どうせだったら、
広告の勉強もしてやれ!

まず、アートディレクターって、どういう人?
せっかく、「ほぼ日」は
東京糸井重里事務所でもあるんだから、
広告のことだって、勉強できるんじゃないかと・・・
カッ飛びメリーは、思い立ったら吉日だった!

第14回 広告を手がける動機は、どこ?

副田さんにうかがう話は、ひとまず今回までです。
アートディレクターの仕事、というか、
副田さんにとっての個人的なやりかたが、
少しずつわかってきたように思います。
そして、わかる前よりも興味がわいてきました。
今回は、企業から頼まれたあとに、
「この広告をひきうけよう」
と思うきっかけについてから、ききはじめてます。

「ぼく、苦手分野があるんですよ。
 コンピューターの仕事がきても
 じぶんにわからないとアイデアもくそもない。
 あとは金融とか、あ、これ最近多いんですよ。
 今金融関係で1個きてるんですけど、
 それはぼくがわかるような広告を
 つくらせてって言ってやらせてもらっているから、
 他の専門的な広告とはぜんぜんちがうものになるし、
 逆にぼくとしては一般のひとを巻きこむには
 そういった広告じゃないと駄目だと思っています。

 『この広告はどうですか?』という話があったときに、
 自分がその仕事にちゃんと関わって成立するかとか、
 その仕事に対して自分がおもしろいって思えるか、
 そこをやっぱり確認するっていうか。
 『ぼくはこういう人間ですよ、
  専門的なことはわかりませんよ、それでいいですか』
 といつも言っています。
 ぼくを理解するひとから話が来ると、
 ぼくに頼むとたぶんこういうことになるだろう、
 という前提で依頼する場合が多いから、そのときには
 『ぼくはわかりませんけど、
  あなたがそういうならやりましょう』
 と言います。だからある意味受身ですよ。
 だから出会いたいと思うんですよ。ひとにね」 

前の、自分がまだ開発されている、
という話とつながってるような気がした木村は、
うなづきながら、耳をもっとかたむけました。

「自分がいいなあと思うことを探してるかもしれない。
 もう充分やっているのかもしれないし、
 まだ見つかっていないのかもしれないですね。
 『いまぼくのやることは広告だ』
 とは思っているんだけど、ほんとはわからない。

 やっぱり映画観たり音楽聴いて涙したら、ね・・・。
 広告を見て涙なんかなかなかしないじゃない?
 やっぱり映画とかは素晴らしい仕事だなあと思うわけ。
 こんな東洋のおっちゃんが、
 まったくキューバに行ったことのない、
 そんな人間を『ブエナビスタ』は泣かすんですよ。
 日本人の50歳のおじさんが観ても涙できるし、
 20代のひとが観てもしみる何かがあるのかなあとか。
 普遍的なのかな?とか。
 それでかたやモーニング娘があるわけだし、
 多重性というか日本人には特にそういうのがあって、
 『ぼくのやってる仕事はそこらへんなのかなあ』
 と思うときもあるんですよ。
 ぼくの今やっていることは、すごく曖昧だったりする。
 やっかいでしょ?クライアントがいて、
 『こういうことやってくれ』
 と言われるわけですから。
 本来、普通にやったらただ説明してるだけなんですよ。
 ほとんどの広告が説明だけなんです。
 タレントが出てきて
 『今度いいこんなの出ました。
  こんなんです。美味しいです』
 とか言って説明してるだけなんです。
 だけど、ぼくは説明だけじゃない何かにしたい。
 説明だけじゃない何かなんだろうなあ・・・、
 そうしたらアイデアなのかイメージなのか言葉なのか、
 それとも絵なのか・・・
 それはなんなのかなあと思うわけですね。
 ぼくはそれが、やりたい『なんか』だと思うんですけど。

一般的に言ったらすごい位置にいるのに、
それでも、まだ広告をやっていることにすらも、
副田さんは「そうなのかな?」と思っているんだ。

「ほぼ日刊イトイ新聞をやるのだって、
 ものすごいクリエイティブだと思うんですよ。
 何で商売じゃないのかなあ、とか。

 商売じゃないっていうところで
 みんないろいろなひとが出ているわけだし、
 商売じゃないのは、たぶんプラスなんだと思うのね。
 アクセスするのは無料だからというのがあるだろうし、
 いろんなひとが参加しているのも、
 無料というのがあるわけですよね。
 今政府の仕事をしてるんですよ。
 インターネット博覧会、略して、インパク。
 そこに普通のひとの代表者として、
 コニシキさんとかに出演を頼んだの。
 だけどそれは国の行事としてやっているから、無料。
 お金つかってやっているとたたかれちゃうらしくって。
 『無料なのに出るのかなあ』と思ったら、出る。
 役所広司さんに頼んでもOKって。
 ありがとうございました、と思います。
 無料だから逆に出てくれるというのもあるんです。
 国のそういう万博みたいなものに
 代表として出るということは、
 タレントとしてもプラスというか。
 経済活動にはならない、
 目に見えないメリットと別に、やっぱり
 国のお役に立ちたいっていうのもあるのかもしれない」

そういう副田さんの余韻を残しながら、
ぼくはひとまず鼠穴に自転車で戻りました。
行きとは違って、話を思いだしながら、ゆっくりと。
副田さんにうかがったものは、
今回で終わりますが、ぼくはこの、
「どうせだったら、広告の勉強もしてやれ!」
のコーナーをつづけていきたいなあと思っています。
ここまでのシリーズとは違う切り口で、
また、広告に絡めて、お会いしましょう。

副田高行さんへの激励や感想などは、
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2000-03-29-WED

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いままでのタイトル

2000-03-16  副田さんというひとに会いたいと思った
2000-03-17  副田さんに会っちゃった
2000-03-18  副田さんご本人のこと
2000-03-19  いよいよ仕事の内容に
2000-03-20  具体的な広告の例をききました
2000-03-21  コピーライターがたくさん出てくる話
2000-03-22  ヘタウマな、なんでもあり
2000-03-23  結局、どういうことをしてる仕事なの?
2000-03-24  具体的に広告からつながった例
2000-03-25  広告そのものについて
2000-03-26  代理店に関して、まじめにきいた
2000-03-27  共同作業する相手は誰?
2000-03-28  アートディレクターというパズル