永田 |
いま、第34回を観終わりました! |
糸井 |
(拍手!) |
西本 |
(拍手!) |
永田 |
(拍手!)
完璧! |
西本 |
すばらしい! |
糸井 |
まいったねー! |
永田 |
いや〜、今日は話しやすいですね! |
西本 |
ここのところ、重かったですからね。 |
糸井 |
ある意味、話しにくいともいえますよ。 |
永田 |
そうはいっても、前回、前々回とくらべると、
明るく話せるじゃないですか。
とにかくよかったですよ、今回は。 |
糸井 |
たしかによかった!
これ、まず日曜にひとりで観たんですけどね。 |
西本 |
ゲラゲラですか? |
糸井 |
もう、ゲラゲラですよ。
今日もまたゲラゲラでしたけれど。 |
永田 |
ぼくらは今日初めて観たんですが、
いや、たのしませていただきました。 |
西本 |
いいもん観せてもらいましたわ。 |
糸井 |
どこから話しましょうね。
話すところありすぎますよね。 |
永田 |
無駄と隙のない回でしたねー。
ある意味、無駄だらけかもしれないけど。 |
西本 |
じゃあ、恒例となっているやつを
先に話してもいいですかね? |
永田 |
‥‥恒例? なんだっけ? |
糸井 |
‥‥また、誰かに会ったんですか。 |
西本 |
ええ。 |
永田 |
うそ! |
西本 |
先日、会社に来て、バイクを止めて、
タバコを買おうとしてたら、
魚籃坂を水色の服を着た
遠くからでも目鼻立ちがわかるような美人が
急ぎ足で歩いてきたんですよ。
「おっ」と思って、ぼくの前を
通りすぎるときによく見てみたら‥‥。 |
糸井 |
誰よ? |
永田 |
誰よ? |
西本 |
‥‥「お梅」でした。 |
永田 |
えっ、鈴木京香さん? |
糸井 |
ちょっとすごいですね。 |
西本 |
我ながら驚きます。 |
永田 |
そりゃもう、才能ですよ。 |
西本 |
なにしろ1週間に必ず1度、なんらかの形で
『新選組!』の出演者に出会ってますからね。
今週に至ってはもう、
会うことが決定してますから。 |
永田 |
えっ、そうなの? |
西本 |
ええ、木曜日収録するTBSラジオ
ザ・チャノミバのゲストが
なんと、山南こと堺雅人さん! |
永田 |
あっ、決まったんだ。
へえええ、そうなんだ。 |
糸井 |
たのしみなんですよ。
スタジオパークでも
すごくいいこと言ってましたからね。 |
永田 |
‥‥考えてみると、ぼく、
山南さんの現代の姿を知りません。 |
西本 |
あ、そうなんですか。 |
永田 |
ええ。『新選組!』と『壬生義士伝』は
観たんですが、どっちもチョンマゲです。
チョンマゲで腕組みしている姿しか
思い浮かびません。 |
糸井 |
ふだんはちょっとロン毛気味ですよ。 |
永田 |
ロン毛! 山南さんがロン毛!
