永田 |
第47回を観おわりました! |
西本 |
お疲れさまでした。 |
糸井 |
お疲れさまでした。 |
永田 |
今日は、ドラマの話に入るまえに
触れておかなければならない
話題がありますね。 |
糸井 |
なんですか。 |
永田 |
「古田新太問題」です。 |
西本 |
はい。 |
糸井 |
あれはけっきょくどうなんですか。 |
永田 |
ちょっとあなた、
これまでの流れを知らない人のために
経緯を説明してください。 |
西本 |
了解しました。
まず、前々回の放送で、
進軍してくる薩摩軍のなかに、
俳優の古田新太さんらしき人がいました。
さっそく、ぼくが、月曜日の対談のなかで、
「古田新太さんが出てましたよ!」と報告。
ところが「そんなわけねえだろ」ということで
ふたりに一蹴されまして、
ぼくはしょんぼりしておりました。
すると、読者から「古田さんが出てました」と
山のようにメールが。 |
糸井 |
山のようには来てないだろ。
せいぜい数通だったはず。 |
永田 |
あと、しょんぼりもしてなかった。 |
西本 |
まあ、ともかく。それを受けて、先週、
「やっぱり古田さんじゃないですか」
と言ったところ、来週の『新選組!』に
古田新太さんがちゃんとした役で
出演することが発覚。 |
永田 |
ってことはどうなんですか?
前々回の薩摩兵は古田さんだったんですか? |
糸井 |
違うんですよ。 |
西本 |
はっきりとそうだとはいえません! |
糸井 |
きちんとした役で出るんだから
違うってことでしょう。 |
永田 |
読者の方からも
「見直してみたが違います」
というメールも来てましたよ。 |
西本 |
はっきりそうだとはいえません! |
糸井 |
じゃあ、答えは出ないということですか。 |
西本 |
そうですね。関係者の発言を聞くまでは
わからないんじゃないですかね。 |
永田 |
往生際がわるい。 |
西本 |
きちんと出演するからこそ
あそこで出ちゃったという説もありましたよ。
下見に来てついそのまま
出ちゃったというような。 |
永田 |
揺るぎある説だらけだな。 |
西本 |
確証を得るまでは保留です。キープです。
キープオンロッキンでお願いします。 |
糸井 |
まあ、いろんな説にふらふら揺られてる
ぼくらがダメだっていうことですよ。
で、ダメだといえばもうひとつ。
ぼくはもう、この男子部のメンバーというのは、
ほんとうにダメだなあと思いましたよ。 |
ふたり |
なんですかなんですか。 |
糸井 |
「ひでの男装問題」ですよ。 |
永田 |
あ。 |
西本 |
あ。 |
糸井 |
「玄関理論」だとか、
女の姿だと危ないからだとか、
さんざんもっともらしいことを言っておいて。 |
永田 |
たいへん申しわけないことです。 |
西本 |
「そりゃちがう!」っていうメールが
つぎつぎに来ましたね。 |
糸井 |
「おまえらは女心がわかっちゃいない!」
っていうメールがね。 |
永田 |
代表的なものを紹介しておきましょう。
|
=
「ほぼ日テレビガイド」、
毎週楽しく読ませていただいてます。
八木家のひでちゃんが男装で現れた件ですが。
あれは女のひでとはもう会わないと
沖田と約束したから
男として会いにきたのだと思います。
