幸喜 |
8月、9月、10月とやって、3か月くらいで
プレスリリースして・・・これ、異常ですよね。
ものができていないのにやってたんだ、
とかって、今思ったんだけど。 |
糸井 |
最初はちっちゃなものだったんですか? |
幸喜 |
最初はちっちゃくですよ。 |
真鍋 |
フロッピー1枚に入るようにしたいと。 |
八谷 |
尋常じゃないですよね。 |
真鍋 |
どうかしてた。 |
八谷 |
でもすごいプロジェクトって今思うのは、
全員が「はい、やります」
って手を挙げて参加しているから、
モチベーションが異様に高いというか、
何か、嫌々参加しているひとが誰もいない。
北村さんも、ずっとそうだから、
深夜までぼくらとつきあって、
深夜タクシーで笑いながら夢を語りあったりね。
「『こち亀』にいつか載れば」
とかそう言う(*実際に載った)。 |
糸井 |
夢って言ったら
「こち亀」に載るのだったんだ。あとは?
あっちこっちにくまが氾濫してるイメージとか。
そういうのはない? |
幸喜 |
すごくたくさんひろがるとか
そういうのは全然なかった。
単に、純粋に伝えたいことを・・・。 |
真鍋 |
すごい些細だよね。
ネットの古株にしいたげられなければいいなあとか。
邪魔な添付書類つけやがって、って
言われなけりゃいいなあ、とか。 |
幸喜 |
あの頃って、今でもそうですけど、
インターネットって、
まだ農耕文明に入らない時期というか、
巫女みたいなやつがいて、聖職者がいるんですよ。
そいつらがいて、
お前らこういうことはしてはならん、
というような制約があった時代がやっぱあって、
縄文時代みたいなもんですよね。
そこにぼくらががーっと行ったときに、
添付を積極的に活用するメーラーというのを
やっていいのかという不安がすごくあって。
そういう聖職者のひとたちに
怒られなければいいなあと。 |
糸井 |
それって、どういうひとなの?聖職者って。 |
幸喜 |
ネットを立ち上げたひとだとか、
JUNETとか、なんとか、あるじゃないですか。 |
糸井 |
それは専門の職業としてそうなんだ? |
幸喜 |
学校でネットワークの研究しているひとたちが、
そういうひとたちがやっぱり・・・
インターネットってどこでも言われているけど、
学術研究からはじまったもので、
そういうひとたちのコミュニティっていうのが
あるじゃないですか。
当然、そういうひとたちが論評するだろうし。
そういうひとたちに何か言われないかなあとか
そういうのがあったんですけど。 |
糸井 |
それは気になるくらい大きな存在だったんだ。 |
幸喜 |
それは、ありましたよ。 |
八谷 |
相対的に。 |
真鍋 |
だって、ミスしたらしかられるっていう。
インターネットでミスしたら、有識者にしかられる。
半角文字でも使おうものなら・・・。 |
幸喜 |
そういうものは、ありましたね。
今はそういうのはスケールが
ぐっとちっちゃくなって、
メーリングリストになったと思うんですよ。
メーリングリスト単位で存在していると。 |
糸井 |
ぼくはそういうひとたちの存在を
知らなかったくらいだから、
時代が変わってるっていうことだよね。
そんなやつはどこにいるんだろうって。 |
幸喜 |
ああいうひとたちは1番偉くて、
その文化に、宗教に従っている、
こう、小さいひとたちがいるじゃないですか。
そういうひとたちがインターネット仕切ってて、
そういうひとたちに絶対文句言われるだろうなと
思っていたんですけど。 |
真鍋 |
でもしかられなかったんだよね。 |
幸喜 |
しかられなかったからまあいいのかなあと。 |
真鍋 |
何かのときに、異業種交流会みたいな勉強会に
呼ばれて行ったときに、どっかのプロバイダがいて、
まさにそういうお小言を言う
システム管理者みたいなひとがいて。 |
糸井 |
それってラーメン王決定戦の団体みたいだな。
すごく太った人か痩せたひとしかいないんだって。
なんつーか、本気度が、桁外れになってるんだろうね。 |
真鍋 |
じゃあもう胃がやられちゃってるひとか、
脂肪にまわってるひとか。 |
糸井 |
俺らが、例えばラーメンのことを書いたとしたら
「こいつら、誰に断ってラーメンを書いてるんだ」
って言う人もいるんだろうと思うよ。
だって向こうはそれに命をかけてるんだからね。 |
真鍋 |
異業種交流会みたいなのに行って
「こういうのつくってるんですよ」
と言ったら、ちょっと嫌な顔をされて、
「あ、ここにいたか」
と思った。
「困るんですね、そういうことは」
って言われて。 |
糸井 |
どういう文句を? |
真鍋 |
「無駄なテキストが」とか。 |
糸井 |
「みんなの管を、
そんなことに使わないでくれ」って? |
真鍋 |
「もっと有用なことに」と。
最初の頃のインターネットって、
7ビットしか通らなかったときが
その昔にはあって・・・。
今はもう全然そんなの関係ないですけど、
インターネットに8ビットの
文字コードを流すのはけしからんとか。
そういうのがありましたね。
「サブジェクトに日本語を入れない」とか。 |
糸井 |
あーなるほど。そのなごりがあるよね今。 |
幸喜 |
すごいがんがん言われてたんですよ。
たぶんそういう「こうしろ」という
インターネットの使われ方というのは、
プログラマーから見ると、
彼ら自分たちでラクしようとするために
その流儀を押し付けるわけですよ。
それでやりつづけるほうが楽なんですよ。
ぜんぶUNIX流でしちまえというような。 |
糸井 |
逆に彼らから見ると、
俺たちが1くわ1くわ耕して
あまりいいものを食わずにやってきたものを、
折角キャベツが出来たら、
ばくっと食ってるやつがいる(笑)。
キャベツを畑どうしで投げている。
落っことしたらどうするか、みたいな。 |
幸喜 |
その考え方は間違っているんです。
それあんたたちは間違ってるよ、っていうのも、
やっぱわからせたいというのがあって。 |
真鍋 |
私ちょっとだけ言ってこないかな、
と思ってたことあったよ。喧嘩できるのに、って。 |
糸井 |
火の国の女のようだ。
でも、インターネットに関してのそんな話、
ここで出てくるとは思いもしなかった。 |
八谷 |
黎明期でしたから。 |
糸井 |
んな文句、ちょっとでも来たら
俺はやってなかっただろうな。
「るっせーなー、やめてやるよ」だよ。 |
幸喜 |
それで、次のタマとかは考えていましたよ。
添付でやるのが駄目だったら、
テキストで本文でやると。
それも考えていたんすよ。
それも用意してベータ版をやって、
で、文句言われなかったからそのままで。 |
糸井 |
じゃあ、それ用意するだけでも
ある意味で無駄なコストをかけてるよね。
(つづく) |