ある映画の冒険の旅。 映画プロデューサーは 走り回るよ。 |
<第1回> 映画の揺りかごから墓場まで みなさま、はじめまして。 『うちへ帰ろう』のプロデューサー安田裕子です。 99年のサンダンス映画祭でこの映画に出会ってから、 今日までですでに1年7ヶ月が経ちました。 自分が心の底から感動した作品を、日本に持ってきて 「この映画、ホントウにみんなが感動してくれるかな?」 とドキドキしながら、観客のみなさんの反応 が見れるまで、あと1ヶ月。 わたくし、ふだんは 東京・渋谷の“パルコ”の事業局で 映画の配給を担当していますが、 『うちへ帰ろう』(原題:The Autumn Heart)では、 なぜかプロデューサーという肩書きなんです。 のれん会でも紹介された シネスイッチ銀座の吉澤嬢が定義なさるところの、 「エンドクレジットに名前が載るということは、 みんなが憧れるけど、なかなかできないことよぉ」な、 偉大なる立場に、あらためてビビっている次第です。 ・・・というのも実はわたくし、 モノホン・プロデューサーが沢山いる映画業界へは、 つい4年ほど前、三十路を前に 「なんかもうちょっと楽しい仕事がしたいんですけど。。。」 という軽いノリで、フツーの、 でもちょっとトウの立ったOLから、 ポコっと転身してきたわけで、たとえば、 「学生のコロから映画研究会で8ミリ映画を撮ってました」とか、 「就職はしないで清貧生活を耐え、苦節ウン年 やっと映画を作ることができました」 などという立派なヒトではありません。 あえて言ってしまえば、 まぁ、タナボタ・プロデューサーとでもいいましょうか・・・ と、ビビってばかりでは先に進まないので 気持ちを取り直して進めます! 映画配給の仕事っていうのは ホント映画の揺りかごから墓場までに携わることなのです。 その仕事っていうのは 世界各国で行われる映画祭や映画の見本市に出かけて行って まさしく生まれたばかりの映画を探すことから始まります。 その工程が「うちへ帰ろう」のような洋画の場合。 「映画の権利を買う」 ↓ 「英語で契約書を交わす」 ↓ 「必要な素材を輸入する手続き」 ↓ 「字幕を入れる」 ↓ 「予告編を作る」 ↓ 「ポスター・チラシを作る」 ↓ 「映画館をブッキングする(営業)」 ↓ 「宣伝する」 ↓ 「公開初日にこぎつける」 ↓ 「ビデオ化する」 ↓ 「TV放映する」 というように映画館で上映するまでだけでなく、 上映終了後も関わっていく、 これが「映画の配給」という業務です。 そんな配給業務が専門の私が何故? 『うちへ帰ろう』のプロデューサーになったのか??? ということはこれからにとっておいて 今回は先に、 「なんで素人のおまえが映画の業界はいれたんや?」 というギモンにお答えします。 4年間、私は、とある外資系製薬会社の基礎研究所で ドイツ人の秘書をしておりました。 今ニュース面を賑わしている 「ヒトゲノム計画」の研究をすすめている研究所で、 緑多き構内には、なんと28棟もの研究棟を備える それは大きな会社だったのです。 上司は外人だからジェントルだし、 外資系だから、フレックス・タイムもバッチリ。 研究員達は徹夜作業が続いているが、秘書だから バリバリ働かなくても業務は遜色なく回る・・・ ようするに「とてもヒマ」だったのですね。 それなりにうら若きOL時代を謳歌すべく、 テニス・スクールで大学生とたわむれたり、 平日の夕方から鎌倉の海に繰り出したり、 もちろん、週に3回くらいは、長い東海道線に揺られ 渋谷や銀座までせっせと映画を観に行ったものでした。 そのうちに、ふと気付いたのです。 私は研究員ではないので、製薬会社で仕事をしていても 社会の役に立っているという満足感がないではないか・・・ それに「研究協力」とかいう名目で しょっちゅう血を採られるのはたまらない。 結婚前だったのでヘタに遺伝子を解明されて、 何か困ったことになってはマズイではないか。 なにより週に3回も都内まで映画を観に出かけると まず電車賃がかかる、、、、 それなら映画の会社にいた方がいろいろとオトクなのではないか? おまけに、映画は、すっごく満足しても、 「金返せ、こら!」級の作品でも、 ハリウッド超大作でもインドの小品でも みーんな一律1,800円。 どうして? 映画館によっては、「飲食禁止!」を掲げるところもある。 会社を5時ピタして走って来てるからお腹ペコペコ。 なのに水も飲んじゃダメだなんて、どうして? それから私には変なジンクスがあって、 「前売券を買った映画は観れない」 つまり前売りを買って満足しているうちに 映画の興行が思ったより早く終わってしまう。 ウカウカしているとアっという間にビデオ化されて、 ]最近ではちょっと目を離すとビデオより先に BSでやってる映画もある。 どうして? こんなもろもろの映画を観ることに関する ギモンが頭をもたげはじめ、 「消費者代表」としてその仕組みを チェックしたくなってきたのです。 そんな折、朝日新聞にとある配給会社の求人広告をみつけ、 即応募! 上司は外人ではなかったものの、 秘書を採用するつもりだったらしく、 その分野はスーパー経験者の私はすぐに採用してもらえたのです。 ラッキーでした。 多分宣伝マン募集だったら あの高倍率の狭い門は通れなかったでしょう。 ここまで読んで、 「えぇぇ?!なんでや?」とお思いの方、 さらに次回からも読み進めてください。 映画の配給や興行について、よぉーく分かります。 「なぁんだぁ」と興味を失ってしまった方は、 http://www.parco-city.co.jp/cine_quinto/autumn/ のホームページで 『うちへ帰ろう』の劇場招待券があたる “体験記募集”のページでも覗いてくださいな。 次回はそのサンダンス映画祭で 『うちへ帰ろう』という映画に最初に出会った お話をするつもりです。 映画ってホントウに素晴らしいですね! サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。 やすだゆうこ |
2000-08-11-FRI
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