それでも会いに行きたかったという女心ですよ。
わかってませんね、女心(笑)。
では。
(hisa) |
|
永田 |
あいたたたたた。 |
西本 |
あいたたたたた。 |
糸井 |
もう、ダメですよ。からっきしですよ。
「大阪までの旅が危ない」とかね、
「往来で声がかけづらい」とかね、
もう、中学生レベルの語り合いですよ。
はっきり言ってね、このメンバーは、
「男と女の恋愛模様」に弱い! |
ふたり |
あいたたたたた。 |
糸井 |
いい歳して、女心のわからない
鈍感な男たちですよ。 |
永田 |
返すことばがありません。 |
西本 |
反省しております。 |
永田 |
メールをくださったこともある
吹石一恵さんにも、
この場を借りてお詫びいたします。
ぼくら、わかっちゃいませんでした。 |
西本 |
「男装はやりすぎ」なんて言って、
すいませんでした。 |
糸井 |
ほかになんか、
お知らせすべきことはありましたっけ? |
永田 |
リカさんが買い物をしているとき、
勝海舟こと野田秀樹さんに会ったそうです。 |
糸井 |
久々の目撃例ですね。
にしもっちゃんは会ってないんですか。 |
西本 |
いや、もう、さっぱりですわ。 |
永田 |
一時期の勢いはどうしたんだ。 |
西本 |
毎週毎週、当然のように
会ってた時期がありましたねえ。
もうぜんぜんダメです。
会える気がしません。 |
糸井 |
刀の時代が終わったように‥‥。 |
永田 |
西本の時代も終わったと。 |
糸井 |
カレーも食わないしな。 |
永田 |
ああ、ちょっとだけありましたね、
日曜日に必ずカレーを食うという流れが。 |
西本 |
昨日なんか焼肉ですもん。 |
糸井 |
誰にも会わないし、カレーも食わない‥‥。 |
永田 |
刀と西本の時代は終わった‥‥。 |
西本 |
あ、そういや日曜日の焼肉は
ちょっとおもしろかったですよ。 |
糸井 |
どうやらあなたは
日曜日に焼肉を食ったときの話を
はじめるつもりですね。 |
永田 |
うかがいましょう。 |
西本 |
まあ、何人かの知り合いと
焼肉を食べたわけですけど、
そのあと、知り合いのひとりが、
「このあと、ウチに来て飲まないか」
と言うんです。話を聞いてみると、
「おまえは『新選組!』を観たいんだろう」と。
「今日、録画したから、飲みながら観よう」と。 |
永田 |
気が利いてますね。 |
西本 |
で、その人の家にみんなで移動して、
全員で、へべれけに酔っぱらいながら
『新選組!』を観るという経験をしました。 |
糸井 |
へえ、そりゃちょっと新しい。 |
永田 |
じゃあ、ここでいま観たように、
黙って、じーっと観るのではなく。 |
西本 |
もう、ワイワイ騒ぎながらですよ。
まさにこのドラマは大衆娯楽ですよ! |
糸井 |
大きく出たね(笑)。 |
西本 |
わかりやすくいうと、
「『新選組!』があるから
うちに遊びに来ないか?」
ということがあり得るというわけですよ。
そんな大河ドラマがいままでありましたか? |
永田 |
「ファミコンあるから、ウチ来いよ」
みたいなもんですね。 |
西本 |
いまだったら
「ニンテンドーDSあるよ」と。 |
糸井 |
で、どうだったんですか?
