糸井 |
せっかくだから今回の対談は、
「八谷さん祭り」にしない?
流れとして、八谷さんはなぜこういう
ユーザーインターフェイスに絡んだことを
やりつづけているのか?をまずききたいんです。
ほぼ日にもたまに登場しているけど、
「八谷さんって何?」というのは、
今までポスペに興味のなかったひとは
知らなかったりするじゃないですか。
で、「このひとは何なんだろう?」から
さかのぼろうと思うんですよ。
何でこのひとはこうなって
今はこんなものをつくろうとしているのか、
そのおさらいからはじめたいんですよ。
まず、前提として、ぼくの知ってる八谷さんは、
「ポスペをつくったひと」の前があるんですよね。
「視聴覚交換マシン」をつくったひとという。
これが視聴覚交換マシン。
お互いの見ているものを交換する装置。
他人の視点でしかものが見えなくなってしまい、
相手の立場に強制的に立たされてしまう。
アイデンティティの境界を
曖昧にすることを目的として制作された作品。
さまざまな場所で公開されているが
その度に改良を重ねている。
ただし最初に決められたスペック
「装着したままキスやセックスを可能にする」
というのは遵守されている。
93マルチメディアグランプリ展示部門奨励賞、
96アルスエレクトロニカ招待作品。
(写真:黒川未来夫) )
ちなみに、この紹介文や写真は、
八谷さんのホームページから抜粋いたしました。
http://www.petworks.co.jp/~hachiya/
こちらで、八谷和彦さんのアートワークが見られます。
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八谷 |
NHKでしたよね。 |
糸井 |
NHKではじめてお会いした。
視覚を交換するマシンなんですよ。
相手の視線が自分のかけている
メガネのモニターに映っているというマシンですね。
あれつくっていたときにはまだ
ポストペットはつくられていなかったんですか? |
八谷 |
はい、まだ、かげもかたちも。 |
糸井 |
かげもかたちもですか! |
八谷 |
あれが一応最初の自分の作品。 |
糸井 |
思えば、鈴木慶一くんの番組だったんだよ。
慶一くんが司会している番組に
ぼくが呼ばれて行ったら・・・。 |
八谷 |
たぶん2本撮りかなにかで。 |
糸井 |
あ、じゃあ番組でぼくと八谷さんは
からんでないんだ。からんだ気がしてた。 |
八谷 |
からんでないですね。 |
糸井 |
ぼく、あのメガネかけさせてもらったもん。
すっごく気持ち悪くて、世界観変わりますよね。
あれをつくったあたりの
八谷さんが何をしているひとで、
なぜあれに至ったかを、語ってくれる? |
八谷 |
一応今は本職は美術作家でやってるんですけど。
なんであの手のものをつくるか、って言うと、
それは、絵とか彫刻で
ひとを感動させられる自信がないからです。
自分がすごい天才だったら、
きっと、絵を描いたり詩を書いたり
彫刻をやっているんだろうけど、
そうじゃないというのはわかってて。
でも、それとは別に自分の得意なところも
どこかにはあるだろう、とも思ってて。
誰しも興味があって、なおかつ
とりあえずやってみたくなるものを
つくるためには、と考えて、
「みんな自分にはとりあえず興味があるだろうな」
と思っていて。
その前にぼくはSMTVっていうのをやっていました。
SMが映るわけじゃないんですけど、
テレビの海賊放送みたいなものなんです。
どういうものかというと、
トランスミッターという
テレビの電波を飛ばす機械があって、
それを使って電波を飛ばして・・・。
ただ、海賊放送とは言っても、
NHKの電波を阻害するみたいなことはやっていなくて、
例えばハチ公のまわりで電波を出すと、
ハチ公まわり半径200メーターくらいのひとは、見れる、とか。 |
糸井 |
線を、のばせばのばせる程度の範囲で
テレビ放送ができますよ、ということ? |
八谷 |
要するに、オンエアしているひとと、
テレビ見ているひとくらいが、同じ場所で
やっている、くらいの規模で。 |
糸井 |
作品だったんですか?
それとも会社とかメディアとかあったんですか? |
八谷 |
それは、ほぼ日に1番近いというか・・・ミニコミですよね。
文章書いたりとかじゃないんだけれど。
やっぱりぼくもひとに興味があって、
ミュージシャンとか漫画家さんとか、
そういうひとたちにインタビューに行って
ビデオ撮って、松尾スズキさんとか伊藤ガビンさんとか。
お部屋や仕事場にあがりこんで。
ビデオって、そのときにはみんな持ってて
撮れるようにもなっていたから。
テレビとかを見ててもあんまりおもしろいとか
思わなかったから、当時。
だったら自分が見たいテレビ番組をつくろうと思って、
ビデオカメラ買ってそのひとの家に行って、
酒でも飲みながら話なんかして。
1時間くらいきいたのを15分くらいにまとめて、
15分ずつ4本で1時間の番組をつくって、
日にち決めてチラシまいて、オンエアする。
それをやってたんです。 |
糸井 |
それを現代アートとしてやってたの? |
八谷 |
いや、それは全然アートとは思ってなくて。 |
糸井 |
仕事だったの? |
八谷 |
道楽ですね。 |
糸井 |
仕事?道楽?アート?ぜんぶ違うね。 |
八谷 |
仕事はぼくはまだその当時は
コンサルティングの会社にいたんで。 |
糸井 |
そのときはまだ勤め人だったんだ? |
八谷 |
勤め人でした。 |