第7回
「猫の皿」を観て




永田 いや〜、お疲れさまでした。
西本 あああ、お疲れさまです!
糸井 はい、はじめましょうか。
西本 これ、家でひとりで観てたら泣いてましたね。
糸井 おおっ。
永田 今回、いままでのなかで、
個人的にベスト1ですね。
糸井 おおっ。
西本 ぼくもベスト1です。
糸井 えっ、そう来たか。
あああ、そう。そうですか。
まあ、ぼくは‥‥まず、歯が痛くて。
西本 それは、それは。
永田 もったいないことをしましたね。
西本 じゃあ、もう一回、
ゆっくり観たほうがいいんじゃないですか。
糸井 いや、もちろんちゃんと観てましたし、
おもしろかったですけど。ベスト1?
永田 はい、ベスト1ですね。
ていうか「これが最終回でもいいや!」とさえ。
西本 ぼくも、竜二の破門がとけたところでは
最終回のような気持ちになりましたよ。
いやあ‥‥すごかった。
糸井 ちょっとふたりの話を聞いてようかな?
これまでにない展開ですね。
いや、もちろんよかったですよ。
すごくよかったですけどね。
西本 鳥肌たちましたよ。
糸井 永田くんも?
永田 鳥肌たったというのとはちょっと違うかなあ。
というか、自分で「ベスト1」と
言っておいてなんですけど、
にしもっちゃんが
「ベスト1」と言うとは思わなかったな。
西本 こらこらこら、それおかしいやろ。
ふたりでほめ合っていくべきところやろ。
ふたり どこがベスト1?
西本 どこが‥‥って、
観た直後にいきなり言われても。
ちくちくと、
いろんなところに反応してましたが。
う〜ん、とにかく一気にもっていかれましたよ。
途中、何度も泣きそうになったもん。
永田 あ、やっぱりちょっと違うな。
何度も泣きそうにはならなかったもん。
西本 こらこらこらこら、キミキミ、
ここは話合わせて、
2対1の展開で盛り上げていくところやろ。
永田 何度も泣きそうにはならなかったけど
ベスト1です!
西本 ほんとにこの人は強情だな。
糸井 ツボって人によって違うもんだなあ(笑)。
ぼくにとっては
「すごくあったかいお話」という回でしたね。
永田 ぼくは、とにかく、よくできているというか、
「きれいな回だなあ」と思いました。
西本 ぼくは、「芸人っていいなあ」という感じです。
糸井 なるほど‥‥。
永田 三者三様‥‥。
西本 ええ‥‥。
糸井 ‥‥‥‥。
西本 ‥‥‥‥。
永田 ‥‥‥‥思いのほか、
話が弾まない展開になりましたね。
西本 あんたが
いきなり細かいこと言い出すからだろう。
とりあえずふたりで
「よかったよかった!」って言っておけば
景気よくはじめられたのに!
永田 だってしょうがないじゃん!
なんか、微妙に違うんだもん!
糸井 まあまあ。
ひとまずインターバルを置いて、
くだらない話でもしましょう。
永田 じゃあ、なに? 糸井さんの歯?
西本 それでいいんじゃない?
永田 じゃあ、糸井さん、
歯はどうなんですか。
西本 痛いんですか。
糸井 そんな訊きかたがあるか!
西本 奥歯ですか?
永田 奥歯ですか?
糸井 ‥‥親知らずですよ。
ふたり へえええ〜。
糸井 そんな反応があるか!
西本 くだらない話を
むりやりやってもダメですよ。
永田 そりゃそうだ。やめよう。
糸井 やめるのか!
西本 糸井さんが「ベスト1!」っていう
感じじゃなかったのは
どうしてなんですかね。
永田 あ、なるほど。それでいこう。
糸井 いや、べつにね、
よくないわけじゃないですよ。
「ベスト1」とか「鳥肌!」とか
そういう感じではなかったというだけで。
その‥‥つまり‥‥奥歯が。
西本 奥歯が?
糸井 痛かっただけに‥‥。
永田 痛かっただけに?
糸井 奥歯にモノがはさまった‥‥。
ふたり ‥‥‥‥。
糸井 言いかたをしてしまった‥‥と。
ふたり ‥‥‥‥。
糸井 ‥‥‥‥。
ふたり しょうがないねえ〜。
糸井 まあ、マジメにいうとね、
ひとつは、そうだなあ、
『猫の皿』が完全には
できてないように思えたんです。
永田 え、そうですか?
糸井 つまり、
価値のあるもの(梅鉢)を
価値がないもの(猫の皿)のように
見せておいて、
道具屋が
「それが欲しいわけじゃないんだよね」
という形で騙してくるのを
店の主人が騙し返す、
という『猫の皿』の醍醐味の部分が
ドラマのなかにはできてないように