‥‥思いもよらないなあ。
あれですか? ふだんは
Tシャツとか着ちゃうんですか? |
糸井 |
ふだんはTシャツとか
着ちゃうんじゃないですかね。 |
永田 |
がーーーん。 |
西本 |
ショック受けてないで
進行してくださいよ。 |
永田 |
失礼しました。ええと、今回は
まさに『寺田屋大騒動』という感じで。 |
糸井 |
大騒動でしたね。 |
西本 |
おもしろ騒動でしたよ。 |
永田 |
完璧でしたね。
拍手して終わりにしたいくらい。 |
糸井 |
それじゃ読者の方が承知しないでしょう。 |
西本 |
最近、とみに読者の方からの
メールも増えてきてますからね。
更新後にどっとメールが来るし、
放送のあとにもメールが来るし。 |
永田 |
あ、それでちょっと
ぼくは思うところがあるんですよ。
本題の前にひとつ、いいですか。 |
ふたり |
どうぞどうぞ。 |
永田 |
みんな、このコンテンツを
真面目なコンテンツだと思いすぎ! |
糸井 |
あはははははははは。
それはそうかもしれない。 |
西本 |
たしかに(笑)。
そんなコーナーじゃないんですよ。 |
永田 |
この前にやっていた
『離婚弁護士』とかを読み直してほしい。
そんなね、照明がどうとかね、
伏線がどうとかね、
論じるような場所じゃないじゃないですか。 |
糸井 |
うははははははは。 |
西本 |
それ、たしかにそう思います。
届くメールを読むと、ときどき、
「さすがプロだけあって観る目が違う」的な
ことが書かれてあったりするじゃないですか。 |
糸井 |
いやいやいや! |
永田 |
アマです、アマ! |
西本 |
そうじゃないから! |
永田 |
『新選組!』のトーンが変わったことを機会に
きちんとお伝えしておきましょう。
みなさん、年末年始のやつとかを
読んでみてください! |
糸井 |
あれがぼくらの原点ですよ。 |
永田 |
「オレは『ミリオネア』は観ない!」とか、
「観ないと言ってたの観たじゃねえか」とか、
そんなことしか言ってないんだから。 |
糸井 |
そうだった、そうだった(笑)。 |
西本 |
「新庄のえんぴつ転がしてすごかった」とか
「オレは箱根駅伝の脇を走る!」とか
「モー娘。はモー娘。としてとらえよう」とか
そんなことしか言ってませんからね。 |
糸井 |
元々はそういうコンテンツだったはずですよね。 |
永田 |
発端はいわば、負けコンテンツですよ。 |
西本 |
言うならば、バカコンテンツです。 |
糸井 |
バカとはなんだ、バカとは! |
西本 |
春の番組改編スペシャルは、糸井さんが
「スノボとカニがテレビをダメにしている」
と叫んでましたよ。 |
糸井 |
‥‥バカなコンテンツだなあ。 |
永田 |
ところがそれが、『新選組!』の
テンションに引きずられて
なんだか、真面目ふうなコンテンツに‥‥。 |
西本 |
ゲラゲラ笑って
「ああ、おもしろかった」っていうのが
原点だったはずですよ。 |
糸井 |
それは「三谷」がいけないんですよ。
悪いのは「三谷」だと思いますよ!
ゲラゲラ笑って終わりにしたいんだけど
できないようにできないようにつくるから。 |
西本 |
ここはあえて「三谷」と
呼び捨てでいいたいところですね。 |
糸井 |
ホントですよ。やい「三谷」! |
ふたり |
やい「三谷」! |
糸井 |
今回はすばらしかったぞ、「三谷」! |
ふたり |
すばらしかったぞ、「三谷」! |
糸井 |
どこからしゃべっていいのか
わからないぞ、「三谷」! |
永田 |
いいかげん、ちゃんとしゃべりましょうよ。
どっからでもいいからどうぞ! |
糸井 |
ええと、じゃあ、まず
あの、劇画チックなカメラワーク。 |
西本 |
ああ、たくさんありましたねー。 |
糸井 |
まず、誰しもわかるのが、
源さんがおみつを発見したときね! |
西本 |
ドン・ドン・ドーン! ってやつですね。 |
糸井 |
おっかしいよなあ。 |
永田 |
あと、地味なところでは
慌てた平助がカメラに向かって
ふらふら寄っていくところ!
