永田 |
お疲れさまでした! |
西本 |
はじまりました! |
糸井 |
お久しぶりです! |
永田 |
え〜、たったいま、
『タイガー&ドラゴン』の第1回目の放送を
観終わったところです。 |
西本 |
永田さん、もう泣いてたでしょ! |
永田 |
泣いてないって!
ていうか、第一声にそれ言うって
決めてただろう! |
糸井 |
いや、ぼくは泣きそうになりましたよ。 |
西本 |
オレも一瞬うるっときましたよ。 |
糸井 |
これねえ、くるようにはなってますね。 |
永田 |
なってますね。 |
糸井 |
くるようにできてますよ。
みんなちょっと濡れましたね。 |
永田 |
ストン! とくるんですよ。 |
西本 |
あんた、初っぱなから泣いてただろ! |
永田 |
いやいや、それはいいから。 |
糸井 |
こういうやり取りも久しぶりですが。 |
永田 |
ええと、
まず最初に言っておきたいんですけど。 |
ふたり |
どうぞどうぞ。 |
永田 |
今回の『タイガー&ドラゴン』で
はじめてこのテレビガイドを
ご覧になる方もいらっしゃると思うので
言っておきたいのですが、
このコーナー、基本的に雑談です。
権威のあるようなものではございません! |
西本 |
まったくないです! |
糸井 |
ひとっかけらもないですね。 |
永田 |
開始当初からお読みいただいている人は
ご存じかと思いますが、基本的には、
「引田天功さんが韓国に行った番組を
観たんだけどわけわかんなかった」
だとか。 |
西本 |
「新庄のエンピツころがしがすごい」だの
「すごくない」だの。 |
永田 |
「あんたは『ミリオネア』を
観ないと言ったのに観たじゃないか」
とか。 |
糸井 |
そんなようなことです。 |
永田 |
そんなようなことの続きです。 |
西本 |
なんか派手なバナーをつくった効果もあって
意外に期待されているようですが。 |
永田 |
あれ、ムダによくできてたね(笑)。 |
糸井 |
できすぎ、できすぎ(笑)。 |
西本 |
うちの播口が徹夜でつくったそうです。 |
糸井 |
バカだなあ。 |
永田 |
バカだなあ。 |
西本 |
バカだなあ。 |
永田 |
そんな感じではじめていきますが。 |
糸井 |
さて、まずはぼくが第一球を投げますよ。 |
ふたり |
お願いします! |
糸井 |
クレイジーケンバンドですよ!
いいですか?
クレイジーケンバンドという種が
なかりせば! |
ふたり |
なかりせば! |
糸井 |
一粒の麦が地に落ちたらそれが
あなた方のパンになるであろう!
ドン!(机をたたく) |
永田 |
よくわからんが、ドン!(机をたたく) |
西本 |
ついでにぼくも、ドン!(机をたたく) |
糸井 |
オレの話をきけ! |
ふたり |
なにがなんだかわかりません。 |
糸井 |
つまり、あれが。
『タイガー&ドラゴン』という
歌なんですよ。
わたくし、自分のiPodのなかに、
ものすごくたくさん
クレイジーケンバンドの曲が
入っていることに気づきました。 |
永田 |
あ、そうなんですか。
それはこのドラマが始まる前からですか。 |
糸井 |
ええ。前々からです。
シャッフルでかけると、
かなりの頻度でクレイジーケンバンドが。 |
西本 |
でもね、糸井さんはいまでこそ
iPodにたくさん入れて聴いてるけど
はじめてクレイジーケンバンドのライブを
観たときは違ったんですよ。
そのときぼくもいっしょに
行ってたんですけど。 |
糸井 |
ええ、最初に観たときは、なんかこう、
ちょっと困っちゃったんです。 |
西本 |
ええ、そうでした。
ふたりとも、すごくつかまれたんですけど、
この妙な感じはなんだろうね、
という雰囲気で、
ライブのあとにふたりで
亀戸のマクドナルドに入ったんです。 |
永田 |
亀戸のマクドナルドに入ったんですか。 |
西本 |
ええ。亀戸のマクドナルドに入ったんです。 |
糸井 |
亀戸のマクドナルドに入りましたね。 |
永田 |
ほう、亀戸のマクドナルドに。 |
西本 |
ええ、亀戸のマクドナルドに。 |
糸井 |
うん、亀戸のマクドナルドに。 |
永田 |
亀戸のマクドナルドの話は
どうでもいいんですよ。 |
西本 |
