永田 |
第36回を観おわりました! |
西本 |
お疲れさまでした。 |
糸井 |
お疲れさまでした。 |
永田 |
今日はどこから行きますか? |
糸井 |
先に、例のやつを片づけたほうが
いいんじゃないですかね? |
永田 |
お、恒例のやつですね。 |
西本 |
‥‥‥‥。 |
永田 |
西本さん? |
西本 |
‥‥‥‥。 |
糸井 |
あ、会ってないんだな。 |
西本 |
‥‥いちおうですね、
おさえといっては
たいへん失礼な発言となりますが
会うことには会いました。 |
永田 |
どなたに? |
西本 |
『トリビア』の収録で、武田観柳斎に‥‥。 |
糸井 |
けど、まあ、それは、
会うに決まってる話だからね。 |
西本 |
ええ、ええ、わかってます。 |
永田 |
読者の方も、
「そうじゃないだろう、西本!」と。 |
西本 |
ええ、ええ、わかってます。 |
糸井 |
まあ、毎週会うわけがないんだけどね。 |
永田 |
えてして、こういう記録は
意識すると途絶えるものですよ。
「9連続奪三振」しかり、
「7試合連続ホームラン」しかり。
途中まではポンポンポンっと行くんだけど、
みんなが「おおっ?」となったとたんに──。 |
糸井 |
途絶えちゃうんだよね。 |
西本 |
申しわけありません! |
永田 |
いやいや謝ることではありません。 |
糸井 |
むしろ、いままでよくやった。 |
西本 |
ありがとうございます! くぅーーーーっ! |
糸井 |
泣きマネするな。 |
永田 |
泣けないくせに。 |
西本 |
それはさておき『トリビア』の話の続きですが、
今回、武田観柳斎こと八嶋さんが、
我々の記事に反応してくださいましたよ。
「読んでますよ、イトイ新聞!」と。 |
永田 |
「イトイ新聞」(笑)。 |
西本 |
どうやら、以前メールをくださった、
桂吉弥さんがこの連載を
毎回プリントアウトして
楽屋に置いてくださってるらしいんです。 |
糸井 |
ありがたいですね。 |
西本 |
桂吉弥さんは今週、
ドラマのなかでも情報屋として
大活躍してらっしゃいましたけど。 |
糸井 |
つまり山崎は実生活でも情報屋であった(笑)。 |
西本 |
「近藤先生、こんなものが
インターネットにありました」と。 |
永田 |
あの人の、ドラマの中での
信頼感というか安定感というか
「揺るぎない感じ」というのはすごいですね。
情報という分野で、山崎がしゃべることは
100パーセント真実だという感じですよね。 |
糸井 |
そうですね。
スペシャリストですよね。 |
永田 |
揺らぎまくる役どころが多いなかで、
ひとりだけ全能感すらありますね。
プチヨーダな感じですね。 |
西本 |
しかし、火事の見張りにいくときに
手に扇子を持っていたのは
ちょっといかがかと。 |
糸井 |
火に風をおくる‥‥。 |
永田 |
いやいや、また変装してたんですよ。
扇子はいろんなものになりますからね。 |
西本 |
もとが噺家さんなだけに。 |
永田 |
山崎が失敗するわけがないんです。
だいたい、帰ってきたとき、
すすひとつついてなかったじゃないですか。 |
西本 |
なるほど、そういう考えかたもありますか。 |
糸井 |
山崎の活躍も興味深かったですが、
今週、もっとも頭角を現していたのは
伊東じゃないですか。 |
ふたり |
甲子太郎! |
糸井 |
こう、観てる雰囲気から感じたんですけど、
みなさん、だいぶ、
伊東が好きになってきたみたいですね? |
永田 |
ええ、もう、完全に一周しました。 |
西本 |
もともとぼくは「ヤなもん好き」ですから。 |
糸井 |
今日は3人とも「ヤなもん好き」状態でしたね。 |
永田 |
しゃべると思わず注目しちゃいますね。
見かたを変えるとおもしろいんですよ。
まず、あの、
たいしたことじゃないことを、ゆっくり言う。 |
糸井 |
あはははははははは、
あれはいいですねえ。 |
永田 |
しかも、さっき言ったことと
同じようなことを、ゆっくり言う。 |
西本 |
あの〜、伊東が言ってた、
「私の記憶が間違いでなければ」
ってなんでしたっけ? |
糸井 |
『料理の鉄人』。 |
西本 |
ああ、そうか! 鹿賀丈史か!