まるでカンフー映画で
悪役がジャッキーにやられて
ふらふらカメラに近づいていくがごとし! |
糸井 |
ああ、ほんとは
それを言いたかったのに‥‥。 |
西本 |
なんで言わないんですか。 |
糸井 |
順番ってものがあるだろうよ。 |
永田 |
今回は先に言ったもんがちですよ。
どこを切ってもイケますからね。 |
西本 |
オダギリ! オダギリジョー! |
糸井 |
ああ、ちくしょう! |
永田 |
あそこはぼく、
糸井さんに言いたいことがありますよ。 |
糸井 |
なんだよ。 |
永田 |
先にくすくす笑いすぎ! |
西本 |
いえてるいえてる(笑)。 |
永田 |
オダギリが出た瞬間笑ってるんだもん。 |
糸井 |
ごめんごめん(笑)。
でもね、あれはね、
一回観ちゃってたらダメよ。 |
永田 |
まあ、そうでしょうねえ。 |
西本 |
わざわざ部屋の隅っこにいましたからね。
そんで、なんかをいじりながら、こう(笑)。 |
糸井 |
マンガでもあそこまでは描かないね。 |
西本 |
ないないない。
『いなかっぺ大将』だったら
指を変形チョキの形で
チクチクしている感じですよ。 |
永田 |
そんで、涙が
アメリカンクラッカー型になってますよ。
いわゆるひとつの「ドボヂデ」状態。 |
糸井 |
ずるいよなあ。あれ2回観たら、もう、
オダギリ出てきた瞬間に笑っちゃうって。 |
西本 |
そりゃそうでしょうね。現場はきっと
たのしかったんだろうなあ、今回。 |
永田 |
けど、これ、ほめことばですけど、
今回‥‥評判悪いでしょうねえ(笑)。 |
糸井 |
評判悪いだろうねえ(笑)! |
西本 |
大河ファンには絶対評判悪いですよ。
あと、さっきまで「三谷」と
呼び捨てにしてましたけど、
あえて、「さん」をつけて
お礼を言いたいこともありますよ。 |
ふたり |
なんですかなんですか。 |
西本 |
三谷さん、
「第5回『婚礼の日に』を観ておけ!」と
教えてくれて本当にありがとうございました! |
糸井 |
ああ、それはほんとうにそうですね。
わざわざメールで
知らせてくださいましたからね。
たしかにあれを観ておいてよかった。 |
永田 |
オダギリがお金を返すあたりとか、
近藤夫婦にすごく恩義を感じてるからこそ
「オレのせいだ‥‥」になるあたりとか。 |
西本 |
観てない人、ごめんなさい。
「途中から観る」といいつつ
ちょっと戻って観ちゃってる我々ですが、
まあ、もともとが、ゆるゆるの
バカコンテンツだということで
どうぞご理解いただきたい。 |
永田 |
ゆるゆるですいません。 |
糸井 |
バカコンテンツですいません。 |
西本 |
今後も適当なスタンスでお送りします。 |
糸井 |
ま、そんなことよりどんどん行きましょう。 |
永田 |
そうですね、おもろいところだらけですから。 |
西本 |
今回はテープ起こしがたいへんになりそうだ。
でも、今回はみんなおもしろかったですね。
メガネノオカッパが
ちょっと薄くみえたくらいですから。 |
永田 |
でも、メガネノオカッパにも
笑っちゃいましたよ。
いちばんよかったのは
「カゴを出しましょう」っていうセリフ。
「おまえだけ素かよ」という。 |
糸井 |
おもしろくないことが
逆に引き立つという効果ね(笑)。 |
永田 |
そうそうそうそう。
ほかの人、土方とかは、
「いつもと違う土方」ということで
おかしいんだけど、
メガネノオカッパだけはいつもと同じだから
逆におかしいんですよね。
新選組がメガネノオカッパを中心に
ぐるっと回った感じなんですよ。 |
西本 |
細かいことでいうと、
序盤の沖田の狼狽ぶりもおかしかったですよ。
「だからおまえは子どもなんだよ!」っていう
セリフの二度づかいも鮮やか。 |
永田 |
沖田はボケに回るよりも
振り回される役が似合ってるよね。
まるで『マカロニほうれん荘』の
沖田総司のようでした。 |
糸井 |
狼狽ぶりでいうと、
ぼくは中村勘太郎さんに感心しましたね。
