第9回
「粗忽長屋」を観て




永田 お疲れさまです。
西本 お疲れです!
糸井 で、どうなんですか?
永田 たったいま第9話を観おわったところですが、
なぜ我々があわてているかというと‥‥。
西本 どうやらそろそろ終わっちゃうぞ、
っていうことに突然気づいたからで。
永田 だって、いまの予告編、
どう考えても「品川心中」でしょう?
糸井 それっぽかったよねえ。
「品川心中」が最後のほうにあると、
ぼくは人づてに聞いてたもんですから。
西本 まさか、11回で終わり? と。
だとすると、来週がラス前?
永田 大慌ての男子部です。
糸井 な〜んの根拠もなく、
1クールだから13回くらい?
って思ってましたからね。
西本 とくに資料をもらっているわけでもないですし。
永田 ていうか、ただの視聴者だからね。
西本 ときどき誤解されるんで言っておきますが、
ぼくら、放送される金曜の夜10時まで、
な〜んにも知らない状態です。
永田 ていうか、ほんと、ただの視聴者だからね。
糸井 まあ、『離婚弁護士』のときからそうですけど、
放送時間の5分前くらいになって、
慌ててテレビの前に集まるというね。
西本 おーいはじまるぞぉ、なんつって。
永田 ていうか、ほんとに11話で終わり?
糸井 オレの知っている限りでは、
1クールの定義としては13回なんだよ。
でも、もう時代が違うかもしれないね。
西本 『離婚弁護士』も11話で終了したよね。
永田 ああ〜、そうだった。
糸井 わかった!
最近は番組の改編期にかならず特番やるから、
それで1〜2話、削られちゃうんじゃない?
西本 あ、なるほど。
糸井 こう、芸能人がいっぱい出るクイズとかで、
紳助・竜介みたいなのが出て、
「アンサーチェック!」とかやるから、
1クールのうち数回が食われちゃうんだよ。
西本 なるほどなるほど、
とうなずきたいところですが、
あの、紳助さんはともかく、
竜介さんは出ないですから!
永田 (爆笑&拍手→西本)
西本 観てみたいですけどね、
紳助・竜介の「アンサーチェック!」は。
ふたりしてつなぎ着てね。
永田 (爆笑&拍手→西本)
糸井 ‥‥ま、そういう
ツッコミを待ってたんですけどね。
ふたり ぜってーウソ!
糸井 わざとだよ、わざと。
永田 いや、いまのは違うわ。
淀みなくしゃべってたもん。
西本 ええ。天然でしたよ。
糸井 どーでもいーじゃないか、そんなことっ!
永田 キレた。
西本 キレた。
糸井 ともかく、たいへんですよ。
なんだかのんびりしたら、
ぼちぼち終わりですよ。
次週は「品川心中」らしいですよ。
いよいよクライマックスですよ。
正念場です。Boy's place!
永田 ‥‥あ〜、ハイハイ。
西本 ‥‥Boy's place?
それ、わかんねえ。
永田 正念場。
西本 え?
永田 しょうねんば。
西本 え?
永田 少年、場。
ボーイ、プレイス。
西本 ええーーーーーーーっ!
‥‥永田さん、そりゃマズいでしょう。
永田 オレが言ったわけじゃないだろ。
糸井 永田くん、そういうダジャレはどうかと思うな。
永田 わ、このパターンか!
西本 がっかりですよ。
けっきょくあんたもダジャレか。
糸井 がっかりですね。
もっとキレのある人だと思いましたけどね。
永田 と・に・か・く!
風雲急を告げてきましたよ!
糸井 約2週間ぶん、読み違えていたものですから、
いま強烈な、さみしさを感じています。
せっかく盛り上がってきたのに‥‥
ああ、落語ブーム、終了!
ふたり もう、終わりか!
糸井 梅雨入りを待たずに落語ブーム終了!
永田 『はじめての落語。』を出してる
うちがそういうこと言っちゃダメ!
西本 ピークを迎える前にブームが終わる!
永田 にしもっちゃんはどうして
すぐそっちに乗っちゃうんだ。
西本 愉快なほうへ動きます。
糸井 だってさあ、これからこのドラマで
落語ブームがさらに盛り上がっていく
予定だったじゃないですか。
西本 もしかすると、落語協会も
1クール13回で
計算してたんじゃないですかね?
永田 じゃあ、いまごろ落語協会も大慌て?
西本 ええ。きっと13回のつもりで、
いろんなイベントを
仕込んだりしてるしているはずです。
糸井 えー、落語業界のみなさん。
落語ブームは全体的に2週間早まりました!
永田 前倒しでお願いします!
西本 前倒しでお願いします!
糸井 思えば、タイトルコールで
鶴瓶さんが高座に上がってるのも、
終わりを予感させるよね。
西本 「やばい、ぼちぼち終わるぞ、
 鶴瓶さん、上げとかなきゃ!」って。
糸井 そうそうそう(笑)。
永田 その意味では、
ほぼ日テレビガイド美術部の
べっかむ3もきっと大慌てですよ。
脇役の人ばっかり描いてて
主要人物を意外と描いてないですから。
西本 先週、若頭とか
描いてる場合じゃなかったかも。
糸井 「わかがしら」じゃなくて、
「わかあたま」ね。
永田 おお。
西本 見事に話がドラマに戻ってきましたね。
永田 と、いうわけで、ぼちぼちいきますか。