えっ、亀戸のマクドナルドの話は
どうでもいいんですか。 |
糸井 |
亀戸のマクドナルドの話を
いつまで続ける気ですか。 |
永田 |
というか、亀戸のマクドナルドの話すら
ちっともしてませんが。 |
西本 |
じゃあ、亀戸のマクドナルドの話を
ちゃんとしましょうか。 |
永田 |
亀戸のマクドナルドの話はけっこうです。 |
糸井 |
亀戸のマクドナルドの話は
どうでもいいんですよ。 |
西本 |
えっ、亀戸のマクドナルドの話は
どうでもいいんですか。 |
ふたり |
もういい! |
西本 |
失礼しました。 |
糸井 |
なんの話でしたっけ? |
永田 |
たしかクレイジーケンバンドです。 |
西本 |
ずいぶん前から知っていたけれども
妙な感じの出会いだったと。 |
糸井 |
そういうことって、ぼくは多いんです。
矢野顕子さんと出会ったときも、
最初は好きじゃなかったですから。
まあ、気になるぞと。
それで、いまやぼくが
クレイジーケンバンドの大ファンに
なっているかというと、
そういう単純な話じゃないんです。
とにかくここで言っておきたいことは、
クレイジーケンバンドの歌には、
意味がいっぱい入っているってことです。
いわば、その歌一発で、
連ドラができてしまうくらいの力が
あったということじゃないですか。
すごいんですよ、クレイジーケンバンド。 |
永田 |
と、まあ、このように、
クレイジーケンバンドの話だけで
1回ぶん終わってしまうようなことも
めずらしくないコンテンツです。 |
西本 |
おおいにありうる話です。 |
糸井 |
クレイジーケンバンドの話は、
最初にやっておかないと
話す機会がないと思いましたからね。
まあ、プレイボール直後の1球目に、
160キロの直球を
バックネットにぶつけたということですよ。 |
永田 |
お、堀内投手の一球目。 |
糸井 |
堀内のことは言わないで。 |
永田 |
口が滑りました。 |
糸井 |
とにかく、このドラマは
「オレの話を聞け!」ですからね。
あのシャウト一発で、
パ〜ンッ! とはじまるんですから
このドラマの「種」ですよ、
「オレの話を聞け!」というのは。
そのおもしろさが凝縮されてるんですよ。 |
西本 |
くしくも「オレの話を聞け!」というのは、
先日ぼくらが開催したイベント、
「はじめてのJAZZ。」の
テーマでもありました。 |
永田 |
そうでしたそうでした。
タモリさんいわく、
「元々、あらゆる表現は
オレの話を聞け! ということだ」と。 |
糸井 |
そうです。
その核心をいきなり突いているのが
クレイジーケンバンドの主題歌です。
ですから、このドラマを観るにあたって、
クレイジーケンバンドのことを‥‥
「ゆめゆめ忘れることなかれ」。 |
西本 |
と、『新選組!』テイストも
ちょこちょこ混ぜながら。 |
永田 |
「クレージーケンバンドが
ないがしろではないか!」 |
糸井 |
「沖田くん、
クレイジーケンバンドはここだ!」 |
ふたり |
それはないわ。 |
糸井 |
ということで、ぼくとしては、
第一球をバックネットにぶつけてみました。
おつぎの方、どうぞ。 |
西本 |
永田さん、泣いてましたよね。 |
永田 |
泣いてないですよ! |
糸井 |
もういいって。 |
永田 |
それではぼくの第一球目ですが、
じつはぼく、宮藤官九郎さんの作品を
観るのはこれが初めてです。 |
糸井 |
え、そうなんですか! |
永田 |
ちなみに三谷さんのドラマも
『新選組!』がはじめてでした。 |
糸井 |
あなたという人は‥‥
なんていうのか、少ないメニューを
毎日黙々と食べるタイプの人ですね。 |
永田 |
不勉強ともいいます。 |
西本 |
ドラマ経験が極めて乏しい永田さんにとって
今回のドラマは懐かしい人が
出演されてるんじゃないですか? |
永田 |
ああそうです、池中玄太! |
西本 |
西田敏行さんとこんなところで再会ですよ。 |
永田 |
この企画がはじまるまえまで、
ぼくのドラマは
『池中玄太80キロ』で止まってたんです。
いわば、西田敏行さんは、
ぼくにとっての
クレイジーケンバンドですよ。 |
糸井 |
それ、違うだろう! |
永田 |
違うけど、言ってみたんですよ!
