真鍋 |
早くつくらなきゃ、ほかのひとが
同じものを考えてるに違いないから。 |
幸喜 |
それはほんとにすごくありましたよ。 |
糸井 |
近いところまでは考えているまではいくけど、
でも、実際ほんとうにはじめたひとは
ひとりもいなかったよね。 |
真鍋 |
いや、でもわたしたちは
誰でも思いつくって・・・。 |
幸喜 |
誰でもできるって思って。 |
八谷 |
俺ら素人が3人でやってるんだから、
おっきい会社がやったらすぐ追いつくって。 |
真鍋 |
早くやんないと。 |
糸井 |
その危機意識って、すごいね。 |
真鍋 |
先に出さないと真似されたって言われたらやだし。 |
糸井 |
それはのちのち
ポケットポストペットの話につながりますね。 |
幸喜 |
今にして思うとマック版のベータ1っていうのは
すごい出来のもので。
ペットがドアにはさまって
足をばたばたさせたりとか。 |
糸井 |
ぜんぶオッケーさせないと時間がないのね。 |
真鍋 |
部屋があって、そのなかにペットがいます。
これがメールを運びますっていうコンセプトを
プレゼンするためだけにあったんです。 |
糸井 |
ポスペと一緒の時期くらいに
ビン詰めの手紙みたいなの出なかった? |
幸喜 |
ボトルメールは7月ですよ。
97年7月。だからウインドウズ版の
ベータ版をつくっているときで。 |
糸井 |
何となく同じ時期くらいに知ったんですよ。
何か雑誌で見て、そのふたつ見かけて、
ビンの買うやつってどこにいるんだろう?
と思ってた。
インターネットはじめる前から、
誰が買うんだよこれ、
現代芸術家なのか世の中のひとは、
と思ったもん。 |
八谷 |
でも、「同士よ!」と思いましたよ、ぼくらは。
変なメールソフトどうし、
同盟組もうかなーぐらいの。
あれはそうとう特殊なソフトだから、
誰にメール出すかわからないという。 |
糸井 |
ルールを守らないっていうことを
ソフトのなかに組み込んでいるのは、
いわゆるパッケージ化されたソフトには
ありませんでしたから。
敢えて言えば「たけしの挑戦状」とか。 |
真鍋 |
(笑)やりました。
クリアはしなかったですけど。 |
糸井 |
(笑)もちろんできないけど。 |
真鍋 |
あれはやりましたねー。
挑戦されてるー、とか思って。 |
糸井 |
俺、そんなに素直じゃなかったな。
当時ひどい打ちあわせをしたらしいんだよ。
ひどい打ちあわせでひどいつくりかたをして、
それで出しちゃったゲームなんだけど、
でもそこにツッて行く自分が好きなんですよ。 |
真鍋 |
わかるわかる。 |
糸井 |
でも、あれは、ある意味では、
ルールをきれいに設定しないという意味では
あれから学ぶことがあったと思うんですね。
ぼく、自分がゲームつくっている立場で、
田尻(ポケモン製作者)がまだ若いときに
俺、あいつと言いあったことがあって、
おもしろかったんだけど・・・。
宮本さん(任天堂)が
氷の上でロボットみたいな状態で
のぼるマリオがあったっていうんですよ。
氷というところですっごく
ハンディを与えているんですよ、ゲーマーに。
田尻は、これはいけないって言うんですよ。
マイナスの要素を課して
プレイヤーの進入を阻むというのは、
ルール違反だって言うの。
「ぼくは、あの6面は認めない」
って田尻は言うの。
俺、それを言ってる田尻って
なかなかかわいくて好きだったんだけど、
もう俺自分がおやじだから、きいたの。
「田尻、お前つまんなかったの?」
「おもしろかったですよ!」
「じゃ、いいじゃん?」
「・・・いや、だめです!」
その話をものすごく鮮明に覚えていて、
その日以来田尻のことを
俺は「青年将校」って呼んでて。
226に青年将校みたいな。
あんな時代があったんですよ。
パッケージされたソフトのなかにはね。
(つづく) |