「私の記憶が間違いでなければ」が
すっごい気になったんですよ。 |
永田 |
ぼくが気になったのは、あれです、
「ゆめゆめ、忘れることなかれ‥‥」 |
糸井 |
「ゆめゆめ」は社内でも広めたいところですね。
なにかの確認をするようなときに。 |
西本 |
「ページを更新したあとはリンクのチェックを
ゆめゆめ、忘れることなかれ‥‥」 |
永田 |
「ゴミ当番はペットボトルの分別を
ゆめゆめ、忘れることなかれ‥‥」 |
西本 |
「糸井先生、落語イベントでの段取りを、
ゆめゆめ、忘れることなかれ‥‥」 |
永田 |
今回もひどかったねえ!
とくに、2回目の、
「独楽回し」を手伝うときの糸井さん。 |
西本 |
はい、もうたいへんでした。 |
糸井 |
‥‥またそういう話か。 |
西本 |
観てない読者の方のために説明すると、
こないだの「春風亭昇太ひとり会」で、
一席目と二席目のあいだに
「独楽回し」の芸があって、
最後のところで糸井さんが出て行って
綱渡りの芸を手伝うんですけど、
ほんとうに、その都度その都度、
段取りを忘れてましたからね。 |
永田 |
とくに2回目はひどかったですね。
まるで、そういう芸みたいでしたよ。
「段取りを忘れる」という芸。 |
西本 |
いえてます。 |
糸井 |
‥‥‥‥。 |
永田 |
段取りを忘れて、
ぼーっとしてるわけじゃないんですよね。
「つぎはこっちだな」っていう感じで
糸井さんはいちいち動くんですけど、
それが見事に間違ってて、紋之助さんが
「糸井さん、こっちこっち!」って。 |
糸井 |
‥‥あれ、もしも、目上とか目下とか
年齢とかの問題がなければ
ものすごく怒られてますよね、ぼく。 |
西本 |
まあ、でも、ある意味、予定どおりですけどね。
糸井さんも、リハーサルのときから
本番ではうまくできませんよ
って宣言してたし。 |
永田 |
あのリハーサルは観てておかしかったなあ。
ひととおり、段取りの説明を聞いたあと、
「それがぼくできると思いますか?」って。 |
西本 |
ええ、むしろ、すがすがしかったです。 |
永田 |
で、にしもっちゃんがマイクで、
『すいませ〜ん、その都度、
言ってもらえますかァ!』って。 |
西本 |
「ダメな子じゃないんです」! |
ふたり |
「ダメな子じゃないんです」! |
西本 |
糸井さんと伊東甲子太郎を
会わせてみると
相性がいいような気がしますね。 |
糸井 |
どういう意味ですか、それは。
っていうか、また、
ぜんぜん関係ない話をしてるじゃないですか。
まずは伊東が気になるってことですよ。
ほかの話に行ってくださいよ。 |
永田 |
細かいところからいうと
谷三十郎はいかがですか。 |
糸井 |
「最近、ないがしろではないか?」 |
西本 |
あのセリフ、よかったですねえ(笑)。 |
糸井 |
事情一切言わずにね(笑)。 |
永田 |
ないがしろにされている人が
もっとも言えないセリフですよね。 |
糸井 |
ああいう時、土方はちゃんと
敬語でつきあうんですね。 |
永田 |
ちょっと心ない感じで。
あと、今回は、柔術の人と勘定方の人が
すごくよかったですね。 |
西本 |
オダギリもよかったですよ。 |
永田 |
今回は、ふつうの寡黙な
役どころに戻ってましたね。 |
西本 |
2回続けてコントに参加しましたからね。
今回も続くとさすがに役がブレてきますから。 |
糸井 |
セントルイスの星ルイスさんも出てましたね。 |
永田 |
あ、そうそう、オープニングで
名前は見かけたんですけど、
どこに出てたんですか?
