糸井 |
自分が死ぬ回(第41話「観柳斎、転落」)の
撮影っていうのはどうでしたか。 |
八嶋 |
まあ、やっぱり、おのおのの、
当番が回ってくるというか、
そういう気持ちで臨むんですけど。 |
糸井 |
うんうん。 |
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八嶋 |
まあ、どう撮ってくれてもけっこうだ、
みたいな気持ちになりますね。
いろいろ考えるのはやめよう、っていう。 |
糸井 |
なるほどね。 |
八嶋 |
「観柳斎、転落」でいうと、ぼくは
ぼくは自分が死ぬ、斬られるシーンより、
むしろ、「もうダメだ」と思ってたのに、
(近藤)勇に「はい上がってこい」って
言われる場面のほうがキモなんですよ。
斬られて死ぬのは、もう、
つけ足しみたいなもんですから。 |
糸井 |
ああ、そうか。
あの近藤とのやり取りはよかったねえ。 |
八嶋 |
あそこの慎吾君って、やっぱりすごくて、
ふだんは疲れてて眠そうなのに、
本番だと、こう、グワッてなるんですよね。
モワッて、なにか、背中から出てくるんですよ。
そうすると、こっちもそれに乗って、
入っていけるんですよ。 |
糸井 |
へえええ。 |
八嶋 |
ぼく、あの回の、
糸井さんたちが話している
ほぼ日刊イトイ新聞を、
もらって読んだんですけど。
たしか糸井さん、
2回目に観たほうが泣けたって
おっしゃってたじゃないですか。 |
糸井 |
ああ、「観柳斎はおれなんだ」って
近藤が言うあたりのことですね。 |
八嶋 |
それによって、近藤勇っていう人が
どういう人かが伝わるんですよね。 |
糸井 |
そうですね。それは、やっぱり、さっき話した
「雑多な若者が演じる新選組」
ということに通じるんですけど、
けっきょく、田舎者の集まりなんですよ。
田舎から出て来た、力を持て余した、
もしかしたらそのまま
ただの田舎の墓に埋もれていくような人が、
花道に進軍するような話じゃないですか。 |
八嶋 |
はい。 |
糸井 |
で、あそこで近藤が言う
「観柳斎は俺なんだ」っていうセリフは、
あらゆる田舎者の心に響くんですよ、たぶん。 |
八嶋 |
あああああ。 |
糸井 |
ほんものの観柳斎が男色家だったとすると
さらに複雑骨折してますから。 |
八嶋 |
聞いた話ですけど、観柳斎は近藤以外には
そうとう嫌われてたみたいですからね。
ほんとうに、いついかなるときでも
殺してやろうっていう人が
いっぱいいたらしいですからね。
お墓もないですし。 |
糸井 |
あ、そうか。お墓ないんだ。 |
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八嶋 |
はい。いちおう隊士全員の、みたいな
形式上のお墓ではあるらしいんですけど。
あの、このあいだ、
ナイロン100℃っていう
劇団のお芝居をやってるときに、
お墓に行ってきたんですよ。
ちょうどそれに、河合役の大倉と、
あと望月亀弥太役の三宅(弘城)さんも出てて。
で、京都に3人で寄ったんですよ。壬生寺に。
そしたらやっぱりちゃんと
河合とかのお墓があるじゃないですか。 |
糸井 |
河合の墓は、大きいですよね。
いまでもお墓参りされてるんですよね。 |
八嶋 |
そうらしいですね。
で、河合のお墓とかにお参りして。
考えてみると、はじめてなんですよ。
自分がやった役の人が実際にいて、
しかもその人のお墓があるなんてことは。
そのお墓を自分がお参りしているっていう、
この、なにかつながっている感じ‥‥。 |
糸井 |
うんうん。 |
八嶋 |
ああ、そういうものに
出させてもらったんだなあっていう
うれしい気持ちがあって。 |
糸井 |
なるほどねー。
たんなる視聴者のぼくらですら、
京都でお墓を見たときは、
そういう不思議な気分になりましたからね。 |
八嶋 |
ひとつおかしかったのは、
まあ、がっかりした話なんですけど、
壬生寺でそこを管理している人に会ったとき、
まあ、たいてい、京都のそういう場所では
「ようこそ」なんて言われるわけですけど、
ぼくを「観柳斎」って言ってくれないんですよ。
「へぇ〜、へぇ〜」って言われて。 |
一同 |
(爆笑) |
八嶋 |
『トリビア』の人だと思われてて、
最初ぜんぜん気づいてくれなくて。 |
糸井 |
はははははははは。 |
八嶋 |
ぜんぜん、「へぇ〜」と「観柳斎」が
結びついてないんですよ。だから、
「『へぇ〜』じゃなくて
『観柳斎』って言ってくださいよ」
って(笑)。
すげー、がっかりしましたね。 |
糸井 |
「へぇ〜」>「観柳斎」なんだね(笑)。 |