糸井 『タイガー&ドラゴン』!
ふたり あんたが言うのか。
糸井 ここで、クレイジーケンバンドのテーマ曲が
流れるようにできませんか?
永田 できるできない以前に、イヤです。
西本 えっと、今回は『粗忽長屋』でした。
糸井 『粗忽長屋』っていう噺は、いい噺ですね。
永田くんは、好みでしょ?
永田 ああ、もう、大好きですね。
ドラマのなかでも言われてましたけど、
落語以外じゃ成立しないですからね。
そういう「○○じゃないとできないもの」
っていうのがぼくはすごく好きなんです。
西本 最初の、西田さんの落語だけで
十分におもしろかったですよね。
永田 そうそうそう!
糸井 個人的には、今回、
劇中劇の『粗忽長屋』よりも
西田さんの落語のほうが
おもしろかったくらいですね。
永田 行き倒れの現場へ行ってからの
落ち着いたやり取りが
とくによかったですよね。
糸井 よかったねー。声をはらない感じでね。
あらためて、『粗忽長屋』は
いい噺だなあと思いましたよ。
西本 その『粗忽長屋』を現代ドラマと
重ねていくんだから
つくるほうはたいへんですよね。
糸井 いや、今日のは、
ほんとにたいへんだと思うんですよ。
なにしろ、とうとう、死人を出しましたから。
永田 それ、重要ですよね。
糸井 ものすごく重要です。
たぶん、そうとう打ち合わせをして
決断したんじゃないかと思いますけど。
『粗忽長屋』をやるからには
さけられない問題ですからね。
出しましょう!
ということになったんでしょう。
よく乗り越えた、という感じがしましたね。
永田 むつかしいですよね。
なんせ、人を殺めちゃうわけで、
重すぎても軽すぎてもダメですから。
糸井 そのへんの手触りとしては、
『ファーゴ』の味わいを思い出しました。
あの、映画の。
西本 コーエン兄弟の。
糸井 そうそうそう。
死体かついで雪の中を行くみたいな。
永田 死人を出すっていうことに
すごく気をつかってる気がしましたね。
殺されるヤクザの人間味を消してたり、
あえて笑いを入れて軽くしてたり、
虎児に「落語のために」っていう動機を与えて、
なんとなく方向性を予感させてたり。
糸井 死人が出る前に、ある程度
暴力を入れ込んでるのも、わざとですよね。
永田 関係ないドラゴンソーダの店が襲われてたり。
西本 あとは、あれですよ、劉さんの出血と
「今回はシャレにならないよ」という演技。
永田 ああ(笑)。
あれは、切迫された感じと
笑いを両方出してた。
西本 チビTの血のでかたもヤバかったですけど。
糸井 人を殺すという重さの代償を
いろんなところでちょっとずつ払っている
印象がありましたね。
あと、大きな流れとしては
先週、1回、バイオレンスを
入れてるのも効いてるんじゃないかな。
永田 あ、なるほど。
糸井 先週と今週とバイオレンスを増やして、
テンションを調整してますから。
バイオレンスを増やしているということが
虎児を走らせる原動力として
ドラマの反対側でくすぶってるんですよ。
ヤクザの世界から落語の世界へ
虎児という弾丸を飛ばすための
火薬ですよね、いわば。
西本 その火薬に火をつける役割が
いっこく堂さん演じるヤスオなんですね。
ふたり いっこく堂じゃないってば。
西本 先週の「いっこく堂」発言には、
意外にたくさんの反響がありました。
永田 けっこう、共感してる人が多かったね(笑)。
西本 ちなみにほんとうの名前は北村一輝さんです。
永田 あの人、すごかったなあ。
すっごい憎たらしいところと
憎めないところと、両方出してたもんね。
西本 器用ですよね。
同じ役なのに、幅がすごく広い。
狂気もあるし、コミカルなところもあるし。
状況によって声まで変えてましたね。
糸井 あれ、声が。
西本 え?
糸井 声が、遅れて。
永田 え?
糸井 「声が」「聞こえて」「クルよ」。
西本 ‥‥‥‥。
永田 ‥‥どうしても言いたかったんだな。
西本 しかも、それ、
先週のオレのネタじゃないですか!
糸井 だって「声が」って言うから、つい。
永田 ‥‥どうしても言いたかったんだな。
糸井 「声が」「遅れて」「聞こえて」「クルよ?」
西本 「声が」「遅れて」「聞こえて」「クルよ?」
永田 もういいって。
糸井 役者さんの話でいうと、
「ウルフ商会」の組長も
よかったですねー。
西本 いい味出してましたね。
糸井 あの人は、橋本じゅんさんといって、
ぼくは舞台で観たことがあるんですけど、
ものすごくおもしろいんですよ。
だから、今日はほんと、しみじみ思ったけど、
テレビって、いつの間にか
小劇場に乗っ取られてるんだね。
永田 乗っ取られてる? というと?
糸井 あの人いいね、この人もいいね、
って感じる人って、
みんな小劇場の人たちじゃないですか。
『新選組!』でもまさにそうでしたよね。
小劇場系の人たちとか、モデルさんとか、
テレビじゃない人たちが
いまのテレビをおもしろくしてるんですよ。
西本 クレイジーケンバンドにしても、
テレビ的な活躍とは無縁の人たちですもんね。
糸井

