SAISIN イッセー尾形のまわりの、
        ボツリボツリ話。


イッセー尾形さんは、劇団の役者であるということを、
あなたは忘れてはいませんか?

えっ、知らなかった??
彼は「森田オフィス」という劇団の、たったひとりの俳優なんですよ。
劇団に、他の役者がいないから、ピン芸のコメディアンに思われてるわけ。
脚本があって、演出家の森田さんがいて、役者のイッセーさんがいる。

「森田オフィス」のいろんなことを、いろんな方法で、
このページに載せていくつもりです。

98年春の新作のボツ原稿です。


(高校生が取り囲まれているらしい)
あ。
別に逃げませんよ。勘違いしないでください。
あの、そういうことはしませんから。
時間ですか? あ、今日はちょっと早めに学校に行く用事があったもんですから。
文化祭の準備です。
ウソ言ってませんよ。
お金ですか。今日は千円で勘弁してください。
ふざけてないですよ。そうそう毎日五千円は無理です。
毎日じゃないですけど。
週にいっぺんですけど。
はい?
今ですか? 俺は別に助けを求めようとはしてません。ただちょっと周りを見ただ けです。そんな、誰も助けちゃくれませんから。期待なんかしてないです。 千円で勘弁してください。
CD買っちゃって金残ってないんです。
なぜ買ったって・・・やっぱ、買っちゃいます。
そりゃみなさんには関係のないことでしょうけど、そういう事情で金、ないです。
ということを説明したというか。
(別の男に話しかけられる)
お。
友達です。
いや別に、カツアゲされてんの。
(殴られる)
痛ってえ。はい。カツアゲじゃないですね。
なんというか、・・・すぐには思いつかないんですけど。
先に行ってて。すぐに追いつくと思うから。
こいつに借りるのは、あ、それは駄目です。
彼は貧乏ですから。
母子家庭で生活保護ですから。チョー最低レベルでやっとこ高校行ってますから。
こいつ食パン一片で一日暮らす奴ですから。だから彼からお金取ったら後味悪いと 思いますよ。だから俺がちゃんと払いますよ。ただ今日は千円で勘弁してください 。
(不良グループは去る)
あいつらも俺を相手にしているようじゃ駄目だよな。
ちょっと一本吸ってから行こうぜ。
(煙草を一服)
昨日さ、フィリピンパブのお姉ちゃんにさ、ヘイボーイって言われちゃったよ。や っぱ駄目、ボーイって言われちゃうとさ。ヘナヘナヘナってなっちゃうよなあ。あ 、俺ってボーイじゃん。な。英語の教科書に出てくるボーイと全然違うんだよ。俺 のことだよ。俺のこと。あ、ボーイじゃん!
パブ? 行くわけないじゃん。
イトーヨーカドーの前でさ、いっぱい買い物持って信号待ってたんだよ。で、俺が 呼ばれたの。ヘイボーイ車まで運んでくれないって。これはもう立派な日本語。背 え低い低い。こんぐらい。
で、運んだよ。ネギが飛び出ててさ、ネギっておいしいですよねって俺言ったの。 マジマジ。
そしたら、ネギおいしいよって言ったの。
マジマジ。
あと? あとは車に乗ってサンキュー。
ボーイだよボーイ。俺ちょっとイカレちゃったよ。


ボツの理由:46歳の尾形が、学生服を着るのは無理だと分かったから。(男 森田)

1998-06-06-SAT

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