ちょっと気づかなかった。 |
糸井 |
あれですよ、
八木家から来たという人。 |
西本 |
ああ! あの人がそうですか。 |
糸井 |
今回は座ってるだけでしたね。
あと、養子とか、よかったじゃないですか。 |
永田 |
周平くんですね。 |
西本 |
彼については読者の方からも
さまざまな情報をいただきました。
演技派です。実力者です。 |
永田 |
聞きかじった話ですが、
近藤周平については史実として残っている
記録があまり多くないということらしいので、
三谷さんが彼を今後どのように
描いていくのか気になるところです。 |
西本 |
そして周平といえば、
今回、よかったのが兵学の授業ですよ。 |
糸井 |
よかったねー、メガネノオカッパ(笑)。 |
永田 |
もう、あれ、『寝床』みたいでしたね。
「せっかく言い話を聞かせてやるというのに、
誰も来ないじゃないか!」って。 |
糸井 |
なんせ、その前が
外国語ペラペラの伊東の授業だからね。 |
西本 |
あの対比はコントですよね。 |
永田 |
そうそう(笑)。
だから、今回、大きな感想として思ったのは、
ぼくらがこの企画を始めるときに、
いろんな人から言われたじゃないですか。
「これからは殺戮の新選組ですよ」とか、
「暗くなる一方ですよ」とか、
「悲しいことばかりを観るなんて
かわいそうに」とか。
けど、ぜんぜんそうはなってないというか、
「今後は真っ暗だ」って
決めてる場合じゃないというか。 |
糸井 |
あああ、なるほどね。 |
永田 |
もちろん、暗い展開はあるんだけど、
げらげら笑うところもあるし、
日常のたのしさなんかもあるし、
結果的に「今回は愉快だったな」って
思う回もたくさんあるわけで。
だから、歴史どおりに、
新選組が終わっていくさまを流すだけだったら、
ドラマを観る意味なんてないですからね。 |
糸井 |
いや、それはそうですね。
すごくそう思いますね。 |
西本 |
ぼくも便乗して大きな感想を言わせてもらうと、
今回は、わりと小粒な事件を
ところどころに挟んではいるものの、
全体の動きとしてはうねりが
デカくなっているんだなと思いました。
いままでの事件というのは
幕末という時代の中では大きな事件だったけど、
今後はいよいよ、
歴史年表で太字で表示されるような事件が
近づきつつあるのを感じます。 |
糸井 |
うねってきたねえ。
外国の船とかが頭から出てきたし。
攘夷だ、開国だ、っていう動きも
慌ただしくなってきた。
もう、主義が変わることが、
へっちゃらになってますからね。
たいへんな時代ですよ。 |
永田 |
そのなかでぼくは捨助の立ち位置が
いちばんリアルなんじゃないかと思いましたね。
「あいつ、尊王でも攘夷でも
ないじゃないかよ!」って(笑)。 |
糸井 |
あのセリフはよかったねえ! |
永田 |
捨助にとっては、そんなことよりもやっぱり、
「なんかやらせてくれよ、仕事くれよ!」
っていうことなんですよね。 |
西本 |
例の「捨助の謎」ですけど、
今回はもう、言ってもいいでしょうね。 |
糸井 |
そうですね。読者からのメールでも、
ぼちぼち正解が届いてますし。
まあ、正解かどうかはわからないですけどね。
ぼくらがそうじゃないかと
思っているだけですから。 |
西本 |
深読みしすぎてるメールも
けっこうありましたね(笑)。 |