見えたんですよね。
永田 あああ、まあ、厳密に言うとそうなりますか。
糸井 う〜〜〜ん、でも、そんなに厳密に
違いが気になったわけじゃないなあ。
まあ、そういうのも、
ちょっとあるっていう感じで。
どうも今日は、奥歯にモノが‥‥。
西本 それはもういいです。
永田 まあ、「騙し合い」部分はなかったですけど、
ぼくはどっちかというと、
見事に『猫の皿』を
重ねてるように思えました。
たまたまぼくは『猫の皿』の噺を、
聴いたことがあって知ってたんですけど、
もともとの落語が、
すごくきれいな流れの噺じゃないですか。
展開も読めないし、サゲもいいし。
糸井 うん。よくできた噺です。
永田 だから、これをどうやるのかなと思ってたら
序盤の、西田さんの高座の部分で、
いきなりサゲまで
一気に行っちゃったでしょう?
で、あんなきれいな噺を先に見せちゃったら
やりづらいんじゃないかなと思ったら、
さらにきれいに重ねていった。
だらかもう、ほんとうに、
「なんてきれいな回だ!」
っていう感じでベスト1なんですよ。
糸井 そうですね。
永田 「そうですね」って(笑)。
西本 ちなみにぼくは『猫の皿』が
一本の筋としてありながら
それに『子別れ』が裏の軸として
からみ合っていってるように思えて、
そこに芸人社会が映し出されていく様子が
すごくいいなあ、と思ってました。
糸井 ああ、『猫の皿』と『子別れ』の
2本を立ててたっていうわけだね。
永田 『子別れ』は聴いたことがないんですけど
どういう噺なんですか?
糸井 簡単にいうと
「子は、かすがい」っていう噺でね。
仲の悪い夫婦が子どものおかげで
仲直りするっていう噺なんですよ。
だから、今回はタイトルは『猫の皿』だけど、
その裏っかわに、竜二がやり損ねた
『子別れ』が隠れているともいえるんだね。
それはすごい仕組みですよねえ。
というか、なんでこんなに
おもしろくてよくできてると思ってるのに
オレは「ベスト1!」っていう声に
「そうだ!」って言えないのかなあ。
‥‥ちょっと置いといて、
べつの話をしませんか。
永田 そうですね。
西本 前半は高田さんがよかったですよね!
永田 よかった!
西本 笑えるし、テンポ上げるし、
全体をうまく混ぜる感じで。
糸井 高田さんはなんであんなに
物おじせずに演技できてるんですかね。
驚きましたよね。
西本 持ち味そのままでしたよね。
演技しているはずだから
つまり、それがちゃんと
芸になってるんですよね。
糸井 それがああやって
ドラマで再現できるということは
つまり、ふだんも芸なのか!
西本 そうなんですよ!
糸井 あらためて感心しますね。
西本 あと、ぼくが感心したのは、
高田さんの声が、
ちょっとオフぎみで入ってて、
メインのセリフ、本線を邪魔しないんですよ。
つまり、マイクの横にいるような感じで。
永田 あ〜、『オールナイトニッポン』だ。
西本 そうなんですよ。
ビートたけしさんの声が主旋律で
そこを邪魔しない、あの感じですよ。
あの感じをきちんと出してるのが
うまいなあと思いましたね。
糸井 なるほどね。
永田 あと、宮藤さんが昔、
高田さんのファンだったっていう話を
聞きましたけど、それってつまり、
「超あて書き」したっていうことですよね。
宮藤さんの力も大きいんじゃないですか。
糸井 でもさあ、自分の役をするって、
逆に難しいと思うよ。
たとえば永田くんが
永田くんの役をやってくれと言われたらさ、
きっと困ると思うんですよ。
永田 オレがオレの役、ですか?
糸井 つまりさ、
『糸井事務所物語』というものがあって、
永田くんが永田くんの役をするんだよ。
「どうして永田くんは
 あんなに不機嫌そうなんですかね?」
とオレらがウワサしているところに
あなたが不機嫌そうな顔をして
やってこなきゃいけないんですよ。
そういうふうに台本に書いてあるんですよ。
永田 ちょっと待ってください。
ぼくは不機嫌じゃありませんよ。
西本 で、台本には、
「ぼくは不機嫌じゃありませんよ」
って書いてあるんですよ。
糸井 そうそう(笑)。
永田 なんだか不機嫌になる設定だな。
西本 「なんだか不機嫌になる設定だな」
とも書いてあるんですよ。
永田 えーー!
糸井 ト書きでちゃんと
「──永田、不機嫌そうにつぶやく」
って書いてあるわけです。
