── |
さっき、本棚で
気になるものを見かけたんですけど。 |
ボーズ |
んん? |
── |
あれですよ。 |
|
ボーズ |
あ、あれね。チャンピオン。
少年チャンピオン。 |
── |
見ればわかりますよ。
ていうかさ、これ、いつのだ? |
ボーズ |
ええと、わ、1977年だ。 |
── |
すっげえ。どこで見つけたの? |
ボーズ |
いや、なんかふつうに古本屋に
ポンと置いてあって。やべえって。 |
── |
いや、これ、いちばんやばいころでしょ? |
ボーズ |
そうなんだよ。古本屋で見つけて、
やべえ、このときすごいって思って。
このときの、
この号のチャンピオンを覚えてる、くらいの。 |
── |
うんうん。またこれ、状態いいなー。 |
ボーズ |
そうそう。けっこう、
きれいに残ってたんだよ。 |
|
── |
読んでたなあ。
いや、ほんとにこのころの
チャンピオンはすごかったよ。 |
ボーズ |
超すごくてびっくりするよ。
こんなにぜんぶが当たり、みたいな
雑誌があっていいのかっていうくらいに。 |
── |
びっくりするよね、ほんとに。
だいたいさ、
『ドカベン』と『ブラック・ジャック』が、
毎週連載されてるんだからさ。 |
ボーズ |
すごいよね。 |
── |
それだけで1000円くらい払っていいでしょ。 |
ボーズ |
すごいよね。恐いよね、もう。
だって、そんで『がきデカ』あるでしょ。 |
── |
『750ライダー』あって。 |
ボーズ |
で、『マカロニほうれん荘』も
やってるんだよ、このとき。 |
── |
うわーー、もう、
『ドカベン』と『ブラック・ジャック』と
『マカロニ』で2000円くらい払う。 |
ボーズ |
そりゃ高いだろ(笑)。 |
── |
ちなみにいくらなの?
このころのチャンピオンは。 |
ボーズ |
ええとね‥‥ひゃ、170円。 |
── |
おいおいおいおい! |
ボーズ |
おいおいおいおい! |
── |
ままま、物価も違いますけどね。 |
ボーズ |
それにしたってねえ‥‥。 |
── |
さり気なく萩尾望都って書いてあるよ。 |
ボーズ |
『エコエコアザラク』もあるよ。 |
── |
これ、ちょっと、
目次を読み上げますよ。 |
ボーズ |
ははははははは。 |
── |
え〜、それじゃ読みます。敬称略。
『がきデカ』山上たつひこ、
『ドカベン』水島新司、
『マカロニほうれん荘』鴨川つばめ、
『ゆうひが丘の総理大臣』望月あきら、
『ブラック・ジャック』手塚治虫、
『750ライダー』石井いさみ、
『百億の昼と千億の夜』萩尾望都‥‥。
すっげえなあ。 |
ボーズ |
そんで、
『くたばれ!とうちゃん』の
とりいかずよしがいて、
『月とスッポン』を
柳沢きみおが描いてて‥‥。 |
── |
『しまっていこうぜ!』吉森みき男。
このマンガ、絵を見ると、絶対、
「読んだ、読んだ」って思うよね。 |
ボーズ |
思う思う。そんで、あとは、
『花のよたろう』がジョージ秋山。
ここで『エコエコアザラク』! 古賀進一。 |
── |
そのあとが、
『チョッキン』吾妻ひでお! |
ボーズ |
なんにも捨て曲ないよ、みたいな。 |
── |
ベスト盤じゃん、これ。 |
ボーズ |
あはははは。ほんとだよね。
目次見ながら何杯でも飯食えるわ、
みたいな話になってくるよね。 |
── |
食える食える(笑)。 |
ボーズ |
これが毎週だもんなあ。 |
── |
そんで170円。 |
ボーズ |
あはははははは。 |
── |
ちょっと、なかをのぞいてみましょうか。 |
ボーズ |
はいはいはい。 |
── |
あ、『ドカベン』は信濃川だ。
ってことは1年春の大会、準決勝。 |
ボーズ |
あーー、このころかあ。 |
── |
里中がつき指するところ。
コミックスでいうと29巻あたり。
このケガがきっかけで
サトルボールが生まれるんだよね。 |
ボーズ |
キミ、くわしすぎ。
『マカロニ』は第15話だって。
はじまったばっかか。 |
── |
ああ、いいなあ。絵が荒れてないころだ。 |
ボーズ |
「セックスピストルズ」とか
さりげなく書いてあるね。 |
── |
『マカロニ』の扉って、変でよかったよねえ。 |
ボーズ |
わ、ほんとに1話完結だよ、
『ブラック・ジャック』! |
── |
すげーー。はじまって、終わってる(笑)。 |
ボーズ |
毎週毎週これって、あり得ないよね(笑)。
恐ろしいわ。怖すぎだよね。
だって、1日とか2日で考えるんでしょ?
この話を。考えられないよ。 |
── |
しかも、当時の連載って、
絶対、これだけじゃないでしょ、手塚先生。 |
ボーズ |
怖いよね、プレッシャーないのかなあ。
あり得ないよ。 |
── |
『ブラック・ジャック』、何ページあんの?
