永田 |
はい、第6話を観終わりました。
お疲れさまでした。 |
西本 |
お疲れさまでした! |
糸井 |
お疲れさまでした。 |
永田 |
今週もよろしくお願いします。 |
糸井 |
さあ、今週はなにから? |
西本 |
まずはあれでしょう、
大反響のトヨタホーム問題でしょう! |
糸井 |
ああ、たくさん来ましたねー。 |
永田 |
解説しておきますと、
「トヨタホーム問題」とは、
『タイガー&ドラゴン』のあいだに流れる
トヨタホームのCMのストーリーが
いまひとつよくわからない、というものです。
母と娘が台所で料理をしていて、
「そんなこと突然言われても」
みたいなことを娘が言って、
父親の部屋に行くと、
父親はパソコンでトヨタホームを検索していて、
「来てたの、か?」とつぶやくあれです。 |
西本 |
ありゃいったいどういうストーリーなんだ、と。
先週、ぼくが言いましたところ‥‥。 |
糸井 |
そりゃきっとこういう話ですよ、と。 |
永田 |
山のようにメールが寄せられました。 |
西本 |
たぶん、『タイガー&ドラゴン』編に移ってから
いちばんたくさん届いたんじゃないですかね。 |
永田 |
こう、問題と、要求されてる答えが
はっきりしているものに関しては
反響が大きいですね。 |
糸井 |
逆にいうと、設問というのが
いかに大事かということですね。 |
西本 |
たしかにまあ、いつもは、
リアクションのとりようがないような、
つかみどころのないことばかりを
しゃべってますから。 |
永田 |
そこでね、ぼくが感じるのはね、
この「IT時代」の便利さとつまらなさですよ。 |
糸井 |
どういうことですか。 |
永田 |
問いかけにたくさんの反響があるのは
ありがたいし、
読んでておもしろかったんですけど、
まあ、ようするに、正解が、
あっさりとわかっちゃうじゃないですか。 |
糸井 |
調べればね。 |
西本 |
ま、早い話が、トヨタホームのサイトに
オフィシャルなストーリーが載っていると。
たくさんの方が教えてくださいました。
ちなみに、こちらです。はい、ドン! |
永田 |
これが来ちゃうと、
もう、遊びは終わりじゃないですか。 |
糸井 |
終了です。 |
西本 |
終了です。 |
永田 |
これが、正式な答えがわかんなかったら、
こうじゃなかろうか、ああじゃなかろうかと
みんなでまた悩んだり、メールを紹介したり
いっぱい楽しめるんだろうなと思ったんですが。 |
糸井 |
断固としてわからないままで
推理している人もいましたよね。
延々と独自の解釈を書いたりして。 |
西本 |
そういう人好き! |
永田 |
そういう人好き! |
糸井 |
ああいう人と遊びを
続けられるといいんですけどね。 |
永田 |
ま、もちろん、正解を知らせてくれた人も
100パーセントの親切ですし、
ほんとうにありがとうございます、
という気持ちは間違いなくあるんですが。 |
西本 |
「このページに載ってます」と
詳しく説明してくださった方、
解答としては100点満点ですが、
ある意味、0点です! |
永田 |
試合に勝って勝負に負けています。 |
西本 |
勝負に負けて試合に勝つ? |
永田 |
ん? 勝負に勝って試合に負ける? |
糸井 |
試合が勝って勝負が負けるんじゃないですか? |
永田 |
勝負が試合で負けるが勝ちなんですかね。 |
糸井 |
勝者が試合で敗者に勝つんじゃないですか? |
永田 |
勝者が敗者に勝つのは当たり前でしょう。 |
糸井 |
勝者が敗者に勝つのは当たり前でしたね。 |
西本 |
えっ、勝者が敗者に勝つのは
当たり前なんですか! |
永田 |
もういいよ。 |
糸井 |
あのさあ、バスケットのゴールがあるじゃない?