ぼくもなんとなく
バックネットに投げておくわけですよ。
まあ、130キロそこそこの球ですが。 |
西本 |
打ちごろだ! |
糸井 |
しかしあれですね、永田くんみたいに
いろんな新しいものには
手を出すまいとする人は‥‥。 |
永田 |
いえ、決して出すまいとしてるわけでは。 |
糸井 |
失礼。出さずに生きているなかで
つい手が出てしまうからこそ
つぎのなにかがはじまるというタイプの人。 |
永田 |
ああ、それだ! お見事! |
糸井 |
そういうタイプの人がこれを観るというのは
ほんとうにいい機会だと思うんですけど。 |
西本 |
本当にいい機会ですよ。 |
糸井 |
つまり、すごく燃費がいいわけですよ。
カロリー消費がすごい効率で
行なわれているんですよ。
永田農法みたいですね。永田だけにね。 |
永田 |
それが言いたかったんですか。 |
糸井 |
永田農法みたいですね。永田だけにね。 |
永田 |
なんで2回言うんですか。 |
西本 |
ほんと、この人、
これだけ情報ソースが少なくて
よくあんな分量書いたり、
編集したりできるよなと
不思議に思いますもん。 |
永田 |
読む文字量より書く文字量のほうが
多いといわれています。 |
糸井 |
よっ、情報永田農法! |
永田 |
恥ずかしながらわたくし、
なんにも知りません! |
西本 |
一方、ぼくはですね、
宮藤官九郎作品との出会いでいうと、
まず、糸井さんにすすめられて
映画の『GO』を観たんですよ。
そこで、「おお、いいじゃん!」となって、
つぎに
『タイガー&ドラゴン』のDVDを観て、
「ああ、これはおもしろいわ」と思って、
深夜にやってた
『池袋ウエストゲートパーク』と
『木更津キャッツアイ』の再放送を
ぜんぶ観ましたよ。 |
永田 |
えっ、なに、もうぜんぶ観ちゃったの? |
西本 |
行けそうかな、と思ったら、
とりあえずぜんぶさらうタイプですから。 |
糸井 |
永田農法とは真逆の大量生産タイプですね。 |
永田 |
情報グローバリゼーション! |
西本 |
自慢じゃないですが、
ぜんぶ読むかどうかはさておき
買う本の量は多いですよ? |
永田 |
こないだもいきなり経理の本を
3冊いっぺんに買ってたもんなあ。 |
糸井 |
きみたち、足して2で割りなさい。 |
西本 |
つまんない社員がふたりできるだけですよ。 |
永田 |
いえてる。 |
糸井 |
いえてるなあ。 |
永田 |
ちなみに糸井さんは、宮藤さんの作品は? |
糸井 |
『木更津キャッツアイ』は
DVDをセットで持ってますよ。
あと、こないだ
『マンハッタンラブストーリー』の
DVDを申し込みました。
『GO』も『弥次喜多』も
もちろん観ましたよ。
で、いまのところね、
「宮藤官九郎にハズレなし!」なんですよ。 |
西本 |
えっ!
「トム・ハンクスにハズレなし!」
ではなく? |
永田 |
トム・ハンクスと宮藤官九郎と
どっちが「ハズレなし」なんですか! |
糸井 |
もうね、悪いけどね、きみらがね、
「宮藤官九郎にハズレなし」に食いついて、
「トム・ハンクスにハズレなし」を
持ち出してくるのは、
ぼくはわかってたんですよ。 |
西本 |
そりゃそうですよ。ことあるごとに、
「トム・ハンクスにハズレなし」と
言い続けてきた糸井さんじゃないですか。 |
糸井 |
だから、ぼくは、ここで
「宮藤官九郎にハズレなし」を
言うにあたって、
ある準備をしてきたんですよ。 |
永田 |
どういうことですか。 |
糸井 |
つまり、最近の、観てなかった
トム・ハンクス作品を観てみたんです! |
永田 |
‥‥なにやってんだか。 |
西本 |
‥‥この人のタイプは分類不可能です。 |
糸井 |
そしたらね、なんと!
‥‥ハズレるんですよ。 |
ふたり |
わははははははは! |
糸井 |
ハズレがあるんだよ、トム・ハンクス。 |
永田 |
くだらない(笑)! |
西本 |
じゃあ、何年も言い続けてきた
トム・ハンクス伝説が崩れるわけですか。 |
糸井 |
はい。 |
永田 |
あっさり(笑)。 |
糸井 |
もうね、あれよ、
『ロード・トゥ・パー‥‥
ディ‥‥ション』? |
永田 |
スッと言ってくださいよ。 |
糸井 |
『ロード・トゥ・パーディション』?
とかさ、ぜんっぜん! おもしろくないの!
『ターミナル』はまだ観てないんだけど、
『レディ・キラーズ』なんかも
ぜんぜんおもしろくないんですよ。 |
西本 |
糸井さんがあんなに強く言ってたから、
ぼくは『フォレストガンプ』を観ながら、嫁に
「あのな、トム・ハンクスに
ハズレなしといってな‥‥」
とひとくさり語ってしまいましたよ。 |
糸井 |
だから、そういう時代があったんですよ。
芝居はうまいんですよ。
でも、映画がつまんないんですよ。 |
永田 |
脚本なのか、監督なのか。 |
糸井 |
つくづく思うことがあるんですけどね、
なんで、そっくりなお話なのに、
おもしろい映画とつまんない映画が
あるんだろう、と。 |
永田 |
なるほど。 |
糸井 |
『L.A.コンフィデンシャル』って
あったじゃない。
あれ、おもしろかったよね。 |
ふたり |
おもしろかった、おもしろかった。 |
糸井 |
あれを観たときはね、
そんなに期待してなかったんだけど、
観だしたらおもしろくて
ぐいぐい引き込まれたのよ。
ところがね、その、
『ロード・トゥ・パーディ‥‥ション』? |
永田 |
だから、スッと言ってくださいよ。 |
糸井 |
『ロード・トゥ・パーディション』?
それなんかはさ、
「さあ、おもしろいですよ?」というのを
しょっちゅう出すんだけど
ちっともおもしろくないの!
