永田 |
第41回を観おわりました! |
西本 |
おつかれさまでした! |
永田 |
今日は、めずらしいパターンでしたね。 |
糸井 |
なんですか。 |
永田 |
途中、糸井さんひとりが
ぐじゅぐじゅ泣くという状態で。 |
糸井 |
ああ(笑)。 |
永田 |
ぼくなんか、ぜんぜん平気でしたよ! |
西本 |
ウソだね。 |
永田 |
‥‥最後だけ、ちょこっとね。 |
西本 |
メガネノオカッパごときに、
大のオトナがふたりも泣かされて! |
糸井 |
いや、今日は観柳斎と呼んであげましょう。 |
永田 |
賛成! |
西本 |
じつは、今回、
ぼくもちょっとグッときたんですよ。 |
糸井 |
お、めずらしい。 |
西本 |
日曜日に観ていて、2回目だったんですけど、
1回目って、なんとなく、
探りながら観てたんですよ。
「観柳斎がまた余計なことを
するんじゃないか‥‥」という感じで
ちょっといらいらしながら。
で、いま、結末を知ってから観ると
その「余計なこと」が
いじらしく思えてきたりするんですね。
で、最後、近藤が「生かす」ってところで
ドーン! と来たりして‥‥。
あ、でも泣いてませんよ? |
ふたり |
知ってますよ。 |
西本 |
失礼しました。 |
糸井 |
ぼくも2回目だったんですけど、
1回目よりも泣けましたね。というか、
1回目は泣いてはいなかったんです。
今回の泣きはちょっと複雑なんです。
この話、観柳斎を描いているようですが
じつは勇の話なんですよね。
そこを、「勇の話なんだろうな」
と思って観るのと、
はっきりと「勇の話なんだ」
と思って観るのでは大違いなんですよ。
だから、2回目が泣けたんですよね。 |
永田 |
観柳斎の向こうに
近藤を重ねながら観る、と。 |
糸井 |
うん。観柳斎は近藤の鏡なんです。
それが染みるんですよね。
‥‥というか、いきなりこんな
深いところから始めちゃっていいんですか。 |
永田 |
たまにはズバッと行っていただけると、
編集もやりやすいのですが。 |
糸井 |
そうはいっても、誰に会ったとか、
そういうのがあるでしょう。 |
西本 |
会ってません! |
糸井 |
ぼちぼち会ったほうがいいんじゃないのか。 |
西本 |
そう思ってはいるのですが、
こればっかりは‥‥。 |
永田 |
本編に入るまえの報告ということで
お伝えいたしますが、
ぼくもついに、観のがしていた
第24回までをすべて観おわりました。 |
糸井 |
お、ついに。 |
西本 |
これで3人とも、これまでの話を
すべて観たということになりますね。 |
永田 |
いやー、堪能した。
行けちゃいますねえ。 |
糸井 |
行けちゃうでしょう? |
西本 |
行けちゃいますよねえ。 |
永田 |
ぐいぐい行きました。
第1回から第24回までで
じっくり話したいくらいです。 |
糸井 |
で、第25回が観たくなるでしょう? |
永田 |
なるんですよ!
この流れで芹沢鴨暗殺を観たら
どう感じるんだろう、と。 |
西本 |
いちおう、25回以降も
アーカイブはそろってます。 |
糸井 |
あ、お礼を兼ねてその報告をしておきましょう。
ぼくらが観た過去放送分の録画は、
ぼくが講師をやっている
京都インターナショナルアカデミーを
毎年聴きに来てくれている八田さんという
生徒さんからいただきました。 |
ふたり |
ありがとうございます! |
糸井 |
兄と妹で受けに来られているんですけど、
どうやらそのお兄さんが、
がんばってDVDを
つくってくださったみたいです。 |
西本 |
あれ、そうとう完成度高かったですねえ。
きっちり1枚に3回ずつ入ってて。 |
永田 |
そうそう、びっくりした。
タイトルもちゃんと入ってるし。 |
西本 |
前後にほかの番組のCMとか
まったく入ってないし。 |
永田 |
チャプターまで切ってありましたよ、
5分ごとに! |
西本 |
もう、商品じゃないかというクオリティですよ。 |
永田 |
ていうか、十分商品になりますよ。 |
西本 |
じゃあもう、アレを売っちゃえば
いいんじゃないですか? |
永田 |
あ、もう、そうしようか! |
糸井 |
それを海賊版といいます。 |
ふたり |
‥‥失礼しました。 |
糸井 |
ですから、まあ、いわば、
あのDVDは寺子屋の師弟関係として
生徒からもらったものなんです。
ぼくが伊東甲子太郎だとしたら
平助が用意してくれたようなものです。 |
西本 |
なるほど。流派の縁ですね。 |
糸井 |
そうですそうです。
あっ、だから、つまり、
平助が、伊東にこう言ったわけですよ。
「このDVD、かしたろう(貸したろう)!」 |
永田 |
‥‥‥‥。 |
西本 |
‥‥言っちゃったよ。 |
糸井 |