あれに入れたいんだけど
素人だと、なかなか入んないよね。 |
西本 |
ええ。入んないです。 |
永田 |
だからこそ、入れたくなるんです。 |
糸井 |
だからといって
それに踏み台を用意されても困るでしょ。 |
永田 |
もしくはカゴをおろしてくれるとか。 |
西本 |
カゴを外して持ってきちゃうとか。 |
糸井 |
カゴを外してダンクシュートはないだろう。 |
永田 |
ぼくらは変なフォームでシュートするとか。 |
糸井 |
「パンツ一丁の方が入るぞ!」とか。 |
西本 |
「パンツ一丁だと
軽くなるからですかね?」とか。 |
永田 |
「だったらNBAの選手は
なぜ裸でやらないんだ!」とか。 |
糸井 |
「いくらなんでも股間は隠すべきだ!」とかね、
そういうことをたのしみたかったわけですね。
それをですねえ‥‥‥‥。 |
(突然、テレビが大音量で鳴り出す!) |
3人 |
‥‥‥‥。 |
りか |
すいません。録画をチェックしてました。 |
3人 |
‥‥‥‥。 |
りか |
よし、オッケー☆ 失礼しました。 |
糸井 |
‥‥‥‥。 |
永田 |
‥‥‥‥。 |
西本 |
‥‥‥‥。 |
糸井 |
びっくりしますね‥‥。 |
永田 |
どうして女子っていうのは‥‥。 |
西本 |
ああなんですかね‥‥。 |
糸井 |
なんの話でしたっけね。 |
永田 |
『タイガー&ドラゴン』ですよ。 |
糸井 |
そんなことはわかってますよ。 |
西本 |
『タイガー&ドラゴン』の話です。 |
糸井 |
そんなことはわかってますよ!
というかさあ、なんでみんな、
このドラマを観ないんだろうね。
なんか、評判はいいみたいですけど、
視聴率自体はまあ、ふつうじゃないですか。
観ろよ! バカ! |
永田 |
出た、久々の逆ギレ。 |
西本 |
もう、逆ギレだかなんだかも
よくわかんないですけどね。 |
糸井 |
まあ、観てる人が
このページを読んでるわけだから、
観てる人に「バカ!」って言っても
しかたがないんだけどね。 |
永田 |
あああ、それ、『新選組!』のときに
さんざん感じたジレンマだ。 |
西本 |
「観ろよ!」とここで言ってもしかたない。 |
糸井 |
かといってね、こう、
観てない人の袖をつかんで、
無理矢理にテレビの前に座らせて
「どうだ、おもしろいだろう!」
と言うのがいいとも思わないわけですけどね。
それこそ、だまされたと思って観ろよ、
とは言いたいですけどね。
なんで観ないのかなあ〜、ですよね。 |
西本 |
高校生と大学生に対する調査では、
満足度ナンバーワンらしいですけど。 |
糸井 |
学生以外にも観てほしいですよ。
もう、なんていうのかな?