そうですよ。マスに対して、一見、
「こういう食べやすいメニューでお届けします」
という既製品をお届けしてるように見えるけど、
原料はモロッコだのチュニジアだのから
買って来ているみたいなことですよ。
思えばその構造ってハリウッドですよね。
ハリウッドってどんどんアングラの人を入れたり
アメリカにとって外国人のようなものを入れたり
違う血を混ぜながら進んできてて、
気がつけば自分たちが生みだしているものって
いつの間にかない、
みたいな状況じゃないですか。
あれと同じことが日本のテレビにも
起こっているように思うんです。
たとえば『新選組!』では、
三谷さんは意識的にそれをやってましたよね。
「こういう人、いいでしょ」と抜擢して、
ぼくらがいちいち感心して、
出された立場の八嶋さんなんかは、
「ぼくらも助かります」と言うわけですよね。
あの、意識的にやってた循環が、もう
いまは無意識のうちにできあがってるような
状況になっちゃってると思う。

西本 テレビという世界で生まれて育ったものには、
テレビ自体はつくれないんですかね。
糸井 テレビがテレビそのものを育てる時代は
テレビがまだ新人だった時代なんだよ。
いまのテレビはもう、
起承転結の転から結にあたるあたりを
通過しているわけですから。
永田 そうなると、これからのテレビには、
優秀なプロデューサーが
より重要になってくるんですかね。
目のいい人、見抜く力のある人がいて、
その人が、三谷さんとか宮藤さんとか、
キーになるような人を巻き込んで、
テレビを新しくしていく、というように。
糸井 まあ、それは
いまにはじまったことじゃないんです。
たとえば、源泉のひとつは川崎徹ですよ。
川崎徹がCMに
東京乾電池とかを使いはじめたんです。
ふたり あああー。
糸井 北村想さんがやってた
彗星'86っていう劇団の人とかね。
そういう、「テレビでお馴染みじゃない人」を
CMに乗っけたんですよ。
それがあの時代のCMやテレビを
おもしろくしたんです。
永田 当時、そういうのをテレビで観て、
「わあ、へんな人たちだなあ」って
妙な感覚があったのを覚えてますよ。
西本 そういえば、いくよ・くるよさんが、
自分たちの知名度が一気に上がったのは
川崎徹さんのCMに出てからだって
言ってました。
糸井 つまり、テレビという畑を
15秒ずつ耕していったようなもんですよ。
それがいまのテレビの根っことして
全体に広がったりもしてるんです。
三谷さんや宮藤さんが耕したものも
とっくに広がっていってますよね。
いまや、山南さんこと堺雅人さん
月9のドラマにふつうに出てるじゃないですか。
山南さんというか堺さんが、こう‥‥。
(‥‥急に腕を組み、笑顔をつくる)
永田 やんなくていいですよ、それ。
糸井 「沖田クン、エンジン全開だ」
永田 意味わかんない。
西本 堺さんのモノマネといえば、
松村邦洋さんですが、
新ネタはすごいことになってますよ。
『エンジン』バージョンのネタは
ドラマを知らなくてもなぜか爆笑です。
6月25日の深夜にオンエアされる
「ほぼ織田信長のオールナイトニッポン
 〜本能寺の変スペシャル〜」

