八嶋 |
後半、誰かが死ぬ回があると、
撮影後に飲み会になるわけですよ。
山南切腹の回のときは大飲み会でしたね。 |
糸井 |
いわば、通夜が行われるわけだ。 |
八嶋 |
ほんとにそうですよ。
それまでに死んでいなくなった人たちとか
いろんな人たちも来たりとかして。
そのときの飲み会のことを、
三谷(幸喜)さんが朝日新聞のコラムに
書いたんですけどご存じですか?
その、飲み会のときに、
ぼくが局長について意見して、
山本君とケンカになったっていう。 |
糸井 |
ああ、あったあった。
※編集部注:
三谷幸喜さんが朝日新聞の夕刊に執筆しているコラム
『三谷幸喜のありふれた生活』のなかで書いたもの。
ある日、『新選組!』収録後の飲み会で
酔っぱらった武田観柳斎(八嶋さん)が、
局長がくだした判断について意見した。
それを聞いて、土方歳三(山本耕史さん)が激怒。
『オレのことは何を言ってもかまわないが、
局長を悪く言うやつは許さん!』と叫んだ。
当の近藤局長はそれを微笑みながら見ていた‥‥
という、エピソード。
ウソかほんとかわからないけれど、
もしもほんとうだとしたらそれって、
まるでドラマの中のキャラクターと
おんなじではないか、という内容でした。 |
八嶋 |
あれは、ウソなんですよ。 |
糸井 |
あ、ウソなんですか(笑)。
まあ、三谷さんも、
聞いた話として書いていて、
「ほんとだとしたらおもしろいね」
って感じで書いてましたけどね。 |
|
八嶋 |
そういうやり取りはあったんですけど、
あのまんまではなくて。
ある出演者の人が飲み会で、
その日撮影したシーンについて、
いろいろと感想を言ってたんです。
で、ぼくがそれを聞いてたんですけど、
その人は先に帰っちゃったんですね。
そしたら、そこに山本土方が来て、
「なに?」って言うから、
こうこうこういうことを言ってたよって
伝えたら、山本君は、
どうもその意見が気に入らなかったらしくて。 |
糸井 |
ああ、その、
帰っちゃった人が言っていた意見が。 |
八嶋 |
ええ。で、ふたりでそれについて
しばらく話してて、最終的には、
「ごめんごめん、おれが自分のことじゃないのに
余計なこと言ったね」
なんつってたんですけど、
ぼくも山本君も飲んでるし、
山本君もちょっと興奮してたから、
まわりの人から見たら、
ぼくらが喧嘩してるふうに、
言い合ってるようにちょっと見えたと。 |
糸井 |
まあ、そういうふうに見たほうが
話としてもおもしろいしね(笑)。 |
八嶋 |
ええ。で、たしかに慎吾君も、
話の途中でやってきて、ぼくらが話すのを
ニコニコ笑いながら見てたんですよ。 |
糸井 |
あははははは。昔の劇団っぽいですね。 |
八嶋 |
そうなんですよ(笑)。
で、ちょっとおもしろそうだって、
誰かが沖田を呼びに行ったりしてるんですよね。 |
糸井 |
そのへんドラマと同じじゃないですか。 |
八嶋 |
ほんとそうなんですよ。
やってきた沖田はケタケタ笑いながら
ぼくらを見てるんですよ。
それで、ちょっと心配そうに源さんが来て、とか。 |
糸井 |
あははは。飲み会なのに。
完全に新選組になってますねえ。 |
八嶋 |
ほんとに。
だからそういう新選組なんだなっていう
コラムの内容としては
まちがってないんですけど。 |
糸井 |
配役ピッタリで(笑)。 |
八嶋 |
そうなんですよ。 |
糸井 |
変だよね、それ。どう考えてもね。
ふつうのドラマじゃありえないでしょ。 |
八嶋 |
そうですね。 |
|
糸井 |
そういう飲み会は、
しょっちゅうあったんですか。 |
八嶋 |
そうですね。山南切腹のあとはもう、
毎週のように人が死んでいくじゃないですか。
それからは、人が死ぬっていう日は
土方からメールが来るんですよ。 |
糸井 |
「死ぬから集まれ」っていう? |
八嶋 |
うん。「来ない?」みたいな(笑)。 |
糸井 |
はははははは。 |
八嶋 |
「ついに源さんが死ぬ。何時に死ぬ」
みたいなそういうメールが来て、
じゃあちょっとみんなで行くかって。 |
糸井 |
観柳斎、とっくに死んでるんだけど。 |
八嶋 |
はい。死んだあとも、何回か行きましたね。 |
糸井 |
死人が通夜に来ちゃうんだ。
変な話ですねえ、それも(笑)。 |
八嶋 |
まあ、自分のときも来てもらったし、みたいな。 |
一同 |
(爆笑) |
糸井 |
あはははは。なんなんだろうね、それ。
おもしろい時間が流れてるんですねえ。 |
八嶋 |
おもしろいですね。 |
糸井 |
また、もうひとつおもしろいと思うのは、
その、「自分」と「土方」が
完全にいっしょになっちゃってるような
山本耕史さんっていうのは、
元々、子役じゃないですか。
※編集部注:
山本耕史さんは、11歳のときに、
舞台『レ・ミゼラブル』でデビュー。 |
八嶋 |
そうですね。 |
糸井 |
つまり、「芝居で虚構を演じて生きてる」
っていうことについては、
小さいころから鍛え上げてる人ですよね。 |
八嶋 |
ええ。なのに、あの思い入れ。
それが1年間、通してあるわけですからね。
それは‥‥まあ、これは、ぼくの考えで、
ほんとうにそうかどうかは
わからないんですけど、
山本君にとっては、
ようするに慎吾君っていう人をね、
あれだけ忙しくて、
本番以外は意識が朦朧としているような、
あの慎吾君をどうベストな状態に
持っていくのかっていうことを‥‥。 |
糸井 |
ほんっとに考えてた。 |
八嶋 |
そうですね。ほんっとに考えてましたね。 |
糸井 |
うん。 |
八嶋 |
しつこくしつこく、やってましたから。
最初はちょっと
嫌がられてた節もあるんですけど、
それをしつこくしつこく、
「みんなと」って言って持っていった。
それは大きいと思います。 |
糸井 |
はぁー。 |
八嶋 |
だからあのドラマの成功っていうのは、
ぼくは山本君の努力っていうのは
すごくあると思います。 |
糸井 |
そこまでしないといけなかったんだね。
そうしないと「浮いちゃうぞ」って
みんなが思ってたというか。
まあ、あのなかに慎吾君がいたら、
ある意味、浮いて当たり前のことですよね。 |
八嶋 |
うん。そうですね。 |
糸井 |
それはもう、一般大衆のレベルで
わかるようなことだからね。
それを持っていったんだね、山本君が。 |
八嶋 |
すごかったですね。 |
糸井 |
すごかったと思うんですよね。 |
八嶋 |
まずそこの探り合いっていうか、
関係の作りかたというのがすごくて。
で、すぐにはでき上がらないんだけど
だんだんでき上がっていく過程に、
どんどんまわりも巻き込まれていくっていうか。 |
糸井 |
うーん、なるほどねえ |