みんながこれを観て
おもしろがっていない世界というのが
残念でしかたがないですよ。 |
永田 |
もう、あれじゃないですか、
それこそ『新選組!』の後半でも
まったく同じことを話しましたけど、
「観てた人、おめでとう!」
ということになるんじゃないですか? |
糸井 |
あああ、『新選組!』もそうだったよなあ。 |
永田 |
さらに乱暴なことをあえて言うとすると、
もう、今回の話とか、
袖をつかんで「観ろ」と座らせても、
ぼくらがゲラゲラ笑うほど
たのしめないんじゃないかと思うんですよ。 |
糸井 |
えっ、通りすがりのお客さんには
もう無理ですか? |
永田 |
無理じゃないですけど、無理ですよ。
たとえば今回から、高座のところで、
あらすじの紹介がなくなりましたよね。
「この人はじつはヤクザで‥‥」というような。
もう、ある程度、いまのお客さん向けに
シフトアップしてると思うんですよ。
で、それでオッケーだと思うんです。
もう第6話ですし、
一見さんをずっと気にしてるようじゃ
ドラマの速度が鈍っちゃう。だからこそ、
「観てた人、おめでとう!」かなと。 |
糸井 |
あいたたたたた。 |
西本 |
でも、スペシャルの『三枚起請』を
DVDで観れば大丈夫じゃないですか? |
永田 |
もちろん大丈夫ですけど、
大丈夫じゃないですよ。
いまのぼくらの、「くるぞくるぞ」と
ほっぺたを上げて待ってる感じっていうのは
今回いきなり観ても無理でしょう。 |
糸井 |
だから、毎回、
「オレの話を聞け!」と言ってるわけだね。 |
西本 |
「オレの話を聞けと言ったのに!」 |
永田 |
「オレの話を聞けって
あれほど言ったじゃないか!」 |
糸井 |
なるほどなあ。 |
永田 |
まあ、ぼくらにしてみても、
宮藤作品をぜんぶ
最初から観てた人にくらべれば、
たのしみそこねてるわけだし、
「おめでとう!」の声に気づいた人が、
慌ててどこかから駆け込んでくるっていうので
いいんじゃないかと思うんです。
あちこちでしっかりと
「おめでとう!」を言ってれば‥‥‥‥わっ! |
(ふたたび、りかさんが現れ、
DVDレコーダーをチェックしはじめる) |
3人 |
‥‥‥‥。 |
りか |
よし。ダビング開始。失礼しました☆ |
糸井 |
‥‥‥‥。 |
西本 |
‥‥‥‥。 |
永田 |
‥‥‥‥。 |
糸井 |
ええ〜、今回のドラマの話を‥‥。 |
永田 |
しましょうかね‥‥。 |
西本 |
そうですね‥‥。 |
糸井 |
『明烏』はご存じでしたか? |
ふたり |
いいえ! |
糸井 |
『明烏』は(桂)文楽師匠が
ひじょうに得意としていた噺なんです。
あの、ドラマのなかに甘納豆が出てましたよね。
文楽師匠の『明烏』というのは、
甘納豆を食べるシーンが有名なんです。 |
永田 |
へええ。 |
西本 |
それで甘納豆なんですね。 |
永田 |
言われてみれば、たしかに
無理矢理、甘納豆が出てた。 |
西本 |
デパ地下の甘納豆屋という設定でした。 |
糸井 |
そこで、落語好きはニヤリとしたはずですよ。
そんなふうに甘納豆を出すか! と。 |
永田 |
なるほど。 |
糸井 |
見事ですよ、文楽師匠が甘納豆を食べる所作は。
こうね、ちょっと笑いながらね、
ぽりぽりとつまむ感じでね‥‥。
「ふふぉ」(ぽりぽり‥‥)
「ふぉふぉ」(ぽりぽり‥‥)
「ふぅむ」(ぽりぽり‥‥)
「ほぉほぉ」(ぽりぽり‥‥) |
永田 |
‥‥糸井さん、糸井さん、
文字のコンテンツなんですから、
延々と文楽師匠の形態模写をされても
困りますよ。 |
糸井 |
せっかく気分よくやってたのに!
