永田 |
第39回を観おわりました! |
西本 |
お疲れさまでした! |
糸井 |
‥‥谷三十郎ゆかりの地には、
あんまり人が行かなそうですね。 |
永田 |
ええ? そんな始まり? |
糸井 |
いや、まず、今回は谷三十郎だろう。 |
永田 |
そ、そうですか‥‥? |
西本 |
まあ、壬生のにぎわいに較べたら
谷三十郎ゆかりの地は
あまりにぎわってないと思いますよ。 |
糸井 |
でも、穴場狙いの人にとってはさ。 |
西本 |
あ、コアなファンにとっては。 |
永田 |
いるのかな、そんな人? |
糸井 |
ぼくは今日、谷三十郎ファンですよ! |
永田 |
いったいどうしちゃったんですか。 |
糸井 |
正確にいうと谷三十郎を演じる、
まいど豊さんね。 |
永田 |
はあ、はあ。 |
糸井 |
というのはね、あのまいど豊さん、
ぼくらふだんのまいどさんを
知らないじゃないですか。
もう、谷三十郎だと思ってるでしょ? |
西本 |
ええ、まあ。 |
永田 |
そうですね。 |
糸井 |
で、みなさん、
谷三十郎のことが嫌いでしょう? |
西本 |
ええ、まあ。 |
永田 |
好きじゃないですねえ。 |
糸井 |
でも、テレビでやっていることは
ウソなんだよ!
まいどさんと谷三十郎は、
べつなんだよ! |
永田 |
(ヒソヒソ声で)
どうしちゃったんだ、この人は? |
西本 |
(ヒソヒソ声で)
よくわかんないですけど、
なにしろテンションは高いですよ。 |
糸井 |
そうやって、まいどさんを、
「なんて谷なやつなんだ」と思って観てると、
将来、すごくいいドラマでいい役を
演じたりするわけだよ。
それが役者ってもんなんだよ。
たとえば、来年あたりに、
『8人の刑事』みたいな
ドラマがあるとするじゃないか。
そうすると、まいどさんが、
6番目の教員あがりの
すごい厳しい刑事の役をやったりするわけだよ。
その役をまいどさんがやる時には
あの顔じゃなくなるわけだよ。
だから役者はすごいんですよ! |
永田 |
6番目の刑事を演じても、
ドジしちゃう役なんじゃないですか? |
西本 |
警察手帳をみんなに見せびらかしているうちに
なくしちゃって悪用されてしまうような。 |
永田 |
それを引き笑いでごまかすような。 |
ふたり |
わははははははは。 |
糸井 |
違うんですよ!
そういうこともしない役もするんですよ。 |
永田 |
そんなことわかってますよ。 |
西本 |
永田さん、街歩いてて
まいどさんに会ったらどうします? |
永田 |
「介錯だけはしっかりやろうよ」
と声をかけたくなりますね。 |
糸井 |
だから! ちがうんですよ。
源さんと谷三十郎の役を
ひっくり返したって
成り立たせるというのが
あの人たちの職業なんですよ。 |
西本 |
それは、以前、我々が提案した
上島竜平が沖田を演じるようなものですか。 |
糸井 |
そりゃネタだろうよ。
だってね、思い出してみてくださいよ。
『壬生義士伝』のなかでは
沖田総司役は堺さんなんですよ。
あそこでの堺さんは狂気じみた役だったでしょ。
ところが『新選組!』では、
こう、正座して、腕なんか組んで、
「ここは、ひとつ、慎重にやるべきかと‥‥」
なんていうふうに‥‥。 |
西本 |
に、似てねえ! |
永田 |
文字に起こすのもおこがましい。 |
糸井 |
だから、極端にいえば、
まいど豊が主役をはってね、
まいど豊主演の『春のソナタ』というような
純愛ドラマだってありえるんだよ。 |
永田 |
「まいど」って名前で主演はないでしょ。
ひらがなですよ。 |
西本 |
そういう問題じゃないでしょ。 |
糸井 |
じゃ、主役じゃなくていいよ。 |
西本 |
そういう問題じゃないでしょ。 |
糸井 |
主役じゃなくても、
その『春のソナタ』で
主役のヨンさまみたいなものに
まいどがすごく誠実に助ける
設計事務所の人の役とかで出たりさ。 |
永田 |
まいどが誠実な設計事務所の人ですか! |
西本 |
ふたりとも、
呼び捨てになってる、
呼び捨てになってる。 |
永田 |
糸井さんがまいどまいど言うから
いけないんだよ。 |
糸井 |
おまえらが、役者のすごさを
認めないからまいどまいど言ってるんだ! |
西本 |
まあまあ、落ち着いて落ち着いて。 |
永田 |
まあ、まいどさんの話はこれくらいにして、
ドラマの話に移りましょう。 |
糸井 |
あっ、いやだなあ、その扱い!