泥酔しながら観た『新選組!』は。 |
西本 |
それがですね、
‥‥ほとんどなにも覚えてない。 |
ふたり |
飲み過ぎだ! |
西本 |
とってもたのしかったということは
覚えているんですけどね。 |
永田 |
それ、『新選組!』なくても
いっしょだろうよ。 |
西本 |
記憶の断片をたどって、
唯一思い出せたことといえば、
みんなが『新選組!』を観てるとき、
ぼくは山岡鉄舟を指さして、
「こいつは悪い人だ!」と
しつこくしつこく言い続けてました。 |
ふたり |
酔っぱらいだ! |
西本 |
どうやって家に帰ったのか‥‥。 |
糸井 |
毎週、同じセリフを言いますけどね。 |
ふたり |
はいはい、どうぞどうぞ。 |
糸井 |
こんな話を続けてていいんですか? |
ふたり |
ダメです! |
糸井 |
ドラマの話をしなきゃですよ。 |
永田 |
今週は‥‥いよいよ終わりが近づいて。 |
西本 |
さびしいですねえ。 |
糸井 |
切ないよなあ。
登場人物の誰が何をいっても、
どこか、むなしさがあるんだよね。
だってさぁ、甲府って行ったことある? |
西本 |
ないです。 |
永田 |
ぼくは2回ほど。 |
糸井 |
オレは何度も行ってるんですよ。
釣りでも行ってるし、
カブトムシも採りに行ったし、
任天堂社長の岩田さんの
前の会社にもよく行ったけど、
遠いんですよ。山ですよ。盆地ですよ。
山、山、山、山、山、山を越えていくと。 |
永田 |
葡萄。 |
糸井 |
葡萄。山、山、葡萄、山、山、葡萄、山、山、
葡萄、葡萄、葡萄、林真理子、葡萄、林真理子、
葡萄、山、山、盆地、葡萄、山、山、山‥‥。 |
永田 |
おーい、誰か止めてくれ。 |
西本 |
こらこら、いつまでやるねん。 |
糸井 |
そういうところなんですよ、甲府って。 |
永田 |
甲府在住のみなさんに
失礼を深くお詫びいたします。 |
糸井 |
そんなところでね、
「薩摩を迎え撃つのだ!」と言ってもね、
そりゃあ、誰も何も信じないよね。 |
永田 |
もう、冒頭の、近藤と勝海舟のやり取りが、
この回の内容の
ほとんどなんじゃないでしょうか。 |
西本 |
いまの近藤たちの置かれている立場と、
行く末が表されてましたね。 |
糸井 |
あの勝海舟の複雑な役割っていうのは、
じつにおもしろかったですね。 |
西本 |
あの人は悪いけどいい人ですよね。 |
糸井 |
そうそう。 |
永田 |
勝海舟が、最後のところで
近藤を「ほんとうは見抜いてる」としたことが
ドラマのバランスとして見事だと思いました。 |
糸井 |
そういう結論にしたんですよね。
唇を震わせてね。 |
永田 |
で、そのあと「甲陽鎮撫隊」の名前を笑って、
さらに逆にバランスを振るあたりが周到。 |
糸井 |
あそこで名前をもってくるのはうまいよなあ。
「甲陽鎮撫隊」って!
「鎮撫隊」だよ? 「ちん」だよ? |
西本 |
音がもう、弱そう。 |
永田 |
暴走族を「珍走団」と
呼ばせるようなもんですよね。 |
糸井 |
あれはさあ、三谷さんが気づいたのかね。
「甲陽鎮撫隊」って
なんていうまぬけな名前だろう、と。
それを勝海舟に言わせたのかね。 |
永田 |
逆にいうと、「新選組」という名前が
ほんとにいいんですよ。
これが最初から「鎮撫隊」だったら
こんなに人気が出たかどうか。 |
西本 |
容保公のいちばんの功績というのは
「新選組」という名前を
思いついたことでしょうね。 |
永田 |
それ、言えてるわ! |
西本 |
容保公、グッジョブですよ。 |
永田 |
名前って大事だよねー。
「見廻組」とかも、弱いもん。 |
糸井 |
「菜葉隊」とかもそうだよね。
史実にあるらしいけど、
ああいうふうに扱うしかないでしょ。 |