動画配信とか、いろいろあるだろう。 |
西本 |
データのムダ遣いです。 |
永田 |
甘納豆はともかく、
今回の主役は昇太さんですね! |
西本 |
ええ、昇太さんです。
未婚の30代、という設定でしたけど、
実際の昇太さんも独身なんですよね。
さすがにマザコンで
女嫌いじゃないでしょうけど、
ふだんの昇太さんも
異性の影が見えない感じで、
下ネタしゃべってるようにも思えないし、
なんとなく役とダブる印象がありました。 |
糸井 |
実際は、異性のファンがすごく多いのにね。
でも、高座に上がってからの昇太さんは
ドラマのなかの役とはぜんぜん違いますよ。
もっともっと派手です。 |
永田 |
高座で着物を着替えちゃったり
するもんなあ。 |
西本 |
寝っ転がったり、四つんばいになったり。 |
糸井 |
そうそう。 |
永田 |
劇中劇のなかの昇太さんは、
昇太さんの落語のなかに出てくる
キャラと同じで妙にうれしかったですよ。 |
西本 |
おもしろメガネですね。 |
永田 |
あの、だまされて
吉原に連れてこられたことに気づいて
若旦那が泣く場面とか、
ほんとに昇太さんの落語を聴いてるみたいで
にやにやしましたよ。 |
糸井 |
あのあたりの劇中劇は、
もとの噺もおもしろいし、
昇太師匠の落語としての表現もおもしろいし、
ドラマならではの部分もおもしろいしで、
こう、要素がかたまりになってて、
たのしめましたよね。 |
西本 |
ええ。贅沢な感じすらしました。 |
糸井 |
噺の部分でいうと、
「若旦那なのに、近所の人の家におよばれして、
赤飯をおかわりする」
っていうのがぼくはすごく好きなんですよ。
若旦那のマジメさの表現、
それを聞いている親の気持ち、
このあたりがたまらないんです。
噺の本筋ではないんだろうけど、
あの部分をドラマで活かしてくれていたのは
噺を知ってる人にとっては
うれしかったですね。 |
永田 |
あああ、なるほど。
わがままを承知でいえば、
最後のところ、『明烏』の続きを
昇太さんが薬師丸さんの前でやるところは
もうちょっと聴いてみたかったですね。
思えばあそこ、このドラマのなかで、
本職の落語家が落語をする
はじめてのシーンなんですよね。 |
糸井 |
あ、そうか。 |
永田 |
なぜか昇太さんが汗びっしょりでしたけど。 |
西本 |
あそこ、ひょっとしたら昇太さん、
一席、丸ごとやったんじゃないですかね? |
永田 |
『明烏』を? うわあ、それは聴いてみたい。 |
糸井 |
昇太さんからしてみれば、
一部分だけやるよりも通すほうが
やりやすいのかもしれないね。
サービス精神旺盛な人ですから。 |
永田 |
しかも目の前に薬師丸さんが座って
きちんと聴いてるとなると
撮影とはいえモチベーションも上がるのかも。 |
西本 |
ところで、薬師丸さんは
なんで昇太さんを好きになったんですかね。 |
糸井 |
え? |
西本 |
つまり、克子がどん吉を
なぜ好きになったかということですけど。 |
永田 |
は? |
糸井 |
どういうことですか。 |
永田 |
いまごろなぜそんなことを?
誰が誰を好きになろうが成立する、
というのがこのドラマの特長じゃないですか。 |
西本 |
あ〜、いやいや、それはわかってるんですけど、
そういうことじゃなくて‥‥。 |
糸井 |
にしもっちゃんのことを
にしもっちゃんの奥さんは
なぜ好きになったんですか?
それと同じことでしょう? |
西本 |
あ〜、いやいや、そういうことではなくて。 |
永田 |
なんなんだよ。 |
西本 |
克子はもともと落語好きで、
どん吉のことも知っていて、
ファンだったということなのかなと。 |
糸井 |
え? |
永田 |
え? |
西本 |
ほら、座敷で甘納豆をすすめられる場面で、
「自己紹介してないのに私の名前を知ってて」
というくだりがあったじゃないですか。 |
糸井 |
えっ! |
永田 |
あっ! |
西本 |
あれが、もともと
落語ファンだったというフリなのかなと。
あと、ブログに、はしゃいだ口調で、
「噺家のどん吉さんといっしょ!」
みたいなことが書いてあったでしょ? |
糸井 |
うわ! |
永田 |
あああ! |
西本 |
さらに言うと、温泉地でいきなり
合コンに誘われる場面で、
「私でいいんですか?」と言うとき、
デジカメのズームが動くでしょ?
あれが克子の舞い上がった表現なのかなと。 |
糸井 |
にしもっちゃん! |
永田 |
どうしたの、突然、その洞察力は!
キャラじゃないでしょ! |
西本 |
いや、もともと、こういう
細かいところを見つけるキャラなんですよ。 |
永田 |
さすがトヨタホームのCMに
疑問を投げかけた男。 |
糸井 |
おそるべし西本武司!