永田 |
あった、あった(笑)。 |
糸井 |
ぼくらみたいなシロートが読むと、
なにがなんだかわかんないような仮説ね(笑)。 |
永田 |
歴史上にこういう人がいるんだけど、
それが捨助じゃないかとか、
ゆくゆくあいつを殺すのが捨助じゃないかとか。 |
西本 |
そこまでねじらないだろうというような。
まあ、ひょっとしたら
合っているのかもしれないけど。 |
永田 |
もっと単純なことをぼくらは話してました。
もちろん、読者に教えられてわかったんですが。 |
西本 |
それでは、局長、お願いします。 |
糸井 |
ま、捨助が鞍馬天狗じゃないか
ということですよね。
きっと、わかってる方も
すごく多いと思うんですけど。 |
西本 |
「天狗」「天狗」と呼ばれていたり、
ちょっとした有名人になっていたり。 |
永田 |
いちいち頭巾で顔を隠していたり。 |
糸井 |
桂小五郎とつるんでいたりね。
桂小五郎と鞍馬天狗は
セットで有名なんですよ。
‥‥あれ? みなさん知ってました? |
西本 |
知りません。 |
永田 |
じつは鞍馬天狗については
ほとんどなにも知りません。 |
糸井 |
ああ、そうなんですか。
『鞍馬天狗』という映画には
「桂さん!」というセリフがすごく多いんです。
ぼくは新選組というと一番最初に知ったのは
桂小五郎っていうくらい
桂小五郎を先に知っているんです。
なぜかというと
映画の『鞍馬天狗』に出てたから。
嵐寛寿郎がやって中村錦之助がやってみたいな
歴史があってね。松島トモ子は杉作ですから。 |
永田 |
杉作? 誰ですか? |
西本 |
J太郎ですか? |
糸井 |
ああ、ほんとに知らないんですね。
鞍馬天狗を明智小五郎だとすると
小林少年が杉作ですよ。 |
ふたり |
へーーー。 |
糸井 |
杉作は、そのうち出すんじゃないかな。
ま、そのうち捨助は馬に乗ってきますよ。
イカみたいな覆面をして。 |
永田 |
あ、だから、ぼくは鞍馬天狗というと、
そのイカみたいな記号しかしらないんですよ。
最初、『冗談新選組』を読んだときに
しょっちゅう鞍馬天狗が出てくるので
ぼくはてっきりみなもと先生の
完全なギャグだと思っていたんですけど、
じつはそういう背景があるってあとで知って。
桂小五郎が鞍馬天狗だったという説も
あるらしいぞ、みたいな。 |
糸井 |
要するに、桂小五郎といっしょに
倒幕の運動を助ける人なんですよ。 |
永田 |
なるほどなるほど。 |
西本 |
そういや、今回の捨助は、屋根の上で
鞍馬天狗を彷彿とさせるような
「あばよ!」というポーズもしてましたね。 |
糸井 |
‥‥それはネズミ小僧じゃないですか? |
西本 |
‥‥失礼しました。 |
永田 |
いま、本気で間違えたな。 |
西本 |
まあ、ともかく、これを、
いちばん最初に気づいてメールしてくれた人は
なかなかすごいと思いますよ。 |
永田 |
2通、同時にきてましたよね。
ありがとうございます。 |
糸井 |
で、いよいよメインは、
新選組と見廻組の対決ですが。
どうですか、西本さん。 |
西本 |
いちおうは見廻組が
近藤を認めたという結果でしたが、
イマイチ不安というか、
「近藤先生のお人柄によって」
みたいなセリフに近藤自身が
まだ追いつけてない感じがするのは
ぼくだけですかね。 |
永田 |