西本 |
その弱そうなところをビビる大木くんが
演じているのがいいですよね。
「はっぱ隊」つながりだと
スタジオパークで三谷さんが言ってましたが。 |
永田 |
あれじゃ勝てる気しないよなあ。
ていうか、菜葉隊、来なかったけど。 |
糸井 |
名前だけじゃなく、菜葉隊って、
薩長をおもしろくないと思っている
人の集まりですからね。
そういう、いわば、
「不満」でつながっている人たちが、
天皇の軍隊となって勢いづいている
薩長を押し返せるわけがないんですよ。 |
西本 |
勅命を受けている薩摩軍と、
「ここは甲府に行ってくれ」と言われた
新選組の差も大きいような気もします。 |
永田 |
そういう、よくわからない義よりも、
おみつさんの
「薩長の世の中ではダメなの?」
ということばのほうが
よっぽどリアリティーがありましたよね。 |
糸井 |
うん。だからまあ、甲陽鎮撫隊は、
勝てるわけがないよね。
冷静になってみれば、
鳥羽伏見でもう終わってるんだよ、
ということを、もう、みんなが
知っているようなものじゃないですか。 |
永田 |
いえ、ひとり知らない人がいましたよ。 |
西本 |
ええ、いましたいました。 |
糸井 |
え? |
永田 |
今週になって、ようやく、
「刀の時代が終わった」と言った人が。 |
糸井 |
あ、局長か! そうか、近藤は
大阪城にいたから知らなかったんだ。 |
永田 |
ええ。
「この人はいまごろこんなことを言うんだ」
って思いました。 |
糸井 |
近藤が最後なんだね。それはおもしろいね。 |
西本 |
土方は服装まで変わっているのに。 |
永田 |
だから、後世から歴史を俯瞰している
糸井さんみたいな人は、
龍馬が鉄砲を撃ちながら逃げた時点で
「刀の時代は終わった」と思ってて、
現場感覚のにしもっちゃんは前々回で
「刀の時代は終わった」と。
土方はそのつぎの週で「終わった」と。
で、今週は、新選組のトップの人が
ようやく「刀の時代は終わった」と。
そりゃ、勝てないですよね。 |
糸井 |
「1万の兵を貸してくれたら勝ちます」
ということを、
近藤はあんなに気張って言ってたけど、
そのあとに「刀の時代は終わった」
なんて言ってるわけですから、
一万の兵を貸りてても
ダメだったということですよね。
だからもう、近藤は、完全に
「戦」で外しているんですよ。
で、「女」で外したのが土方です。
ここは、今回重要なところだったと思います。 |
永田 |
あれ、ちょっと意外な展開だったなあ。
外すとは思わなかった。 |
糸井 |
それが中学生レベルだと言うんですよ。 |
永田 |
返すことばがありません。 |
糸井 |
外すってああいうことなんですよ。
土方はあれで通じると思っているんですよ。 |
西本 |
故郷に錦を飾って、
モテモテだと思ってたわけですよね。 |
永田 |
ぼくはまた、
納屋に連れ込んじゃうんだと思ってました。 |
西本 |
あ、そういう、
おもしろ場面に備えてたわけですね。 |
永田 |
そそそそそ。 |
糸井 |
ぼくはわかってましたよ。
これは土方、ダメだな、と。 |
永田 |
おお。 |
西本 |
なんでまた? |
糸井 |
だって、抱きついたときに
角度がついてましたもん。 |
永田 |
は? |
西本 |
は? |
糸井 |
つまり、あのおねえちゃんに、
がっと抱きついたときに、
土方のほうが傾いていったでしょ?
ええと、こう、ふたりが
地面と垂直に立っててさ、
土方のほうが、そうだな、角度でいって、
80度くらい傾いていったじゃないですか。 |
永田 |
この人は何を言ってるんですか。 |
西本 |
さっぱりですわ。 |
糸井 |
だから、抱き寄せたんじゃなくて、
抱きついていったでしょ?
