第11回 代理店に関して、まじめにきいた
広告というものについてや、、
企業との間でどうクリエイティブを出すかについて、
アートディレクターの副田高行さんにたずねながら、
今回は、いまの広告というものには避けられない、
代理店(企業とクリエイターの間をもつもの)について
さらにききはじめています。
「1番最悪な広告は、曖昧な感じだと思う。
ほとんど読まれないような広告をつくっていて、
それに何千万もかけたりとかしているもの、です。
ぼくらが製品を買ってる金額のなかに
宣伝費が含まれているわけでしょ?
すべての広告は
ぼくら生活者(消費者)が生み出している。
世の中は不況だし、淘汰されていくと思うんだけど、
それでいいと思う。いい企業が残ればいいし、
いい製品が残っていい生活ができればいいと思う。
そんな短絡にはいかないかもしれないけど、
基本的にはそう考えているわけです」
代理店とか宣伝部長よりもトップに話した、
というのが副田さんのまっとうさを感じました。
ただ、それでもやはり自分がやりたいのと違う
無難な線にまとめられそうなときも
多いと想像しますが、そのへんは、どうでしょうか?
「今は代理店が仕切っているから、
代理店がだめだったら、だめなわけですよ。
糸井さんにしても仲畑さんにしても、
西武やTOTOをやるときに、以前は
代理店を介さず直接やっていたよね。
でも今は代理店が入って商売やっているから、
製作者とクライアントがダイレクトじゃない感じで、
そこがすごくマイナスのシステムというか、
なんでこうなっちゃったのか、
何年か前はこうじゃなかったのに、というか。
ぼくなんかも代理店を通した仕事が多いんだけど。
そうじゃない仕事もちょっと増えてきました。
マイナーだったりするといいんですよ。
地方の場合だと
直接その社長とかにプレゼンテーションしたり」
例えば広告以外の世界でも、
漫画での漫画家と出版社の関係でも
無難なものを出さざるを得ないときもあって、
しかもつくる側が低い立場になってもいます。
副田さんは、そういういま、なにを考えているのかな?
「だからちっちゃいところもいいかな、と思います。
そういうことがスムーズにいくから。
大企業になればなるほど遠くなっちゃって、
全然部署のボスに会えないとか。
そういう意味では、明日もひとりで行くんだけど、
ぼくがある程度大きな
プロダクションとかをつくっちゃうと、
給料払わなければならなくなっちゃうからたいへん。
ほとんど個人でやっていると、
生活くらいはできるんじゃないかという、
ある意味ではそうやって身軽にしていくというのが、
仲畑さんのところを出た
理由のひとつになるんじゃないかな。
個人のわがままというか、
ある種、やりたくないことはやりたくない
と言える立場にしておきたいというか、
まあけっこうわからないけどねー。
どうなるか。5年経ったらどうなるかね。
しかも、ぼく、なんかまだ、自分がやりたいこと、
なんにもやっていないような気がするんですよ。
広告だからかもしれないし、
一生そうなのかもしれないですけど、
まだ可能性ってあると思うんです」
おお!自転車小僧木村の血が騒ぐような、いい語り!
「ぼくの仕事はある意味ではコラボレーションで、
もちろんアートワークスの意味では
個人の仕事になるんですけど、それは
アートディレクターだけがつくるわけじゃなくて
いろいろなひととのコラボレーションだからね。
ぼくにとって、仲畑さんとやっていたのは
ものすごいプラスというのもあるし、
『おかげ』というのも当然ある。
だけど仲畑さんと違うひととやるという話があると、
やっぱりまだ自分が
開発されているような気がするんですよ」
別のひととも組んで、別のことを見つけるのかー。
「今50歳なんですけど、
人間なんて50歳になっても未開拓な気がするし、
全然まだな感じもあるし、
もしかしたらすごい可能性があるんじゃないかなあ。
そう思えるっていうのはもう幸せだとおもうし。
普通定年が60歳とかだとあと10年だ、みたいに
自分のなかでそういうなんかマイナーなイメージが
できてきちゃうと思うんですけど、
広告は、まだまだつくれる、って思えるんです。
そういう意味では大変だけどおもしろい。
ただ、基本的には、今この業界はたいへんですよ」
ぼくは「広告は、まだまだつくれる」
という添田さんの話をよろこんでききながら、
次の言葉を待つことにしました。
(つづく)
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