でも、今回はだいぶ挽回してましたよ。
近藤というのは
とっさの判断には長けてるんだな、と。 |
西本 |
まあ、かたちとしてはそうなんですけど、
それが実感できない感じなんですよ。
たとえば、見廻組を説き伏せて、
「ご指示を!」となって、地図をずーっと、
見てるシーンがあったじゃないですか。
あそこで、ぼくはすごく
不安になっちゃったんですよ。
「‥‥うわっ! 近藤が、
なにも考えてなかったらどうしよ?!」って。 |
永田 |
あああ、ちょっとそれ、オレもあった。
なんか、変な身内感覚ね。 |
西本 |
そうそうそうそう。
「あの子、答えられるかしら?」
という授業参観のような気持ちです。
みんなが期待してるんだけど、
実際はなんにも考えてなくて、
メガネノオカッパあたりに、
「‥‥へ、兵法的には、どうか?」なんて
訊いたらどうしよっ! と思ってました。 |
永田 |
わかるわ、それ。考えてる時間も長かったし。
でも、その前の「火事だっ!」というところで
迅速に指示を飛ばしてましたよね。 |
糸井 |
あそこは安定していて、よかったよね。
でも、思えばあの大騒ぎの原因も──。 |
永田 |
捨助(笑)。 |
糸井 |
日本の歴史は捨助がつくったってことに。 |
西本 |
いま、そうなりかけてます。 |
糸井 |
愉快ですね。 |
西本 |
愉快です。 |
永田 |
火事の及ぼす効果ついてなのですが、
ニッチもサッチもいかなかった薩長が
劇的に進展した今回、龍馬と西郷が、
火の手が迫ってくるという場所に
ふたりで座っていて、
そこで日本の将来について
話しているというのは
とても見事だったと思うのですが。
つまり、日本の現状を
迫り来る火事という暗喩によって‥‥。 |
糸井 |
‥‥‥‥ん? |
西本 |
‥‥はい、はい。 |
永田 |
いま、聞いてなかったでしょ! |
ふたり |
はい。 |
永田 |
もーーー。 |
糸井 |
ごめんごめん、かいつまんで説明して。 |
永田 |
もういいです。
火事が効果的だったね、って話です。 |
糸井 |
はいはい、火事ね。
「ビジネスぜよ」のシーンね。
あそこは、とうとう西郷が
本性を現したという感じでよかったよね。
これまで、「西郷はなかなかくわせもんだ」
みたいなことが何度もあったけど、
「ビジネス」ということばを
理解しているというところで
ついに「考えている人、西郷」として
はっきりしたわけだよね。 |
永田 |
と同時に、ようやく薩長の話が
現実的になっていくと。 |
西本 |
あのシーンはこれまでにない、
スリリングな感じがありましたね。
IBMのCMを観ているような
気分になりました。 |
永田 |
あっ、それはきっと音楽ですよ。
あのシーンって、これまでの回では
あまり聞いたことのないような、
盛り上がる感じのBGM、
「わくわくBGM」みたいなのが
鳴ってたんですよ。 |
西本 |
ああ、そのせいですか。 |
永田 |
「わくわくBGM」というのは、
『ラピュタ』でいうところの、
ドーラたちが小型飛行機に乗って、
夜明けに城に向かって、ブィーンと、
低く飛んでいくときに
かかるような音楽のことです。 |
糸井 |
たしか西本さんは
『ラピュタ』を観てないんですよ。
うちの事務所では珍しいタイプです。 |
西本 |
DVDは買ったんです!
家に帰って観ます!