西本 「──永田、またしても
 地下鉄の乗り継ぎを間違える」
って書いてあるわけです。
永田 また地下鉄の話かよ。わるかったよ。
こないだもホームの逆っかわで待ってて、
もうちょっとで反対方向に乗りそうになって、
「いかんいかん、危ないところだった」
と思って
あわててホームの反対側の列に
並んで待ってたら
そもそもホームが違ったよ。
西本 与太郎級ですね。
糸井 よっ、ひとり『粗忽長屋』!
永田 「向かいのホームで待ってるオレは
 いったい誰なんだろう」?
糸井 そういう役を演じろと言われたら
やりにくいでしょう?
永田 ええ、とにかくやりづらそうです。
糸井 それをあんなにのびのびとやっているのが
高田文夫という人なんですよ。
西本 しかも、画面上では決してメインに出ず、
微妙に外した立ち位置をキープしつつ。
永田 さらに、自分を演じる横には、
大俳優の西田敏行さんがいたりして。
糸井 体の使いかたみたいなものまで
ちゃんとできてたもんなあ。すごいよ。
西本 ものの見事に自分を演じてましたね。
ぼくら、高田さんが生でしゃべってるのを
拝見してるじゃないですか。
「落語パラダイス」の対談のときに
事務所にいらっしゃったから。
あのまんまでしたよね?
永田 あのまんま、あのまんま(笑)。
西本 高田さん、予定時間より
早く事務所に来られてたんですけど、
糸井さんを待っているあいだ、
事務所にあるものを片っ端から
あの調子でいじってましたもん。
本からハラマキタオルまで。
永田 「なに、本出したの? 自分たちで?
 へっえぇ〜、えらいもんだねえ〜」
西本 「ん? ハラマキ? これもつくった?
 ああそう? おどろいたねえ〜」
永田 「ああ、こっちで収録?
 お、和室があるよ、えらいもんだね」
糸井 「和室、バウバウ!」
西本 「タオル、バウバウ!」
永田 「灰皿、バウバウ!」
西本 いやほんと、ふだんが芸ですよ。
それを演じろと言われて
ふつうに演じられる芸人さんなんですよ。
糸井 いるんだね、そんな人間が。
永田 糸井さんだったら
明らかに拒否反応を示しますよね。
「糸井重里っぽい役とセリフ」
みたいなものを用意されると。
西本 いや、実際、そんなんばっかです。
糸井 ふだん、役を演じてないですからねえ。
なすがままにしてるので、
「なすがままをやってください!」
と言われると「えっ!」ってなるんだよ。
それでいつもぎくしゃくしちゃうんだ。
西本 そういう意味では
NHKでオンエア中の
「月刊やさい通信」は要注目ですよ。
永田 あ、ちょうど今日、ビデオ観たよ。
かたかったですねー。
西本 もう、がっちがちでしょ。
糸井 やかましい。
永田 あぜ道を糸井さんがカメラに向かって
歩いてくるだけなんだけどさ。
もー、かたくてかたくて。
オレはカメラのこっち側にいる
にしもっちゃんの姿が見えるようだったよ。
こう、腕組んで、心配そうにね。
西本 とくに最初の段取りのところは
もう、目が怒ってるからね。
「『月刊やさい通信』、始まります!」って。
永田 ほんわかしたタイトルなのに。
西本 あの目の鋭さは、どっちかというと
「社会派やさいドキュメント」ですよ。
こないだのオンエアは
雄大な長野の自然をバックに
コメントしてるんだけど、目が恐いから、
糸井さんがしゃべる場面だけ
台風中継みたいになってるんだもん。
永田 わははははははは。
糸井 ‥‥きみらが一度、やってみなさい。
ふたり 絶対、イヤです。
糸井 まあ、とにかく、そんなオレだからこそ、
高田文夫という人のすごさがわかるんですよ。
もともと、すごいなとは思ってたけどさ、
あんなにできるっておかしいよ。
西本 自分の役の「あて書き」なんて、
役者さんでもやりにくいはずですからね。
先週でいうと、薬師丸ひろ子さんに
「ちゃん、りん、しゃん」を
やらせるようなもんですよ。
永田 古いね、どうも。
糸井 それなのにね、あんなにのびのびと演じて、
スポーツ新聞を読んでみたりとかね。
永田 「日刊スポーツ」だ(笑)。
西本 あれは笑ったなあ。
糸井 今回はとくに
小ネタがいちいちおもしろかったな。
西本 ええ。どうでもいいようなことが
いちいちヒットするんですよね。
そのへんの打率は、ほんと高い。
糸井 そのへんが「ベスト1」の理由?