たっぷり披露されると思いますので
『タイガー&ドラゴン』ファンの人も
『新選組!』ファンの人も
どうぞおたのしみに。
永田 その企画、ほんとに
実現するとは思わなかったなあ。
西本 いまページで流している予告編を
収録したときに立ち会ったんですけど、
ほんとうにすごいですよ。
筒井道隆演じる松平容保公が
延々しゃべったりしてますよ。
永田 だいたい、そういうモノマネが
成立するっていう時点で、
すでに浸透してるってことだよね。
紅白に出るような人のマネじゃなくて、
「山南さんのマネ」とか「捨助のマネ」を
みんなが聞きたがってるっていうことだから。
西本 そうっすね。
まあ、それがゴールデンで
毎週放送できるほどではないにせよ、
番組として十分成り立つんですから。
糸井 一過性のものじゃなくて循環ができてますよね。
小劇場系の人を、テレビドラマで
カタログ的に観た人のうちの何人かが
劇場に足を運ぶ、というような。
オフブロードウェイが
オフオフブロードウェイを要求したような
おもしろい時期が東京には来てますよね。
永田 そのカタログが
『タイガー&ドラゴン』だったり‥‥。
西本 『新選組!』だったり。
糸井 また、どっちも、
現時点での視聴率としては
トップになってるわけじゃないというあたりが、
過渡期を表してますよね。
永田 あー、なるほど。
糸井 ちょっと大きな枠の話になっちゃいました。
ドラマに戻りましょうか。
今回、じつは意外に泣かせましたよね。
西本 はいはいはい。
永田 また変なタイミングで泣かせましたよ。
ほんとに油断ならない。
おでん屋のところとか、またしても
「おいおい、準備できてないよ。
 突然泣かせんなよ」っていう
泣かせかたで。
糸井 「おれがいなくなったら悲しがる人がいる」
っていうあたりね。
西本 しかも泣かせることと
屋台破壊をクロスさせて。
糸井 必ず、混ぜるよね。
泣かせる場面に笑わせることを。
ほかにも、もうひとつあったじゃないですか。
永田 あったあった。ええと、ほら‥‥。
西本 「ツープラトンだよ」ってやつですね。
糸井 それそれ。
永田 それそれ。
西本 あの場面、永田さんグッときてましたよね?
永田 ていうか、あそこはふつう、くるでしょう。
「おまえを引き留める理由はひとつだよ。
 ‥‥さゆりちゃんが泣いてるからだ」って。
いいなあ。泣けるなあ。
西本 ああいうの好きですよね。
ラブを言わずに愛を語る、
みたいなこと。
永田 さゆりちゃんシリーズっていうのをさ、
いままで、ちょっとした
遊びのように扱っておいて、
それをほんとうに大事なところで
使うっていうところがしびれるんです。
だって、林家亭をやめようとする虎児を、
どん兵衛師匠が引き留める理由が
「さゆりちゃんが泣いてるから」なんだよ?
なんてかっこいい。
糸井 で、すぐに鶴子もかぶせて泣かせて‥‥。
西本 「ツープラトンだよ」と。
永田 いいなあ。
泣けて笑えて、笑えて泣ける。
糸井 ツボの場面だったんだね。
西本 芸人さん好きのぼくとしては、
鶴瓶師匠に頭の高座で
「オレは枕がおもろいねん」
と言わせるところがツボでしたね。
糸井 ああ(笑)。
西本 実際、枕がおもしろくって
枕を続ければウケることを知りつつ
高座で古典をやり続けてる鶴瓶さん、
という姿を知ってると
二重三重におもしろい。
糸井 なるほどね。
永田 あと、あそこで、
すっごいどうでもいい話のようにして
「わかあたま」のことを言うけど、
最後のところできちんと
それが誰だかわかるようになってるのも
丁寧だなあと思いましたね。
このドラマって、なんていうか、