まだ観てないだけです! |
永田 |
じゃあ、あれです、
『E.T.』でいうところの、
乗り捨てられた救急車に
エリオットのお母さんが近づくところから
鳴り始めて、でも救急車は空っぽで、
お母さんが振り向いて「ヴァン!」ってなって
自転車のチェイスが始まるときの音楽です。 |
西本 |
なんだかよくわかりませんが、
『E.T.』なら観たことがあります! |
糸井 |
『ラピュタ』はいいよ。観ておきなさい。 |
西本 |
『もののけ姫』は観たんですけどね。 |
永田 |
『新選組!』の話はどうなってるんですか。 |
糸井 |
なんの話してたんだっけ? |
永田 |
西郷と龍馬の話です。
まえにもちらっと出た話ですけど、
やっぱりどんどん龍馬が
主人公っぽくなっていくんですよね。 |
糸井 |
幕末の物語だからね、
ふつうに追うと龍馬が主役になりますよ。
やはり明治維新の
表舞台はこっちなんだということだから。
いよいよ、幕府側の人たちが
表舞台じゃない側にきちゃったんだね。 |
西本 |
伊東が松平容保に突っ込む場面でも
そのあたりは象徴的に描かれてましたね。
伊東が容保公に自説を説いているとき
近藤は「えっ、マジで!」という顔でしたよ。 |
糸井 |
近藤も考えてるんだよ。
考えてるんだけど、限界があるんですよ。
それを今回、さみしいくらい感じましたね。 |
永田 |
目の前に起きた火事に対しては
指示を出せるけれども
大局は読めないというか。 |
糸井 |
戦術はできるけど戦略がないんですよ。
乱暴な言いかただけど、
近藤や新選組の、時代に対する無能化が
はっきりと演出されていますよね。
一人の火消しとしては
火を消すということで機能する。
けど、殺人技術集団として成立しても、
しょうがないですよね。 |
永田 |
なるほど。 |
糸井 |
と、真面目な話をしたあとでなんですが、
近藤についてもうひとつ
気になったことがあったのを思い出しました。 |
ふたり |
どうぞどうぞ。 |
糸井 |
先週、自分たちが言っちゃった手前、
どうしても気になってしまうんですよ。
あの夫婦。あのふたり。近藤とおゆき。
どうしてもあの、「安らぐのだ」が!
あいかわらず「安らぐのだ」で! |
永田 |
いや、今回も、
揺るぎなき「安らぐのだ」でした。 |
西本 |
あれはもう、正妻扱いして
ぼくらも観たほうがいいんじゃないですか。
子供も3人くらいいる感じで。 |
糸井 |
なんでも、
読者からのメールで知ったんですけど、
あとあと、おゆきの妹が出てくるらしいですね。
それも、優香が二役でこなすとか。 |
永田 |
ああ、ぼくもつい読んじゃいました。
困るんだよなあ、先の話が書いてあるの。 |
糸井 |
それは永田くんだけですよ。 |
西本 |
ぼくと糸井さんはぜんぜん平気ですからね。 |
永田 |
たいへんわがままなお願いだと
自覚していますが、
先の話が書いてある場合は、
メールの件名に「永田読むな」と
書いていただけるとうれしいです。 |
糸井 |
ともあれ、優香二役ですよ。
どっちも安らぐので、
2倍「安らぐのだ」! |
西本 |
かたっぽはもう、
色気バリバリでいくんじゃないですか? |
糸井 |
そうなると近藤の演技が
ものすごく難しくなってくるぞ。 |
西本 |
ああ、そうか! |
糸井 |
家に帰るといきなり
袴を脱ぎ始めちゃうような人に
なっちゃうんじゃない。 |
西本 |
それはまずい。
ただの女好きですね。 |
糸井 |
いっそ、志村けんが
近藤勇をやるっていうのはどうだ。 |
永田 |
あ、晩年になって役者が変わるみたいな。 |
西本 |
じゃ、源さんがダチョウのリーダーで。 |
糸井 |
それはNHKじゃなくて、
8チャンネルがやればいいんですよね。
ふつうに『新選組!』のパロディーとして。 |
西本 |
志村さんの番組だと、
優香だけはおゆきをくずさずに演じて
周囲がぼけ倒すという構図ですね。 |
永田 |
あっ、それ、あれだ!
『ひょうきん族』で『男女7人夏物語』を
やったときのパターンだ!
