八谷 |
執念深さっていうのは絶対要ると思います。
ACアダプタあるんですけど、
最初はもっとでかかったんですよ。 |
真鍋 |
ポケットボードのサイズがこれだから、
もっと小さいかと思っていたんですけど、
思ったよりも大きくて、本体の半分くらいので。 |
八谷 |
ちっちゃくならないかな、
とはずいぶん言ったんだけど、
コストが・・・とカシオさんに
言われて最終的にあきらめちゃった。
でも、最後の最後で増田さんが
「これではだめです」
ってばーんって言って、
だから小さいアダプタに変わって。 |
糸井 |
増田さんそうやってたまに入れ墨みせちゃうんだ。 |
増田 |
コストでだめですと言われて
半分はあきらめたんですけど、
ただ、わたしもずっと開発してきて
ものをつくるのはおもしろいと思っていたのに、
ちょっとやっぱり妥協しすぎるように
なってきていたんです。 |
糸井 |
なっていきますよね。
何でなるんだっていうのは
また別のテーマだと思うけど。 |
増田 |
立ち回りがうまくなってしまって、
そんなに労力をかけても意味がないって
先に知っちゃって。ACアダプタは、
ほんとにそういうときの問題でした。
そこで若い子に言われたんですよ。
「だめですよ。そんなので妥協するんですか」
って言われて。 |
糸井 |
知らないうちに「昔のわたし」が育ってたんだね。 |
増田 |
はい。
それで、やっぱりこういうのって
技術を知らないとたたかえないので、
ACに詳しいひとのところに行って、
ACってどういうふうにできていて、
どのくらいの価格が妥当なのかというのを
いろいろとだいたい教えてもらって。
こういうふうに交渉するんだよ、
というシナリオも教えてもらって。
で、カシオに行って
「秋葉原に行けばこういうのが
500円で売っているのに、なんで」
と説得をしていたんです。 |
八谷 |
ぼくらは別売も辞さず、だったんですけど、
もちろん最初からちっちゃくてかわいいのが
入っていたほうがいいわけです。
旅行に持っていくというのが考えられるから。 |
真鍋 |
じゃあ、その代わり
絶対別売りで出してくださいよ、
って言っていたんです。 |
糸井 |
そうなるよね、着地がそこになっちゃうと、
もう喧嘩にはならないよね。 |
真鍋 |
そしたらそのあとで、
「ACが小さくなるんで、
パッケージのサイズが小さくなるので、
もう一度チェックしてください」
ときて、あ、増田さんやってくれた、と。 |
八谷 |
そういうのって、極端にやってしまうと
みんなが気をつかいあって、
やっぱり安いほうがいいや、とかいうふうに
なってしまって、見失ってしまうんですよね、
誰のためにやっているのか、とかを。 |
糸井 |
かっこいい話だねー! |
増田 |
どちらかというと大きな社内だから、
メーカーさんみんながうまくいくように、
それがコーディネーターとしての役目だから。 |
八谷 |
Win=Winモデルは重要で。 |
糸井 |
今は冗談じゃなく例が出てきているから
言えるけど、昔はそれがありえなかったですよね。
つまり、みんながWinだったという
ケーススタディがなかったんですよ。
もしそうなら、お客さんがLoseしてるとか。
でも最近、商品が情報化してくることで
はじめて、コストの削減はどこでできるかを、
原料費なしでできるようになったりしてるんじゃないですか。
おかげで言えるようになったんですよ。 |
増田 |
ひとつのものをつくりあげる点では、
ポケットボードはどこで妥協をするかという
妥協の産物だと思います。
「妥協」って、言い方は悪いけど、
ベストよりベターという感じで。
かたちを出さないと次に進めないという。
一歩出したら一歩退くみたいな。
そういうパズルみたいにして
できあがっていくもので、
ここでカシオさん守ってあげるよと言わないと
カシオさんは本音で接してくれないだろうなあ、
という場面もありますし。
(つづく) |