなる場合でも手袋はつけたままなんです。
初期の短編アニメーションなんかで
手袋をつけていない作品もありますが、
私の知る限り『Two-gun Mickey(1934)』で
一瞬ギャグとして脱げた以外は、
つけだしてからは絶対に脱いでいません。 |
ほぼ日 |
言われてみれば、いつも手袋つけてますね。
あと、裸足のミッキーっているんですか?
こっちもあんまり見ないかも。 |
神田 |
ちょうどこんな感じです。 |
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ほぼ日 |
うわー、こうなってるんだ!
かわいいー。 |
神田 |
この「バイブル」にはそういうことが
ギッシリ詰まってるんです。 |
ほぼ日 |
ミッキー、ミニー以外だと
どのキャラクターあたりまで
そのバイブルには収録されているんですか? |
神田 |
ミッキー、ミニー、ドナルド、
プルート、グーフィー、デイジーの6人ですね。
彼らはビッグ6(※1)と呼ばれたりもしています。 |
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※1 ビッグ6
ディズニーにおける主要なキャラクター6人。
デイジーを除いたビッグ5、
後述のチップ&デールを加えてビッグ8と呼ぶことも。
ちなみに本国では「fab 6」と呼ばれる。 |
神田 |
ビッグ6以外でも
チップ&デール、ピート、ヒューイ&デューイ
なんていうキャラクターが
日本では人気がありますので
本国のほうに彼らの「バイブル」を
書いてもらっているところなんですよ |
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※左からピート、ミッキー、グーフィー。 |
ほぼ日 |
へぇー。
そういうキャラクターの商品が
どんどん増えているってことなんですね。 |
神田 |
そうです。
あと、これまでのキャラクターの商品でも
使われる表情の種類が変わってきていますね。 |
ほぼ日 |
それはどういうことですか? |
神田 |
おもにファッションの分野の話なんですが、
2000年くらいまでは
いわゆる「ハーイ!」というような
ポーズのミッキーが多く使われていたんです。
でも、なぜか近年、
ミッキーの感情の幅を広く見せるような
驚いたり、悲しんだりしている姿のアートが
好まれる傾向にあります。 |
ほぼ日 |
たしかに、ここ最近、
いろんな表情をしたミッキーの商品を
見る機会が増えました。 |
神田 |
男性用の商品なんかでは
怒っているような悪ぶったミッキーが
使われてたりしますからね。 |
ほぼ日 |
あ、いますいます。
悪そうなミッキー!
あれを見たときは驚きました。 |
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神田 |
これまでだったら
こういう表情のミッキーの商品なんて
考えられなかったんです。
これはミッキーというキャラクターに
みなさんがどんどん触れていただいて、
そういう感情を見せたほうが
より自然である、という認識を
持っていただいたからだと思います。 |
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ほぼ日 |
では、最後に、神田さんが
好きなミッキーを教えていただけますか? |
神田 |
そうですね。
やっぱり1930年代のミッキーですかね。
形状はシンプルなんですが、
アニメーターの腕がとにかくすごくて
細部にまでこだわり抜いて
手袋のしわまで描いてあるんです。
これが1秒間に24コマ、
フルアニメーションで動くわけです。
そのなめらかさにとにかく打ちのめされました。
当時はコンピュータなんかないから、
腕利きの職人たちが1枚1枚描いていたわけです。 |
ほぼ日 |
うんうん。 |
神田 |
短編などが盛んに制作されていた時代では、
作品ごとにアニメーションディレクターがいて、
その方が「今回の作品では、
こういうスタイルのミッキーでいこう」
ということが記された
「モデルシート」なるものを作成していました。
「こういう服を着せよう、
こういうアイテムを持たせよう」など
作品の世界観が詰まっているものです。 |
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ほぼ日 |
これはすごい‥‥。 |
神田 |
これらの資料は社内にあり、
入社当時なんか英語辞書片手に
読みふけっていましたね。
この時代のモデルシートを見ていると、
つねに発見があるんです。
全部、血肉になっていく気がしてます。 |
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ほぼ日 |
今回のカバーで使った
1929年のミッキー、ミニーも
このシートがなければ
生まれなかったわけですよね。 |
神田 |
そうです。
だから過去の時代のこのシートは
本当にディズニーにとって宝物だと思います。 |
ほぼ日 |
わぁ、いいお話が聞けました。
ありがとうございました! |
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最後は「Mickey Mouse 1929」と
「Minnie Mouse 1929」といっしょに。 |
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(バイバイ! また会おうね!) |