いい芝居するねー。なんていうか、
土台がある感じがして、ほんとうによかった。 |
西本 |
軽いところだと、
「お多福」でのぐっさんの独白。 |
糸井 |
あれおっかしいよなあ。
ふつうに説明してるだけなんだけど。 |
永田 |
「いつしかオレたちは、
男と女の関係になっていた‥‥」 |
一同 |
(笑) |
西本 |
コメディーだったら
ぐっさんのテリトリーのはずなのに、
あえてあの人をマジでつかってるのが
いいですよね。 |
糸井 |
マジだからおかしいっていうと源さんですよ。 |
ふたり |
源さん! |
糸井 |
「この歳ではじめて恋をしました」って
あれがウソに聞こえないじゃないですか。
だからこそおかしいし、すごいんだよね。 |
永田 |
今回の影の主役は源さんかもしれない。 |
糸井 |
今回は、いわば、源さんが
全体の「ちょうつがい」のようなかたちで
機能してるんですよ。
ほっとくとバラバラになりそうなところを
源さんが、がっちゃんがっちゃん
つなげてるんです。 |
ふたり |
あーーー、なるほど。 |
糸井 |
打点はほかの役者が上げるんだけど、
塁に出てるのは源さんなんです。 |
永田 |
あの、わやくちゃ騒動も、
源さんがまんじゅうで
機転を利かせるあたりから
はじまりますもんね。
その「ちょっとした機転」が
どんどん大がかりになっていって、
最後のクライマックスまで行くっていう
グラデーション。
あの持っていきかたがすごい。 |
西本 |
じつは冒頭のシーンから始まってますからね。
土方が近藤に対して
「局長、よろしくお願いします」と
妙に重々しくいくところ。
あそこから「ハイ! はじまりますよ!」と。
空気を一旦ためておいてから
息を止めたままテンポアップしていく感じが
たまりませんね。 |
糸井 |
あれもう、シチュエーションコメディだもんね。 |
永田 |
メガネノオカッパを軽くいじっておいて、
状況を説明しておいて。
最後の寺田屋のシーンにむけて
くすぐりながら全体を盛り上げていく。 |
西本 |
場面場面を源さんでつなぎながら。 |
糸井 |
うん。だから源さんを
ふだん大事にしてるから成り立つんですよ。
今回の源さんは、ほんと、
野球でいうと川相の仕事ですよね。 |
西本 |
「恋をしてしまいました」は
川相がホームランを打ったという感じですね。 |
永田 |
そのホームランで決まるかと思ったら、
代打、土方の「ちょっと待った!」 |
西本 |
あそこで「現代の笑い」が入るんだけど、
場がしっかりできてるから
行けちゃうんですよねえ。 |
糸井 |
あそこの土方の表情ったらなかったね。
深雪太夫を抱きしめながら、ニヤリ。
そこへわざわざカメラが寄っていく。 |
永田 |
マンガですよ。 |
西本 |
コントですよ。 |
糸井 |
劇画ですよ。
赤塚不二夫が突然タッチを変えて
くっきり描いているようなもんで。
もう、志村けんが出てくるかと思ったね。 |
西本 |
ああ! 志村けんですね、たしかに。 |
糸井 |
あのあたりやらせたら深雪太夫はうまいね。
今日の役どころだけでいうと、
「この役ほかに誰ができるよ?」
っていう感じじゃない? |
西本 |
いえてます。
優香さんをいままで観てきて、
時代劇を演じるにあたっては
やっぱりほかの実力者とくらべて
「土台がないんだろうな」と
思う部分も多少ありつつ観ていたんですけど、
今日はきっちり実力が出てました。
それは志村けんさんのところで
コントの土台ができていたからなんでしょうね。 |
糸井 |
志村けんさんの番組で、
すれっからしのホステスの役とかするでしょ。
あれがむちゃくちゃうまいんだけど、
あのへんからしっかり学んでいるよね。 |
永田 |
優香さんで今回いいなあと思ったのは、
あの太夫役のメイクが正直、
ぼくは似合ってるとは思ってなかったんですよ。
それなのに「美人役」扱いなのが
ちょっと違和感があったんだけど、
