アートとマーケの幸福な結婚。
ポストペットの八谷さんと、
彼の船出。

第15回 96年年末・幸喜さんの監禁生活



ポケットポストペットは、
どういうひとがどうやってつくったの?
というのをきくのがこのコーナーの内容です。
そこで今は、ポストペットをつくったかたがたに
96年の企画進行時の思いを、うかがっております。
夏頃からスタートして一気に計画がすすんだよ、
というのが前回でしたが、今回はその先で、
いよいよプログラマー幸喜さんの孤独な独り旅です。
96年12月以降のお話になってゆきます。

幸喜 ポストペットのベータ1とベータ2は
まったく別のプログラムなんですよね。
ごっそりつくりなおしているんです。
八谷 ベータ1は様子を見るため、
ご意見をうかがうためで?
糸井 こんなこと八谷さん知ってた?
真鍋 ベータ1とベータ2が違うのは知ってたけど。
糸井 こんな気持ちでやってるとは?
八谷 リリースの直前って1月10日だから、
正月でも幸喜君はたらいているわけですよ。
コタツの横にサーバがあって、
そこで試しながら実験してて。
データを変える、というのは知ってたけど
でもそういう思いをしているとは・・・。
幸喜 96年の12月中旬からというのが一番・・・。
年末年始で会社のビルが
まるごとロックされちゃって。
糸井 あるある、空調も効かないってやつね。
幸喜 会社でアパートを1室借りてもらったんですよ。
そこに機材を持っていって。
本郷のところで。
PHS使ってたんですけど、
充電器を会社に置きっぱなしにして忘れて、
PHSだけ持っていったんだけど
それが年末年始で切れて、
まったく通信が途絶えたんですよ。
真鍋 電話線は?
幸喜 電話線は、なかった。
糸井 下宿のようなところに・・・。
幸喜 サーバマシンだけで。
あのときはもうほんとに何か・・。
真鍋 下界と閉ざされて。
幸喜 ほんとに・・・。
糸井 それ、誰にぶつけた?その悲しみ。
ひとりで歯を食いしばってたの?
八谷 プログラムにぶつけてた(笑)。
真鍋 うわさによると、
ポストペットのプログラムに
幸喜さんの日記が入っているという。
幸喜 何かコメントのところに書いてあるんですよ。
糸井 ああそうなんですか、
解析すると見えちゃうんだ。
幸喜 だから、そのときの頭の中の
ぐちゃぐちゃ状態が、なんかわかるんで。
糸井 「たぬきそば!」とか書いているかもしれない。
幸喜 いや、何か「死ね」とか「殺す」とか
そういうきたない言葉ですけど。
糸井 はー。おもしろいなあー。
俺、幸喜さんとつくる話したのはじめて。
幸喜 ベータ1に出したときにぼくの心にあったのは、
ライブラリの総とっかえですよね。
ちょうどマックが7.5から、
Mac TCPっていうやつから
OpenTransportに
移行するときに重なってたんで、
ものすごくつらい時期だったんですよ。

ほんとうなら、正気ならば
ちょっとここで開発ぜんぶストップさせて、
Mac OSがちょっと落ち着いて
OpenTransportにちゃんと移行するのを
待とうというのだったんですけど、
とりあえずみんな出したい、
自分も出したいと思ったし、じゃあもういいやと。

(つづく)

2000-04-22-SAT

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