モテモテの土方だったら、
地面と90度のまま、真っ直ぐ立ってて、
向こうから80度で抱きつかれてますよ。 |
西本 |
はあはあ、そういうことですか。 |
永田 |
よくそんなこと考えるなあ。 |
糸井 |
つまり、抱き合ったときの形が、
「入」という字になってるんですよ。
いいときの土方なら、
「人」という字になってますよ。 |
永田 |
それじゃどっちも80度じゃないですか。 |
糸井 |
そーゆーこと言ってんじゃないだろ! |
西本 |
どうでもいいですけど、
あのお姉ちゃんは妙にデカかったですね。 |
ふたり |
デカかった、デカかった。 |
西本 |
モデルさんですかね。 |
糸井 |
とにかく、あのモデルさんに、
ひとりの男として通用しなくなった時点で、
土方の根っこのところが
ご破算になってしまってるんですよ。 |
永田 |
はあはあ、そういうことか。
剣で破れるよりも、戦で負けるよりも、
土方という男にとっては、
そのことのほうが本質的な敗北だと。 |
糸井 |
そういうことです! |
永田 |
ほんとうにまじめな意見だったんですね。 |
糸井 |
いまごろ何を言ってるんですか。
だからこんなにきちんと
説明してるんじゃないですか。 |
永田 |
失礼しました。おもしろ話かと思ってました。 |
糸井 |
つまり、京都では、
「新選組副長」の名刺が効くわけですよ。
ところが多摩じゃ効かないんです。
土方が、鬼の副長としてではなく、
ひとりの男として、プラマイゼロの状態で
乗り込んでダメだったわけですからね。
これは大きいんですよ。 |
永田 |
ゼロというよりはマイナスじゃないですか。
多摩の田舎で、あんな格好で会いに行ったら、
ふつう、ぎょっとするでしょ。 |
糸井 |
そりゃそうだね(笑)。 |
西本 |
ああ、でも、昔のオレだったら、
ああいうことやっちゃうなあ。 |
ふたり |
(笑) |
西本 |
田舎でこそ都会の服を着る、みたいな。 |
糸井 |
変身して出かけるわけだ。 |
西本 |
やっちゃいそうですねえ。
いまはやりませんけど。 |
糸井 |
それでダメだったんだから、
ダメージの大きさがわかるでしょ。
多摩で歳ちゃんといえば
昔はブイブイいわせてたわけですからね。
立場的には旗本になってるわけですし。 |
西本 |
しかも、京都帰りの粋な男ですからね。 |
糸井 |
さらに洋服でばっちり決めて。 |
永田 |
名前も「隼人」ですし。 |
糸井 |
だからこそ、
カウンターパンチなんです。
オンザグラウンドなんです。
テンカウントなんです。
ドクターストップなんです。 |
永田 |
どっちなんですか。 |
糸井 |
そのあとのひどい
落ち込みようでわかるでしょ。 |
西本 |
そうですね。あの土方が、
「京都の5年ってなんだったんだろう」と。 |
永田 |
近藤が「江戸に帰る」と言っても
「オレは京に残る!」といい切った男が。 |
糸井 |
はじめてといっていいほど
落ち込んでましたよね。
ああなっちゃいますよ。 |
永田 |
つまり、まえの糸井さんの話と合わせると、
サイコロの目を変える生き様で
勝ってきた近藤が落ち始める象徴が
肩を撃たれた一発の弾丸で、
土方が終わり始めることの象徴が、
あのモデルさんに振られたことだと。 |
糸井 |
おっしゃるとおりです。
だからね、にしもっちゃんが、
ここからはじまる『土方物語』を
観たいとまえに言ってましたけど、
ぼくはね、観ないほうがいいと思うんですよ。 |
西本 |
ああ、なるほど。 |
糸井 |
戦場での勇もやつれてたしなあ‥‥。
なんか、明るい話をしましょうか。 |
永田 |
多摩の人たちですかね。 |
糸井 |
小日向さん、あいかわらずよかったよねえ。 |
永田 |
でも、あの人が戦うのってつらいですね。 |
糸井 |
ああ、あの人が来ちゃったら悲しいなぁ。 |
西本 |