ふたり 違います。
糸井 違うよなあ。そうじゃないよなあ。
永田 今回、小ネタもたしかに
おもしろかったですけど。
西本 「ふかわりょうのほうがおもしろい」とかね。
糸井 「やっぱり猫が好き〜」とか。
永田 グーグーガンモと響子さんの本人吹き替えとか。
西本 酔っぱらった次長課長の河本さんとか。
糸井 「泣くぞ、泣くぞ」の
さゆりちゃんシリーズとか。
永田 でも、小ネタはいつもおもしろいわけで。
糸井 そうだよね。
永田 やっぱりそれ以外の大きな軸のうねりが
見事だったと思いますね。
端的にいうと、これまでのなかでもっとも、
「1分先にどう展開するかわからない」
っていう回だったような。
糸井 ああ、なるほどね。
永田 終わってみれば、
「いままでかたくなに落語を封印してきた
 竜二がついに落語をやる」という、
じつはすごい回だったんですけど、
ラスト15分くらいまで、
そんな重要な展開になるとは
思わずに観てましたから。
だから、前半がすごくきれいで、
最後のところでグワッとうねるという‥‥。
糸井 あああぁ‥‥わかった!
オレが、この回、おもしろいって思ってるのに
ちょっと距離を感じちゃう理由。
永田 ‥‥ああ、ぼくも、わかりました。
糸井 なんだと思う?
永田 あれですか? 最後の、落語。
糸井 竜二の?
永田 竜二の。でしょう?
糸井 うん。
永田 あああ、そういうことかあ。
あそこはぼく、天才落語家の落語として、
きちんと変換してましたよ。
糸井 なるほどね。ぼくは引っかかっちゃった。
西本 ああ、なるほど。
最後の竜二の落語が、
もっと「ものすごい落語」に
聞こえてほしかった、と。
糸井 いや、しょうがないんだよ。
というかね、あの展開で、
場をひっくり返す落語なんて、
うまいだけじゃダメだから、
ほんとに真打ちの人がやったって
きびしいと思うんだ。
つまり、「みんながぶっ飛ぶ落語」を
やってみせなきゃいけないわけだからさ。
永田 そうですね。だからぼく、
竜二がマイクを避けてスッと座るところで
「落語自体は見せないつもりかな?」と
一瞬、思ったんですよ。
糸井 そういう手はあると思う。
西本 あえて見せないことで
「天才落語家のぶっ飛ぶ落語」
を表現するという。
永田 あの、昔、スピリッツで、
『俺節』っていう
演歌のマンガがあったんですけど。
糸井 はいはいはいはい。
西本 はいはいはいはい。
永田 「ぶっ飛ぶ演歌を歌う青年」
が主人公だったんですけど、
あれは、マンガだから成立するんですよね。
マンガからは実際の音が聞こえないから、
「ぶっ飛ぶ演歌」が成立して、
主人公の才能が説得力を持つっていう。
糸井 テレビだと、見せられるからね。
で、見せたんだよね、やっぱり。
あの、頭の固い審査員たちが拍手をするという
どんでん返しをもたらす落語を。
無理とはいえ、あえて表現したんだ。
オレはそこのところで
連れて行ってもらえなかったんだよ。
永田 ぼくは、「天才落語家」の落語として
聴いてましたね。
もう、なんでしょう、
去年のスペシャルからの流れも含めて、
「ここまでたのしくドラマに
 もてなしてもらったんだから
 もちろんこれは天才落語家の噺です」
みたいな感じで。
天才の落語として聞きますよ、と。
西本 そのふたつの観かたの違いは大きいですねえ。
糸井 大きい。
永田 超デカい。
糸井 思えばそういうことって
ほかのものでもさんざん経験してますよね。
たとえば、野球映画。
主人公のピッチャーがびゅうっと投げて
バシーンとキャッチャーが捕る場面。
これ、どれだけ野球経験があろうとも、
役者が投げてるフォームが
そのままふつうに映ったら、さめますよね。
ボクシング映画なんかもきっとそうですよ。
永田 あああ〜、そうだ。ほんとだ。
しかも、その話で、
新たなことに気づきました。
ぼく、野球映画だと、頭のなかで
「これはメジャーリーグの投手の球だ」って
変換しないような気がします。
西本 あ、野球ファンだから?
永田 そう。「そこは譲れない」ってことに
なるんじゃないかと思う。
だから、やっぱりぼくは、
落語ファンとして浅いんですよ。
糸井 そういえばぼくは釣りファンですけど、
『釣りバカ日誌』もダメなんですよ。
まったく同じ話になりますけど、
ようするに、釣りのシーンが
どうしても引っかかっちゃうんです。
