幸喜 |
どんな構造を実現させるかという
プログラムの点で、最初八谷さんが、
「これはユーザーが2年くらいつかうもので、
2年経って育ってきたなっていうスパンで」
と言ったんです。
そうなると、普通デバックにするんだったら
ちゃんと2年くらい大きくしないとわからないんで、
ポストペットではそれを
実地にやってるところがあるんで、
そういうすごいゆったりしたなかで
構造が出てきたりするようにしているんで、
ぼくも見たことのないものとか、
「あ、ほんとに出た」
とか、ユーザーが「何々でました」って言ったら、
「あ、ここまで来たな」とか。
「よかった」って。 |
糸井 |
そのためにも早くつくったっていうのは、
すごいなあー。 |
幸喜 |
今はオープンソースという言葉があるから、
それから現実に来るけど、
ぼくらはソースは公開しなかったけど、
ある段階からは開発工程をオープンにした。 |
糸井 |
受け手がいないと
つくり手もつくらないっていうのに
究極は行くと思うんですよ。おそらく。
それの過程でそういう試みって
ちゃんとあるじゃん、っていうのって、いいね。 |
幸喜 |
マックユーザーって
インターネットに飢えてて、
ウインドウズ95が出てきたときに、
ウィン版はあったけどマック版っていうのは
なかった時期とかがあったんですよ。
だから、だいぶソフトメーカーから
冷たく扱われてきたマックだったので、
最初の頃にダウンロードしてくれたのが
親切なひとばっかりだったので。
それがものすごい助けになったんですよ。
すごい対照的なのは、
ウィンドウズ版を出したら、
受け手はアラ探しばっかなんですよ。
ウインドウズってやっぱり
プログラマーが多いんで、
「このソフトはどうのこうの」
ってしたり顔でぶつぶつ言う。
で、強烈なひととかと個人的にやり取りしたり。 |
八谷 |
でもそういうひとたちのおかげで
鍛えられてよくなったっていうのは
あるんですけど、
最初にだめって言われてたら・・・。
最初にいいっていうひとがいて
鍛えられたからよかったけど。 |
真鍋 |
最初にあんなに言われたら・・・。 |
糸井 |
どれほど悲しいかは、
言うひとにはわからないよね。
1日気が重いなんて当たり前だよね。
ちょっとしたこと言われただけでもね。 |
幸喜 |
気が重いっていうか、
一瞬ものすごく腹が立って、
ものすごーく悲しくなるんです。
ここの振幅がひどくって。
ウインドウズ版出してから3週間くらいは
ぜんぜん家に帰れなくて。
何か気分的に帰れなくて。
何言われるかなって。 |
糸井 |
要するに待つわけでしょ?
どのくらい自分が傷を負えるかを、
試さなきゃいけないみたいな。 |
幸喜 |
すごい嫌なんですよ。 |
糸井 |
俺ほとんど今やってること、おんなじだよ。
傷になるわけじゃないけど、
喜びも悲しみも、絶えずじゃないですか。
そうすると、メールソフトを閉じられないんですよ。
ずーっと刺激を受けることに
慣れているんで、だめですね。 |
幸喜 |
その頃っていうのは、疲れて寝てて、
5時間くらい寝て「ぱっ」て目が覚めたら
「何々のバグがでてて」
というこんなにでっかいツリーができてて、
「あー!」
ってバージョン.01みたいなのをつくりつづけてて。 |
糸井 |
意地だよね。
幸喜くんの話はおもしろいねえ。 |
八谷 |
床にダンボールで寝てて、
ゲームはそうかもしれないんだけど、
ぼくらはじめて直面したから、
「ほんとに帰らないんだ」って(笑)。 |
糸井 |
こういうものなんだって(笑)。 |
真鍋 |
マイダンボールがあって(笑)。 |
八谷 |
ひげが、ベータ1ひげとか
ベータ2ひげがあって、
おわるまで剃らなくて。 |
糸井 |
それはゲーム界では当ったり前にやるからね。 |
幸喜 |
ですね。 |
八谷 |
でもゲームの世界の場合は、
リリースするまで声がきこえないじゃないですか。
でもこっちは途中の声がきこえてくるんで、
躍起になってガシガシやってる。
もう、声がかけられない。
じゃあ、しょうがない、
おれマニュアルつくってるよ、とか。 |
糸井 |
あー、わかるわかる。
俺も意味なくいるときあったもん。
牛丼買いにいく役とかね。 |
八谷 |
しますします(笑)。
「何か食べるもん、いる?」とかきいて。
それでずーっとマニュアルをつくってたりして。 |
糸井 |
それ妙にいいアイデアとか浮かんだりして。 |
八谷 |
ああ、でもポストペットのマニュアルは
その頃にしては画期的にやわらかかった。 |
糸井 |
ほんとはその、マニュアルがやわらかいとか
インターフェイスのところで
どう気をつかっているかという話を
ききたいんだけど、そこんところを飛ばして、
ポストペットの成功は
みなさんもうご存知でしょうからって言って、
いったん暗転させちゃいたいんです。
で、これに持っていこうかなと。
こんなに大変だった、っていう話を、
ぽーんと消そうと思ってるんですよ。 |
八谷 |
その頃、増田さんは・・・みたいな。 |
糸井 |
そう。
(つづく) |