さっそく寂しい話になってますよ。 |
ふたり |
いかんいかん! |
西本 |
例のいろんなお約束や伏線が活きてて、
最初から観てる人はたのしめたでしょうね。 |
永田 |
そのあたりは、ぼくらがちくちく語るよりも
読者の方から見事なメールが来てましたので
それを紹介しましょう。
|
=
回想シーンは一つもありませんでした。
これは、『新選組!』製作者の、
または三谷さんの自信でしょうか。
回想シーンなどなくても、
すべてはっきりと思い出せます。
今までの伏線がうまく使われていました。
これは、ずっと見てきた視聴者への
プレゼントでもあるのでしょうか。
以前のシーンと、心の中で「再会」です。
「総司のこと、よろしくお願いします」と言った、
同じ場所でおみつさんが
近藤さんから「総司は労咳」と聞かされる。
壬生大相撲のうちわは出てくるし、
近藤さんの「前にも同じ光景を見た」だけで、
総司が「浪士組に加わりたい」と
言った時を思い出します。
左之助の「連れてってやろうぜ」も同じ。
「土方さんは昔のクセが直っていない」で、
総司の
「土方さんはねぇ、剣先が左に傾きすぎる」
を思い出します。
それに、おみつさんが人の特徴を言うだけで
誰だかわかる‥‥。
三谷さんが忠臣蔵の脚本を書いたら、
47士すべて覚えられそうです。
(にこにこ) |
|
西本 |
はあ〜〜。 |
永田 |
しんみりしちゃうなあ。 |
糸井 |
なんでこんな
寂しいメールを紹介するんだ! |
永田 |
すいません、見事だったもので。 |
西本 |
いや、でも、この寂しい感じは、
今回ずっとありましたからね。 |
糸井 |
そうだねえ。終わりだからねえ。 |
永田 |
読者の方からのメールでも、
早々と別れの挨拶をする人が
ちらほら現れてますよ。 |
西本 |
そうそう。
「連載ご苦労さまでした」みたいな。 |
糸井 |
もう、ドラマ全体に、
『蛍の光』が流れてますよね。 |
西本 |
流れてますねえ。 |
永田 |
例によって笑える場面を添えて、
ちゃんと成立させてるんですけどね。
ウタノマエの土方の洋装のところとか。 |
西本 |
よくできてて、おもしろいんですけど、
以前のようには笑えないんですよね。 |
永田 |
そりゃもう、こっちの問題だよね。
観てる客のムードというか。
舞台の芸人さんたちは
調子よくやってるんだけど、
客のオレらのノリが悪いというか。 |
西本 |
「今日の客、空気重いわあ」
って感じですよね、きっとね。 |
糸井 |
まさにそのとおりですよ。
そういう回だったと思いますよ。 |
永田 |
じゃあ、もう、
ムリして雰囲気を変えずにこのまま。 |
糸井 |
そうしましょう。 |
西本 |
今回のトピックとしては、
とうとう永倉が隊を離れましたよ。 |
糸井 |
そうですね。斎藤が
「永倉さんは間違ってる」と言いますけど、
もう、どっちが間違ってるも
なにもないですよね。
あそこ、どうでしたか? |
永田 |
う〜ん、もっと泣けていいはずなのに、
グッとこなかったんですよね。
左之助のほうがグッときた。
なんていうか、永倉新八という人が、
けっきょく最後まで
ああなんだなって思いました。 |
糸井 |
ん? というと? |
永田 |
変な言いかたですけど、
お笑いのぐっさんが演じるという以上の
おもしろみを最後まで
永倉に感じられなかったというか。
それは、ひょっとしたら、
永倉という人が生き残っていて、
多くの新選組の物語が
永倉の伝記をもとにつくられているから
なのかもしれないなって思ったんですけど。
つまり、残っている史実って、
永倉の視線で観たものが多いんでしょう? |
糸井 |
要するに、永倉という人を、
スケッチする人がいなかったということだよね。 |
永田 |
そうですそうです。 |
糸井 |
だから、ああいう、妙に真っ直ぐな人に
なっちゃうのかもしれないよね。 |
西本 |