‥‥思いついてしまったもので。 |
永田 |
‥‥ていうかね、これね、
すごくやっかいなのはね、
文字にすると、意外に笑える感じに
なっちゃうということなんですよ。
この人、そのへん、わかって言ってるんですよ。 |
糸井 |
あいたたたたた(笑)。 |
永田 |
これを読んでくださっている読者の方もね、
こう、マウスをカチカチして
スクロールしながら読んでるとね、
油断して、それなりに
クスッとしちゃったりしてると思うんですよ。 |
西本 |
ゆるーい感じでね。 |
永田 |
バカだなあ、って感じでね。
でもね、ここで言っておきたいのはね、
面と向かって聴くほうの
身にもなってくれってことですよ! |
糸井 |
いや、まあさ、ともかく、
みんなで通してぜんぶ観ちゃったら、
すごくおもしろかったって話だよ!
だからさあ、やっぱり、
DVD売れよ! NHKっ! |
永田 |
どういう逆ギレですか、それは! |
糸井 |
売ったほうがいいよ、コレ!
オレ、買うよ、コレ!
つまり、観たんだし、手元にも
録画したものがあるわけなんだけど、
それでもあえて売ってくれよと言いますよ。
「あなたがた、それで儲けてくれ!」
と言いたいくらいです。 |
永田 |
あはははははは。 |
西本 |
ムダに力強いアピール(笑)。 |
糸井 |
いいもん持ってるんだから、
儲ければいいじゃないかってことですよ! |
西本 |
べつに、儲けたお金で
『新選組!2』を
つくってくれとも言いません! |
糸井 |
言いません! |
永田 |
『新選組!』グッズとかもいりません! |
糸井 |
いりません!
この作品はね、やっぱり、人に、
「観てないの? 家にあるよ」
と言いたくなるものなんですよ。
さすがに買ってくれとは言えない人には
「ちょっと多いけど貸すよ?」とかね。
ぼくなんかだと、いい年をした友だちとかも
多いわけじゃないですか。
そういう人には購入をすすめたり
贈り物としておくったりね。 |
西本 |
ぼくが思うに
「このDVDセットが縁で結婚しました」
ってこともありえますね。
第1巻から観はじめて続きを観ていくうちに
帰れなくなってしまった、みたいな。
「こんなに長い時間一緒にいられるなんて!」
「あらぁ〜、私たち相性がいいのかしらぁ?」
なんてことじゃないでしょうか。 |
永田 |
気持ち悪いから、小芝居やめてください。 |
糸井 |
その展開は爆笑問題の
太田光夫妻にとっての
『MOTHER』ですよね。 |
永田 |
このエピソードが知りたい方は
こちらのリンクをご覧ください! |
西本 |
リンクに飛ぶのが
面倒だという方にお伝えすると、
太田さんが奥さんの家でゲームをし続けて
そのまま居候状態になって、
ついには結婚したというお話です。 |
糸井 |
このドラマはね、
「ここは私、嫌い」っていうところまで
含まれているのがいいと思うんですよ。
いいとか悪いとか否定的な部分までも
取り込めているじゃないですか。
「おれはそうは思わない」とか、
「イヤだと思ったけど好きになった」とか、
多少の対立がありながらも進んでいく
大きな流れがあるじゃないですか。
今回の観柳斎なんか、まさにそうだけど、
「好ましくないとはいえ、
ひとりずつを踏みつけるわけには
いかないよなあ」というような思いが、
あちこちに芽生えるじゃないですか。
それは、語り合えると思うんですよね。
「お父さんはつまり、
会社じゃ源さんなんだよ」
とか言ったりできるじゃないですか。
通してぜんぶ観ると、
そんなふうなことを感じましたよね。 |
西本 |
わかります、わかります。 |
永田 |
ぼくもついでにぜんぶ通して観たあとの
大きな感想を言わせていただくとすると、
ほら、あの、『離婚弁護士』の連載の
最終回のところで、ぼくは
「毎週毎週1時間ずつ話を進めていくという
テレビドラマの手法って
はたして意味があるんだろうか?」
みたいな暴言を吐きましたよね。 |
西本 |
ああ、言いました言いました。
テレビドラマの存在自体を
ひっくり返した暴言でしたね。
「いまさらそんなこと言うなよ」と、
テープおこしをするべきかどうかを
迷ったことを覚えております。 |
永田 |
その節はご迷惑をおかけしました。
それはさておき、過去の放送ぶんを
一気にぜ〜んぶ観て、思ったのは、
「やっぱテレビドラマって意義あるわ」
ってことだったんですよ。 |
糸井 |
ほう。 |
永田 |
っていうのは、
すっごく単純な感想なんですけど、
尺なんです。総時間が長いってことなんです。
ようするに、誰かがなにかをつくるとして、
「映画の尺なんかじゃ
ぜんぜん足りねえよ!」ってときに
テレビドラマ以外にないんですよ。
だって、映画って、どんなに長くても
3時間とか4時間とかでしょう?