そんなさあ、あらすじを書いたら、
どんな話も似たようなもんじゃないですか。
それがね、もうね、
イヤになっちゃうくらい
つまんないんですよ。
だから、いま、ドラマで
おもしろいと思わせるだけですごいなと。
もうね、トム・ハンクスの時代は終わった! |
西本 |
ガーーーン!
トム・ハンクス、大ショック! |
永田 |
まあ、もしもトム・ハンクスが
このコンテンツを読んでたらですけどね。 |
糸井 |
もうね、役者を追いかけてもダメ。
どれだけいい役者でも、
役者は自分で作品のイニシアチブを
とりきれないからね。
あ、いま、大事なことを言いました。 |
永田 |
言いましたね。 |
西本 |
奥さんが女優なだけに、
この発言は深いです。 |
糸井 |
大きなお世話です。 |
西本 |
そういえば、ぼくも、
宮藤官九郎作品に関しては
ひとつもハズしてないですね。 |
永田 |
ぼくもそうです。 |
西本 |
いやいや、あんた、
『タイガー&ドラゴン』しか
観てないじゃん! |
糸井 |
それって、
今年の江藤の打率みたいなもんだろ! |
永田 |
3打数2安打くらいの。 |
糸井 |
あとね、宮藤官九郎作品にはね、
ハズレも当たりにしちゃう
力があるんですよ。
ぜんぶ当たりだった? と訊かれると
当たりじゃないものが
混じることもあるんですよ、連ドラって。
だけど、なにか当たりが入っている。
キャスティングなのか、小ネタなのか。 |
永田 |
あ、その
「なにか当たりが入ってる」というのは
すごくよくわかります。
あの、たとえば映画でもドラマでも、
どれだけ慎重にうまく流れをつくっても、
なにかひとつおかしなことが入るだけで、
ガラガラ崩れていくタイプのものって
ありますよね。 |
糸井 |
うん、うん。 |
永田 |
宮藤さんのはそういうのがありませんよね。
軸が強いというか、
些末にハズレがあっても
ぜんぜんびくともしない、みたいな。 |
糸井 |
トカゲのしっぽみたいなもんでね。 |
永田 |
ああ、そうですそうです。
トカゲのしっぽだらけみたいな
流れなんですよ。
誰かにとっては
そのしっぽのひとつが
たまらなくおもしろい。
誰かにとってはちっとも響かないとしても、
それはそれでしっぽを
切り捨てて進んでいく。
なんなら、誰も食いつかなかったしっぽを
ドラマ自体が
自ら切り落として進むような。
しっぽだらけのトカゲが
がんがん進んでいく感じがあるんです。 |
糸井 |
しっぽだらけのトカゲというのは
つまり、タコみたいなものですね。 |
西本 |
またタコかよ! |
永田 |
解説しておきますと、
糸井重里はチャノミバというラジオ番組の
最終回で宮藤官九郎さんをゲストに迎えて、
「今日が最終回!
ゲストはいまをときめく宮藤官九郎!」
という状況のなかで、
延々とタコの話をして、
全国のクドカンファンを
びっくりさせたことがあるのです。 |
西本 |
ついこないだの実話ですよ。 |
糸井 |
いや、タコはすごいんだよ。
ミミックオクトパスというのがいてね‥‥。 |
ふたり |
タコの話はもういいです! |
糸井 |
ところで、ドラマのなかに出てきた
ドラゴンソーダという店は、
「ピンクドラゴン」と
「クリームソーダ」という
ふたつの店を混ぜた名前ですけど、
あの場所、ぼくは知ってますよ。
あそこは散歩でよく行きます。
キディランドのところを
左に曲がったところ。 |
西本 |
ああ、筒井康隆さんの家のあたりだ。 |
糸井 |
そうそう。 |
永田 |
「左に曲がったところ」ってそれ、
駅からとかじゃなくて
糸井さんの家からの道順でしょ。 |
糸井 |
そうそう(笑)。
上に行って左です。 |
西本 |
「上」って! |
永田 |
「上」って! |
糸井 |
そんなことはどうでもいいんです。
ぼくがここで言いたかったのは
このドラマが原宿と浅草をつないだ
二都物語という性質を
持っているということです。 |
西本 |
そう来ましたか。
あいかわらず油断がならない。 |
永田 |
登場人物を含め、
二面性があちこちにありますよね。
表裏というよりは両端になにかを抱えて
各自がバランスを取ってる感じ。 |
糸井 |
それを大きく象徴するのが原宿と浅草。
つまり、熟れて熟れて
ポトンと落ちそうになった現代と、
枯れ果てたかに見えて
まだ生きている過去とを行き来するんです。
この二つの往復が織りなすドラマですよ。 |
西本 |
ようやくちゃんとしたことを言ったね。 |
永田 |
うん。どうなることかと思った。 |
糸井 |
どんどん行きますよ。
熟れた原宿と枯れた浅草を
登場人物が全速力で往復することで
どっちも救っちゃうんですよ。
現代も過去も。落語もファッションも。 |
永田 |
その、往復することによって、
観ている方もある程度「どうしようもない」