さんまさんと鶴ちゃんだけが
いっしょで女役が全部、
山田邦子だったやつ! |
西本 |
ああ、それそれ(笑)! |
永田 |
あれ、最っ高おもしろかったなあ。
さんまさんが真面目なセリフ言ったあと、
すげえ大げさにアゴ動かすんだよね。 |
西本 |
「‥‥もう、遅いねや」
(アゴかくかく動かす) |
ふたり |
わはははははは! |
糸井 |
そうなると、ぼくは、
竜平ちゃんの沖田総司を
期待しますね。 |
永田 |
それはひどい(笑)! |
西本 |
血を吐くときはちょっと大仁田で。 |
糸井 |
カツラ叩きつけたりして。 |
永田 |
血を吐くかわりに、
ぽろぽろって泣いたりして。 |
3人 |
(爆笑) |
永田 |
熱い風呂に「押すなよ!」って言いながら
入っていったりね。 |
西本 |
ボブサップが演じる芹沢鴨に
「おまえが一番強いんだからいけよ」
と無理矢理対決させられるんですよ。
で、竜ちゃんが最初は「いやだよ!」と。 |
糸井 |
で、寺門演じる土方が
「オレが行くよ!」 |
西本 |
リーダー演じる源さんが、
「いや、オレが行くよ!」 |
永田 |
そんで竜ちゃんが「オレが行くよ!」で
ふたりが「どうぞ!」だ。 |
3人 |
(爆笑) |
糸井 |
それ、観たいなぁ(笑)。
上島竜平の沖田というのを
考えただけで勝ちだね。 |
永田 |
『冗談新選組』を実写化する際は
沖田は竜ちゃんですよ。
沖田ファンと藤原ファンから
そうとう苦情がきますけど。 |
西本 |
残りの役は全部リーダーで
いいんじゃないですか。
リーダーの器用さを見せるということで。 |
糸井 |
自分で振っておいてなんですけど、
こんな話を続けてていいんですか? |
西本 |
どうも今日は脱線がひどいですね。 |
永田 |
まあ、脱線はいつものことですけど、
勢いがよすぎます。 |
糸井 |
じゃあ最後に、真面目だけど、
ひじょうにややこしい話をしましょう。 |
ふたり |
どうぞどうぞ。 |
糸井 |
思えば大河ドラマというのは
ものすごいことをやってるんだなあと、
『新選組!』を観てて思ったんですよ。
というのは、たとえば
新選組を忠臣蔵に置き換えてみると
わかりやすいんですけど、
いまの時代に忠臣蔵を観るっていうのは、
じつはすごくむつかしいことだと思うんですね。
つまり、主君の仇を討つために
がんばる人たちを観て、
「そうだ! がんばれ!」って
ふつうに思い入れられるような時代って
とっくに終わっているような気がするんですよ。
そういうものを、1年かけてやるわけでしょう。
それはね、不思議な感じがしますよね。
たとえばの話、大石内蔵助は立派か?
大石内蔵助がやったことは立派ですか?
吉良上野介がやったことは
そんなに悪いことですか?
浅野内匠頭は殿様として正しいですか?
主君のかたきはとったが
全員切腹したというのはどう思いますか?
という、テストがあったとしたら
答案かけないんですよ。 |
ふたり |
ふむふむふむ。 |
糸井 |
だから、『新選組!』を観ながら、
「この人たち何も考えてないじゃないか!」
ってぼくらは思うわけですよね。
でもね、昔は、っていうか、少なくとも、
ぼくが子どものころは違ったんです。
もっと純粋に、
「忠義を貫くのはいいよね」って
ふつうに思えたんです。
ところが、そういうふうには、
いまは思えないわけですよね。
なのに、大河ドラマが
どうして成り立っていくんだろう、と。 |
永田 |
もう、地続きの話ではないですよね。
ある意味、そういう話があったという、
伝統芸能に近い感じのもので、
片方の側に感情移入して観ていく、
というものになってるんじゃないでしょうか。 |
糸井 |
というよりも、その伝統芸能の意味が
とっくに途切れてるんじゃないかと
思えてくるんですよ。
昔だって、忠心、忠義というものに、
そんなにリアリティーがあったわけじゃない。
けど、なにかしら、