伏線が張り巡らされていて見事、
っていうんじゃなくて、
「どうでもいいことだと
 思ってたことがじつは伏線!」
っていうことに驚かされますよね。
西本 「かしこまり〜!」ってのも
まさにそうですよね。
永田 そうそうそう。
西本 関西系やくざの妙なノリを
出してるだけなのかと思ったら、
「かしこまり〜!」がないと
最後成立しないっていうくらい
重要なことばでしたからね。
お笑いミステリーの伏線ですよ。
永田 あと、ヤスオが
「なんだか知らないけど金を任される」
って序盤で言ってるのも、
あの、帽子のやくざに
ハメられてたってことでしょ?
「なんか出身地の話でもして時間稼げ」
って虎児がメグミに出した指示が、
ヤスオが三重に帰ることにつながってるし、
細か〜い、伏線というよりは
小さな流れみたいなものが、
1時間のなかにガーッと詰まってるんですよね。
ていうか、これって1回、正味45分くらい?
ものすごい凝縮ですよね。
2時間ドラマぶんくらいの内容は
余裕であるでしょ。
糸井 濃かったですねえ。
ムダな部分がバッサバッサ切り落とされてる
感じがして、気持ちよかったですね。
西本 宮藤さんが、
「これじゃ尺(時間)が足りない!」って
思いながら脚本を書いてる感じですよね。
永田 でも詰め込む要素は減らしてないというか。
ぜんぶ入れてぐしゃっと圧縮してる感じ。
その粗っぽさが、妙に贅沢な感じがする。
糸井 その、短い時間の脚本のなかに、
いろんな伏線を入れて、小ネタも混ぜて、
最終的にうまく絡み合っているというのは
ほんとうにすごいことだと思うんですけど、
それって「ワープロ以後の推理小説」と
同じ感じがしますよね。
つまり、いまは
書いたり消したり貼ったりが
昔よりも簡単にできるんですよ。
永田 はっはぁー。
西本 なるほど。なるほど。
糸井 原稿用紙に書いている人と、
ワープロで書いている人では
つくりかたというか、運動量みたいなものが
変わってきちゃうんですよ。
「はじめのところでこいつが
 ちょっとあやしいセリフを言っておけば
 犯人とからんでたといえるな」
なんてことをあとから思いついたとしても、
原稿用紙に書いている人だと、
「こいつのところ
 ぜんぶやり直しになっちゃう!」
って思うんだよ。
枚数に制限がある場合は
計算し直しになっちゃうし、
写植でやってたときは、
校正の段階でそれをやっちゃうと
どんどんずれていくし。
ところがワープロ以後の人は、
「3枚目のところでちらっと
 あやしいセリフを言わせちゃおう」
みたいなことがかんたんにできちゃう。
未来から過去をいじれるんですよ。
もちろん、原稿用紙の人だってできるし、
ワープロの人だってたいへんなんですけど、
なんていうか、かかる負荷が違いますよね。
永田 動ける人は、それを何パターンもつくって
くらべたりできますもんね。
任天堂の岩田(聡)さんが、
『社長に学べ!』のなかで
「トライ&エラーの回数が増えるほど
 進歩する速度が速くなる」
って言ってたことを思い出します。
糸井 そういうことですね。だから、
ロジックを整理するという点については
ワープロ以後はものすごく進化したんですよね。
ぼくらは原稿用紙時代の人だから
そこまで丁寧にやると
うるさくなっちゃうんですよね。
でも、どんどん細かくやるのを
たのしんでいる人がいるというのは
おもしろいんです。オレ個人としては、
そんなにしなくてもいいというか
もっと矛盾しろとも思うんですけど。
西本 うん、うん。
糸井 だから、落語をつくっていた時代の人たちは
もっと矛盾をたのしんでたと思うんですよ。