この『新選組!』の話なんて、
絶対、収まりきらないですよ。
となると、物語をきちんと紡ぐには
テレビドラマしかないんですよ。 |
糸井 |
いや、それは、ほんとうにそうです。
大河ドラマっていうのは
ほんとうに大河なんですよ! |
西本 |
たとえば映画にしたら、
今回の観柳斎の話なんか
絶対入らないでしょうね。 |
永田 |
そうそうそう。ぼくの大好きな
「寺田屋大騒動」も入らないと思うんですよ。 |
糸井 |
それはじつは、観てるぼくらの
たのしみも同様なんですよ。
数時間の映画だったら、物語のなかに
ここまで細かくさわれないですよ。
ぼくらが毎週話すこのムダ話も
大河ドラマだから、テレビドラマだからこそ
できるわけなんですよ。
観柳斎に回り道したらその回り道につきあって、
ちがう寄り道ができたりするじゃないですか。
つまり、よってたかって
アリの巣を顕微鏡で見るようなものですよ。 |
永田 |
アリの巣を‥‥? |
西本 |
顕微鏡で見る‥‥? |
糸井 |
にしもっちゃん直伝の「反面比喩」ですよ。
つまり、まちがいましたよ。
取り消しますよ、いまの比喩は。 |
西本 |
ははぁ、これが「反面比喩」ですか。 |
永田 |
‥‥‥‥。 |
糸井 |
まあ、ここはひとつ、雰囲気を変えてだね、
ええと、にしもっちゃんは
過去の録画をぜんぶ観て、どうだったの? |
西本 |
ぼくは、いっしょに観ていたヨメが、
食いつくように観てるのに驚きましたね。
というのはですね、生放送のときも
いっしょに観てはいるんですが、
どうやらヨメは生放送だと
集中して観られないようなんですよ。 |
糸井 |
バカな子なんですか? |
永田 |
ことばを慎んでください。 |
西本 |
バカな子ではないんですが、
生放送で『新選組!』を観ることに関しては
あんまり興味がないみたいです。
昨日もヨメはカレーを温めながら
いちおう観てたんですけどね。
こう、画面に食らいついている
ぼくとしてはですね、
口には出さないけれども、思うわけです。
「ヨメよ、『新選組!』のときは
換気扇を止めてみないか!」と。 |
永田 |
なにソレ? |
西本 |
だから、ドラマを観ている最中に
換気扇が回りっぱなしなんですよ。
「ぶぅ〜ん」とかいってるんですよ。
微妙なセリフ回しが
聴き取れねえじゃねえか! と。 |
永田 |
ああ、なるほど。 |
糸井 |
ウクレレを持って
「♪嫁のバカっ!」って言いたくなる、と。 |
永田 |
ちなみにいまのはイッセー尾形さんの
「アトムおじさん」という
ネタからの引用です。 |
糸井 |
ええ、そうです。
「アトムおじさん」、おもしろいよなあ。 |
永田 |
最高ですよね、あれ。
「え〜、踊り子さんと踊り子さんの
あいだに出てきた、
アトムおじさんで‥‥ゴホッゴホッ!」 |
糸井 |
わははははは! |
西本 |
「アトムおじさん」の話はさておき、
うちのヨメは生放送だと
どうやらうまく集中できなかったんですよ。 |
糸井 |
バカな子なんですか? |
永田 |
だから! |
西本 |
バカな子ではないんですが、
つい、クウネルとか読んじゃうんですよ。 |
糸井 |
クウネルとか読んじゃうんですか。 |
西本 |
クウネルとか読んじゃうんですよ。 |
永田 |
ちっとも話が進まん! |
西本 |
そんなヨメなんですが、
まとめてDVDで観てるときは
がっつりハマってました!