ほんとうに釣れてないから。
糸の先に、あらかじめ魚がついてるのが
竿の動きでわかるんですよ。
これは、釣りを知ってる人にとっては
キツいんですよ。
あれが、魚としばらく押し引きして、
っていう釣れかただったら、
映画の観かたがぜんぜん違うんだけど。
永田 まえの回でさ、
にしもっちゃんが古田新太さんのツッコミに
「キックはもっと高く跳んで
 きれいに蹴ってほしかった」って
ほんとの芸人さんに言うようなこと
言ってたけど
あれもいっしょだよね。
西本 そうですね。
やっぱり前職(吉本興業)が
そういう職種でしたから。
なにしろ、漫才を生で観た数は
落語に比べて圧倒的に多いですから。
永田 あ、そういうので言うと、
ぼくは前職がゲーム雑誌だったから、
ドラマやCMのなかで
「ふだんゲームしてない人が
 ゲームをやっている場面」っていうのが
すっごい気に触るんですよ。
「そんなふうに顔の前で
 コントローラーを持ったりしねえよ!」
みたいなことになっちゃう。
糸井 ずいぶんまえに、
コピーライターが主人公の
ドラマがあったんだけど、
それは観られなかったなあ。
ありえないだろっていうことの連続で。
永田 ちょっとまえに、デリバリー版
「職業病」の特集をしたときも
そういう意見がたくさんありましたよね。
医者とか看護婦やっている人が
『白い巨塔』を素直に観られない、とか。
糸井 譲れないところがあるんだね。
格闘技好きにとっては
腕をひねっているシーンで
いくら「いてててて!」と言ってても
「それじゃ痛くない!」だとか言ってね。
西本 それはあるでしょうね。
永田 自分の分野がいろいろあるんですよね。
フィクションを、ファンタジーを観るときも
「ここだけはドキュメント性がなきゃダメ!」
っていうようなところが。
だから、今回の話でいうと、
落語を深く好きな人ほど、
最後のところで引っかかる可能性があるのか。
糸井 なにしろ「天才落語家」という設定ですから。
自分をよく思っていない落語協会の人を
落語の力でひっくり返すわけですから。
いや、岡田くんはとってもうまかったですよ。
でもね、たとえば落語っておかしなもので、
「二十代の子がやっている」というだけで
伝わらなかったりするんですよ。
まったく同じことをやってても
その人が72歳になったら
よく思えちゃうんだよ。
なんていうか、苔みたいなものがつくわけ。
西本 ああ、昔、糸井さんが言ってた、
「70歳のおじいさんが言うのと
 5歳の子どもが言うのとでは
 ぜんぜん印象が違うことば」
っていうのがありましたねえ。
糸井 ああ、あれか(笑)。
永田 なんですか、それ。
糸井 つまりね、
「女ってえのは、困ったもんですね」
というのを小学生に言われてごらんよ。
冗談にもならないでしょう?
ところが70歳がそれを言うと、
意味がきちんと出てくるんですよ。
おじいちゃんが、こう、
「女ってえのは、困ったもんですね」
永田 なるほどなるほど(笑)。
糸井 じゃ、それを25歳に言われてごらん。
30歳は? 40歳ならどう?
永田 どんどん印象が変わりますね。
糸井 うん。歳をとるにしたがって
同じことを言ってても
人が聞いてくれるということがあるんです。
志ん朝さんがなくなったときに
なんであんなに惜しまれたかというと
やってることに年齢が追いついて、
ものすごく聞けるようになったという
ところだったからなんです。
あんたもう上手になんなくていいよ、
もう、自然に歳をとるだけでみんながバンバン
ひっくり返ってくれますよ、っていうね、
オセロの角を全部押えた状態だったのに、
歳をとるまえに死んじゃったからなんです。
それで「えええ!」とみんなが悔やんだんです。
まあ、だからね、ドラマの話に戻ると、
演出のせいでも落語のせいでも
もちろん岡田くんのせいでもないと言いながら、
それでも言わなきゃなんない
ツラさがあるんですが、
やっぱり最後が乗れなかったんですね、ぼくは。
徹底的にリアリズムを求めているわけでは
もちろんないんだけど、
その、さっき永田くんがちらっと言った、
「あえて見せない」ということも含めて
「ふつうの落語じゃなく見せるデフォルメ」
があってもよかった気はしますけどね。
わかんないけど、ものすごく下手な落語を混ぜて
ものさしをわかりやすくするとか。