という状態になるじゃないですか。
たとえばドラマのなかで、
伊東美咲が誰に惚れるかというのは、
もう、ドラマの自由というか、
観ているほうには
どうしようもないですよね。
ふつうのドラマなら、
「その状況で惚れるのはおかしいだろ!」
みたいな気持ちが出てくるところなのに、
このドラマでは
それが言えないつくりになってますよね。
恋愛関係だけじゃなくて、
ドラマで起こることがぜんぶそうなってる。 |
糸井 |
うんうん。 |
永田 |
それがぼく、この人のドラマの
特徴だと思っていて。
起こることすべてが作り手の自由、
もっといえば作り手の勝手、
ということが成り立っていて、
しかも受け手に歓迎されているんですよ。
そうすると、観る側は身を任せるしかない。
これはぼくだけかもしれませんけど、
作品に対して
予想もツッコミもできないとなると
ちょっとひくんですよ。
そこで勝手に行われている、
あずかり知らないことのように
思ってしまって。
実際ぼく、こないだのスペシャルも今回も、
最初の何分間かは、ひいてる状態なんです。
こう、ドラマのなかに
入っているというよりは、
ドラマが映ってるモニターを
見てるような感じで。
ドラマの流れからちょっと離れて
並行に移動するような感じで
観てるんですね。
そのままいくと入れないままなんですけど、
でも、なんかの瞬間にポンっと、
流れに入れられちゃうんですよ。
三谷さんの作品だと段階を追って
導かれる感じなんだけども、
宮藤さんの場合は、
ポンっと入っちゃうんですよ。 |
糸井 |
ひとつの場所を掘っていかないんですよね。
価値観がレインボーカラーのように
移り変わるんですよね。 |
永田 |
そうそうそうそう。 |
糸井 |
価値観が昔であり今であり、
ファッションであり古典であるみたいな。
「どっちの価値観なのここは?」
というのがあちこちにあって、
登場人物そのものも
いったりきたりするじゃないですか。
ヤクザであり落語家でありというような。
その往復運動のなかに
ぼくらは手をひっぱられて、
はとバスに乗せられちゃうんですよね。 |
永田 |
ああ、まさに。それだ。 |
糸井 |
振り回されるおもしろさ、ね。 |
永田 |
その象徴のひとつが、逆ギレですよね。
逆ギレのある文化なんですよね。
昔のドラマだと、
登場人物の誰かがキレたら
そこで終わりですよ。
ところがそれに逆ギレが平気で起こるから
どっちがキレて終わるかわかんない。 |
西本 |
お互いが逆ギレで返すから
ツッコミがない感じということか。
逆ギレの応酬だから
流れとしては足踏みをしているはずだけど、
それをふわふわ浮かせといた
土台にみたいにして
スッととストーリーが組み込まれて
逆ギレ側が「おい!」となり進行していく。 |
永田 |
うん。笑い飯がふたりで
どんどんボケるのを、
おいおいどこまでいくんだって
引き込まれながら観てるような。 |
西本 |
ああ、なるほど。
もしかすると落語という構造自体も
そうなのかもしれないっスね。
表面にツッコミを入れなくても
観ているお客さんが
心の中で「おいおい、それは違うだろ」
とツッコミを入れていくうちに
一気にストーリーが展開していく感じ。
展開自体が落語的なんですね。 |
糸井 |
世界観と世界観がツッコミあってる。
いうなれば汽水域ですね。 |
永田 |
「キスイイキ」? |
西本 |
え? なにイキですか? |
糸井 |
汽水域がわかりませんか。
淡水と海水が混じり合っている
場所のことですよ。
汽水域で育ったしじみなんかは
美味いですよ。 |
西本 |
またタコの話ですか。 |
糸井 |
タコじゃなくてしじみだ! |
永田 |
無脊椎動物の話はともかく、
第1回目の『タイガー&ドラゴン』は
3人ともたのしんだと。 |
糸井 |
よかったですよ。 |
西本 |
お見事でした。 |
永田 |
『離婚弁護士』のときも、
『新選組!』のときも
そうだったんですけど、
ドラマの1回目というのは、総じて、
いろんなことを説明しなければいけないので
後半の回にくらべると
つまらなくなるじゃないですか。 |
糸井 |
それはいままでに
ぼくらが学んだことですよね。
でも、このドラマは大丈夫でしたね。
まあ、スペシャルが前にあったということが
うまく作用しているのもあるんですけど、
見事に畳みかけましたよね。 |
西本 |
ええ、一気に行きましたよね。 |
永田 |
虎児が、自分のしゃべりが
おもしろくないことに悩んでるとか、
拾いきれてない設定も多少あったけど、
はじめて観た人は
まったく気にならないだろうし。 |
西本 |
それでいて、スペシャルから観ている人にも
配慮がありましたよね。鶴瓶さんが
「女の名前の
刺青(いれずみ)ほるような‥‥」
みたいな話をしはじめたところとか、