見事に整合性がとれてるね、
というだけになると
そのためのゲームみたいになっちゃうんだよ。
永田 あああ。こないだ新聞で読んだ、
宮藤さんと鶴瓶さんの対談で
それに通じることを宮藤さんが言ってて。
宮藤さんが、鶴瓶さんに、
「落語って、サゲのところが
 めちゃくちゃなものがけっこうあって、
 サゲがよければもっといいのにと
 思うことがある。
 あれは、直しちゃいけないんですか?」と。
糸井 ああ、なるほどね。おもしろいね。
永田 ワープロ以後の感じですよね。
そのスタンスでどんどん練り込んで、
ものすごく自分の個性を混ぜて料理したのが
『タイガー&ドラゴン』なわけでしょう。
つまり、矛盾をたのしむ時代のものを咀嚼して、
自分なりの整合性を持たせて、
さらに冗談や、人情や、現代を混ぜている。
糸井 そういうことですね。
あらためていうまでもないですけど、
矛盾と整合性の、どっちかが
正しいというわけじゃないですから。
たとえば、村上春樹さんなんかは
ひじょうにロジカルな考え方をする人で、
彼が言ったことでおもしろかったのは、
「糸井さんの書くものは、最初
 『こういうものを書きたいんだろうな』
 と思って読んでいくんだけど、
 だんだん違う話になっていく。
 それがうらやましい」と。
西本 あああ〜、なるほど(笑)。
糸井 まあ、そのあたりは、
「こらえ性のない人」が
やむをえず出してしまう、
味みたいなもんですけどね。
でも、ぼくが原稿用紙の人だったということと
無関係じゃないとも思いますよ。
永田 ちなみにお笑いの人の
脚本というか、ネタは、
どうやって書いてるんですか?
西本 笑いの場合は、
台本というのがあるにはあっても
舞台でどんどん変わっていきますからね。
まあ、いまはワープロで書くんでしょうけど
手書きのものをよく見た印象がありますねえ。
新喜劇のプロットとかも手書きでしたもん。
永田 へええ。
糸井 爆笑問題の太田くんが
筑紫哲也のモノマネをするじゃない。
あれの原稿を見たことがあるんですけど、
手書きでしたよ。待ち時間に、
お菓子を食べてるような場所で
そこらへんにある紙に
ふつうに書いてたよ。
永田 そういえば、爆笑問題は
ワープロっぽさがないかもしれない。
糸井 まあ、ふだんの原稿なんかは
パソコンで書いてるっていう話でしたけど、
太田くんの話も、整合性っていうより、
どこに転ぶかわかんないタイプだよね。
あの筑紫哲也のモノマネにしても、
さんざん勝手なことを言っておいて
「今日のコラムでした」みたいな
ウソのまとめをするわけだし。
永田 あれはたしかに落語っぽい、
っていうか、太田さんって
もともとすっごい落語ファンですしね。
糸井 ああ、そうだったわ。
西本 あの、おもしろいものって
そんなに説明ができるようなものだったら
いけないんじゃないかと思うんです。
こちらが説明できないくらいに
「なんだこれは!」と思うものじゃないと
おもしろくないんだと思うんですが。
とくにぼくは、個人的に、
説明されすぎるとおもしろくないんですよ。
糸井 鶴瓶さんとかさ、ほんとうに、
なんでもない話をするじゃないですか。
でも、おもしろいじゃないですか。
あれはすごいですよね。
永田 なんだっけ、「たまごうどん」の話‥‥。
糸井 ああ、あれがいい例ですね。
うどん屋に入って、
「たまごうどんください」
って鶴瓶さんが言ったら、店のおばちゃんが、
「たまご嫌いやったら、あかんよ」
って言ったっていう、ただそれだけの話。
それを鶴瓶さんがしゃべると
なぜかおかしくてしかたがない。
ふたり いいですねえ。
糸井 いいよなあ。