それは、すごいわ。読みまくりだわ。
言われてみればそうかもしれない。 |
永田 |
驚きです。 |
糸井 |
いやぁぁぁ、そうか!
オレなんかは、ちっとも読んでないね。
来た球を打ってるだけだわ。
長嶋茂雄だわ。 |
永田 |
ぼくも長嶋一茂でした。 |
糸井 |
いや、感心しました。
すごい分析です。西本さんは、
テレビガイド界の野村克也ですよ! |
永田 |
福本豊ですよ! |
糸井 |
それは違うだろ。 |
西本 |
それは違うだろ。 |
糸井 |
いや、ほんと、にしもっちゃんは、
森祇晶だわ。 |
永田 |
張本勲だ。 |
ふたり |
それも違う! |
永田 |
デーブ大久保! |
西本 |
わざと言ってる! |
永田 |
パンチ佐藤! |
糸井 |
ジャッキー佐藤! |
ふたり |
なにもかも違う! |
糸井 |
マキ上田をとばして、
まきしんじ(牧伸二)! |
ふたり |
もういいです。 |
糸井 |
マイク真木‥‥。 |
西本 |
テープ止めますよ? |
永田 |
バラが咲いた、言うてる場合か。 |
糸井 |
いや、でも、驚きましたよ、
西本克也さんと呼ばせてもらいますよ。
そのとおりですよ。
克子は落語ファンだったのです! |
西本 |
ええ。そういうことなのかなあと。 |
永田 |
だとすると、もうひとフリくらい
あってもよくないですか?
なんていうか、その設定、
もったいなくないですか? |
西本 |
ええ。ぼくももうちょっと
昇太恋物語は観たかったなと。
いっそ、混浴でチューよりも
そちらが観たかったような気がします。 |
永田 |
ああ、それはちょっと思った。
後半、軸がふたつ
カチ合ってましたよね。 |
糸井 |
その賑やかしがおもしろかったんだろうね。
テンポを倍速にしたみたいな。 |
永田 |
個人的には、前半は
ふたつの軸のにぎやかさが
たのしかったんですけど、
後半、温泉地に着いてからは
どっちかを観たいという気持ちになりました。 |
糸井 |
永田くんはそういうタイプですよね。
ぼくは後半のどたばたが、
いい具合にひとつひとつの
フォーカスを甘くしていて
おもしろいと思いましたよ。
誰と誰がどうなったっていうんじゃなくて、
ある若い男と若い女、
ある妙齢の男と妙齢の女というふうに
トントントン、と描かれていくことが、
妙に落語っぽくてね。
生々しくとらえるんじゃなくて、
「雑に描く」という落語っぽさ。
あそこで妙にコクを出したりすると、
居心地が悪くなりますよ。 |
永田 |
なるほどなるほど。 |
糸井 |
あと、これは聞いた情報ですけど、
あの克子の役は、
薬師丸さんを想定して
書いたんじゃなかったそうですね。
脚本が先にあって薬師丸さんに出演依頼をして
薬師丸さんがそれに
「おもしろそうですね」と
乗ってくれたらしいです。 |
西本 |
たぶん、そうでしょう。
ドラマ中、ブログに書かれていた設定では
1969年生まれとなってましたから
いま、35〜36歳でしょう?