永倉はもともと、時代を読むのが
得意なタイプじゃないんですよね。
よくわからないままに
ヒュースケンを斬ろうとしてましたし。 |
永田 |
なんにせよ、あの雨の場面は
ずっとつらかったですねえ。
甲府はつらい場所だった。 |
糸井 |
思えば、薩長はこのままの勢いで、
自分たちの政府をつくって、
それこそ、日清、日露と
戦争に勝っていくんですよね。
だから、甲府を突破してきたままの勢いで
ついこないだまで走ってきたとも
いえるわけですよ。
だからえらい節目だったんだよね。
明治時代まで続くような流れだから。
みんな大事そうなセリフを言っているんですよ。
斎藤が旗をつかんで叫んだり、
沖田が桜の下で語ったり。
大切なセリフがいっぱいありましたよ。
でも、大きな流れに
掻き消されてしまっているんですよね。 |
西本 |
ええ。言えてます。今回はそういう回でした。 |
糸井 |
もう、みんなの心には、
『蛍の光』が大きく響いてるんですよ。 |
永田 |
いよいよあと2回ですからね。
新選組の5年間もいよいよ‥‥。 |
糸井 |
ん? |
永田 |
え? |
糸井 |
んんん? |
西本 |
なんなんですか。 |
糸井 |
プラモデルのさ、
縮尺って、ふつういくつ? |
ふたり |
‥‥‥‥。 |
糸井 |
何分の一、とかあるじゃない? |
西本 |
それは、まじめな話なんですか。 |
糸井 |
まじめな話だよ! |
永田 |
「144分の1」とかじゃないですか? |
西本 |
お、ガンプラ世代! |
永田 |
ファーストガンダム直撃世代です。
でも、実際は、ドムをひとつ、
つくっただけで終わりました。 |
糸井 |
「10分の1」とかの
プラモデルがあったとしたら、
それは大きいのかな。 |
ふたり |
大きいですよ。 |
糸井 |
「8分の1」は? |
西本 |
大きいでしょう。 |
永田 |
超デカい。 |
糸井 |
「5分の1」なんてもう。 |
ふたり |
デカい、デカい。 |
糸井 |
なんの話をしているかというと、
もちろん新選組の話ですよ。
新選組が5年間だとすると、
このドラマはそれを1年間かけて
追っているわけだよね。となると、
縮尺は「5分の1」じゃないですか。 |
ふたり |
あ! |
糸井 |
ま、多摩編があるから、厳密には
「5分の1」じゃないけど、
それにしたって、けっこう、
ぼくらが思っているよりは、
実寸に近い大きさだとはいえませんか。 |
西本 |
あああ、じゃあもう、
ほんとに、駆け抜けるように。 |
糸井 |
過ぎたんじゃないですかねえ。 |
永田 |
よくそんなこと思いつくな。 |
西本 |
大河というと、ひとりの人の、
一生を追ったりするわけですけど。 |
糸井 |
それよりはずっと短い期間を
追ってるんだよ。
こうしてドラマを観てた期間の、
5倍くらいの時間。 |
永田 |
うーん、そうかあ。
あっという間だったんだろうなあ。
なんか、しみじみしますねえ。 |
糸井 |
そうだねえ‥‥。
ほかに、今回の話で、
印象に残ってる場面とかありますか? |
西本 |
あの、めずらしく今回、
ぼくはグッときたセリフがあったんですよ。
いや、もちろん、泣きませんでしたけど。 |
糸井 |
どこですか。 |
西本 |
おみつさんのセリフで、
沖田がみんな死んでしまったことを
報告してるのに、最後のところで、
「よかった。みんな元気なんだ」
という返しをするところ。 |
永田 |
あああ、あれはぼくも好きです。
「みんな元気じゃない」ということは
おみつも沖田もわかってるんだけど、
あえて、という。 |
糸井 |
あのセリフはいいね。
おつな部分だったね。 |
永田 |
ぼくの好きな場面でいうと、
多摩での宴会のところで、
座の中央に引っ張り出された勇が
照れながら沖田の手を引っ張って
「おまえも立てよ」「イヤですよ」
みたいな感じになってるのがよかったですね。
