真鍋 |
わたしコンピューターマックから入ったんで。
自分の思いどおりにならないのが当然でした。 |
八谷 |
それは、壊れても当たり前っていう。
機嫌みたいなのがあるんですよね。 |
増田 |
いとおしくなってきたりするんですよね。 |
糸井 |
そういうひとたちだったのか、やっぱり。 |
真鍋 |
それと同じで、電子ペットでも、
自分の思い通りになるかと思ったら
大間違いっていう。 |
糸井 |
ナックルボールっていう野球の変化球があって、
風向きとか何とかで、
ピッチャーも予測できないんですよ。
他の変化球って、軌跡が
ある程度予測できるんですよ。
非常に数学的な曲線なんです。
ナックルボールって、何かが起こるんです。
何かが変なんです。
それがね、変化球としては最高ですよね。 |
八谷 |
パルプンテだ。 |
真鍋 |
(笑) |
糸井 |
そうそう、パルプンテ。
これ、共通に会話できちゃうのがすごいな。
考えてみたら、視聴覚交換マシンだって
パルプンテですよね。
プログラムしたときには数字的には
こういうやりとりなんだけど、
やってみたらわからなかったっていうのは、
・・・まあパルプンテに関してはわかりますよね。
乱数の要素を混ぜているだけだから。
だけど、ほんとうにおもしろいのは、
自分にもわからないものですよね。
一緒に答えを考える、考えること自体を楽しむ、
というのは、なかなかみんなに理解されない。
特に、それは日本の農耕の歴史が
そうさせているんだと思うけど。 |
八谷 |
何か、でも、ポストペットも
よくわかってない部分が
自分たちでもありますね。 |
真鍋 |
視聴覚交換マシンを
はじめてつけたときのような気持ちがあって。 |
糸井 |
前にここに来たとき、
ほんとにクマがメール持ってきたとき
嬉しかったって言ってたよね? |
八谷 |
びっくりしましたよ、「ほんとかこれ?」って。 |
真鍋 |
1番最初にそれを見たのは、
幸喜くんのいた会社で、
こっちのPCとこっちのPCって
つなぎあうようなところで。
こっちからこっちに送ったら
「わー、行ったー、すごいすごい」
やったーってよろこんでたんですけど。
家に持ってかえってテストで
それやってみるねって言って
やってみたんです。
それで八谷くんと電話しながら
メール出してみたら、もうびっくり! |
八谷 |
さっきまでメールソフトのなかに
ちっちゃい、かわいがる対象がいたのに、
メール出すと部屋にもう誰もいない。
部屋だけ映ってて。
「うっわー、さみしい!さみしくて、いい!」
って。 |
真鍋 |
(笑)
会社ではみんなでわいわいってやってて、
送ったさきに手を振って、向こうも
「あ、来た来た」とかやってるじゃないですか。
ほんとに。 |
糸井 |
糸電話もそうだけど、もしもし、ってやって、
きこえてきたときに、思わず相手を見るじゃん。
あれすごいよね。
結局生理に届いたときに、
脳だけで生きていると思っていた自分が、
生理と脳両方あるんだって
気づかされる瞬間ですよね。
あと単純に、スポーツ選手が
自分とか相手とかがとんでもないプレイをして
うまくいったときに、本気で喜んで
ぴょんぴょんしてるじゃないですか。
何であのパンチを受けたかわからない、とか。
イチロー工藤の対決とかあるんですよ!
・・・あの、まあそれは
スポーツだからいいや(笑)。 |
八谷 |
視聴覚交換マシンって
手が触れた瞬間の感じって
想像してなかったんですよ。 |
糸井 |
あれはすごい! |
八谷 |
想像してなかったんだけど
実際自分でつけてみて、
「これは、ちょっと成功したかも」
というのがありましたね。
エモーションの偉大さみたいなのは
確かにありますよね。 |
糸井 |
心と脳は違うっていうことを、
ぼくらは普段感じさせられないですよ。
文章読んでてもおもしろいのは、
心と脳が別だっていうことを
わからせる文章なんですよね。
脳的には矛盾してるけど
心的には納得できるという
・・・これは音楽にもありますよね。
それを、声を大にして言いたいところですね。 |
八谷 |
何かのときにそういうのを感じる瞬間があって、
ポストペットのときには来た瞬間とか
自分のペットが帰ってきた瞬間とかに、
相手とつながる感覚があって、そのときに
「これは、いけるかも」
とはじめて思った。
あたまのなかでわかっていることと
別のことが起きたのを実感するというか。 |
糸井 |
気持ちいいだろうねー。
それまでさ、想像的には
ぜんぶ知ってたわけじゃないですか。
そうなるに決まっているっていう
答えを知ってたじゃないですか。
知ってる答えに驚かされることなんて、
最高ですよねー、うわー。 |
八谷 |
ペットが何回も行くと汚れるっていうことに
していたんですよ、その汚れる実験をしてた。
すっごい汚れたペットがやってきて、
「汚れてる汚れてる!」とかって言ってみてたら、
そのペットがぶりぶりって
部屋にうんこして帰ったのを見たときに
「うそー!」って。
汚れたペットがうんこしやすくなるよう
幸喜くんがつくったんですけど、
それ、なんとなくそうしてって
言ってはいたんですけど、
そいつがひとの家で
うんこするとは思わなかったから、
すごいショックで。 |
真鍋 |
わざわざやって来て、うんこをして帰る。
想像を絶するひどさ。 |
糸井 |
それは、手法としては「キャリー」ですよね。
終わったと思ったら墓から手が出てきた。
定式に直せるものなんだけど、
感じるときには定式化なんかできないですよね。 |
八谷 |
それは自分たちも想像してなかったから、
やっぱりものつくってて嬉しいのは
その瞬間というか。
ものつくっててよかったなあ、とか。 |
糸井 |
趣味がぼくは好きだなあ、なんか。
そういう趣味。
(つづく) |