八谷 |
買ったひとが
あ、買ってよかった、と思って
そこではじめてぼくらが勝利するわけだから。
それが見えないからと言って抜いちゃうと、
やっぱりたたかわずして負けてしまうから。
演劇の舞台に出る前に
稽古をしているような感じかな。 |
糸井 |
八谷さんって
演劇のニュアンスがすごくあるよね。
前もその話になったことあったね。
雰囲気がだれるじゃないですか、
それをどうするかって、
全部座長が決めるんですよねー。
野田くんがなんで自分で芝居やってるかというと、
温度が下がったり上がったりするのを、
自分も役者として出ているとわかるから、だって。
だからあれ、永遠にワークショップ型に
していかないと、ボルテージが下がったのを
放ったらかしにするしかなくなるんですよね。
「だめじゃないか」
って言ったって、きけないんですよ。
体が実際に筋肉痛になったりするし。
モチベーション減りますからね。
「あいつもやってる」っていうのって、
やっぱりすごいんですよ。 |
八谷 |
今回みたいな会社間の仕事でも、
やっぱり、体温みたいな、
熱みたいなのはあって。
ほんとはそんなのはないだろうと思って
アーティストになったんですけど、
マニュアルも入れると7社もいるのに、
だんだん尻上がりになっていく感じがあって。
終わりが見えてきてからが違うじゃないですか。
要らん機能も一杯入っているんですけど、
そういうのも、単に入れましたみたいじゃなくて、
ここはこうじゃないと嫌だ、
みたいなのをちょこちょこ入れていて。 |
糸井 |
幸喜さんは、今回はゲームを主にやったんですか? |
幸喜 |
あとあれですね、ポストペットを
そのまま持ってきているところあるから、
そこの調整をどうするか、みたいな。 |
糸井 |
ずっと必要だったんだ。 |
幸喜 |
だから、ほんとまだ生々しいですよ。 |
糸井 |
渡して、誰かにやってもらったのかと思ってた。 |
幸喜 |
カシオさんのほうでもOS一生懸命つくってて、
富士ソフトABCさんもPC上でやってて、
実際のこのボード上では動かしていない、
というのが去年のぎりぎりまでその状況があって。 |
糸井 |
じゃあ八谷さんが1月に来たのは、
あっちっちくらいのときに持ってきてくれたんだ。 |
八谷 |
あつあつですよ。 |
真鍋 |
あのかたちになってはじめてです。 |
幸喜 |
あのときはもう1番苦しかったときで。
年始のご挨拶とかっていって、
そのとき帰って、涙出ましたもん。 |
糸井 |
あのときはただ来てくれて
ここに馬鹿馬鹿しくいましたよね。 |
幸喜 |
明け方までいたじゃないですか。正直言うと、
あー時間が、みたいなのがあって(笑)。 |
糸井 |
早く帰れよ!(笑) |
幸喜 |
ほんとに、あのときは・・・。 |
糸井 |
この何日かの俺がそうですよ。全部終わって、
家でパソコンぱかって開けるのが5時とか。
そこから明日の準備になると、
明日って、今日だよねもう。痛いね。 |
幸喜 |
そのときは3本ゲーム入れるうちの
1本というのが、まだほとんどできてないときで。
それはなぜかというと、赤外線機能の、発光ダイオードは
ついててもそれを動かすOSができていないとか。
だから(赤外線機能に)アクセスできなくて、
ほんと何かむずむずしてました。
いつできるのかな、って。
でも「まだですか」とは言えないし。
で、土台ができていない上で
ものをつくるのは非常にこわいんだけど、
アシスタントのひとたちには
それを気にしないでやっていてくれ、って。
1月のあたま頃っていうのが1番暗いどん底で。 |
糸井 |
結局、プログラムのひとたちって、
トライしてエラーしてっていう段階に
入らない限りは、何もやっていないのと
おなじに見えるじゃないですか。 |
幸喜 |
それがつらいんですよ。
本当はこういう理由で悩んでいるというのが
あるんですけど、言ってもしょうがないし。
1月2月ですよね。プログラムできたのが。 |
糸井 |
そんなんだったんだ!
八谷さんがぼくのところに来たとき、
発売前のキャンペーンの打ちあわせに
来たようなもんだと思ってました。 |
八谷 |
逆に、幸喜くんがこんなに苦しんでいるときに
俺ができることは、ふたを開けたときに
「あ、買ってよかった」
と思われるようなことだ、みたいな。 |
糸井 |
涙が出るなあー。 |
八谷 |
パッケージにクマ型の穴をあけたりとか。
商品ってトータルパッケージングというか、
全部でなんぼだと思っているので。
自分がお客さんにサービスできる部分が
あるなら、それを。
俺はプログラムはできないから。 |
糸井 |
このチームおもしろいと思うのは、
できないことについての意識がすごく強いね。
「ぼくは何ができないから」
っていう。 |
八谷 |
かわりにこれをやるよ、と。 |
糸井 |
それはすごいな。
でも、できないというのを
考えもしないんじゃなくて、
ほんとにここに任せておけばいいというひとが
チームにいたから、できたことなんですよね。
(おわり) |