「お、刺青の話、活かしてるんだ」って
うれしくなりましたから。
あそこでいったんつかまれてるから、
やくざの息子が、刺青入れた腕を
注射の後みたいに
押えて出てくるところとかも
そのまま笑えました。 |
糸井 |
ああ、よかったね。オッケーだよね。 |
西本 |
見事にまとめた第1回目、
という感じがしました。 |
糸井 |
見取り図をパーンと
出しちゃったところがあったよね。
しかしすごいことしてたよなあ。
つまり、ドラマのかたちで
長々と見せなきゃなんないことも、
落語という話のセットに
ポンと出しちゃったら
ぜんぶ言えちゃうじゃないですか。
三谷さんが『新選組!』で
前フリの部分を長くしたじゃないですか。 |
西本 |
ハタノアトだ。 |
永田 |
ウタノマエだ。 |
糸井 |
あの気持ちが、わかるよね。
いま、脚本家がいちばんおもしろく
世の中を遊んでいる時代なんですかね。
もちろん苦労はあるに決まってるけど、
ほんとにおもしろそうだもんね。 |
永田 |
キャストと脚本の関係も
重要なんでしょうね。
三谷さんも宮藤さんも役者に合わせて
ちゃんと「あて書き」がされているし。
おふたりの「あて書き」はきっと、
性質がぜんぜん違うものかも
しれないですけど、
役者と脚本が切り離せないというのは
共通すると思うんですよ。 |
糸井 |
そうだね。 |
永田 |
それをすごく感じるのが、
たとえば、あそこですよ。
ぼく、スペシャルのときも今回も
おんなじ笑いかたをしちゃったんですけど、
「カツラ」なんですよ。 |
ふたり |
わははははははは。 |
永田 |
もう、笑っちゃうしかないわ、って感じで
あそこでドラマに必ず引き込まれちゃう。 |
糸井 |
あの、阿部サダヲさんが
脱ぎ捨てるやつね(笑)。 |
西本 |
キレるタイミングはカツラを投げるとき! |
永田 |
あれ、ダメなんだわ。
どういうわけだかぼく、忘れてるんですよ。
あれがカツラだということを。
これからもそうなんじゃないかな。
あの役者さんで、あの脚本じゃなきゃ
そうはならないと思うんですけど。 |
糸井 |
また、カツラを取ると、
きれいなオールバックなんですよね。 |
西本 |
人格もスパーンと切り替わってるしね。 |
永田 |
顔色も真っ白になってて。 |
西本 |
そのあと西田さんに落とされるときは
真っ赤になっててね。 |
永田 |
あはははははは。 |
糸井 |
ときどきさ、
「オレだけがそんなことを考えてるのかな?」
みたいに思うようなことが、
いっぱい入っているよね。たとえば、
「カツラの嫁は
林家パー子をモチーフにしてるな‥‥」とか。 |
ふたり |
わははははははは。 |
糸井 |
そんなこと思わなくてもいいのに
ついつい思っちゃって、
話は話として追いながら、頭のどこかで
「パー子だな‥‥」と思っているんだよ。
それは好きだなあ、オレ‥‥と思ったり。 |
永田 |
ヨゴレ芸人のサンプルが
ダチョウ倶楽部の熱湯風呂だな、と
思ったり。 |
糸井 |
そうそうそう。
このダサいという服なんだけど
おれ、ちょっと欲しいかも、と
思ったりとか。
みんなが
「オレだけが
おもしろがってるんじゃないか」
と思うところを
ちりばめてると思うんですよね。
はっきり言って、あのお店でオレ買うね。 |
永田 |
ぼくは同じ意味で逆のことですが、
「やっぱ、異素材を使う服はイヤだなあ」
と。 |
西本 |
ぼくは大神源太のメッシュのシャツを
思い出しましたね。 |
糸井 |
だから、メッシュひとつで
そこまで思ったこと自体が
このドラマにやられているわけだよ。 |
永田 |
いえてる(笑)。 |
西本 |
そうですよね。
あとは服を買いに来た博多弁の少年とか、
思わなくていいようなことを
いろいろ思っちゃいましたねえ。 |
永田 |
「これ、無地はなかとですか?」 |
西本 |
だから、裏原宿最高! みたいなことを
基本的にバカにしてるんですよね。
でも、その人たちは
クドカンのことは大好きなんですよ。
このあたりはおもしろいなぁ。 |
糸井 |
あの店員の女の子の描き方とかね。
どっかにモデルがいるんだろうな。 |
永田 |
あの人、よかったですね。
有名な人なんですか。 |
西本 |
これから、のぼり調子、
という感じじゃないですかね。
個々のキャラ設定は
すごくしっかりできてますよね。
ほんと、ブレがない |
永田 |
そうじゃないと振り回せないからね。 |
糸井 |
演出なんかも、
気持ちよくやってる感じがしたよね。
昔からやってる人なんだろうと思うけど。
たとえば、殴られた人とかが、
一回転半くらい余計に回ってるんだよ。 |
永田 |
ああ、思った思った! |
西本 |
店員の女の子が店を飛び出すところなんかも
余計にガシャンガシャンやってますよね。 |
永田 |