モギコ
「べんしょう〜! べんしょう〜!」
おでん屋、いい顔してた!

あやや
「魔法がとけちゃう〜!」
鶴子さん、いい顔してた!

りか
「出されたら食うだろ」
ヤスオ、動物。きゃ☆

ゆーないと
「♪母さんが〜よなべ〜をして〜
 てぶくろあんでくれた〜
 こがら〜しふいて〜
 ららら〜ららららら〜」
「ららら」が半端!!!
と思ったら、
あたしもその先わかんないわ!

モギコ&りか
わかれよ。

あやや
ハイハイハ〜イ! ついでに質問!
男子部も泣いたり笑ったりしてた
虎児を引き留める場面ですけど、
「ツープラトン」ってなに?

りか
なんかプロレス関係だよね。

ゆーないと
プラトンがツー?
プラトン×プラトン?

モギコ
たしかふたりでいっしょに
攻撃することじゃなかったかな?

あやや
ふたりって誰?

ゆーないと
だから、プラトンとプラトンっすよ。

あやや
兄弟? プラトン兄弟?
なにプラトンと、なにプラトン?

ゆーないと
‥‥プラトン茂とプラトン猛?

モギコ
宗兄弟かよ。

りか
恒例、りかのファッションチェーーック☆

あやや
よっ、待ってました!

ゆーないと
いいぞ、ねーちゃん!

りか
さゆりちゃんの着物は、
竜二の真打昇進をかけた落語会のときに
着てた着物とおんなじ!
ここぞというときの勝負着物なのかも!

3人
細かっ!

りか
一方、ツルコさんは
すんごいかわいい服着てたねー。
ぴっちりしすぎて、
胸元にどっきんちょ☆

あやや
「どっきんちょ☆」って‥‥。

ゆーないと
青年漫画誌のグラビアに
そえられた言葉じゃないんですから。

モギコ
ところでファッションといえば
ふだん竜二が着てる服って、
ドラゴンソーダじゃないよね?

ゆーないと
あーーーそうかもーーーー。
けっこうふつうですよね。
洋服屋は自分のところの洋服
着なきゃいけないはずなのに!
やっぱり自分でも着られないの?
ださいと思ってるの?

あやや
そういやリサちゃんも着てないかも!

りか
デートのときは着てたっぽかったけどね。

モギコ

そしてもうひとつ言っておきたいことは、
ウルフ商会の組長役の橋本じゅんさんは、
『新選組!』の第4回
「天地ひっくり返る」で、
山口一(のちの斎籐一)に、
借金をとりたてられ、
桜田門外の変で散っていく水戸浪士、
広岡子之次郎を
演じていたということです。


あやや
い、いま、なんか、
どさくさにまぎれて‥‥。

ゆーないと
マニアックな
チョンマゲ情報が入ったような‥‥。

モギコ
気のせいです!

りか
ついでにいうと、
お店を荒らされたあとで、虎児に
「あんたやっぱヤクザなんだよ」
っていう竜二の怒り顔が
すっごいかっこよかった!!
録画を一時停止して
じ〜〜〜っと見ちゃった☆

あやや
い、いま、またどさくさにまぎれて‥‥。

ゆーないと
マニアックな鑑賞のしかたをしてる人の
情報が入ったような‥‥。

りか
気のせい☆

ゆーないと
ラストも近いっつーことで
まじめな感想ですけど、
「俺のかわりはいねぇんだよ!」
っていう虎児に泣けた!
もう、虎児!
変わったね〜あんた変わったよ〜。
そうだよそうだよ、
「俺がいなくなったら
 悲しむ人たちもいるんだよ」
その通りだよ。

あやや
そうなんだよね!
虎ちゃん、確実に変わったんだよ!!
ヤスオが、最後、虎児に
「おまえは、もうヤクザじゃねえんだぞ。
 噺家がつかまったら、マズイだろ」
って言うじゃん。
もう、すっかり林屋亭一門だね〜〜。

ゆーないと
一方、竜ちゃんは
どんどん落語に近づいてきてますねー。
なんか、すごいうれしい。

あやや
そうそう、虎児から
「お前が来ないと、
 噺のオチがつかねえ」って
言われて、うれしそうに、
ホイホイ行っちゃう竜ちゃん。
生粋の噺家さんなんだねえって思った。

モギコ
もうちょっとで終わっちゃうのかー。

ゆーないと
残念。

あやや
残念。

りか
残念。


4人
はーーーー。









=
くだんの「いっこく堂」さんですが。
彼は、北村一輝さんですよぅ。
私は大河ドラマ『時宗』で北村さんを知りましたが、
実は「男前のいっこく堂だなぁ」と思ってました!
(黒乃)