薬師丸さん本人の年齢ではないですからね。 |
糸井 |
‥‥‥‥。 |
永田 |
‥‥‥‥。 |
西本 |
ん? |
糸井 |
今日はいったいどうしたんだ?! |
永田 |
見事な野村スコープですよ! |
糸井 |
西本スコープ! |
永田 |
ID雑談! |
糸井 |
よっ、月見草! |
西本 |
話を続けますけど、
実年齢とはちょっと差がありそうなんで
これは、
「あて書き」じゃないなと思ったんです。 |
糸井 |
はっはー。 |
永田 |
キレ者すぎて、
ちょっとイヤなヤツに思えてきましたね。 |
糸井 |
むしろふだんは隠してるのかもしれませんよ、
この「キレ」を。
サバの脂であえて
刃物の切れ味を鈍らせるように。 |
永田 |
サバの脂にそんな効果がありましたか。 |
糸井 |
長嶋茂雄的に言えば、
サバは「さかなへんにブルー」ですよ。 |
永田 |
そういう小ネタはさておき、
西本スコープは、
ほかにどんなところに注目しましたか。 |
西本 |
‥‥大喜利ですかね。 |
永田 |
おおっ、大喜利! なるほど! |
糸井 |
ちょっと待て。
それ、ふつうの感想だ。 |
永田 |
あ、そうか。 |
西本 |
大喜利は奥深いんですよ。
あれは集団プレイですから。
バラエティーの基本ですよ。 |
糸井 |
いわば、大喜利は劇団ですからね。 |
西本 |
そうですそうです。 |
永田 |
大喜利のところで思ったのは、
「おもしろいオチ」でもないし
「つまらないボケ」でもない、
中間のところを
表現しなきゃいけないじゃないですか。
家で練習してるときもそうだし、
宴会で披露するときもそうだし。
その、「中間の部分」を出すのって
じつはすごくむつかしいと思うですけど、
すごく丁寧にやってるなあと思って。
おもしろすぎちゃダメだけど
テンポは絶対落としちゃいけない。
宴会のところなんかはジャンプ亭も加わるから
それなりに個性も出さなきゃいけないし。
あれは、地味に職人芸だと思いました。 |
糸井 |
つなぎの部分の丁寧さ、ね。
あと、『笑点』からの
微妙な乱反射がおもしろかったですよね。
まあ、パロディーになってるところは
もちろんですけど、
客席で辰ちゃんと虎児が
「しょうがないね」って言うところとかさ。 |
永田 |
あれはよかった。 |
西本 |
円楽師匠。 |
永田 |
あと、西田さんの芝居のなかの
円楽エッセンスも見事でしたよ。 |
糸井 |
そうそうそう。
もう、なんていうの、
くりぃむしちゅーの有田がマネしてる
円楽師匠をもう一回ぐるっと回ってるような。 |
永田 |
もう、完全に一周してるから
どこがどこだかわかんない(笑)。 |
糸井 |
うん(笑)。 |
西本 |
西田さんといえば、
最後の酔っ払いの芝居はすっごいですね。 |
永田 |
思った思った!
あの、酔ってるんだけどヘベレケになる寸前で
理性が残ってていいことを言うっていう
すごく微妙な芝居。
しかも、英語がちょっと混じってくるのなんて
九州の親戚とかによくいない?
ていうかうちの親戚がそうなんだけど。 |
糸井 |
あの場面はいいセリフがありましたよ。
「人に愛される立派な取り立て屋になりなさい」
ですからね。もう、落語ですよね。 |
永田 |
あそこでぼくはうっかり
しんみりしそうになりましたよ。
あわてて笑いましたけど。 |
糸井 |
そのへんがもう、完全に落語の世界ですよ。
もう、いまじゃヤクザも含めた全員を
世界として好きになってきてますよね。
それこそが、このドラマが
落語になっているということですよ。
とうとう、そこまで来たといってもいい。 |
西本 |
たしかに。みんなを好きになってますねえ。 |
糸井 |
あの、なんだかしらないけど
ブログに対して怒ってる鶴瓶師匠とかさ。 |
永田 |
あの「‥‥わからへん」ってところ、
おかしかったなあ。 |
糸井 |
なにがわからないのかすら
よくわかってないあたりがいいんだよね。 |
永田 |
あと、今回、ぼくは銀次郎がかなり好きですよ。
うまくやったようで基本的なところで失敗して
しょげてるあたりとか、等身大な感じがして。
その銀次郎に、
「おまえさぁ、それじゃなんにも調べてねぇのと
いっしょじゃねえかよ!」って、
一瞬だけキレる虎児もリアリティーあった。 |
糸井 |
断片的に挙げていくと、あのランパブ?
