ほぼ日刊イトイ新聞

仲間の背中を信じて走る。

あけましておめでとうございます。
2019年の「ほぼ日刊イトイ新聞」は、
ラグビー元日本代表の五郎丸歩選手をゲストに
「にわかラグビーファン」糸井重里との対談で幕開け。
2015年のラグビーワールドカップ 南アフリカ戦で、
歴史を変える大金星をあげた日本代表。
五郎丸選手は「奇跡じゃなく必然です」と語り、
相応の準備と、仲間への強い信頼を表現しました。
最後列のフルバックという位置から、
仲間の背中を信じて走り、キックで魅せるスター選手。
日本のラグビーをもっと盛り上げたい五郎丸さんから、
糸井をはじめ「にわかラグビーファン」に
期待していることがあるそうですよ。
ラグビーワールドカップが日本にやってくる
特別な一年の、特別な対談をおたのしみください。

仲間がいるから怖くない。

糸井
あけましておめでとうございます。
五郎丸
おめでとうございます。
糸井
お正月対談ということで、
和室に正月飾りをしてみました。
2019年のラグビーワールドカップの
ボールも用意してみたものの、
置き方はこれで正しいのか不安です。
五郎丸
ばっちりです。
糸井
よかった、ばっちりですか!
まあ、お会いしているのが11月なので
気分が出ませんよね(笑)。
お正月ごっこはここまでにして、
普通に始めましょうか。
五郎丸
よろしくおねがいします(笑)。
糸井
9月に「丸の内15丁目PROJECT」という
イベントで初めて五郎丸さんとお会いして、
人前でしゃべったことがありましたよね。
そこでは仲間の話をしていただきましたが、
トークショーのあとに廊下でした立ち話が、
ぼくにはすごくインパクトがあったんです。
あの場で、五郎丸さんにこんな質問をしました。
「ボクシングの選手だって怖いと思うんだけど、
ラグビー選手はもっとすごいことをやっているから、
ボクシングをやれって言われても、
五郎丸さんは怖くないんじゃないですか?」。
五郎丸
はい。
糸井
五郎丸さんはすこし考えてから、
「全然違うから、怖いと思います」と答えて、
その後にこう続けていました。
「仲間がいるから怖くないんですよ。
ひとりだったら、できることじゃないですね」。
五郎丸
ああ、言いましたね。
糸井
「ラグビーだったら仲間のために
お互いにできることがあるから、
痛いだのかゆいだの言っていられないんです。
ボクシングはそうじゃないから、
ぼくには、たぶんできないと思います」
とおっしゃっていました。
ラグビーをやったことのないぼくには、
わからない視点だったんですよ。
痛みというのは何キログラム、何トンの圧が
かかるというところだけで判断できると
思い込んでいたんで、驚いたんです。
ラグビーを観る前に、その話を知っているだけで、
観戦のたのしみが増えるんですよね。
この間も日本対ニュージーランドの試合を
観に行ったら、やっぱりおもしろくて。
五郎丸
ニュージーランド戦は
おもしろかったですよね。
糸井
モンスターみたいな身体でぶつかり合っていて、
選手たちは痛くないわけがありません。
痛さと怖さがあるのにもかかわらず、
「仲間がいれば怖くない」
という話を下敷きにして観ていると、
さらにおもしろく感じられるんですよね。
ラグビーを始めようと思った子どもの頃には、
痛いとか怖いなんて想像していなかったでしょう?
五郎丸
いや、子どもの頃から怖かったです。
最初はもう、怖くて怖くて。
糸井
あっ! 最初から怖かったんですか。
五郎丸
痛いし、怖いです。
ただ、幼少期からコーチには、
「チームのために体を張るものがラグビーだ」
とずっと言われているので。
糸井
ラグビーを始めたのは何歳でしたか。
五郎丸
ぼくが始めたのは3歳です。
その頃はまだ激しい感じではなくて、
ボールで遊ぶレクリエーションでしたけど、
小学生になればガツガツぶつかりにいきます。
糸井
はあー、小学生はガツガツでしたか。
小学生の頃から「痛い」というのは
もちろん感じているわけですよね。
五郎丸
感じますね。
糸井
そんな痛さがあったのに、
子どもが乗り越えられるわけですか。
五郎丸
「痛い!」というリアクションをするじぶんが、
だんだん恥ずかしくなってくるんです。
ぼくが練習中に経験している痛みを、
もしかしたら仲間も味わっているかもしれない。
それでもみんな、平気な顔をしているんです。
じぶんが痛いと感じたとしても、
平然とした顔をしてピッチに立ち続けるのが
ラガーマンなんだと思うようになりました。
糸井
痛みとか怖いっていうことに、
慣れていくことがあるんですか。
五郎丸
恐怖心は少しずつなくなっていきますけど、
逆に、恐怖心がなくなることで、
危なくなる場合もあるんです。
糸井
本当のケガにつながるんですね。
五郎丸
はい。
糸井
ぼくはこれまでにスカイダイビングを
2回飛んだことがあるんです。
1回飛んだ時に案外平気だったんで、
今度は子どもにも飛ばせてあげようと思って、
子どもと一緒に飛行機に乗ったんです。
ぼくは子どもの後に降りたんですけど、
インストラクターから
「2度目のほうが怖いでしょ?」と言われたんです。
「えっ、なんでわかるんですか?」と訊いたら、
「1度目は緊張感が恐怖を上回るんですよ。
2度目は緊張感が減る分だけ怖さが増えるんで、
2度目のほうがちょっと怖くなるんですよね」
と図星を突かれたんですよ。
五郎丸
なるほど。
糸井
安全性を不安がっているわけじゃないけど、
上空3,000メートルから飛び降りるっていうのは、
普通、人間がやらないことですよね。
その経験はいつまでも覚えておこうと思ったんです。
ぼくはきっと、「恐怖」というものに
興味があるんだと思うんですよ。
五郎丸さんがこれまでに考えてきた
怖さの正体だとか、
恐怖を克服する時に考えていることを、
教えてもらえないでしょうか。
五郎丸
ラグビーの試合に向かう心境は、
戦争に近いのかもしれません。
糸井
ああ、戦争ですか。
五郎丸
ぼくは戦争を経験していないので
語弊があるのかもしれませんが、
それこそ、神風特攻隊なんていうのは、
じぶんを捨ててお国のために戦ったわけですよね。
それに近い感覚があると思います。
もうどうなってもいい、という。
糸井
少年の時から?
五郎丸
少年の時にはさすがにありません。
でも、日の丸を背負うと気持ちは変わります。
特にワールドカップでは、
戦争に近い心境になりますね。
テストマッチとは全然違います。
糸井
やっぱり、すごいものなんだ。
どこかで砕け散ってもいいや、
という気持ちになるんですね。
五郎丸
そうですね。

