糸井 |
ポストペットとポケットボードがくっつく話は、
どこからそうなっていったんですか? |
八谷 |
週刊アスキーの
「デジタル業界の女たち」
という特集の1回目が真鍋さんだったんです。
その5回目ぐらいが、増田さんで。
写真に写っている増田さんのポケットボードに
モモのシールがついていたか、
携帯にモモのストラップがついていたんです。 |
増田 |
そのどっちも、ですね。 |
真鍋 |
あ、増田さんはポストペットを
つかっているのかも!と。 |
八谷 |
ぼくらのなかでの好感度が
内心上がりましたね(笑)。 |
真鍋 |
それ以前にもなんかの記事を読んで、
「男らしい!なるほど売れたわけだ」
と思っていて。 |
糸井 |
最初は誰が持ってきたんですか? |
真鍋 |
カシオさんが持ってきたんだ。
ポストペットとポケットボードの
合体したものをつくりたいと
他にも何社からも依頼があって。 |
八谷 |
ちょこちょこ話が来てて、
ぼくらとしてもそれは
大ウエルカムだったんです。
・・・と言うのは、
パソコンにむかついているとこがあって。
特にウインドウズでは、
ぼくらのせいじゃないのに
勝手に意味のわからないメッセージを
出しやがって!と思ってて。 |
糸井 |
(笑)前々からのテーマですよ。これはね。 |
八谷 |
ぼくらはユーザーに
サービスしようと思っているのに、
あんたのせいで台無しだ!(笑)
みたいな気持ちがあったんです。
わからないところで
コンピューターが止まったら、
嫌じゃないですか。
PCじゃないポストペットの端末を
すごくやりたかったんです。
で、ポケットボードとポストペットで
ポケットポストペットって、もう、最初から
運命付けられたみたいな感じじゃないですか。
でも、前のポストペットって、
自分たち専用につくればいいと
思っていたんだけど・・・。 |
糸井 |
あ、そうか。そのときと今回とは、
スタートが全然違うわけだ。 |
真鍋 |
そう、それはすごくあった。 |
八谷 |
電車に乗って電車の中でメール打って、
という感じのコンセプトだから、
誰につくったらいいのか、
目標がわからなくなって・・・。 |
糸井 |
え、ちょっと待って。
「わかんない」って言っていることが、
ぼくにはわかりにくいんだけど。 |
真鍋 |
いいわるいの判断の立脚点が
自分ではなくなるじゃないですか。
「25歳OL」に向けてのものになるから。 |
八谷 |
そこを経験したことがなかったんですよ。
よく考えてみたら、それまでは。 |
糸井 |
えー!
さんざんやってきているように思えるけど。 |
八谷 |
それまでは自分のためにつくっていたから。 |
真鍋 |
自分がいいと思えばいいし、
自分がだめだと思えばだめなんだけど、
25歳のOLがいいと思うようなもので。 |
糸井 |
そういうひとに送ろうというのは、
はなから決めていたんだ。 |
真鍋 |
それはこのポケットボードがそうだから。 |
糸井 |
ああそうか、その箱がもうそうだったのか。 |
八谷 |
最近電車に乗らないし、とか。 |
真鍋 |
だから、わざと電車に乗るわけじゃなかったけど
持ち歩きましたね、つくるときに。 |
八谷 |
何ていうか、顔が見えなくて
ちょっと悩んだ時期もあるんですけど、
ある日決心して、ぼくは逆に、
「増田さんの喜ぶものをつくろう」
と決めたんです。
不特定多数の25歳OLのためのものは、
結局 ぼくにはつくれないんですよ。
誰かのため、ってのは本当にむずかしい。
でも、増田さんがよろこんでくれること、
は想像できる。
そこでフォーカスがちゃんと合って。
具体的な人間にならないとだめだったんです。 |
糸井 |
また、手を振りあえないとだめなのね。 |
八谷 |
そうですね。結局ひとが見えてないと。
マーケティングデータだけだと、
全然具体的にはできないんですよ。 |
真鍋 |
わたしは最初から、
「デザインをどうするか?」
というのを見失ってたんですよ、いきなり。
1番はじめに、ポケットボードの外側を
ラフスケッチしなきゃいけないときに、
自分が持つものじゃないから
わからなかったんですよ。
それで、一応描いて持っていったんですけど、
そのなかのエッセンス部分だけが
残ってこれになったんですけど。
化粧品のコンパクトっていうのと、
そのときホワイトボードにわっと描いた
クマのかたちというので。
誰のための何かというところで
私は1番揺らいで、
結局今増田さんたちくらいの年の
OLさんと考えることにしたんです
はじめは自分が持ちたい携帯、って。 |
糸井 |
ついそう考える癖がついてますよね。 |
真鍋 |
って思ったんですけど、
それは違うということなので、
やけになってその場でクマの絵を描いたりして。 |
糸井 |
「わたしのための」というコンセプトは
すごい楽しいんだけど、
「わたしの年齢」をなくしてしまう方法しか
しのぎかたがなくなってしまうんですよ。
つまり、60歳になったときには和食を食うんです。
ステーキ食ってるひとに対しての商品を
つくれなくなるんです。「わたしのため」だと。
つくる動機をどうするっていう方法論を
見つけなきゃいけないんですよね。
このチームのポスペつくってるときと
今とでは、何年も経っているし、
ひとの注目している度合いも違うし、
どうするんだろうっていうのを、
このボードではじめてわかったんですね。
他人に対してつくったっていうことで。
(つづく) |