そういうのってちょっと、
ぼくの発言が‥‥
「ないがしろではないか?」 |
三人 |
わははははははははは! |
永田 |
ちっくしょー、それおもしろいなあ(笑)。 |
糸井 |
あのセリフはほんとにいいよねえ(笑)。 |
西本 |
「最近、ないがしろではないか?」 |
三人 |
わははははははは。 |
永田 |
それにしても、まいどさん、
斬られるの、早かったですねえ。
いままでの隊士史上、
最短記録じゃないですか? |
西本 |
「む!」「抜け!」「バサッ!」 |
糸井 |
あのあたりも、ないがしろな感じだったねえ。 |
西本 |
たぶん、殺陣の指導もそんなにないですよ。
「じゃあ、まいどさん突いて、
オダキリさんよけて、
バサッと行って終了っス」みたいな。 |
永田 |
そんで、リハーサルの現場で
まいどさんが言うんだよ。
「この殺陣はちょっと‥‥
ないがしろではないか?」って。 |
西本 |
わはははははは、
それで現場もワッと盛り上がって、
思わず、オダギリさんと
まいどさんがハイタッチ! |
永田 |
たまたま遊びに来ていた
私服のメガネノオカッパも
スタジオの隅から大拍手! |
西本 |
あ、今回出番なかったから
私服で見学なんですね。 |
ふたり |
わはははははは! |
糸井 |
‥‥きみたち。まいどさんはね、
ちゃんとした役者さんなんだよ? |
永田 |
わー、また話を戻す気ですか! |
西本 |
わかりましたわかりましたー。 |
糸井 |
みんなね。言わせてもらいますけどね。
今回、最初に谷三十郎が登場したとき、
土方や沖田と目を合わさずに
へこへこしているシーンがありましたよね。
あいつ落ち込んでるわ、と思いましたよね。
ところが場面が変わると
「おれはこんなことはやってられない、
志が違うから新選組を抜ける」的なことを
言うわけじゃないですか。あの変わり身。
あそこに役者が出ているじゃないですか。 |
ふたり |
はい、すいません。 |
糸井 |
あれが役者という生き物のすごさですよ。
ああいう役を演じるかと思えば
男と女のサスペンス劇場みたいなものに出て、
子供を誘拐されたお父さんとして
「サブローっ!」とかって叫んだり
するわけですよ。 |
永田 |
そういう場合はひとり息子でしょうから、
「サブロー」じゃないんじゃないですか? |
西本 |
そういう問題じゃないでしょ。 |
糸井 |
じゃ、ヨシオでいいよ。 |
西本 |
そういう問題じゃないでしょ。 |
糸井 |
どうもキミらがピンときていないようだから
ひとつ、いいたとえ話をしてあげよう。
京都にね、嵐山という場所にね、
人々がつぎつぎに訪れる
大河内山荘というのがあるんですよ。
山の一角を切り開いて斜面を利用した庭でね、
もう、贅を尽くした趣味の良さみたいな。
きらびやかではないけど華があるみたいな。
「こんなモノを日本人は欲しいんだよね」
というような素晴らしいお家があるんです。
その大河内山荘をつくった人は
大河内伝次郎という無声映画時代からの
役者さんなわけですよ。
ところがこの大河内さん、
リアルタイムでは主役なんですけれど、
ちょっとあとで、さんざんモノマネされまして。
後のイメージはちょっと妙な味の俳優なわけです。
ものすごく彼のモノマネが流行ったのよ、
「オヨヨ、オヨヨヨヨ‥‥」
オとヨとアとヤだけでしゃべる、みたいな。
あ、そうだ桂三枝の「オヨヨ!」ってのは、
元ネタは大河内伝次郎だ。
そういう俳優さんだったわけです。
そういうイメージの人のお家とお庭がね、
あんなに趣味のいい、
すばらしいものなんですよ。
‥‥これでわかりましたか? |
永田 |
さっぱりわかりません。 |
糸井 |
ようするに、人は見かけによらないってこと!