おでん屋もそうですよ。
ふつうは虎児がガシャンって
皿をひっくり返して十分なところでしょ。
なのに、そこから
屋台をひっくり返しちゃうわけですから。 |
糸井 |
あれはこのドラマのスペクタクルだと思う。
後世におでんの屋台をひっくり返す例として
挙げられるといいね。
つまり、星一徹のちゃぶ台のように
「おでんの屋台をひっくり返すといえばさ
2005年の『タイガー&ドラゴン』だよ」
と。 |
西本 |
「で、弁償代は1000円だったんだよな」
と。 |
糸井 |
そんだけ振り回しておいて、
最後にはきっちり
ホロリにいくというあたりも見事ですよね。
なんであんなに泣けるんですかね。 |
永田 |
ぼくは、舞台の演出が
活きてるのかなと思ったんですけど。
吉本新喜劇とかも、さんざん笑わせておいて、
「♪ちゃららら〜」っていう音楽一発で、
しんみり場面ですよーみたいに
なるじゃないですか。 |
西本 |
ああ、誰も照れずにしんみりできますよね。 |
永田 |
あとは、どたばたしながらも、
みんなが終わりに向かって
走ってるというか。
あの、落語のサゲを
虎児が言い損ねる場面が、
わりと早めに出てきますよね。
あれによって観てる側に、
サゲのひと言を最後に聞くという
予感が生まれてると思うんですよ。
だから、ゴールがあることを意識しつつ、
すんごい障害物走を走っているというか、
それで最後に爽快感があって
泣けるんじゃないかなあ。 |
糸井 |
なるほどね。だからこそ、
けっこうベタなセリフも
効果的になるんですね。
「贔屓にしている前座がいる」という
露骨なセリフなんかは、ぼくを助けたなあ。
ああいう露骨なセリフの使いかたって
難しいと思うんだけど
恥ずかしがらずに入れてるのがいいね。 |
西本 |
ええ。聞いてるほうも
ぜんぜん恥ずかしくないですよ。 |
永田 |
終わりに向かってるときに
速度が落ちないですからね。
流れにつねに引っ張られているから、
ベタはベタで気持ちいい。引きずらないし。 |
糸井 |
今回はとくに、
クライマックスの寸前で
ずっこけるというお約束を
早めにつくってうまく使ってましたよね。
サゲの前に電話がなるというのは、
「こういうのを何回もやりますよ」
という前触れなんですよ。
だから、あらゆるところで、
終わっちゃう直前で止めて、つないでいく。
阿部さんと西田さんが、
バシッと決める直前で
見事に積み木を踏んづけるじゃないですか。 |
西本 |
あれ、最高。 |
永田 |
あれ、最高。 |
糸井 |
そういうパターンを
ふんだんに使ってましたよね。
というのも、『芝浜』という噺そのものが
そういう構造になっているんですよ。 |
西本 |
あーーーーーー。 |
永田 |
なるほど! |
糸井 |
つまり、あの噺っていうのは、
ただの出来事だとしたら、
財布拾って終わりじゃないですか。
それを終わりにする寸前に女房が
「夢だったんだよ」とつなぐわけです。
と言いつつ、ホントだったんだけど、
それがばれるわけじゃなくて
魚屋は酒をやめる。
やめたまんまで、めでたしじゃなくて
女房がそれを魚屋に告白する。
そういう構造が繰り返されて、
サゲまで引っ張られるんですよ。 |
永田 |
なるほどなあ。 |
西本 |
あの噺を持ってきたこと自体は、
落語好きとしてはどうなんですか。 |
糸井 |
まずは、「一発目から人情噺で来たか!」
という気持ちですね。
あの噺は、基本的には
げらげら笑うシーンなんて
ほとんどないんだよ。 |
永田 |
へええ。 |
糸井 |
ぼくがすごくいいなあと思ったのは、
魚屋が海で顔を洗う場面なんです。
あれは落語のなかにも出てくるんですけど、
聴いたときはすごく不思議だったんですよ。
つまり、魚屋が寝ぼけてたので
海で顔を洗うという場面が
うまくイメージできなかったんですよ。
海で顔を洗うっていうことは、
そうとう深く入っちゃうんじゃないかとか、
洗いやすい浅いところだと
砂が混じって
うまく洗えないんじゃないかとか。 |
永田 |
なるほどなるほど。 |
糸井 |
それが、ああして映像になったことで
すごく腑に落ちたんです。
あっ、これならいいや、と思えたわけです。
それは妙にうれしかったですね。
ひょっとしたら、
『芝浜』のなかのあの場面に
宮藤さんも引っかかってたのかもしれない。
それはぼく個人としては
すごく印象的だったな。
もうひとつ、思ったのは‥‥
これはまあ、
こんなに連載の早い時期に言うのは
どうかと思うけども‥‥。 |
ふたり |
どうぞどうぞ。 |
糸井 |
これ、『木更津キャッツアイ』のときから
思ってることなんだけど、
主演のふたりは役者じゃなくて歌手なのに、
なんであんだけ上手なの? |
永田 |
おっ! 大きな話ですね。 |
西本 |
あのふたりはたしかにすごいですね。 |
糸井 |
