鼠穴
ねずあな、と読む。狸穴(まみあな)のやや麻布十番寄りの静かな住宅地である。
穴のなかの鼠は「窮鼠、猫を噛む」ということばのとおり、無敵である。ぼくらがここに引っ越してきたのも、その鼠の「最弱ゆえの強さ」にあやかろうと思ったからだ。

また、落語(というより人情ばなし)に、「鼠穴(ねずみあな)」という古典の名作がある。これは、「努力と辛抱が大切だ」というテーマなのか、「油断をするとなにもかもパーになるぞよ」という警句じみた話なのか、いまだにぼくにもよくわからないストーリーなのだが、どっちにしても人生訓として大切なことなんだろうと、ありがたく聴いている。

ついでに自慢だが、事務所の3階の和室には、故・井上有一さんの「鼠穴」という書が、掛け軸として飾ってある。昔、妙に気に入ってしまって、手に入れたものだ。こういうことになると、わかっていたのかもしれない。

1998-06-06-SAT

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