糸井 |
ぼくがパソコンはじめたあとに、
「これなんだよ。本当に求めてたのは」
俺、嫁に見せた覚えがある。
そのポケットボードの広告を。
「こんなんあるぜ!」
って、いち消費者として。 |
増田 |
そういうひとがいるといいなあと思ったから。
「1色はビジネス色にしろ、平たくおさえろ」
と言われたけど、「絶対だめ」って。 |
糸井 |
コニーちゃんが入ってるのに
他にビジネス色の持てないって、今は。 |
増田 |
なんだけど、みんなは、
「そういうふうに
しといたほうがいいんじゃない?」
って言って。 |
糸井 |
馬券ぜんぶ買うタイプだよね。 |
増田 |
で、売れないんじゃないかっていうのが大半で、
あんまり売れないんだろうから、好きにやれば?
っていう感じで、誰も相手にしてくれなくて。 |
糸井 |
え?そんなだったの?売ったのに。 |
増田 |
5万台買っちゃうっていうのは決めていたので。
「値段をあれくらいにするには、
5万台買わなきゃ商売になりません」
と言われたので、
5万は買おうって決めちゃってたんですよ。 |
糸井 |
ってことは、即日売り切れでしょう? |
増田 |
ううん、最初は1000台しか売れなかった。 |
八谷 |
何か、ききましたよ。
最初は不遇時代があって。 |
増田 |
そののちになんですけど、
全然最初売れなくって。 |
糸井 |
へー、そうだったんだ。 |
増田 |
それこそ、出たときに
社長のところに持っていって、
「これつくったから、
5万台売り切ったら社長表彰をくれ」
と言ったんですよ。そしたら、
「俺はコニーちゃんが
何のことだかよくわかんないけど、
とにかく自分のつくったものを
最後まで売るのが1番いい。
つくったひとが1番愛情あるんだよ。
クレームも何も、ひとに任せないで
自分でやってみなさい」
と言われて、それからはずっと。 |
糸井 |
何人なの? |
増田 |
3人なんですよやっぱり。
部長がひとりいて、
これが子供みたいなタイプのひとで、
「俺はこういうのが欲しいんだ」って。
わたしがいて、
「しょうがないなあ、
これで満足してくださいね」
っていうマネージャーの役で、
あとすごくまじめで堅実な女の子がひとり。
その3人で、それこそみんなで手を挙げて。
やっぱりキャラが違っていたので、
みなさんの話をきいてても
3人キャラが違うのがいいような、
期待を裏切られるというか。
真鍋さんのあの絵を見ると、
まさかうんこをするとは思わないのに。
でもそのつぶやきのところって、
八谷さんの詩的な部分とかがあったり。
みんなのキャラの
期待の裏切られかたがすごくおもしろかった。
わたしたちのときもも
3人がそれぞれキャラが違って
みんなのいいところを尊重して。
でも、ほんとに新入社員の女の子とわたしだけで
わたし会社に入って3年目だから、
ひとと一緒に仕事をするのがはじめてで。
・・・営業ってひとりだから。
それこそ彼女が
こういう色にしたいって言ったときに、
「それじゃ売れないと思うわ」
とも言えないという悩みを
抱えてたんですよ、まだ。 |
糸井 |
ちょっとうぶなところがある。 |
増田 |
まだまだそういうのが。今は
「あんたの言うことなんかあてにならないわ」
とか、思ってて。
迷いながらつくったんだけど、
子供のようなその部長が
「絶対に売れる、間違いない。
自分が売れると思うものをつくればいい。
それで売れたらすごーくうれしいぞ。
それはすごく幸せんだよ」
と言われたのを信じて。 |
糸井 |
そこでポケボ5万売ろうとしているところの
管理っていうのは、誰がやってるの? |
増田 |
管理は、ないんです。 |
糸井 |
ないの?5万だからいいの? |
増田 |
私たちも、しょうがない、
5万買わなきゃどうにもならんだろう、
買っちゃえ買っちゃえって。
こっそり5万買おうと
決めていたのがばれて、怒鳴りこまれて
「増田出てこーい!」
って、フロア中に響き渡るような声で。
「ふざけるな!」
って、バン!とか机たたかれて、
ちょっとびびりましたね、
「何かのせいにしてしまおうか・・」
とか。 |
糸井 |
いもしない「出石部長が」とか。 |
増田 |
「こんなもん、俺はやらないぞ」
とか言われて、どうしようー、とか。
でも、出しちゃってからは
5万売らなきゃいけない。
あと、予算もなかったんです。
うちはメーカーからは機械を買うだけなんで、
短期コストはかからないんだけど、
そのかわり5万の在庫を抱えるんで、
売らなきゃいけない。
月に1000台しか売れないし。 |
糸井 |
へー、月1000台。 |
八谷 |
「50か月だー」とか。 |
糸井 |
月賦みたい(笑)。
外車買ったOLみたい。
(つづく) |