今回は「すっぴん」で出てきたでしょう。
それで、「あ、やっぱこの人、美人なんだ」
っていう感じで、見直したというか。 |
糸井 |
いや、あの優香の扱いひとつとってみても、
あの場面でどれだけ乱暴なことをしてるか
わかりますよね。
それを成立させちゃう、作家と役者の
力量が、恐るべし、ですよね。 |
西本 |
いえてますいえてます。 |
永田 |
そしてとどめが香取さんですよ。
今回、ぼくはベストシーンを
挙げるとしたらあの場面です。
「みんなそれなりにありがとーーー!」 |
ふたり |
わはははははははは! |
永田 |
あれを言えるのは、
日本で香取さんしかいないですよ。
あの、マジとギャグの混ざった、
ぎりっぎりのテンション。
あれ、SMAPのほかのメンバーでも
ダメだと思うんです。
ふだん、「アイドルがコントをやる」っていう
どっちのお客さんも高いレベルで満足させる
仕事をやってるからこそできるんだと思う。 |
糸井 |
根底として「モテている人」じゃないと
あそこはやれないですからね。
だから、あれはすごくむつかしい。
どういうテンションでも言えないですからね。
あれを言わせようとした作家もすごいよね。
もう、役者と作家の共犯ですよね。
武者小路実篤でいえば
「仲善きことは美しきかな&茄子と胡瓜」みたいなさ
誰にも何もいわせないひと言じゃないですか。
気持ちよかったねーーー。 |
永田 |
カタルシスすらありましたよね。 |
西本 |
組み上げてきたことを
ドカンと崩す気持ちよさ。
それでいて、着地地点は
シリアスにきっちり戻るという。 |
永田 |
すごいなあと思うのは、
あれだけメチャクチャなことをやって、
格を下げてる役者さんが
ひとりもいないんですよね。
「そんなことやらせて!」って怒っている
ファンの人っていないんじゃないかなあ。 |
西本 |
いや、ドラマを観て、
なにも考えずにけらけら笑ったのって
かなり久しぶりだと思いますよ。 |
永田 |
言えてる。『池中玄太』以来だな。 |
西本 |
あんた、インターバル長すぎ。 |
糸井 |
今回は舞台を観ているような感じがあったね。
源さんがまんじゅう食っているシーンなんか
舞台でみたらたまんなかっただろうね。 |
西本 |
ああ、たしかに舞台で全部できますね。
ちょっとシーンを削って、
寺田屋という旅館の中でおこった
一日の出来事にしたら
寺田屋のセットさえあれば
いいわけですよね。 |
糸井 |
舞台でやれていることを
カメラワークで遊んで
現場で楽しくするということだよね。
あと、ぼくは2回観たから
ちょっと冷静に観られるんだけど、
構成もすごいんだよね。
思えば、冒頭に山南を出してますからね。 |
西本 |
頭でちょっとホロリとさせておいて。 |
糸井 |
なんていうか、あれがあって、
助かったという感じがするなあ。 |
永田 |
山南さんの死と今回の騒動は
セットで扱われてるような気がするんですよ。
これ、今回の大きな感想で、
糸井さんの『MOTHER』とかにも
同じことを感じるんですが、
「笑わすこと」と「泣かすこと」って
エンジンがいっしょだと思うんですよ。
出口をどっちにするかというだけで。
だから「友の死」で泣けた人というのは
同じ力をもって今回は
ゲラゲラ笑えるんじゃないかと思ったんです。
三谷さんのタクトによって
ガッと下げられたら、こっちもガッと下がって、
今回はグッと上げられたという感じで。 |
糸井 |
フリ幅みたいなものですね。
ずっときつかったからなあ‥‥。
今回は、つぎの楽章に入ったというよりは
「山南の楽章の終わり」ですよね。 |
永田 |
あああ、そうですね、そう思います。 |
西本 |
そして今回は、笑いだけじゃなくて
シリアスな話もきちんと描かれてました。 |
糸井 |
まずはなんといっても山南と龍馬の関係ですね。
山南から龍馬に「託す」の二文字。 |
西本 |
あそこ重要ですね。 |
糸井 |
あそこを「託す」の二文字に
決めたときの作家の喜び!
