CAKE マリーな部屋
「パンがないのだったら、ケーキを食べればいいのに」と、
マリ−・アントワネットは言ったのだそうだ。
どうせ、そういう話は、よくできたウソなのだろうが、
ケーキがパンのかわりになると思っているマリ−の気持ちが、
もひとつよくわからない。
ぼくは、ケーキを食べて腹をふくらませることなんて、したくない。
マリ−はどうかしている。

しかし、

とんでもなくお菓子好きな人間というのは、ほんとうに
いる。ぼくは、そういう人を、ひとり知っている。

しかも、マリ−という名である。日本人だ。
彼女は、言った。「わたしは、パンも食べるし、ケーキも食べる」
なんのこっちゃ?

そのマリ−は、お菓子のことを語るときと、お菓子を食べるときだけ
ほんとうに真剣な表情をみせる。怖い。
悪いひとじゃないのだろうが、怖いのはほんとうだ。

そんなマリ−が、
「いま、ぜったいに食べるべきお菓子はこれだ!」と
ほんとうに真剣に語るのが、ここ。
「マリ−の部屋」なのだ。
(そのうち、ゲストも来るらしい)

不本意だ。
イトイさんの前フリが、じゃない。
何だかねぇ、"イトイさんの言うことなら、ひとつきいてみよう体質”になってしまっているので、どんなふうに言われても、何となくいいわけで…。
まあ、そんなにお菓子に熱く------もないけどね、ほんとは。
あと、イトイさんもほんとは持ってくお菓子よろこんでたべてるけどね。

で、何が不本意かというと、
『桃』で、始めたかったのです、この記念すべき第1回を。なぜなら桃は、(すぐに風邪と連結させられる"桃缶"はおいといて)、この初夏から盛夏にかけての短い時期にしか、ない。非常に短命な、異常においしいたべものなので、その季節私は毎日桃をたべ続けてしまいます。お菓子に加工するにはやや難しく、とてももったいない食感と、値段------。そんな、稀少度、旬性、人気度、存在感などからいっても、やはり、初回は桃でいきたかった。

でも、
まだなんです。
何軒か、「ここは!」と思う店に問い合せたら、早くて6月下旬、ふつうで7月とのこと。
「6月中旬だったら?」なんて珍しく粘って取材してみたが、むこうも頑固でゆずらなかった。

クイニー・アマン

そんなわけで、今回は"クイニー・アマン"です。
ありがたいことに、これは全く季節感がない。ケド、別の季節性、ともいえるかもしれない。いわゆる流行りモノです。以前はデザート界に吹きあれてた「流行りモノばやり」が、最近パン業界にもひろがってきたようで、カヌレあたりから、ポンデケージョだ、フォカッチャだと続いてる。多分そのアラテです。流行りモノについてオンタイムにキャッチアップ------なんてしてたくないヨ、と思ってしまうので詳しいことは知りません。「フランスの古くからある焼き菓子」だとかパン屋の店先の旗に書いてありました。

ただ、案外おいしいです、コレ。
イトイ新聞編集部(といえるんだろうか…)でも好評。でした。
で、独断でいえば、「ドンク」のが抜群においしい。サンジェルマン、ポンパドール、アンデルセンetc. そういえばセブンイレブンはかなり初期にパン棚に並べていました。エライかも…。よくわからないけど。主要パン屋のほとんどが置き始めてるけど、いまひとつ、その魅力が伝わってきません。「ドンク」のは、"へえ、クイニー・アマンてこんなものなんだ…"という小さな「へえ」が伝わってくるかんじ。不覚にも次の日また私は買いに行ってしまったフシギな魅力のある菓子パンです。
 もっと言ってしまうと。他のところのは、乗りおくれないように作ってはみた、又は作ってはみたけどどうも達してない、雰囲気なのです。

要注意、なのは、この、「クイニー・アマン」という種類のお菓子そのものが、早々に消える恐れあり、なのです。何せ流行りモノ。おいしいかどうかじゃなく、流行りモノとして登場したサダメとして、話題になればなるほど早くいなくなるやもしれません。(でも「ドンク」はまだカヌレも並べて置いてるから大丈夫かも。)  ------ので、初回に、出しときました。

じゃあ、またね。

わたなべまり。


ドンク青山店
東京都港区北青山3-6-23
03-3400-9151
(営)9:00〜19:00
第2日曜日休み

1998-06-06-SAT

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