朝6時までふたりで見続けたりしました。
思いのほか長い説明になりましたが、
そんな鑑賞風景でした。 |
永田 |
ありがとうございました。 |
糸井 |
まあ、にしもっちゃんの奥さんにしてみれば、
毎週毎週、集中してかじりついてる
ぼくらのほうがバカな子なんですよ。 |
西本 |
それはいえてますね。ヨメも、
「どうせこの人は『新選組!』の時間は
ご飯なんて食べないだろうから」
って感じで、カレーを温めたりしてますから。 |
糸井 |
それはそうと、おたく、
土日にカレーが多くないですか? |
永田 |
たしかにカレーの話、よく聞きますね。 |
西本 |
あ、そういやうちはカレーが多いですよ!
「ここは海軍か!」というくらい
カレーが出ますよ。 |
糸井 |
わははははははははは! うまい! |
永田 |
「西本家名物海軍カレー」(笑)! |
西本 |
どうやらそれは両親の影響なんですよ。
ヨメの実家に行くと、多いんですよ、カレー。
実家で「ここは海軍か!」と思いましたから。 |
糸井 |
‥‥2回目はダメだわ。 |
永田 |
‥‥1回でやめときゃいいのに。 |
西本 |
永田さん。ここはひとつ、
助けると思って2回目の発言を
編集のときに削っていただけませんか? |
永田 |
ていうかさ! いい加減、
ドラマの本編に入りましょうよ! |
西本 |
賛成です。 |
糸井 |
まずは「ハタノアト」ですよ。
今回もさらっと
たいへんなことをやってましたよ。 |
永田 |
そうでしたそうでした。
ある意味、最終到達点というか、
いちおうのゴールともいえるところに
近藤たちが到達したわけですよ。 |
西本 |
近藤たちが幕府直参に取り立てられ、
名実ともに「武士」になった、と。 |
糸井 |
これがいかに大きいことか。
侍になりたくて
修羅の道を進んできたわけだからね。 |
永田 |
多摩編から観なおしたあとだから、
なおさら感慨深かった。
「トシ!」「かっちゃん!」という
コミカルな演出になってましたけど、
いきなり泣きそうになりました。 |
糸井 |
でも、侍になったおかげで
はがれた鉄仮面があるじゃないですか。 |
西本 |
法度の撤廃ですね。
まあ、完全に撤廃されたかどうかは
わかりませんでしたけど。 |
糸井 |
その境界で翻弄されたのが観柳斎でしたよね。
つまり、ハンパな立場のうちは
死ぬことでしか表現できなかったものが
あったわけですよ。
極端な話、命をかけることによってのみ、
「私は武士でございます」という
かたちが成り立っていたわけじゃないですか。
ところが、ほんとうに武士になったことで、
生きているからこそ武士であることができる。
そういうふうに近藤が変化したことに
すごみがありましたよね。逆にいうと、
いままでいかに無理をしてきたかということで、
その重みでジーンときちゃったんです。
たいへんだったんだよねえ。
やっと海抜ゼロメートルになったんです。
だって、法度をなくそうという近藤の申し出に
土方が反対してないじゃないですか。 |
永田 |
ああ、あのなんともいえない表情は泣けました。
土方がこれまでかぶってきた鬼の面の
下の表情が見えたような気がして。 |
糸井 |
もうひとつうまいのは、
対比で沖田を見せているところですよね。
沖田みたいに自分の命が
「法度」や「武士」とは別のところで
ちゅうぶらりんになっている子は、
直参になろうがなるまいが
リアリティーを感じられないんですよ。 |
永田 |
なるほど。 |
糸井 |
それよりは大事な命や時間を
粗末に扱ってるようなやつに怒りがある。
その対比が鮮やかでしたね。 |
西本 |
名実ともに武士になって、
法度や死にこだわらなくなっている近藤と土方。
「なんで斬っちゃわないですか!」と憤る沖田。
その対比が、あの話し合いの場面。 |
糸井 |
そうですね。 |
永田 |
あの場面、別なことを思ったのは、