三枚目を見せてるけど
役者はみんな、オレたちより二枚目なんだよ。
まいどさんだってね‥‥。 |
永田 |
わかりましたから、ほかの話をしましょうよ。 |
西本 |
なんか、そこまで
まいどさんを擁護しているのが
おもしろくなってきました。 |
永田 |
ああ、こらこら、ついていかないでくれ。 |
糸井 |
わかってきただろう? |
西本 |
ええ。人は見かけによりません。
元吉本興業マネージャーの
ぼくが知っている例でいうと
アホの坂田利夫師匠。
あの人‥‥怒ると怖いよ? |
糸井 |
ほらァ! な?! な?! |
永田 |
え、ちょっと待ってくださいよ。
そんな話でいいんでしたっけ? |
糸井 |
そんな話ですよ。 |
西本 |
永田さん、パブリックイメージと
実際は違うってことですよ。 |
永田 |
‥‥話がおもしろくなるほうへ
転びやがったな! |
西本 |
フッフッフ‥‥。
間寛平さんも元々は
歌手になりたかったんですよ。 |
糸井 |
うんうん、そういうことそういうこと。 |
永田 |
これじゃ、たんなる
芸能人ウンチクコーナーじゃないですか。 |
糸井 |
『湯河原殺人事件』みたいな
ドラマに出てくる船越英一郎さんだって
今はオヤジ役だけど
昔は二枚目として出てたんだよ。 |
西本 |
ああ、なるほどなるほど。
山崎邦正さんは昔、
学校一おもしろかったそうですよ。 |
永田 |
しまったぁ‥‥にしもっちゃん、
そのへん、超得意分野だ。 |
西本 |
いくらでも出てきますよ。 |
糸井 |
どんどん出しましょう。 |
永田 |
たのむからドラマの話をしましょう。 |
糸井 |
十分にドラマの話をしてますよ。
役者というのは、
見せて表現をするという動機の部分では、
あらかじめ二枚目なんです。
みんな、一瞬だとしても、
二枚目の所を横切ってるんです。
だから、まいどさんなんかも、
芸能界紳士録のページでは
きりっとしてると思うんだよ。
それを思うと役者って怖いなあって思う。 |
永田 |
このまま、まいどさんの話で
進んじゃうのかなあ‥‥。 |
西本 |
まいどさんも、きっと、
学校のクラスでは二枚目だったんですよ。 |
糸井 |
クラスの女子が
「まいどくん素敵〜」みたいな感じでね。 |
西本 |
ええ、きっと人気者ですよ。 |
糸井 |
そんな人が、コミカルな
谷三十郎を演じているわけだねえ。
うーん、おもしろいなあ。
いやあ、今日の男子部は、
いいスタートを切りましたね! |
永田 |
ちっとも、
本題に入ってないじゃないですか! |
糸井 |
いや、なんでこういうことを
言い出したかというとね、
ぼくは最近、ついに『新選組!』の放送を
1回目から観直しはじめたんですよ。 |
永田 |
あ、ついに観はじめちゃったんですか。 |
糸井 |
1回目から録画している人がいたもんでね。
それで、つまり京都から帰ってきてから、
ずーっと『新選組!』のことばっかりを
考えながら生きているわけですよ。 |
西本 |
ええ、いまの糸井さんは
恥ずかしいくらい『新選組!』漬けです。 |
永田 |
あはははははは。 |
糸井 |
それでもう、家でひとりで観てたら、
じゅぶじゅぶになっちゃったのよ。 |
永田 |
「じゅぶじゅぶになっちゃった」(笑)。 |
糸井 |
もうね、泣けるわ、笑えるわ、
ある意味で新選組を
嫌いになったり好きになったり、
もう、じゅぶじゅぶなんですよ。 |
西本 |
オレも観よ。それ、つぎ貸してください。 |
糸井 |
出てくる人、ぜんぶに対して、
いちいちそういうふうに思えてくるのよ。 |
永田 |
まいどさんも? |
糸井 |
誰も彼も。この時代に生きた人々すべてに。
出ている人みんなが、
そうとう強いものを秘めた役者さんが
演じているということで、
『新選組!』というドラマの
ひとりひとりの端役にいたるまでが、
たとえ小さくとも身体のどこかに火種を宿す
「赤く燃える石炭」みたいなものに映るんです。
だから、毎日疲れるんです。
じゅぶじゅぶになっちゃうんです。 |
永田 |
だって、週に1回ずつ観てても、
こんだけカロリー消費しますからね。 |
糸井 |
でもね、それを通して観ることで