西本 あとは、目の前の大勢の客を
笑わせていくという表現もありますよね。
実際は審査員しかいなかったけれども
お客さんが入っているという設定にして。
審査員の反応よりも
お客さんがどれだけ受けているのかで見せる。
永田 ああ、なるほどね。
そういえば虎児の落語も、
お客さんの反応によって
優れてることを表現してるんだよね。
実際、あれがおもしろいかどうかって
ぼくらは判断してないもんね。
糸井 あとはまあ、泣かせてもいいですしね。
劇中劇にするっていう手もありますよね。
西本 あ、なるほどなるほど。
永田 なるほどなあ‥‥んん?
でも、あれですよね、いま言ったような、
「ぶっ飛ぶ落語に見せる工夫」っていうのは
この『タイガー&ドラゴン』を作ってる人は
当然、わかってますよね。
いまぼくらが言ったようなことを
選択肢としてずらりと並べたなかで、
あえていまのやりかたを選んだ、
っていうわけですよね。
糸井 そのとおりですね。
あの人たちは知っててああしてるわけですから、
それはもう、誰にも文句は言えないんです。
西本 そうですね。
永田 うん。
糸井 まあ、とにかく今回は、ストーリー上
重要な回だったというのはたしかですね。
けどあれだね、やっぱりこの段階に来ても、
ぼくはまだ竜二より虎児のほうに
肩入れして観ていますね。
それはなんか、おもしろいもんだね。
もう、親しんじゃったんだろうね。
永田 ぼくもそうですよ。
西本 ぼくもそうですよ。
糸井 虎児という人に惹きつけられてますよね。
あの、「じゃあオレが出て行く」って言って
西田さんが「さみしいこと言うんじゃないよ」
っていうところなんか、よかったよねえ。
永田 あ、今回、泣いたところはあそこです。
西本 そこはわかりましたよ。
「ハイここ、永田、泣く!」
っていうポイントでしたよ。
永田 またそれか!
西本 いや、でも、今回は
自分でもグッときてましたけどね。
永田 でもさあ、宮藤さんの書く話っていうのは、
ほんとうに、突然くるよね。
いつくるかわかんないから、
「うわ!」ってすぐ入っちゃう。
だって、今回のあの場面にしても、
時間的に早すぎるでしょ。
ふつうのドラマなら、
後半の8分目くらいに
満を持して出てくるようなシーンでしょ。
でも、序盤も序盤に出てくるんだもんな。
ちょっとおかしいよ。
2番バッターがノーアウト一二塁から
強引に引っ張って
ホームランするようなもんでしょ。
糸井 気が抜けないというか、
気持ちよく虚を突かれますよね。
笑わせにくるかと思えば泣かせるし。
だからぐんぐんくるんですよ。
小日向さんの、人情噺をやりながら
自分で泣いちゃうっていうのもよかったなあ。
ふたり あれ、最高。
糸井 まあ、諸君はお若いですから
きっと知らないでしょうけど、
笑いがこんなに肯定されていない時代の
落語っていうのは、ほんとうにあったんですよ。
ぼくも子どもながらにね、
笑える落語よりも、泣かせる落語のほうが
「なんだか本物っぽいぞ」って
子ども心に感じてたことがあったんですよ。
永田 あ、そうなんですか。
糸井 そうなんです。
つまり、林家三平はおもしろいけど、
これが落語の本流じゃないぞっていうのは
子どものぼくですら、感じてたんです。
そういう時代だったんですよ。
その象徴が、あの小日向さんの
役なんじゃないかと思うんですけどね。
小学生だったオレも、あの当時は
人情噺を聴いては泣いてたりしたんですよ。
西本 へええ。
糸井 「志ん生がいいよね」っていうようなことを
みんなが平気で言ったりとか
「三平再認識」みたいなことって
ホントに1970年以後のことですよ。
まあ、それはともかく、
今週はこのへんにしておきましょうか。
永田 そうですね。
西本 あっ、そうだ、『タイガー&ドラゴン』とは
違う話になりますけど、
テレビガイドとしては
触れておかなくてはならないことがあります。
なんと、『新選組!』の続編となる
単発のドラマが
制作されることが発表されました
糸井 よっ! (ぱちぱちぱち)
永田 五稜郭! (ぱちぱちぱちぱち)
糸井 で、誰が出るの?
永田 どこからどこまでの話?
西本 ‥‥知りませんよ、そんなこと。
糸井 お正月? 年末?
永田 何時間?
西本 知りませんって。
ふたり もーーーー。




