糸井 |
真鍋さんと幸喜さんとの間で
八谷さんが判断をするんですが、
「ぼくはものをつくる人間としては
たいしたことない」
という自分に対する厳しさが、
ここではすごく役に立つんですね。
早い話が、厳しいんですよ、
八谷さんの言ってることって。
「俺は駄目だ」
って思うことって、
けっこうむつかしいんですよ。
八谷さんはそれをたぶん他人にも。
・・・自分に一回やったことだから。 |
八谷 |
けっこう要求水準が高くなりますね。
もっと大きな心でいよう(笑)
とかいうのが最近のテーマなんですけど。 |
糸井 |
真鍋さんがその段階の
タイミングで、思ったことって
もう既にポストペットの構想は
話しあってたわけだから、
「これはやるべきだ!」と思ったの? |
真鍋 |
もちろんそうですね。
セガでは、自分のゲームを自分でつくれないので。
会社行きながらつくってもよかったんだけど、
「きちんと名前を出させてくれ」
と言ったら、会社のひとには
「アルバイトとして、
名前は出さないでひとりでやるならいいよ」
と言われたので、セガのほうを辞めて。
最初は、自分の会社の上司に
プレゼンしたんですよ。 |
糸井 |
何て言われた? |
真鍋 |
「うちPCをやってないし、
通信・・・って言われてもね。
メールソフトって言われてもねえ・・・」。 |
糸井 |
まだまだでしょうとかって話か。
あり得ないっていうやつか。 |
真鍋 |
全然乗ってこなかったですね。
「おっ」って思われなかったら、別に、と。 |
八谷 |
ソネットで、ここでやろうと思ったのは、
小出さんという広報のひとは、
原案見て即答で「やりましょう!」って。 |
真鍋 |
何かA4の紙5枚くらいだったのに
もう、ぴかーって、
「もう5万円でも欲しい」って。 |
八谷 |
5万円でも買います、って。
その具体的なことがよかったんです。
当時の社長が言ったんですが、
「そんなに小出くんがいいと言うんだったら」
という感じでしたから。 |
糸井 |
そこでは、数字ではない熱情のようなものが
わっと燃えたんだ。 |
八谷 |
そこまで言ってくれるんだったら、
この期待にこたえねば、とやっぱり思う。 |
糸井 |
チェックリストを持ってきて、
「こうだめだ」
というチェックをするひとって、
世の中にはいますよね。
それで、あとで出てくるでしょうけど、
例えばドコモ的会社というような
大きい会社には、やまほどいます。
いわゆる秀才型チェックというもので。
一緒に馬鹿になってくれるタイミングで
つきあいが決まるじゃないですか。
それは、小出さんのおかげもあるね。
・・・このポスペの話ってさー、
きいてると、全部うまくいってるね。
今の八谷さんのお話って、
時間軸で話していても、挫折ないですね。 |
八谷 |
そんなにないですね。
あ、でもやっぱり作品つくって
完成度が低かった、というのがありますね。
だからぼくのワールドシステムが
うまくいっていなかったのは、とても残念で。
やっぱり、エンジニアとしてはもう俺はだめだ、
と思ったんですね。 |
糸井 |
そういう八谷さんの認識が、
普通のひとに欠けている部分じゃないかな。 |
八谷 |
1個に集中してないけど、
いろいろなジャンルに興味があって、
そこを総合すれば何とかできるんじゃないか。
それと完成度に関すると
プロと組んだほうがいいやって思うように。
最初は真鍋さんとプログラムを、
「よし、覚えるか!」って言ってたんですよ。 |
糸井 |
そういうことって、違うんだよね。 |
真鍋 |
「はじめてのC言語」っていうのを
買っても、もう無理だっていうか・・・。
だから、面倒なことは他人にやってもらおうと。 |
糸井 |
やめてよかったでしょ?C言語。 |
八谷 |
やっぱり、全員がプログラマーになっちゃうと
それはだめだなあ、みたいに。 |
糸井 |
できないことがわかりすぎるひとたちが
集まると、普通の会社になりますよね。 |
八谷 |
幸喜くんに対して、
すっごい無茶な注文いえるんです。
C言語、知らないおかげで。
(つづく) |