1話で終わるってことは相当な量? |
ボーズ |
意外と少なかったりするんじゃない?
ええと、1、2、3、4‥‥。
22! 22ページ!
こんだけでこんなややこしい話を
完結させてんだ! |
── |
すっげーーなあ。ていうかさ、
ここのところ、この回の
クライマックスじゃん? |
ボーズ |
短っ! これって、すごいよね。
で、エンディングが1コマとかだ。 |
── |
いまの漫画なら、
ここで1話、ここで1話って感じだよね。 |
ボーズ |
行くよね。ほんとだよね。言えてる。
だから、手塚治虫の漫画は、
そういう意味ではざくざく進み過ぎて、
芸術的な表現に行かなかった、
っていう話もあるんだよね。 |
── |
ああ、なるほどね。 |
ボーズ |
もっといっぱい詰め込めるのに、みたいな。 |
── |
そっか、そっか。
それをきちんと描いていくと、
『MONSTER』みたいになるんだ。 |
ボーズ |
そうそうそう。いや、でも、
1週で終わらせちゃうこれも
すっげえんだけどね! |
── |
ほんとにすごい。ていうか、
いまどき「手塚治虫がすごい!」って
延々語ってるオレらってどうよ(笑)。 |
ボーズ |
バカじゃん。何を言ってんだ(笑)。 |
── |
ぜんぜん関係ないけど、オレ、
いっぺん手塚治虫先生とすれ違ったことがある。 |
ボーズ |
うっそ、マジで? |
── |
広島に住んでた時に、
広島国際アニメーションフェスティバル
っていうのがあってね、
たぶんそれの審査員かなんかで
いらっしゃったんだと思うんだけど。
ある日、学校帰りに通りを進んでたら、
道の向こうから、どーーーう見ても
「手塚治虫!」っていう人が歩いてきたの。 |
ボーズ |
あはははははは。
なに? ベレー帽かぶって? |
── |
そそそそそ。まさにあのベレー帽。
そんで、あのメガネかけてて、あの丸い鼻。 |
ボーズ |
マンガだ、マンガだ(笑)。 |
── |
これはどの角度からどう眺めても手塚治虫、
みたいな人だったんだよ。 |
ボーズ |
いい経験だなあ。 |
── |
当時は高校生でさ、
「あ、手塚治虫だ」くらいの感じで、
すれちがって終わりだったんだけれども。
いま思うとさあ、なんかこう、
「いつも読んでます」くらい、
ほんっとに言っとけばよかったと思って。 |
ボーズ |
いえてるね。惜しいねえ。 |
── |
うん。感謝しておけばよかった。
ちなみに同じ通りで
オレはイカンガーを見てる。 |
ボーズ |
あははははははは。 |
── |
しかし、このころのチャンピオンはすごい。 |
ボーズ |
ここまですごかったマンガ雑誌ってないよね。
オレら世代にとってはピークだと思うなあ。 |
── |
よくさ、「昔はよかった」的な
ことを言ったりするけど‥‥。 |
ボーズ |
言うけども、これはないでしょ、実際に。
「昔はよかった」でしょ、胸を張って。 |
── |
うん(笑)。 |
ボーズ |
だって、いまだったら、
ほうぼうの雑誌にバラついてる人たちが
全員集まってるみたいなもんだからね。 |
── |
しかも、その、
バラバラな感じがいいんだよね。
この、個々の差がさ。 |
ボーズ |
うんうん。この個性(笑)。
みんなが勝手なことをやってる。 |
── |
『ガキデカ』のあとに
『ブラック・ジャック』。 |
ボーズ |
勝手なことをやってる
天才がいっぱいいるみたいな。 |
── |
すごいよね。いまの雑誌ってさ、
なんか、カラーがあるじゃない? |
ボーズ |
そうだね、ジャンプっぽい感じとかね。
ヤンマガっぽい絵みたいな。 |
── |
そうそうそうそう。 |
ボーズ |
このころのチャンピンは
バラバラでそれぞれがすごいんだよなあ。
いや、これは、捨てられないよ。
いくら捨てる連載だといっても、
これを捨てられるもんじゃねえよ
っていう話でしょ。 |
── |
これは、とっといてください。
こればっかだなあ(笑)。 |
ボーズ |
あ、でもこういうものが
どんどん溜まってきたら、
うちはどうすればいいいんだ?。 |
── |
このチャンピオンが
いっぱい溜まってきたら、
もうしゃーないでしょ。 |
ボーズ |
しゃーないんだ(笑)。
それでいいのか、記事担当として。 |
── |
よくない(笑)。でも、捨ててほしくない。 |
ボーズ |
捨てないけどね。本棚さがして、
マンガ特集やってもいいかもね。 |
── |
ああ、いいかも。
でも話し出すとキリがないよ。 |
ボーズ |
キリがないね(笑)。
話すだけでもいいんじゃない? |
── |
でも、やってみたいな。
『ドカベン』特集と『ドラえもん』特集は
楽勝でできるでしょ。 |
ボーズ |
楽勝、楽勝(笑)。
しかも、高尚に語るんじゃなくて、
すっげえ、低い次元で。 |
── |
「バイバイン、怖え!」とか、
「不知火、速え!」とか。 |
ボーズ |
そうそうそう(笑)。 |