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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

恋愛の話しましょ。 その2
僕は土、あなたは種。

ノリスケ あのさ、ゲイ同士がつきあうってさ、
いつでもさ、はい終わり、
ってできるじゃない?
つねさん あー。でもさ……
ノリスケ 関係は簡単に終わらせられる。
つねさん うん。ま、束縛するもんがないからでしょ?
ノリスケ そう。だから、自分がダメになったら、
捨てられちゃうだろうな、とも思うし、
逆のことだって、平気でやるかもしれない……。
だから少なくとも、自分は努力しようかな?
とは、思う。
つねさん でもね、そういう努力しない人、
多いんだよ。
そういうふうに努力しない人が多いから、
すぐ別れる。
ジョージ そっか。僕は、あれだよ、
例の消防士さん(笑)。
ノリスケ 消防士さん(笑)。
(編集部註:ジョージさんの
 消防士さんとの恋愛については、
 こちらをごらんください)
ジョージ その、消防士さんっていうのは、
やっぱり、それまで、
結局どっかで別れてるから、
親密につきあうのが、
怖くて仕方がなかった人だったの。
で、よく手紙を書いたのね。
で、その手紙のなかでね、
当時の僕が考えるおつきあい観っていうのは、
例えば、僕がその人のことを
好きになるということは、
僕の体の中に、ま、僕が土みたいなもんだね。
で、そこに、あの、おっきい木の種を
植えるようなものなの。
ノリスケ うん。
ジョージ で、種を植えて、発芽していくわけでしょ?
奇麗な花が咲くかも知れないし。
でも、その、木とか花とかが、
育つということは、
僕の体の養分を取ってくわけじゃない?
で、僕の体の中に根っこを
張っていくわけでしょ?
で、んーと、僕とその人は、別々の人であって、
例えば、土と木は、別々のもんなんだけど、
木を抜こうとすると、木が大きく育って、
立派であればあるほど、
土を取ってかれるんだよ。そうだよね?
で、雑草だったらば、
根っこがひゅるひゅるひゅるっ、
と抜けるぐらいで、あんまり土は持ってかれない。
ノリスケ うんうん。
ジョージ んで、浅いつきあいでいいや、っていう人は、
自分の体に雑草、いっぱい生やす人なんだよね。
ノリスケ あ〜。そういうのは、僕は、もう、イヤだ。
いままで、雑草、生やしてばかりだったもの。
ジョージ だけど、どんなにいっぱい雑草が生えても、
花は咲かないし、実はならないわけじゃない?
だから、
「どんどんどんどん僕の中にいらっしゃい、
 んで、大きな木を育てて、
 もう、実がたわわになるぐらい
 育ててくれたらば、僕を離さなくなるから」
っていうふうに、言ったことがあるの。
ノリスケ お〜〜!!!
ジョージ 恋愛関係は、そういうもんだって、
そのとき、考えたの。
ノリスケ ……そうだね。
ジョージ 入ってきなさいよ、と。
んで、僕のなかに、
どんどんどんどん根っこを張りなさい。
で、どっちがどっちか、
分からなくなるぐらいまで、
その間、僕はずーっと栄養をあげ続けるから、
かわりに僕もあなたの中に、
種をひとつ入れるからね。
栄養を下さい。っていうのが、
おつきあいの関係だと思うんだ。
ノリスケ そういうふうに
言葉で考えたことなかったけれども、
まさしく、そうだよ。
ジョージ そう。ほいで、確かにね、
その消防士さんと別れたときは、
けっこうえぐられたもん……。
ノリスケ ん〜。そうなんだろうね。
ジョージ えぐられたけどね、
いらない部分がえぐられたから、
ま、いいや、って。
そこは今、ため池になってますっ。
ノリスケ フッフッフ。減らず口。
つねさん 僕は、その、根っこの話、
してもらってないよー。
ジョージ あんたには必要がないと思っただけっ。
つねさん なんでー?(笑)
ジョージ ものわかり良さそうだったから。
つねさん あーそー。
ジョージ もーうね、ほんとにね、消防士さんは、
一から噛み砕かないと、
わからない人だったからね。
なかなか、そういうこと思ってても、
言葉で言うことって、ないよ。
つねさん 僕、でもね、別の言葉は言われたよ。ふふ。
ノリスケ なんてなんてなんて?
つねさん ねー? 憶えてないでしょ?
ジョージ ヒヒヒヒッ。どれを言ったのかな?(笑)
つねさん アハッハッハッハッハ!
いっぱいあるんかい!
ノリスケ あれかな? これかな? だって(笑)。
ジョージ どれだっけ?
つねさん えー?
……「旗」。
ジョージ あ〜〜〜!
ノリスケ 何? 旗って。
ジョージ ごめん。その旗はね、わりと……
つねさん よく使う手?
ジョージ 違う違う違う。わりと、新しくって……
ノリスケ 色々あるんだ(笑)。
ジョージ ちゃうちゃう、あんまりね、
僕ね、つきあう人、その、
男とのおつきあいでは
使わない事例なんだよ。
つねさん あ、そーなんだ。仕事の方で使うセリフなの?
ジョージ そう。仕事で、けっこう使うんで。
つねさん ビジネス・ライクだったのね?(笑)
ジョージ というかね、ちゃうちゃうちゃうちゃう、
あのね、あのね、消防士さんとは、
「公」の自分と「私」の自分を、
分けすぎたんだよ。
つねさん あー。
ジョージ 分けすぎて、僕は僕で窮屈だったんだよ。
つねさん あ〜。
ジョージ で、「公」の自分ではつきあわないって、
けっこう、この世界では、ある話じゃない?
ノリスケ うん、うん。あるあるある。
ジョージ ね? で、「公」と「私」を区別して、
「私」の部分だけでつきあっていて。
でも、僕、
人間は2つに分けることできないから、
分けちゃった僕は、苦しんだよね。
ノリスケ うん。
つねさん うん。
ジョージ で、しかも、「私」の部分だけを
与えられた相手も、
僕を全部もらったつもりになれないから、
フラストレーションが高まって、
ボシャっと、なっちゃったの。
だから、この人(つねさん)のときは、
僕はもう、分けるのをやめよう。
そう考えたの。
ノリスケ うん。
ジョージ で、今まで「私」の部分だけで説得してきて、
失敗したんだから、じゃあ、
ちょっと公の部分でいってみようかなっ?
と思って、仕事で使う口説き文句を
恋愛に使ってみた、初めての試みだったの。
ノリスケ お〜〜。
それで、「旗」ってなあに?
(さらに、つづきます)

 

2001-06-12-TUE

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