ほんとに人が
いなくなっちゃったんだなあということです。
平助と斎藤が離れたということもあるけど、
それにしても人が少なくて、
話し合いの輪がスッカスカで‥‥。
たとえば沖田って、本来なら、
ああいう場に加わらなくてもよくて、
それこそ「私はよくわかりません」つって
剣の稽古とかやってればよかったんだけど、
そんな沖田をあの場に加えて
「斬っちゃえばいいじゃないですか」って
言わせなきゃ成り立たないくらい人がいない。 |
糸井 |
それは幕府側にもいえる切なさだね。
近藤たちは「直参になれた」と喜ぶけど、
いわば幕府は潰れる会社だからね。
だからこそあなたを入社させてあげましょうと
言い出したわけですから。
近藤たちが上がったともいえるけど、
幕府が下がったともいえるわけです。 |
西本 |
‥‥‥‥。 |
永田 |
‥‥‥‥。 |
糸井 |
‥‥‥‥。 |
永田 |
本編に入ったら入ったで、
いきなり話が重すぎるわ! |
糸井 |
や、そう思った。ごめん。 |
西本 |
まあ、しゃあないでしょ。 |
糸井 |
じゃあ、お詫びに軽い話をひとつ。
捨助が縁側でスイカを食ってましたよね。 |
永田 |
食ってたっけ? |
西本 |
食ってましたっけ? |
糸井 |
食ってたんだよ! |
永田 |
怒らないでくださいよ。 |
西本 |
スイカがどうしたんですか。 |
糸井 |
あのスイカの表現に注目ですよ。
つまり、どういうんだろうな、
「演劇的西瓜論」とでもいいますか、
ぼくは昔からスイカの表現について
注目しているのです。 |
永田 |
「えんげきてきすいかろん」? |
西本 |
(ヒソヒソ声で)
糸井さんがこういう大仰なことばを
持ち出すときは要注意ですよ。 |
永田 |
(ヒソヒソ声で)
いえてる。先週も
「時空を超えた歴史的推理」
とか言ってたもんな。 |
西本 |
(ヒソヒソ声で)
いったいなにかと思ったら
「孝明天皇が12月25日に死んだということは
西洋人が毒殺したわけではない。
だってクリスマスだから」っていう
よくわからない話で。 |
永田 |
(ヒソヒソ声で)
しかもあの「歴史的推理」、
読者からのメールで
「あれは旧暦だから
クリスマスじゃありませんよ」って
あっさり否定されてたもんな。 |
西本 |
(ヒソヒソ声で)
なんか、ぼくらまで
恥ずかしい思いをしましたよ。 |
糸井 |
黙って聞け! |
ふたり |
さっさとお願いします! |
糸井 |
つまりぼくは以前から
「演劇のなかのスイカ」に
注目していたんです。
そして今回、とうとう、
『新選組!』のなかにも
スイカを発見したわけですよ。 |
永田 |
だからスイカがどうしたんですか。 |
糸井 |
いいですか?
テレビドラマ、マンガ、映画‥‥。
あらゆるメディアで、
スイカの切り方はタテに4回包丁を入れる、
8等分のかたち、半月形なのです! |
永田 |
‥‥なんだこりゃ? |
西本 |
まあ、最後まで聴きましょう。 |
糸井 |
いいですか? 思い出してみてください。
あなたたちは、その、
従来のメディアに必ず登場する
半月形のマンガみたいなスイカを、
実際に食べたことがありますか? |
永田 |
あります。 |
西本 |
あります。 |
糸井 |
ありゃ! ありましたか!
いや‥‥ぼくもありますが。 |
ふたり |
なんなんですか!! |
糸井 |
いや、実際に食べたとしても、
ものすごく食べにくいでしょう?
というか、よく食べるのは、
ああいうかたちじゃないでしょう?
ほんとうにスイカを食べる場合には、
あの8等分の半月に、
櫛の目ように包丁をいれて、
1片を▲にして食べるわけですよ、
おかあさんとかはそうしてたでしょう? |
永田 |
ぼくのおかあさんもそうしてました。 |
西本 |
うちのおかんもです。 |
糸井 |
でしょう? 一般的なのは
▲のスイカでしょう?