つまり、上手いに決まっている天才落語家で
服屋をやっている岡田くんと、
下手な落語家に決まっている長瀬くん。
どっちもむつかしい役なのに、
ものすごくできてるじゃないですか。 |
永田 |
すごいですねえ。
恥ずかしながら
岡田くんをはじめて知りましたが、
うまくて、かっこいいですねえ。 |
糸井 |
本業は役者じゃないんだよ? |
永田 |
いまのアイドルは、
お笑いもお芝居もできなきゃいけないって
いうことなんですかね。 |
糸井 |
いや、そんなのさ、
「できなきゃいけない」で
できることじゃないだろう。
「できなきゃいけない」って、
野球の選手に言ったらどうなりますか。
走らなきゃいけない、
打たなきゃいけない、
守らなきゃいけないって。 |
永田 |
たのむよ、キャプラー。 |
糸井 |
たとえるなら、ビートルズに
この連続ドラマをやれといってるのと
同じことでしょ。
ビートルズだって映画に出てたけど、
天才落語家の役はできなかったよ。
リンゴ・スターが石を蹴りながら
さみしく歩くくらいですよ。 |
永田 |
ジョンは風呂場で潜水艦で遊んで
ポールのおじいさんが
舞台にせり上がってきたりします。 |
西本 |
あんたらいったいなにを言ってるんだ。 |
糸井 |
昔だったらあんなもんだよ。
それでいいと言われたんだよ。
リンゴは芝居が上手いとか言われたんだよ。
それがあの人たちは、
「ヤクザであるうえに下手な落語家」
という芝居をやってだよ、
しかも、
下手なんだけど人をホロリとさせて、
ファンがつきはじめちゃいました、
というような役を演じているんだよ。
歌手なのに。 |
西本 |
ぼくは携帯電話が鳴る前のところでは
本気であの落語にグッときてましたからね。 |
永田 |
「携帯鳴らしてるの誰だよ!」と
思わず叫んじゃうような。 |
西本 |
そうそうそう。前のめりで。 |
糸井 |
たいしたもんですよね。
さらに言うと、岡田くんは
これからどんどん落語自体が
うまくなるでしょうからね。
その成長物語を
ぼくは裏のたのしみにしたいですね。
そんな、V6が落語もうまくなっちゃう
1クールのドラマって、ちょっとすごいですよ。
思えば、テレビや映画でお馴染みの
役者然とした役者さんは
ほとんどいないんですよね。
西田さんがカナメとして
どーんといますけれども。
あとは、小劇場的な役者の人と
じつはものすごく上手いと言われている
役者の人と
本職は歌手ですという人とが
ないまぜになって行き来してるんですよ。 |
永田 |
しかも、昇太さんという本業の落語家さんは
一切、落語するシーンが出てこないし。 |
西本 |
鶴瓶さんがヤクザの親分で、
西田さんが高座にあがるわけですからね。 |
糸井 |
その、ドラマの構図自体は
ビューティフルと思っちゃいますよね。 |
永田 |
落語の世界には
嫌な人も深刻な人も出てこない、
とよく言いますが。 |
糸井 |
うまいこというね。そんな話だね。
みんな好きになるようにできているという、
落語の世界観がこのなかに
入っているんだろうね。
だから宮藤さんがこれからぶつかるとしたら
「物足りない」と言う人との戦いだろうな。 |
西本 |
あああ、なるほど。 |
永田 |
そういうのでいうと、
このドラマ、もう十分オッケーで、
これから先もすごく安心できるから、
まるごと受け入れたつもりで
「もう安心だから観なくてもいいや」
って思うかもしれない
自分がいるなあとちょっと思ったんですよ。 |
糸井 |
そこの防ぎかたは、
演出家が発明してますよ。
それが、さっき言った、
一回転半余計に回るっていう
ことなんですよ。
つまり、対立が柔らかすぎるということを
衝突の大きさで表現してるんですよ。 |
西本 |
わあ。 |
永田 |
わあ。 |
糸井 |
だから、観ちゃうんだと思う。 |
永田 |
はぁー、そうかそうか。
クセになるという意味で
引きつけられるんだ。 |
糸井 |
いやあ、おもしろいね。
悪いやつが出てこないから物足りない、
安定しているから十分だというところを、
「だったら、いっぱい転びますから!」
とやって
平和の時代の衝突を描いているわけですよ。
やっぱり、笑っているところに
人は集まるんですよ。 |
西本 |
なるほど。 |
永田 |
なるほど。 |
糸井 |
‥‥と、まあ、
こんなところにしておきます?
何分くらいしゃべってますかね? |
西本 |
ええと、40分くらいですね。 |
永田 |
わ、終電、もうないや。
毎週金曜日はこうなるんだな。 |
糸井 |
内容的には大丈夫ですか? |
西本 |
大丈夫でしょう。
むしろ、初回からきちんと
しゃべりすぎじゃないかと。 |
永田 |
いえてます。 |
糸井 |
じゃあ、ちょっとタコの話でも‥‥。 |
ふたり |
タコの話はもういい!
|