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最新の記事 2006/10/12
 
 
8月中旬から約1ヶ月間、
昭和基地を離れて旅行(昭和基地を離れて行動をすること)に
出ていた斎藤さん。
「無事に昭和基地に戻ってきました」
という一報とともに
南極で取り組んでいる
研究活動のことが送られてきました。
斎藤さんの南極での日々は
わたしたちの普段の生活の
時間や空間を超えたところを
ひもといてくれるようです。


南極の氷から見えること。

四季のうつろいがわかりやすい日本、
そろそろ秋の気配を感じられるころでしょう
そして一年一年、季節を重ねるごとに
「子供の頃はもっと寒かったなあ」とか
「今年は桜が早いなあ」など
今までの体験と照らし合わせて語ることができます。

南極観測隊はその最前線。
雪、氷、大気、地質などを通し、
現在と過去の地球環境を解明しようと
観測をしています。

さて気になる成果。
すぐに発表される研究があれば、
数ヶ月、数年をかけて解析される研究も多くあります。
でもどちらの結果も
未来の地球環境の指針に役立つこととなるはずです。

今日はその研究のひとつ、
私が担当している
「南極氷床 深層掘削計画」を紹介しましょう。

地球は数万年という長い年月をかけて
氷河期と間氷期(氷期と氷期のあいだ)を
繰り返し暖かくなったり寒くなったりしています。
このサイクルを知る手がかりのひとつが南極の氷。

南極氷床(なんきょくひょうしょう)?
なにやら難しい名前ですが、話は明瞭。
大陸の氷を掘って地球環境を探ろう、
という面白いプロジェクトです。

南極大陸に降った雪は融けずに積もり、
やがて自重で氷に変化します。
氷は氷床(ひょうしょう)と呼ばれ、
広い南極大陸を鏡餅のように覆っています。
厚さは平均約2400m、
もっとも厚いところは4200mもあり
富士山をはるかに越えています。
この氷、一見どこにでもある氷と変わりありませんが、
中には雪が降ったときの空気や
微小粒子が一緒に閉じ込められ、
過去の地球環境を知ることができる宝物なのです。

氷を採るところは
昭和基地から南へ1000kmにあるドームふじ基地。
標高3810m、年の平均気温−54℃、
最低気温が−79.7℃を記録したところです。
ここに生活しながら特殊なドリルを使い、
氷床表面から少しずつ円柱状の氷を掘削します。
一回に採れる氷は直径10cm、長さ3.8mほど。
何度も上げ下げを繰り返し
2006年1月には深さ3028mの氷を手に入れました。

採った氷はコアサンプルと呼び、
丁寧に梱包して南極観測船「しらせ」で日本へ輸送します。
最新の解析結果では、
コアの年代は約100万年前、
人類が原人の時代の氷であろうことがわかってきました。


ドーム基地で氷床を掘削するところです。
長い円柱がドリル、数時間後この中にコアが入ってきます。



コアです。深さは3000m近辺。
積もった雪が長い年月を経て、このような透明な氷になります。


話が少し前に戻ります。
8月から約1ヵ月半、
雪上車で大陸の上を走り
9月下旬に昭和基地に戻りました。
どこに行ってきたかというと
昭和基地とドーム基地のほぼ中間地点。

来る12月、ドームふじ基地で再び氷床掘削を始めます。
そのときに使う燃料を大陸の上に
デポ(フランス語で登山などで
登路の途中で荷物を置いておくこと)してきました。

南極の8月は冬が明けていますが、
まだまだ厳しい季節。
昭和基地を出発してから数日後には−30℃。
南へ行くほど気温が下がり、
最低気温はとうとう−65.3℃。


この日がー65℃でした。


雪上車の中は暖かいのですが、窓にはびっしり霜がつきます。

ほんとに寒かった!
笑ってしまうほど寒かった!
でも原人の時代の地球環境を知る
ロマンある凛とした寒さです。

その寒さを忘れる間もなく
ドーム基地にむけ昭和基地を出発し、
さらに深いコアと、その下にある岩盤に挑みます。

もちろん「ほぼ日手帳」持参。
さて何が記されることか、
楽しみなプロジェクト南極氷床深層掘削です。


9月の旅行の様子を雪上車の窓から撮りました。

【参考】
氷床掘削計画のホームページです。
http://www-dome.pmg.nipr.ac.jp/japan/index-j.html

2006年10月9日
一昨日(7日)からブリザード、
昨日はなんと最大瞬間風速が50m毎秒になり、
さすがの猛者たちも驚いておりました。

第47次日本南極地域観測隊
斎藤 健

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−65℃!
そんな極寒の地に
持って行っていただいた「ほぼ日手帳」の2007年版も
奥様にお約束したとおり
しっかりと南極へお届けする予定です。

みなさんからいただく激励のメールも
手帳とともに同封したいの気持ちは山々なのですが
荷物の重量制限があるので
手帳よりひとあし早く斎藤さん宛に
メールで転送させていただきます。
質問や応援、激励、感想は
「南極観測隊斎藤さんへ」として
postman@1101.comまで
お寄せくださいね。

南極観測について、
さらに知りたいという方は
こちらの「極地研究所」のホームページ
ぜひご覧ください。
 
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