あそこの場面はおもしろかったなあ。
あの、わけのわからない背景と、
そこでしっかり電話してる虎児。
プロデューサーなのか演出家なのか
美術なのか、ぜんぶなのか知らないけど、
このチームはいつでも
景色の作りかたがものすごく上手だね。 |
西本 |
なるほど。 |
糸井 |
だってあの場所っていうのは、
テレビのなかでは
そんなにカンタンに出せる場所じゃないですよ。
それをカラッとした感じで見せてますよねえ。 |
西本 |
まあ、テレビ局の違いもあるんでしょうけど、
『新選組!』だと、もっと苦労してましたよね。
ようするに、明里がいたところがそれでしょう? |
糸井 |
そうそう、そうだよね。
『新選組!』の描きかただと、
「なにもしてませんよ!」っていう
感じになってますからね。 |
西本 |
もちろんです! 山南さんは
絶対何もやってないっスよ! |
永田 |
近藤勇も、病気だから太夫を身請けしたのです! |
糸井 |
そうです! なぜなら、
そばにいるだけで‥‥。 |
ふたり |
「やすらぐのだ!」 |
糸井 |
苦労してましたねえ。
その点、こっちはのびのびと
「エロエロ探検隊!」と。 |
西本 |
あの「エロエロ探検隊!」というのも
ギャグの選択としていいところをついてますよ。
ほんとに芸人さんがああいうところに行って
場の勢いで披露したときに、
ギリギリのところで
「ほんとにウケそう」ですから。
永田さんがさっき言った
「中間のおもしろさ」ですけど、
「マジでおもしろい人たち」って
見せてないのがうまいですよね。 |
永田 |
あの「中間」がうまく表せないと、
「すげーおもしろいこと」を考えても
どこかのところで効果が薄れちゃうんだよね。
順列がうまくいかなくなるから。 |
西本 |
うんうん。 |
糸井 |
あとは、どうですか。
こんなところにしておきますか。 |
西本 |
最後に、役者じゃない、
「噺家、春風亭昇太」のことを
もうちょっと推しておきたいですね。
せっかくCDブックもつくったことだし。 |
永田 |
『はじめての落語。』です。 |
糸井 |
うん。これははっきりと宣伝になりますが、
春風亭昇太というもの、
落語というものを手っ取り早くわかる、
とてもいい方法のひとつだというのは
間違いがないことなんで、
きちんとおすすめしたいですね。 |
西本 |
ソニーさんからも落語CDが
新しく出るみたいですよ。 |
永田 |
ここのところ、雑誌や新聞なんかにも
よく取りあげられてますよね。 |
糸井 |
いま、この「春風亭昇太」という人の魅力を、
みんなが引き出して紹介したがってるんですよ。
ぼくらはたまたま去年にそれをやりましたけど、
そう思わせる力が、
やっぱりあの人にはあるんですよね。
「昇太はおもしろいぞ!」
と叫ばせるなにかがあるんです。
実際、おもしろいんですから。 |
西本 |
さっき糸井さんが言った
「だまされたと思って一度観てみろよ」
というのは、それこそ昇太さんですね。 |
永田 |
『はじめての落語。』というイベント自体、
昇太さんがいなきゃはじまらないものでした。 |
糸井 |
うん。あれは誰か他の人で
スタートするわけにはいかないんだよ。 |
西本 |
いかないです、いかないです。
性別、年齢関係なく
「だまされたと思って‥‥」
とおすすめできるのは
昇太さんだけかもしれませんよ。
お笑いにそれほど興味ない人から
それこそ、超プロの松本(人志)さんクラスにも
おすすめできるものってあまりないですから。 |
永田 |
「このドラマを観ろ、バカ!」って、
このページを読んでる人に言っても
しょうがないっていう話がありましたけど、
このページを読んでる人の袖をつかんで
「昇太を観たほうがいいぞ!」
っていうのは言えますよね。 |
糸井 |
言えますね。言いたいですね。 |
永田 |
しかも、ドラマを観て、昇太さんを、
ああいう、