実際に自信あったかどうかわからないけどね。
史実にはきっと、あんな手紙はないでしょ?
「託す」の二文字で
龍馬がよみがえったわけじゃないですか。 |
永田 |
そうですね。山南の志が残っているというか、
龍馬を動かしたことで、大きくいえば
現代にまでつながっているような気がして
ジーンとしました。そういえば、前々回、
ぼくらは読み違えてたんですね。
龍馬を訪ねていったシーンは
山南が龍馬になにかの答えを求めに
行ったわけじゃなくて、
龍馬に「託す」気持ちだったんですね。
ま、はっきりはわからないけど。 |
西本 |
ふたりの目指すベクトルは基本的には
一緒であったということにもとれるし、
新選組の行く末を「託した」という
読み取りもできますね。 |
糸井 |
「人を中心にまわっていきます」
というセリフがもう一回くり返されてね。
ようするにこの『新選組!』というドラマは
コンセプト的には龍馬の物語なんですよね。 |
永田 |
幕末の史実を描く以上、
どうしてもそうなっちゃいますね。 |
糸井 |
そのへんをどう見せていくかが
今後、興味深いところですね。
あと、今回のもうひとつのキモは、
妻と妾の対峙ですよ。あの場面、
もし、新婚の西本さんが
嫁とふたりで観ていた場合は
笑えないですよ。 |
西本 |
ああ、そうかもしれません。
なんかテレビに突然、
裸のシーンが映ったような感じがして
ぎこちなく感じると思います。 |
糸井 |
一般的には意外にそうでもないのかな?
女性のほうが不倫の恋愛映画とか
平気で観ますからね。
男のほうが変にドキドキしちゃいがちだけど。
でも、気を遣いながら丁寧に描いてましたよね。
まあ、妾だとか側室だとかっていうのは、
いわば当時の人にしかわからないという
部分じゃないですか。けど、それを、
現代の作家が書くときに、
「当時はこうだったからこうです」って
パーンと書いちゃうと、観ている人が
おいてけぼりになっちゃいますよね。
だから、ものすごく頭を使うと思うんですよ。
関係をきちんと理詰めで
つくっていると思うんです。
それはさぞかし
たいへんだったろうなと思いますね。 |
永田 |
理詰めというと? |
糸井 |
たとえば寺田屋の女将が
「そういうことは慣れてます」
ということで、当時の世界観での
肯定というのを描いている。
でも、やり取りそのものは
現代のそれですよね。
近藤が「手紙で言おうと思ってた」
なんていうのも言いわけですしね。
女ふたりが対決する場面では、
まず深雪太夫が「私、ひきます」と言って
つねが「京都にいるあいだだけ」と返す。
ああいう嫉妬の仕方は現代でしょ。
三谷さんはそれに決めたんですよね。 |
永田 |
「当時の本妻っていうのは
こういうもんだったんだよ」
っていうんじゃなく。 |
糸井 |
そうそうそう。 |
西本 |
まえに、近藤がつねに出した手紙に
深雪太夫の残り香がついてる
っていう描写もありましたよね。
そのへんも理詰めかもしれない。 |
永田 |
あれは伏線として地味に効いてましたよね。
みんなドタバタするんだけど、
あれでごまかされるわけないよな、っていう。
だからこそ安心してドタバタが観てられる。
その意味では、つねが「賢い」っていうことが
観る側を安心させるんですよね。
あと田畑さんの演技。やっぱり最後は
あれに引き込まれてしまって、
騒動がまさに収まった印象を持つというか。 |
糸井 |
あの人はほんとうに
京都の老舗の料理屋の娘さんですからね。
そのあたりの重さを
体感しているというのも
あったんじゃないですかね。
よかったですよねー、あれは。
しっかし、なんですね、
側室を持ったり粛清をしたりする
近藤勇という人を
主人公にもってくるのはたいへんですよね。 |
西本 |
それは思いましたね。
近藤と深雪太夫の関係ひとつとっても
すっごく観せづらいというか。 |
糸井 |
ドラマの中ではあのふたりが、
考えようによっては
あしながおじさんと病弱の少女と
とれるみたいになってますよね。 |
西本 |
ええ。ようするに
セックスをしていない感じがしますね。 |
糸井 |
でも、そんなわけないじゃない?
