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出かけるときに 忘れちゃいけないものはなんですか? 南極で外出をするときに 携帯するものは どうやらちょっと様子が違うようです。
先日、スノーモービルで 昭和基地周辺の海氷の厚さを測ってきました。 そのときに持っていった道具は 野帳、コンパス、GPS、筆記具、無線機、 ピッケル、非常食、双眼鏡、整備用工具、 ロープ、カメラです。 これが最低限持ち歩く道具で あとは場所によって加えていきます。 筆記具は鉛筆が主流ですが、 最近は寒さに強いボールペンがあり、 昭和基地では使うことができます。
方位磁針は大切な七つ道具です。 その前に方位の話からお付き合い下さい。 方位磁石の針が向く方向は 南極点と言いたいところですが、 極点から少々ずれた位置にある 南磁極というところを指しています。 南磁極とは地球を大きな磁石に例えたとき、 磁力線の集まる南側の極のことを言います。 反対側の北は北磁極ですね。 南極点とは 地球の自転軸と地表面が交わるところで、 ここは経度が表現できない地理学的な極です。 それぞれ方位磁石の針が示す方位を磁方位、 地理学上の方位を真方位と呼び、 磁方位と真方位の離れ角を偏角と言います。 また、磁力線と地表面との傾きを伏角と言います。 理論的には南磁極に方位磁石を持って行くと、 近づくに従い、伏角が大きくなって 磁針はN極が上、S極が下になり 海面(後述)を示します。 ただ、方位磁石そのものを 針が下の盤に触れないように傾けると、 針は南磁極を示し、 方位磁石の役割を果たすことでしょう。 この南磁極の位置は 1909年にシャクルトン隊によって発見され、 南緯72.4度、東経155.2度にありました。 磁極は一年に10kmくらい北に移動しており、 1997年には南緯64.6度、 東経138.6度で現在は南極海上にあります。 南極でコンパスを使うときは この偏角を頭に入れて行動します。 さて、私たちが雪上車で移動するときはどのように 方角を確認しているかという言うと、 天気のよいときは ルート上に立てた旗や空ドラム缶を目指し、 悪天のときは車載GPSとレーダーを使います。 【編集部註】 南極観測隊の「旅行」とは 昭和基地を離れて行動することです。 詳しくはこちらの回で読んでみてください。 どちらも船舶用として市販されているものです。 日本で使われているような車用のGPSと違うところは 画面には建物も入り組んだ道路もなくて、 黒い画面にあらかじめ入力した旅行ルートが 緑色の線になって、 すうっと上から下にあるだけの とてもシンプルな画面です。 この線を頼りにコンビニもガソリンスタンドもない、 雪原を目的地に向かい進みます。 ほかに七つ道具のハンディタイプのGPSと ハンドベアリングコンパスという 方位磁石を持って旅に出ます。 話が前後しますが、 私たちは昭和基地を離れるときには 必ずルートを作りながら先に進みます。 ルート上の目標物は赤旗のついた竹ざおで、 竹ざおを立てたら 前に立てた旗との方位角をハンドベアリングコンパスで測り、 もしGPSが機能しなくなったときには 方位角から今来た方角を導いて、 元の位置に戻れるように記録しながら行動します。 こうして南極でも方位磁石は重要な七つ道具。 十二分に役に立っています。 2006年4月5日 今朝は−7℃。 風が少々強く、雪が降っていましたが、 だんだんと青空広がる昭和基地です 斎藤健 ************************* 非常食がザックに! コンパスが「南極点」をささない! 自然を相手に活動をする方にとっては ふつうのことなのでしょうか? みなさんの感想や質問は 斎藤さんにとって ふつうかもしれないことを 「いやいやそこが訊きたいんです。 もっと教えてください!」 と、ぐいぐいと引き出すきっかけとなっています。 「ここがびっくりした!」 「ここはどうなっているんだろう?」 ということを感じたときは 件名を「南極観測隊斎藤さんへ」として postman@1101.comまで ぜひメールにてお寄せください。 感想、質問、つぶやき‥‥ お待ちしております。 南極観測について、 さらに知りたいという方は こちらの「極地研究所」のホームページも ぜひご覧ください。 |
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