ああいう動き、しちゃうよなあと思う。 |
糸井 |
あれね、よかったね。 |
永田 |
糸井さんは? |
糸井 |
うーん、やっぱり勝海舟かな。 |
永田 |
なるほど。 |
西本 |
それにしても今週は届いたメールの量が
尋常じゃなかったですね。 |
永田 |
「古田新太問題」もありましたし、
「ひで問題」もありましたし、
「スマステに新選組メンバーが集合」
っていうのを知らせてくださる
メールもありましたし。 |
西本 |
あと、すごかったのは、
DVD販売に対する反響メールですよ。 |
永田 |
そうでしたそうでした。
「ほぼ日で売るそうですが、
特典はなんですか?」
という問い合わせや、
「こういう特典をつけて」
という具体的な要望なんかも。 |
糸井 |
まあ、せっかくメールをいただいたのに
こういうことを言うのはあれですけど、
ぼくらがつけようとしている特典は、
みなさんが考えている
「おまけ」のような路線とは
ちょっと違いますよね。 |
西本 |
グッズみたいなものを
予想されている方が多かったですよね。
そういうので勝負すると
うちの持ち味が発揮できませんからね。 |
糸井 |
ま、おじさんが、
ほんとうに人を喜ばせるというのは
どういうことか、みせてあげるよ。 |
永田 |
ぼくは過剰に期待されてるなと思って
ちょっと不安もあるんですが。 |
糸井 |
なにを言ってるんですか。
ぼくらはほんとうに『新選組!』に
感謝しているということを
表現したいんですよ。 |
永田 |
そうでしたそうでした、
このプロジェクトの仮題は、
「三谷くんありがとうセット」でした。 |
西本 |
「三谷くんお誕生日おめでとうセット」
という案もありましたよ。 |
糸井 |
なにしろ、感謝の印ですから。
今年の後半、『新選組!』に
どれだけたのしませてもらったと
思ってるんですか。
いわば、ぼくにとっては、
近所に唯一やってくる紙芝居のおじさんが、
三谷幸喜の顔をしていたと
いうくらいのことなんですよ。
香取くんが『鉄腕アトム』で、
土方が『鉄人28号』ですよ。
沖田総司は『矢車剣之助』ですよ。 |
永田 |
最後のやつがよくわかりません。 |
西本 |
同感ですね。 |
糸井 |
ぼくの少年時代に
チャチャを入れないでください。 |
永田 |
失礼いたしました。 |
西本 |
よくわかりませんが、とにかく、
「ありがとう紙芝居のおっちゃん!」
ということですね。 |
糸井 |
そうです。夕焼けに溶けていくおっちゃんに
涙ながらに手を振るような
感謝の気持ちを表したいわけですよ。 |
西本 |
がんばりましょう! |
糸井 |
がんばりますよ! |
永田 |
それはさておき、
ぼくらが対処できないリクエストもありました。
「DVDはこういう編集にしてください」とか
「英語字幕を入れてください」とか。 |
西本 |
DVDそのものには関与できません!
DVDをつくるのはうちじゃありません。
うちが目指すのはあくまで小売店です! |
永田 |
あと、おもしろかったメールとしては、
「無許可で販売しちゃって
大丈夫なんですか?」と
心配してくださっている方がいました。 |
糸井 |
わはははははは。 |
西本 |
許可はとります!
闇ルートで販売するわけではございません! |
永田 |
それから、多くの人が、
とにかく特典と販売価格を
早く教えてくれと。
それによって、どこで予約するか、
考えなきゃいけないから、と。 |
西本 |
ま、率直にいって、
特典はまだ決まってません!
もちろん企画は動いてますが、
確定してないので発表できません。
あと、正直、価格競争には参入できません。
ていうか、ムリですわ。
いちおう経理と相談しましたが、
「ムチャを言うな」と怒られました。 |
糸井 |
でも、大丈夫です。
喜ばせる自信があります! |
ふたり |
がんばります! |