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いただいた質問へのお返事第二弾が届きました。 南極のことを極寒の地と思っていませんでしたか? その場に暮らしている人の視点は どうやら違うようです。
日本から南極まで観測船「しらせ」で行くほか、 飛行機でも行けるようになったことですね。 現在、日本の観測隊は昭和基地と ドームふじ基地の二ヶ所で観測を行っています。 第一次隊によって作られた昭和基地は 今も南極観測の大きな拠点で、 こちらには「しらせ」で南極入りし、 昭和基地から1000kmほど 南極点に向かったところに建てられた ドームふじ基地には飛行機と雪上車で向かいます。 正直なところ、12年ぶりに訪れてみて 昭和基地には大きな変化を感じることなく、 むしろ懐かしく思うほどでした。 【編集部註】斎藤さんは12年前に、 第35次南極観測隊に参加されています。 詳しくはこちらをご覧ください。 また、南極の気象は今も昔も変わらず、 こちらもすんなりと受け入れました。 それよりも、私自身の気持ちに ゆとりがあることに驚いています。 はじめて来たときは 何をするにしても手探り状態で、 わけもわからないまま 一生懸命なところがありましたが、 今はほぼ的確に 仕事を進めることができるように思います。 また、何かするときにも、 良し悪しはひとまず別にしますが、 冷静に判断し、 それに対して理由付けができるように思います。 と自負の念が強いですが、二度目の南極の印象です。 はじめて来た隊員の多くは 昭和基地に地面があることに驚いていました。 大陸のほとんどは雪と氷の世界ですが、 昭和基地は東オングルという島の上にあり、 冬でもところどころ岩がでているのです。 周辺の島々も岩の見えているところがあって、 夏にはペンギンの営巣地になるところもあります。 また数週間前に 第47次隊では初めてのブリザードになり、 多くの隊員はその勢いに驚いていました。 私自身は12年前、はじめて南極に来たときは 「あったかい!」が第一印象だったように思います。 ほとんどの国の観測隊は 南極が夏(12月、1月)の時期にやってきます。 その時期の昭和基地はプラスの気温 (過去の最高気温は+10.0℃)になり、 風がなくて太陽が燦々ですとポカポカしています。 また新しい観測隊が到着してからしばらくは 新しい観測隊と前の観測隊が一緒に住んでいますが、 面白いのはその見分け方でした。 なんと前の隊員たちは半袖姿で作業しています。 一年間南極で暮らすと寒さにも慣れるようで、 これが夏の南極の風物詩ですね。 その後、越冬が進んでいくたび、驚きの連続でした。 暗夜期のオーロラは音もなく、 緑、赤、青、紫と色を変え、 風もないのにゆらゆらと変幻自在に動く姿は「暁の女神」。 これは観るものを魅了します。 一方少々つらいことも‥‥。 まだ暗い時期の内陸旅行では−64℃にもなり、 この時ばかりは行動一つ一つが慎重になりました。 また旅行中のブリザードでは 雪上車の周りを雪かきすると、 スコップで除けたところに同じだけの雪が積もり、 なすがまま放って置いたこともありました。 こうして初めて来たときはいろいろありましたが、 今となれば、どれもこれもよい経験になっています。
一日中太陽が出ている時期は終わってしまいましたが、 そのときの様子をお伝えします。 夏、昭和基地の雪は太陽の熱で融けだし、 水の流れができます。 基地から目を大陸に向けると 縁辺には雪と氷の合間から露岸地帯が見え、 白く凍った海には氷山が連なる山のように びっしりと留まっています。 内陸に行くと周囲360度真っ白な世界ですが、 雪は風によって様々な形に変化し、 時には鏡のように太陽の光を反射させることもあります。 南極は雪と氷の世界ですが、日々、変化のあるところです。 季節は気温の変化と太陽の動きから 移ろいが感じられます。 12月と1月が夏、2月が秋、3月〜10月が冬、 11月が春、といったところでしょう。 完全に太陽が沈まない時期は 11月中旬から翌年の1月中旬までの約二ヶ月で、 太陽は地平線近くを一日で一周します。 逆に冬至のある6月をはさんで 5月中旬から7月中旬は暗夜の世界です。 この時期は寒いのですが、オーロラ観測には絶好の条件です。 職場の窓から外を眺めると今日もオーロラが。 贅沢な楽しみです。 2006年3月21日 秋分の日の昭和基地(日本は春分ですね)。 夜半近くになり−10℃ほど。 風速2m/s前後。 日に日に寒くなってきています。 斎藤 健 ************************* 日本では桜が咲き、 コートをしまっていこうとしている時に、 南極ではTシャツを来ていた人たちが 冬に向かう準備をしているんですね。 感想はもちろん 寒いところにまつわる思い出、 南極や南極で生活をする観測隊について 訊いてみたいことは 件名を「南極観測隊斎藤さんへ」として postman@1101.comまで ぜひメールをお寄せください。 氷を越え、海を越え、 答えが届くかもしれません。 南極観測について、 さらに知りたいという方は こちらの「極地研究所」のホームページも ぜひご覧ください。 |
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