ところが、ドラマのなかに、
あの「おかあさんカットのスイカ」は、
なかなか登場しないんですよ。
どんなにリアリズムな
描き方をしているドラマでも、
なーかなか▲カットのスイカを
食べている場面はでてこない。
そして、『新選組!』でもやっぱり、
半月が採用されていた、と。
これはちょっと発見ですよ。
スイカを半月形で見せたい、
▲カットにはしたくないという思いは、
つくり手にとってそうとう大きいんですよ。 |
永田 |
なにがなんやら。 |
西本 |
あ、ぼくけっこう、この話、好きですね。 |
糸井 |
なにが言いたいとか、
そういうことじゃないんです。
誰かがスイカをメディアに再現するとき、
「やはり半月形でなければ」と感じさせる、
とっても強いなにかの力が
きっと作用するんです。
それがはじめてわかった今回は、
ちょっとしたスイカ記念エピソードですよ。
まあ、捨助が食べているスイカを
見逃さなかったぼくの
鋭い観察力があってこそですけどね。 |
永田 |
あの、力説してるところ申しわけないですけど、
スイカは前の回から出てきてますよ。
しかも、もっとおおっぴらに。 |
糸井 |
‥‥ん? |
永田 |
ええと、第7回の「祝四代目襲名」で
左之助がボリボリ食ってますね。 |
西本 |
あ、食ってた食ってた。
神社で紅白に分かれて、
頭に皿つけて試合するときだ。 |
永田 |
そうそう。
あのときも思いっきり半月形。 |
糸井 |
‥‥さあ! ぼちぼち、
観柳斎の話をしましょうか! |
ふたり |
ごまかすな。 |
糸井 |
どうですか、みなさん。
みなさんは、観柳斎が好きですゥ? |
西本 |
糸井さんはどうなんですか。 |
糸井 |
ぼくは冒頭で言ったように、
もう、観柳斎を通して近藤を観てますからね。
単独でとらえづらいところはあるんですけど。 |
永田 |
今回の率直な感想としていうと、
ぼくは、観柳斎を好きになったとたんに
殺されちゃったので、とても悲しかったです。 |
糸井 |
わかりやすい(笑)! |
永田 |
自分で言うのもなんですが、
ぼくは、ほんとうにわかりやすい視聴者です。
つくり手の手の平の上で、
ころころ転がされるのが大好きなんです。
ドラマに限らずなんでもそうなんですけど、
「転がしてくれー」って思いながら
わくわくして待ってるタイプですから。 |
糸井 |
じゃあ、最後で、河合のお墓のところで
「裏切らないんだ」とホッとして、
やっと観柳斎が好きになって、そのとたん、
背中からバッサリやられて悲しかったと。 |
永田 |
おっしゃるとおりです。
「近藤局長からもらったこの命‥‥!」
っていうところは泣けました。
あの、いままでの戦いの場では
「お〜い、ここだぁ!」としか
言ってなかったような観柳斎が、
はじめてかっこよく
きちんと刀を抜きましたから。 |
西本 |
あそこ、抜くところで、
終わらせてるのがうまい演出ですよね。 |
糸井 |
そうそう。あのあとのチャンバラを
かっこよく見せちゃうとウソだからね。
でも、抜くところまでは、
観柳斎を素直にかっこよく表現できる。 |
永田 |
しかも、最後、近藤のまえで、
布団のなかに寝かせられてたところ、
なきがらの枕元に
メガネがあったじゃないですか。
あのメガネ、レンズが割れてるんですよ。
立派に戦ったというか、
慣れない刀をしっかり振ったんだろうなあと
思えて、また泣けました。 |
糸井 |
へえ、それは気づきませんでしたね。 |
西本 |
ぼくは観柳斎を好きだか嫌いだか
よくわからないんですけど、
とにかく日曜日に観たときは、
後半、ドキドキしながら観てましたね。
どういうかたちで殺されるんだろうか、と。 |
糸井 |
そりゃやっぱり、
ちょっと好きなんですよ、観柳斎を。 |
西本 |
そうなんですかね。
いや、ドキドキしましたよ。 |
永田 |
あのさ、おかしな話だけどさ、
ここ最近の『新選組!』を観てるときって
気持ちが入り交じるんだよね。
すっごく正直なところを探ると、
「死んでほしくない」と思う一方で、
「どうやって死ぬんだろうか」って
それを待ってる自分もいるわけじゃない? |
西本 |
ああーー、わかります。
「平助の旅立ち」のときは、
けっきょくその気持ちが
空振りしちゃった感じさえありましたからね。
いや、平助は好きだし、