モギコ
「ドラゴンドラゴン、
 せいしょうなゴーーン!」

あやや
「ドラゴンドラゴン、
 せいしょうなゴーーン!」

ゆーないと
「ドラゴンドラゴン、
 せいしょうなゴーーン!」

りか
「ドラゴンドラゴン、
 せいしょうなゴーーン!」

モギコ
今週は全員それか!

ゆーないと
「おまえじゃねえよリオデジャネイロ」
もちょっとよかったんですけど。

あやや
いやー、でも、今週はよかった。
観終わったあとに、
いい感じの余韻が残ったわー。
竜二を高座にあげるために、
虎児も、どん太も、めぐみも、
みんなで、一致団結するところとか、
マジ、感動巨篇だったーーー。

ゆーないと
うんうん! キレイだった!!
今回、ちょっと『木更津』的だった
気がするのはわたしだけ!?
交錯っぷりが。すてきでしたワ!

モギコ
竜二が破門になるまえの回想シーンのあと、
「つーか、敬語つかってたのかよ」
って虎ちゃんが言うところがおかしかった。
あと竜二の
「3回生まれ変わったってやんねえよ。
 ガルルルル」
つうか、「ガルルルル」って、
口にだすなよな。

ゆーないと
あれ、かわいかった!!
わたしもマネしてみよ。
ガルルーーー。

モギコ
マネすんな。

りか
ガルルルルルー。

モギコ
年長者がなにをやってる。

りか
きゃ☆

ゆーないと
地味な定食屋みたいなところで流れてた
テレビの
「おもしろトリオ」とかいうやつ、
すっごいくだらなそうで、
もっと見たかった‥‥。

あやや
きよし、なんかおいしいよね!
ん? きよし? ヒロシ?
きよし? やすし?

モギコ
やすしは明らかに違う。

りか
りかのファッションチェーーック!
小百合ちゃんの小紋の着物かわいい。
そして似合う!
メグちゃん、
イヤリングと携帯ストラップがおそろい!
おしゃれ〜〜。

モギコ
んん? 今回ヅラネタあった?

ゆーないと
篠山紀信に浅草で写真撮ってもらいたい。
ってところで、ヅラの後ろ姿の
紀信さんらしき人映ってましたが‥‥
あれは、関係ない?

3人
ああっ! それかも!









=
最後の歌のところで、
みんなが現代の服装と
江戸の着物に交互にかわるとき、
リサちゃんがどんな着物をきているのか
見ようとして気付きました。
右から2番目にいる「よしこ」のママさん、
音楽のノリがすごくいいのです。
服もラメです。
ちょっとゴスペルシンガーみたいでした。
(lysmet)

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今後の楽しみとして、
実名でドラマに出てくる役者さん
(池袋WGPの川崎麻世・
 木更津キャッツの哀川翔)
が今回もあるのか、
それは誰なのか気になってます。
今回もあるといいな〜。
(おじみか)
2005-06-02-THU

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