くっきりしていくことがあるんですよ。
それは、たとえば、とにかく
演劇というものに
関わってきた三谷さんの姿とかね。 |
永田 |
はああー。 |
糸井 |
唯物論とか、唯神論とかあるじゃないですか。
いわば、三谷さんは唯劇論なんだよ。
つまり、三谷幸喜という人の
唯劇論というコンセプトが
ドラマのなかに圧縮されて入ってて
それが、泣けて泣けて。
唯劇論のなかでしか生きられないというと
言い過ぎかもしれないけど、
そういう悲しさと、うれしさと、
すべてが押し寄せてくるんですよ。
ぼくはそれに興奮して、
ついつい谷三十郎という役に
行っちゃったんですよ。 |
永田 |
あーー、なるほど。
やっと伝わってきました。 |
糸井 |
人は、いろんな人生を演じられるんですよ。
たとえばおおづかみにとらえると、
このドラマって百姓の息子が
武士を演じるための物語じゃないですか。
『ガラスの仮面』じゃないですか。
途中に商人を経過した土方は
マネージメント武士じゃないですか。
全部、自分の役割を探している。
そして、その役割におさまってからが
悲劇の始まりなんだよね。 |
西本 |
つぎ、それ貸してください。 |
糸井 |
いいよ、いいよ。
まあ、そういうわけです。
永田さんは今回、どうでしたか。 |
永田 |
今日は僕はそうとうよかったです。 |
西本 |
また泣いてましたね。 |
永田 |
泣いてねえっつーの。 |
西本 |
泣いてたっつーの。 |
永田 |
‥‥まあ、泣いてたんですけど。 |
糸井 |
もちろんぼくも家で観たときは泣けました。 |
永田 |
泣けましたよねえ。
ていうか、こうやって毎週毎週、
きっちり泣いてると、
オレはアホかという気がしてきますけれど。 |
糸井 |
やっぱり、最後の、
周平を囲んでのやり取りですよね。 |
永田 |
ええ、あそこです。
詳しくいうと、今回は沖田です。
またしても藤原さんがトリガーで、
その後、泣きっぱなしです。
今回、周平も源さんも平助もよかったですけど、
やっぱり沖田なんですよ。
もっというと、沖田と斎藤の対比。
死期が迫ることでどんどんどんどん
急き立てられて厳しくなっていく沖田と、
逆に人を斬りまくることで
生きることがどんどん薄くなっていく斎藤。
とくに、周平に詰め寄る場面の
沖田は切なかったですねえ。
近藤家の跡取りとして
未来を期待されている若い周平というのは、
ある意味、沖田が夢として願うことの
象徴でしょうから。
未来が約束されているのに力がない周平と、
力があるのに未来がない沖田と、
その落差で、ああいう厳しさになってしまう。 |
糸井 |
そこで、平助ですよね。
沖田のすぐ横にいながら、
周平の気持ちで沖田をずっと見ていた平助が
もう、鼻水を飛ばす勢いで‥‥。 |
永田 |
「みんなが、あなたみたいに
できるわけじゃないんだ!」 |
糸井 |
その「生もの感」ね。 |
西本 |
でっかい声で叫んでましたね。
今回は、ぜんぶきちんとことばにして
叫ばれていた回だと思いました。
みんなが薄々思っていたことが、
きちんと表されて、
ほんとうだったんだなと思えるような。 |
糸井 |
なるほどね。 |
永田 |
もしも沖田に死期が迫ってなかったら、
きっと、「周平、すまなかった」とか、
そういう展開がありうるんだと思うんですけど、
平助の「みんなができるわけじゃないんだ」
ということばすら、
もう、沖田には届かないんですよね。
泣けるなあ‥‥。
藤原さん、ここ数回で
完全に顔とか変わってますよね。
さっきの話じゃないですけど、
役者さんってすごいなあ、と。 |
糸井 |
あと、源さんですよ。
口答えをしたじゃないですか。
おもいきってデカい声で。
あそこでまた、ぼくは
谷三十郎のなかにある主役性みたいなものを
源さんのなかにみたんだよ。
だって新選組局長と明らかにあのときは
声のはりとか、タメをはってましたからね。
「なんのマネだっ!」って言われて
「近藤周平は死にました‥‥」
っていうのいいじゃないですか。 |
西本 |
よかったですねえ。 |
永田 |
あと、あそこは近藤も
すげえよくなかったですか? |
糸井 |
よかったですね。 |