(つづきます)

2019-01-01-TUE

teach me!

にわかラグビーファンの質問に、
五郎丸さんが答えてくれます!

対談がお開きになる頃に、
糸井から五郎丸さんに、こんなお願いをしました。
「たぶん、この対談を読んだ人は
絶対におもしろがってくれると思うんですよ。
読者からの質問をいくつか見つくろうんで、
『五郎丸さんが答えます』っていう
コーナーを作っていいでしょうか?」。
すると五郎丸さんも前のめりになって
「ぜひぜひ、喜んで!」と快諾いただけました。
最近ラグビーを好きになった「にわかファン」の人も、
これからファンになりたいと考えている人も、
ずっとラグビーを応援してきた人も質問をぜひどうぞ。
「2019年1月15日(火)午前11時」までに
投稿いただいた質問をいくつかピックアップして、
五郎丸さんに答えていただいたものを後日、
ほぼ日刊イトイ新聞で公開します。

募集は終了しました。

「丸の内15丁目PROJECT」を
応援しています。

ラグビーワールドカップ2019™日本大会の
オフィシャルスポンサーである三菱地所が、
様々な切り口でラグビーの魅力を伝えるために、
リアルのイベントとウェブの特設サイト
「丸の内15丁目PROJECT」を展開中です!
2018年9月に丸の内で開催したイベントでは、
「美術館」「ビジネススクール」「映画館」がオープン。
ラグビーをテーマに企画した「映画館」では、
世界のトップラガーマンが残した言葉とともに
ラグビーワールドカップの名場面を描く
ショートムービー『BY THE RUGBY』を制作し、
これから順次公開していくそうです。
“15丁目映画館臨時館長”に就任した糸井重里は、
ショートムービーの第一弾『JAPAN WAY』の
完成披露試写会で五郎丸選手と対談をおこないました。
2019年、「丸の内15丁目PROJECT」では、
ショートムービーの第二弾の公開を皮切りに
さまざまなイベントなどを計画しているそうです。
1月17日(木)から20日(日)の4日間は、
「丸の内15丁目」コンテンツをリアルに体験できる
「MARUNOUCHI RUGBY FESTIVAL」も開催されます。
ぜひTwitterFacebookをフォローして、
今後の活動にご注目ください。

ショートムービー第一弾
『JAPAN WAY』

前回大会の「ラグビーワールドカップ2015」で
歴史的な大金星をあげた日本対南アフリカ戦での
大逆転勝利の裏側にあった真実を、
出場していた選手たちの言葉とともに探る
約15分間のショートムービーです。
五郎丸選手の活躍ぶりも、ぜひご覧ください。

ほぼ日のラグビー企画

  • にわかラグビーファン、U20日本代表ヘッドコーチに会う。
  • ものすごく気軽にラグビーを観に行こう。
  • 行ってきました、はじめてのラグビー観戦!トップリーグ開幕戦@秩父宮ラグビー場