=
北村一輝さん‥‥彼は我が家では
「悪いいっこく堂」とよばれています。
(よしこ)

=
先日、『戦国自衛隊1549』の試写会に行ったんですが、
「ニセいっこく堂」の北村さんがいい役で出てました。
(あみ)

=
先日デパ地下の魚屋さんでの出来事。
その日の夕ご飯の食材を選んでいたら、
いつものように、威勢のよい
魚屋のおじさんの掛け声が聞こえてきました。
「ヘイ、らっしゃい、らっしゃい〜、
 安いよ、安いよ〜。
 ハイ、タイガー、タイガー、
 ブラックタイガー(エビ)!
 安いよ、安いよ〜‥‥」
もう、聞いた瞬間、
「ブファァッ」と、驚きと笑いが。
今でも思い出し笑いしてしまうネタです。
(ヒロコ)

=
宮藤官九郎作品(ドラマ)のDVDは
池ゲー以外全部持っていて、
職場のみんなに見るよう強要し、
ファンを増やしてきましたが、
「DVD借りるから本放送見なくていいや」
などど言われてしまい、
逆に視聴率を下げてしまう犯罪者です。
『タイガー&ドラゴン』も
「どうせ買うんでしょう、見なくていいや」
などと言われ
「買わないね、本放送を見な」
と言い続けていました。
本当に買わないつもりでしたが、
対談を読むとやはり細かいことを
忘れていることも多く、
もう一度見たい、確認したいと思うことが多々あり、
結局みんなの思惑通り
DVDを買うことになるでしょう。
そしてまたこの面白さを分かち合いたいなどと
貸しまくることになると思われます。
また負けたって感じです。
(gyu)

=
私は普段、家でテレビのチャンネル権がないのですが、
金曜日ばかりは違います。
10時になると、さっとチャンネルをかえて、
すかさずリモコンを隠します。
いつも一緒にみることになる父が、
「くだらないから変えろ!」というからです。
やっぱりもうすぐ定年になる、
父の世代はドラマはつらいよねー、
と思っていました。しかし!
今回はすごいです。
落語というなじみ深いテーマのせいでしょうか、
父がドラマをみて笑っています!!
先週もつるべさんの落語のシーンとか、
西田さんの歌のところとか、大笑いしていました。
いや、先週といわず、毎週楽しんで観ているようです。
関西生まれの父ですから、
お笑いが好きなんだと思いますが、いやはや、
若者のみに人気があるようにみえる
くんくさんのドラマで父が笑うとは
思いもしませんでしたので、
よいお知らせとして報告いたします。
くんくさんのドラマって、
表現はいまどき若者風ですけど、とっても王道で、
じんとくるし、素直な人間らしい方なんだろうな、
と思ってみてます。
(シオリ)

=
「粗忽長屋」の回で、西田敏行さんが
「そこにすわんなさい!」と言ったとき、
「ガンバレタブチ君」の
「ミヨコ! そこにすわんなさい!」
「すわってるじゃないの」
というやりとりを思い出しました。
(みゆみゆ)

=
座談会でお話しされていた、
「新婚コントは始めた方が妻」の件ですが、
女性もまったく同じです。
以前、数人でリゾート旅行に行ったとき、
ちょうど部屋がなくて、
まちがって最上階のいいスイートに案内されました。
私たちは大喜びで部屋を探索したりしたのですが、
そのうちに誰かがシャワールームをチェックしながら
「おい、早くこっちおいでよ、
 一緒にシャワー浴びようぜ」
と男になっていました。
そして、どことなしに宝塚っぽくなっていました。
(きょうこ)

=
今から30年前、小学生5、6年生のころ、
落語が好きな男の子がいて、
お楽しみ会とか転校する子の送別会だとかに
必ず落語を披露してくれていました。
そのネタが「出来心」だったと今回わかりました。
なつかし〜。糸井さんの発言
「誰かが『裏は?』みたいなことを言ったときに
 『花色木綿』って返すような
 くだらないやり取りができておもしろいんです」
そうです。やっていました。私たち‥‥。
「裏は?」「花色木綿」
また、年甲斐もなくやろっと。
(たかこ)
2005-06-16-THU

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