永田 |
やっぱり、近藤の大きさが感じられると、
個々のよさがさらによくなるんですよね。
今回の近藤はそうとうよかったです。 |
西本 |
近藤の無理のしかたに風が出てるんですよね。 |
糸井 |
だから、近藤の向こう側に
何を置くかでそれぞれが生きてくるんですよ。
だから芝居って
チームプレイだよなと思うよね。 |
永田 |
あと、もうひとつ沖田でつけ加えると、
ぼくが好きなのが、
「今夜のあなたには殺気がない」というセリフ。
池田屋のときの
「こっちが当たりだと思いますよ」とか、
前回の「あと5年でいいんです」とか、
沖田はドラマのなかで唯一、
「未来を予言していい人物」
「真実を予感していい人物」
として描かれてますよね。
死期の迫る天才として、
その能力を許されているというか。
ぼくはああいう
ドラマのファンタジーが大好きなんです。 |
糸井 |
同じように剣がたつけれど、
その対極にいるのが斎藤だね。 |
永田 |
まさに。
言い当てられて立ちつくす
斎藤の表情が印象的でした。 |
糸井 |
オダギリファンの西本さんとしては、
ますます斎藤に憧れたんじゃないですか。 |
西本 |
どういうことですか。 |
糸井 |
暇があったら木でも削ってみようかとか
思いませんでしたか? |
西本 |
あ、なるほど。
ぼくは元々、手先が不器用なので
さりげなくああいう
器用っぽいことができることに憧れてます。
芹沢鴨が竹とんぼを作ったりとか。 |
糸井 |
でしょう?
あの、木像を削ってるシーンというのは
ちょっとした「男子ゴコロ」を
そそるところだと思うんですよ。
またそれが仏だというのがなおさらね。 |
西本 |
そうですね。たとえば、こう、
キャンプなんかに行ったときに
実際のぼくは何もせずに
しゃべっているタイプなんですけど、
そんな時に桜チップで薫製作り始めるみたいな
人には憧れますね。 |
永田 |
んん? |
糸井 |
そりゃまた違うんじゃないですか? |
西本 |
ダッチオーブンで男の手料理みたいな。 |
ふたり |
違う、違う! |
西本 |
おや、また違いましたか。 |
永田 |
いえ、持ち味です。オッケーです。 |
糸井 |
ところで西本さんはどこがよかったですか。 |
西本 |
ぼくは、まだ挙げられてないところでいうと、
左之助の結婚を祝う場面がよかったですね。
とくに、土方の細かい芝居。 |
糸井 |
いっぱい芝居してましたねえ。 |
西本 |
ええ。 |
永田 |
「やっちゃったのかよ!」っていう、
ツッコミのセリフも久々にあったし。 |
西本 |
あとは、女のことを近藤に振られて
カメラ目線でニヤリ、の場面。 |
糸井 |
そうそうそう(笑)。 |
永田 |
あそこは近藤もよかったですよ。
「こいつは勝手にどっかで遊んでるから」って。
あそこは、ふたりの「幼馴染み」を感じたなあ。
だから、なんでか知らないけど
すごくリアリティーがある。
「わ、ほんと土方は遊んでんだなあ」っていう
においがしてくる。 |
糸井 |
また、あそこの場面では、
読者からいいメールが来てましたねえ。 |
西本 |
あ、あのメールは「読者の部」に
掲載決定でしょう。 |
永田 |
あとでチェックしておきます。
ドラマを観るまえに
新選組関連のメールは
開かないことにしているので。 |
西本 |
あいかわらず慎重だなあ。 |
永田 |
ぼくは桃太郎の結末すら
知りたくない男です。 |
糸井 |
しっかし、全体の流れからいうと、
いよいよ、希望がなくなってきましたね。 |
西本 |
ええ。どんどんクライマックスに近づいて
ふつうのドラマなら、
わくわくするはずなのに。
わくわくできないですから。 |
永田 |
とくに今回は、じつは、
はっきりと絶望が始まっている回ですからね。
冒頭でサラッと言っているから
あんまり印象に残らないけど、
「長州征伐に向かったが、
幕府軍は散々に打ち負かされた」
ってはっきり言ってますからね。
負け戦が始まりましたっていう回ですよ。 |
西本 |
そんでまあ、また、悪そうな小男が将軍に。 |
糸井 |
あの小ささであの迫力を出せるのがすごいよね。
そういうところでもね、