「昔の人たちを遠巻きに尊敬する」
みたいな空気があったと思うんだよ。
ところがいまは、そこがずれているから
お客さんが見る目がくるくる変わっていく。
そこがね、つくるほうはたいへんだと思います。
また、ひとつのたとえ話ですけど、
ぼくが子どものころには
ふつうに、流行歌で新選組の歌があったんです。
「鴨の河原に千鳥がさわぐ
またも血の雨 涙雨」
これを小学生が歌ってたわけです。
ふつうに、新選組はかっこいいに決まってる、
という感じで歌ってたわけですよ。 |
永田 |
それは、いまに置き換えると、たとえば
平井堅のニューシングルが
新選組の歌である、みたいなもので。 |
糸井 |
そう、そういうこと。 |
西本 |
あり得ないですよね。 |
糸井 |
というなかでね、
新選組のドラマを1年かけてやっている。
そこがね、ふっと気づくと、
不思議なことだなあと思う。 |
永田 |
これはぼく個人のスタンスですけど、
ぼくは別に歴史ファンでも
新選組ファンでもないので、
申しわけないですけど、
テーマが新選組であるというのは
どうでもいいことなんです。極端な話。
だから、いま、たのしんで観てるのは、
新選組の器をかりて三谷さんのドラマを
たのしんでいるというだけで。
乱暴にいえば、この45分が楽しければ、
幕府がそのまま続いちゃってもかまわない。
そういう、視聴者です。 |
西本 |
まあ、ぼくもそうですね。
だから、最終回になって、
「ニセンニジュウゴネン‥‥エドバクフ」
ってなってもいいわけです。 |
永田 |
まあ、「その展開はどうよ!」
という話にはなるけどね。 |
西本 |
たとえばの話ですよ。 |
糸井 |
でも昔の大河ドラマは
そうじゃなかったわけです。
観てる側の意識がね。 |
永田 |
糸井さんの年代で
そのままの価値観をずっと持ってる人は
この『新選組!』を観て
「違う!」って思うわけですか。 |
糸井 |
みんながどうだか知りませんけど、
少なくとも、この時代に
大河ドラマが成り立っているというか、
成り立たせている作家たちがいるというのが
すげえなと思ったんですよ。
だってさ、
新選組って設定は、えらいむつかしいぜ?
ぼくらがこうして10回くらい観ただけでも、
出てくる人たちの行動や考えに
「そうじゃないだろう!」っていう
違和感がたくさんあるわけでしょう? |
永田 |
すっきりと膝を打てるようなことといえば
「このあとどうなるかは誰にもわからん」
と言ってる佐久間象山とか、
「尊王とか攘夷とかではなく
人と人とのつながりが大切なのではないか」
と言ってる山南さんとかに、
「そうだよなあ」と思えるようなものが
ぎりぎりあるくらいで。 |
西本 |
それも、おとぎ話というか、
「むかーしむかーし」みたいな話にせずに、
三谷さんはつくってるんですよね。 |
糸井 |
おとぎ話にしちゃったら簡単ですよ。
しないからこそ、
違和感が出てくるわけだからね。
だからさ、ぼくらが先週から言ってる
「安らぐのだ」問題なんて、
その最たるものでさ。 |
永田 |
あ! そうだ。まさに。 |
糸井 |
愛人の扱いかたについて
現代の人が考えることと
当時の考えは相いれないってことが
まず、根っこにあるわけです。 |
西本 |
それをおとぎ話にせずにやってるから、
ぼくらみたいな視聴者が
愛人の家で「正座」はないだろう!
みたいな違和感を。 |
糸井 |
感じてしまうわけだよね。
そのあたりをどう表現するのかは悩むと。
きっと、それと同じことが
ぜーんぶのところでいえちゃうんですよ。 |
永田 |
そりゃたいへんだわ。
しかもそれ、演者の人っていうか、
関わってる全員が抱える問題というか。 |
糸井 |
うん。そのあたりのむつかしさを
体感しながら書いているというかね。
そんななかで「寺田屋大騒動」みたいな
話をつくりあげてると思うとね、
やっぱり才能ってあるんだなあって思うよね。
理屈で書いたっておもしろくないからね。 |