「マジメで地味に古典をやる」みたいな、
ちょっと誤解した感じで観てもらうと
ものすごくびっくりするんじゃないかな。 |
糸井 |
いまだから言いますけど、
「ほぼ日」をはじめるまえ、
つまり7年まえに、
ぼくが勝手に考えていた
「こういうことがインターネットで
できたらいいぞ!」っていう
将来用のプログラムのなかに、
「落語の企画」
というのはすでにあったんですよ。
ふつうの人が落語をたのしめるような
コンテンツがあったらいいのに、
っていうのは、ずーっと思ってたんです。
で、なっかなかそれが
スタートできなかったんですけども、
春風亭昇太という人の落語を聴いて、
ようやくそれがスタートできたんですよね。
「この人を入口にすれば、
落語のたのしさ、おもしろさ、よさを、
いまの人に伝えられる」って思えたんです。 |
西本 |
実際、六本木ヒルズのイベントには、
「落語ははじめてです」っていう人が
たくさん来てくださって。 |
糸井 |
みんな、ニッコニコしながら
会場から出て行きましたよね。
イベントが終わった瞬間に、
「やってよかったなあ」って
ほんとうに思いましたからね。 |
永田 |
CDブックの反響もよくて、
ついに、このたび、増刷も決まりました。 |
糸井 |
よっ! |
3人 |
パチパチパチパチ‥‥。 |
永田 |
手前味噌になりまして恐縮ですが、
『はじめての落語。』を
よろしくお願いいたします! |
糸井 |
‥‥というところで、終わりますかね。
ドラマのなかで
しゃべり忘れているようなところは
なにかありましたかね? |
西本 |
いえ。あとはまあ、
大喜利の練習をしてるときに、
虎児の浴衣のケツが破れてたことくらいです。 |
糸井 |
そういう細かいところじゃなくてさ。 |
永田 |
あとは、冒頭で阿部サダヲさんが
虎児にパチキくらって
吹っ飛ばされて鼻血出すところで、
持ってた赤ん坊の人形も
きちんと鼻血出してたことくらいです。 |
糸井 |
そういう細かいところじゃなくてさ。 |
永田 |
ああっ!
竜二とメグミの恋の行方とか
そのへんはノータッチですけど、
いいんですかね? |
糸井 |
ラブですか。 |
西本 |
ラブですね。 |
永田 |
ラブです。
男子部が不得意とするところ、
というか興味が持てないところ、
それがドラマのなかのラブです。 |
糸井 |
ま、温泉のシーンでの伊東美咲さんは、
ふつうのドラマじゃあまり観られないような、
けっこうな汗のかきかたをしてましたね。
ああいう役割の人は、
ふつうもっとサラッとしてるもんだけど、
いい感じで汗をかいてましたよね。
そこは演出に好感を持ちましたね。 |
西本 |
妙に火照ってるんですよね。 |
糸井 |
お、西本克也もそう思いましたか? |
西本 |
ええ。とくに温泉での最初のシーンですね。
そのあと、グルッと回ってきてからは
ちょっとサラッとしているんですけど、
最初のところはよかったです。 |
永田 |
さすが西本スコープです。 |
糸井 |
今日はほんとうに冴えてますね。
あれは、ほんとうに温泉に
しばらくつかっていて、
そのあとで撮影したということなんですかね。 |
西本 |
そうだと思います。
もしくは、伊東美咲さんだけに、
梅酒でほろ酔いしたあとに
撮影したんじゃないでしょうか? |
糸井 |
‥‥なんだって? |
永田 |
‥‥なんだって? |
西本 |
伊東美咲さんだけに、梅酒で。
さーらりーとーしたーうーめーしゅー♪ |
糸井 |
‥‥西本克也という呼び名は
やっぱり撤回したほうがよさそうですね。 |
永田 |
‥‥ええ。ID雑談が聞いてあきれます。 |
西本 |
さ〜らり〜と〜した〜う〜め〜しゅ〜♪
おかげさまで増刷決定。
春風亭昇太の代表作3席を収録したCDブック
『はじめての落語。』の
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