役者がすごいと思うわ。 |
永田 |
ぼくらが京都で行った霊山記念館でも
徳川慶喜の等身大のパネルがありましたけど。 |
糸井 |
小さかったねー、あれ! |
ふたり |
小さかった! |
糸井 |
でも、よく考えたら、ちょっと前の大河では、
あの役はモックンなんですよね。
ここではカマキリ将軍みたいな人ですけどね。 |
永田 |
「カマキリ将軍」(笑)! |
西本 |
あいたたたたた、決まりだ、それ(笑)。
またあだ名つけちゃった。 |
永田 |
「カマキリ将軍、現る」! |
糸井 |
でも、あのカマキリ将軍、
イヤぁ〜な感じだったねえ。 |
永田 |
すっごい悪意を感じましたよね。
ラスボスとしての存在感がありました。
フリーザの最終形態みたいでした。 |
西本 |
あのカマキリ将軍も
名の知れた役者なんでしょうね。
小劇場系で知る人ぞ知るみたいな。 |
糸井 |
そうじゃないですかねえ。 |
永田 |
その意味じゃ、ドラマもお芝居も
あんまり観ないぼくとしては
『新選組!』を通していろんな役者さんを
知ることができてうれしいですね。 |
糸井 |
1回目から観るとさらにそう思えますよ。 |
西本 |
よぉ〜し、来週中にぜんぶ観ちゃおう。 |
永田 |
にしもっちゃん、早そうだなー。 |
西本 |
オレは、観るとなったら早いですよ!
あの、「隊士たちが眠るなんとか寺では‥‥」
みたいな、犬がワンワン鳴くようなとこは
びゅんびゅんすっ飛ばしていきますよ。 |
永田 |
やりそうだわ、この人。
ていうか、ふつうは、最初のほうの回を
観たいと思っても観られないんだよね。
録画してる人が周囲にいなきゃアウトだから。
でも、DVD化も決まってないんですよね。 |
西本 |
DVD化は決まってないです。 |
糸井 |
ああ、これは、この機会に
ちゃんと言っておこうかな。
あのね、まえまえからメールで、
「『新選組!』のDVD化を、
糸井さんたちからも頼んでください!」
っていうメールがたくさん来てますよね。 |
西本 |
ええ。来てます。 |
糸井 |
まるでぼくらに「圧力団体になれ」と
言っているかのような
勢いのものもありますけど、
まあ、ぼくらは、DVD化の旗を振って
署名を集めるようなことはしませんよ。
そもそも、ぼくらがなにかを言って
影響があるかどうか、知りません。
けどね‥‥これは、ぜんぶ観てほしいわ。
ぜんぶ観る価値があるわ。 |
永田 |
じゅぶじゅぶになっている人が言うと
説得力がありますね。 |
糸井 |
ドラマがおもしろいだけじゃなく、
ある程度は売れると思いますよ。
まあ、一視聴者の世間話として
無責任に語るしかないんですけどね。
ぜんぶでまあ、15巻くらいになるんですか?
その『新選組!』セットって、
一視聴者として魅力的ですよ。
いままさに、じゅぶじゅぶになって
観ているぼくが言うんだから、間違いない。
放映の初期には、人気があるだのないだの、
いろんな説があったんでしょうけどね、
これはねえ、そんなふうに揺らいじゃだめ。
すばらしいですよ。だからね、ここはね、
『三谷くんありがとうセット』だよね。
そんなボックスにしてね。あるいは
『三谷くん、お誕生日おめでとうセット』
っていう感じでね。 |
永田 |
なんか、話変わってないですか。 |
糸井 |
ともあれDVDになると、
ぼくはうれしいです。いいと思います。 |
西本 |
もし、DVDが発売されるとなったら
「ほぼ日」も販売店のひとつとして売ります! |
糸井 |
売りますよ!
124セットくらいは売ってみせますよ。 |
永田 |
微妙な自信ですね。 |
西本 |
うちの社内の人間だけで
5セットくらいは
売れるんじゃないですか。 |
糸井 |
それくらいの確信はありますよね。 |
永田 |
強いんだか弱いんだか。 |
西本 |
ただ、ぼくらが先頭で旗を振って、
「NHKさんつくってください」
みたいなことは、やりません! |
糸井 |
数を束ねてプレッシャーをかける、
みたいなことはすごく苦手なんです。 |
永田 |
あと、段取りも苦手なんです。 |
西本 |
悪い子じゃないんです。 |
糸井 |
三谷も糸井も悪い子じゃないんです。 |