着物をしっかり着込んで、
座って酒を飲みながら
「心が安らぐのだ」って言って、
ゴホゴホ咳をして、
それで終わりなはずないじゃない。 |
永田 |
とはいえ、描くわけにもいかないですよね。 |
糸井 |
それでうまいなあと思うのは、
近藤をすぐにお風呂に
連れていったじゃないですか。
個人的な印象ですけど、
あそこですぐに裸にしてしまうことで
「そうは言っても」みたいな
感じを表現していると思いましたね。
近藤勇の裸の肉体を見せることで、
その、見せるわけにはいかない部分を
残像として表現してるんじゃないかと。 |
永田 |
はっはー。 |
西本 |
それ、すごいですね。 |
糸井 |
ぼくが勝手に想像していることですけどね。
まえにこういうたとえ話を
したことがあるんだけど、
歌詞をつくるときに、
「赤い花」のことを歌って、
そのすぐにあとに
「雪」が降ったというふうにすると、
まえの「赤」が残像となって
「雪」に残るんですよ。
そういう効果があの
風呂のシーンにはあると思うんです。
NHK大河ドラマ的には
すっきりきれいに、
ふたりの関係を観せているけど
「もうちょっと切ない気持ちで観てね」
という約束をしているように感じました。 |
西本 |
はぁーーー、そういう観かたもあるかぁ。 |
永田 |
もー、そういうこと言うから
この適当なコーナーが
妙に真面目に受け取られちゃうんですよ。 |
糸井 |
ああっ! |
永田 |
今回くらいはゲラゲラ笑って
「ああよかった」で済ませればいいのに。 |
西本 |
なんか、バカなこと言ってくださいよ。 |
永田 |
おちゃらけて終わりましょう。 |
糸井 |
お、そういう意味でいうと、
バカなことはすでに考えてある。 |
ふたり |
なんですかなんですか。 |
糸井 |
意味はないが、我々は、今度、
京都に行く!! |
ふたり |
えええええっ! |
糸井 |
京都で『新選組!』を観る!
我々男子部3人と、
斑鳩出身で新選組に詳しい
べっかむ3も連れて
4人で京都に行こう!
ゆかりの地なども見学しよう!
ただそれだけの企画! |
永田 |
バ、バカバカしい‥‥。 |
西本 |
となると、段取りはぼくの役目ですね。
さっそく宿と新幹線をおさえます。 |
糸井 |
いや! クルマで行く! |
ふたり |
えええええっ! |
糸井 |
京都まで約500キロくらいだろう。
4人で交代して運転すりゃ
どうにかなるだろ。 |
永田 |
な、なぜそんな苦労を‥‥。 |
西本 |
しなきゃならないんですか? |
糸井 |
なんとなく! |
ふたり |
‥‥‥‥。 |