死んでほしくないんですけど、
そういう、待っちゃう気持ちが、
どっかにちょっとあるんですよね。 |
永田 |
うん。だから、観ていてすごく揺らぐ。
山南さんの切腹のときくらい、
死ぬんだということがわかっていれば
覚悟を決めて観られるんですけど、
平助が出て行くときとか、河合のときとか、
ぐらぐらしちゃう。 |
糸井 |
それも、その人物がきちんと
描かれてるからなんですよ。
今回も、演出としてうまかったのは、
あの切腹する4人の存在ですよ。 |
ふたり |
ああーー。 |
糸井 |
あれも観柳斎の弱さゆえの死ですから。
あの、天井から映したシーンの、
十把一絡げな感じというのは、
見事な演出でしたよねえ。 |
永田 |
あそこは凄惨にしすぎちゃいけないという
気配りが感じられましたよね。
あの4人の撮り方というのは
すごく配慮されてるなと思いました。
こう、4人の誰にもフォーカスしないように
周到に撮られてるんですよね。
部屋に入ってくるのも4人同時で、
しゃべるのも4人同時だから、
4人がひとりずつ死んだという感じじゃなくて
そういう事件があったという感じになってる。
会津の藩邸で座って待ってるところも
逆光にして顔が見えないようにしてた。 |
西本 |
衣装も白で統一して
この人たちは死ぬことになりますよ、
っていうのをなんとなく予感もさせてたし。 |
永田 |
だから、いまあの4人の顔って、
見事に、まったく思い出せない。 |
西本 |
冷静に考えると、
あの4人がいちばんかわいそうだったり
するんでしょうけど。 |
永田 |
なんか観柳斎って、見事に、
後づけ後づけで悪者になってますよね。
よかれと思ってやってることが
最後までことごとく裏目になって。
河合の一件だって、まあ、
西洋の兵法を学ぶことが新選組のため、
って思ってた気持ちはあったわけだし。 |
西本 |
まじっすか。ぼくはそこまで
観柳斎をフォローできないですよ。 |
永田 |
あああ、そう言われるとツラいなあ。 |
糸井 |
いずれにせよ、最後は筆をゆるめて、
観柳斎を落としきらなかったですよね。
墓参りの場面を持ってきたということは。
先週までは、ほんとうに
憎らしかったじゃないですか。
で、今回のタイトルは「観柳斎転落」。
どこまで転落させるかというのは
作者の筆加減なんですよ。
それをどこに設定するのかというのは
書いている人のいちばんの喜びであり、
ツラいところだと思うんですよ。
だから、ドラマとしては、
お客さんが思っているよりも
作者は落とさなかったんだよ。
もっとね、どこまでも落とせと思ってる
お客さんの気持ちもあったと思うんだけど、
作者はいちばん下のギリギリのところに
ネットを張ってあげましたよね。 |
永田 |
その配慮はぼくにとってはうれしかったです。 |
糸井 |
ただ、新選組という組織全体からみると、
救いのなくなる方向へ向けましたよね。
まさに内部のいざこざで
殺されてしまったわけですから。
せっかく直参になったのに、
その喜びを差し引いてマイナスに
表現してましたよね。 |
永田 |
そうですね。これまで死んだ隊士は、
切腹を言い渡したり、
どうしようもなくて斬ったり
してたわけですけど、
今回は明らかに内紛ですから。
その意味ではかわいそうな最後でした。 |
糸井 |
もう、近藤の手のうちでは
動かなくなった組織を表現してるよね。 |
西本 |
いままではさんざん土方が
切腹を命じてたわけだから、
「こんな悪い観柳斎は
俺たちが斬っても大丈夫だろう」と
あの小僧たちは思っていたんでしょうね。 |
糸井 |
中心にいる人物が
苦渋の決断をするのではなくて、
周辺の人間の感覚が麻痺して
生死を扱っちゃったわけだよね。
それは意味合いが違いますよ。 |
永田 |
序盤のところで近藤が言ったセリフが
ほんとに象徴的ですよね。
「人をまとめていくのは難しいことだ」と。
いいと思ってつくった決まりが形骸化して
なんのための決まりなのか
というふうになるあたり、
いまの会社とかにも通ずる
問題なんだろうなあと思いました。 |
西本 |
会社、組織という観点からいくと、
観柳斎を斬った隊士が
所属している組の組長が悪いですね。
その意志が隊士まで
届いてないわけであるから。 |
糸井 |
あ、なるほど(笑)。 |
永田 |
あの小僧たち、何番組でしょうね? |
西本 |
左之助のところですかね。 |
糸井 |
だいたい左之助が
組長をやれること自体がおかしくないか。 |
永田 |
ていうか、自分が新人なら
どの組に入りたいですか? |
西本 |
うわ、それは悩むなあ〜。
やっぱり、自分がかわいいんで、
永倉さんかなぁ。
なんか助けてくれそうじゃないですか。 |
糸井 |
あああ、永倉かあ。 |
永田 |
あ、ぼくもまず永倉さんが浮かびましたね。
う〜ん、沖田の下はイヤだしなあ。 |
西本 |
あ、イヤですね。 |
糸井 |
オレは自分が若かったらいっそ沖田だな。 |
永田 |
マジっすか。
なんか、自分はすごいんだけど、
教え方がうまくなさそうな感じしませんか。 |
糸井 |
でも、そういう人の下についてると、
それだけでいろんなことが見えるよ。
要するに、細いけど
いちばん見えやすい道なんだよ。 |
西本 |
ああ、なるほど。 |
永田 |
「沖田さんの下はキツかったなあ」
とか言いながら、そのときの経験が
のちの自分にいちばん役立ってる、
みたいなパターンだ。 |
糸井 |
そうそう(笑)。 |
永田 |
オレ、左之助でもいいな。ああいう、
「ダメなところはからっきしダメな上司」って
嫌いじゃないんですよ。
「おもしろそうだからやれ!」とか、
言ってくれそうじゃないですか。 |
西本 |
山崎の場所もいいですね。 |
永田 |
山崎は組じゃないじゃん。監察じゃん。 |
西本 |
ええ。監察、ちょっと興味あります。 |
糸井 |
ちょうどひとり逃げちゃったしね。
じゃ、そこの欠員に西本くん、入る? |
西本 |
そうします。 |
糸井 |
あと、経理もひとり欠員が出たんだけど、
永田くん、どうだね? 河合さんの後釜。 |
永田 |
経理はちょっとなあ‥‥。
八畳と六畳が4部屋ずつあって
そこに50人が入るとき
ひとり当たり何畳かっていうことは
よくわからないです。 |
糸井 |
不採用です! |
西本 |
島田さんのところとかどうですか。 |
永田 |
あ、いいかもね。
旗のデザインとか、羽織の発注とか。
あれだ。相撲のときに撒く、
チラシの文面とか考えますよ。
あることないこと書いたりしますよ。 |
糸井 |
まあ、あんまり隊士には
なりたくないということがわかったね。
反対側の西郷さんとか
龍馬の下働きとかどう? |
西本 |
いやぁ〜。 |
永田 |
あんまりうれしくないよね。 |
西本 |
墓のデカさで桂さんかな。 |
糸井 |
それはずるい考え方ですね。 |
永田 |
高いところにお墓があったよなあ。
奥さんのお墓も横にあったしなあ。 |
西本 |
河合のお墓も立派ですよ。 |
永田 |
あれ、京都で見たお墓のまんまだったね。 |
糸井 |
そうそう、お墓で思い出したんですけど、
観柳斎が河合のお墓に行くとき、
虫の音がリンリン鳴ってたじゃないですか。
一度言おうと思ってたんですけど、
このドラマは虫や鳥の音の使い方が
すごく上手ですよね。というのは、
こないだ京都に行って旅館に泊まったときに
感じたんですけど、これが音だらけなんですよ。
京都って、小さな旅館でも、
坪庭とか植え込みがあったりして、
やっぱ虫の音なんかがすごく身近なんです。
あの効果音をつけてる人というのは、
照明さんに近いくらい見事な演出をしてますよ。
そうとう考えて配置してるんじゃないかなあ。 |
永田 |
それに付随して言いたいんですけど、
このドラマって季節感を出し過ぎても
ダメなんだと思うんですよ。
つまり、雪とか、出しちゃうと、
半年くらい一気に時間が経つときに、
すっごく時間がめまぐるしくなっちゃう。
冬も夏もあるんだけど、基本的には
みんな同じような着物を着ていて、
極端に暑がったり寒がったりしない、
くらいの季節感じゃないと
観るものが落ち着かないというか。
というときに、通奏低音のような
季節感を醸し出すものとして、
虫とか鳥の音が大事にされてるんじゃないかと。 |
糸井 |
あ、なるほどね。
絵で見せるより音で感じさせる季節感。
今日は、ヒグラシの音とかが
ほんとうに効果的でしたよ。 |
西本 |
あれ、ぐっさんがやってたら笑いますね。 |
永田 |
「シ、シ、シ、シシシシ〜〜」って(笑)。 |
糸井 |
あれ、上手だよなあ。 |
ふたり |
上手ですよねえ。 |