アジオ |
大変だ!
博士がピアノの前に座ったまま
動かなくなっちゃった! |
アジコ |
その上、なにを聞いても答えない!
黙りこんだままよ! |
アジオ |
ひょっとして、
ウンコかな? |
アジコ |
そうよ。
いままで陽気だったひとが急にふさぎ込む‥‥。
これは教室でウンコをもらした
小学生と同じ行動よ! |
アジオ |
ウンコだ! ウンコだ!
博士がウンコをもらした〜! |
博士 |
ウンコじゃないぞ〜い! |
アジコ |
あら?!
博士がしゃべったわ! |
アジオ |
ウソだ〜!
ウンコだ〜! |
博士 |
これはピアノ演奏じゃぞ〜い! |
アジコ |
バカじゃない?
博士はただピアノの前で座ってただけでしょ! |
博士 |
これはジョン・ケージの
「4分33秒」じゃぞ〜い! |
アジオ |
ウソだ〜! ウンコだ〜!
保健係〜! 博士をトイレへ〜! |
博士 |
話を聞かんかい!
ジョン・ケージの「4分33秒」は
敢えてピアノを弾かないことで、
その静寂までをも音楽として捉えた
前衛音楽の傑作‥‥ |
アジオ |
ウンコだ〜〜!! |
アジコ |
博士!
言い訳は男らしくないわよ。
どこの世界にピアノを弾かない
ピアノ曲があるのよ! |
博士 |
ホントじゃよ! |
アジオ |
ウソだ〜!
ウンコだ〜! |
博士 |
え〜い! 話にならん!
君たちに前衛芸術の精神性は
一生理解出来んじゃろう!
もうよい! |
アジコ |
ちょっと!
どこ行くのよ! |
博士 |
トイレじゃ!
パンツを着替えてくる!
誰か保健係を! |
アジオ |
やっぱりウンコだ〜! |
アジコ |
では博士がパンツを替えてる間に、
今週の味写を発表で〜す! |
アジオ |
は〜い!
まず1枚目はハンドル・ネーム、
うにえさんからの作品です! |
アジコ |
お見事! |
アジオ |
マスターの頭とボクシングの練習で殴るヤツが
キレイに被っているね! |
博士 |
第45回のリアルアンパンマンを想わせる、
見事な被りっぷりじゃな! |
アジコ |
ちなみのコレは
なにマンかしら? |
アジオ |
らっきょマンだよ!
形がそっくり! |
博士 |
拡大した毛根部分にも見えるぞい!
毛根マンはどうじゃ? |
アジコ |
茶色いから茶太郎ね!
キマリ! |
博士 |
色を採用かい!
しかもマンですらないぞい! |
アジオ |
茶太郎は
普段なにをやってるんだろうね。 |
博士 |
‥‥いいのか。
茶太郎で。 |
アジコ |
気さくなバーのマスターよ。
昔はボクサーだったわ。
といってもプロでの戦績は2勝10敗。
ボクシングセンスは抜群だったけど
性格が優しすぎたのね。
引退後ジムの先輩のとりなしで
このバーを任されて、もう10年になるかしら? |
アジオ |
ボクサーとしては大成しなかったけど、
客商売は性に合ってたみたいだね。
壁一面に貼られたポラロイド写真が
それを物語っているよ。 |
アジコ |
おしゃべりは得意じゃないけど、
逆にその真面目さがひとの心をつかむのね。
そして失恋やリストラで落ち込んでいる
お客さんを見つけたら決まってこう言うの。
「ボクの顔を殴れよ。」ってね。 |
アジオ |
アンパンマンが自分の顔を食べさせるように、
茶太郎は自分の顔を殴らせるんだね。 |
アジコ |
ヒーローに必要なのは
自己犠牲の精神よ。 |
博士 |
茶太郎‥‥
渋過ぎるぞい! |
アジオ |
じゃあ、この孤独さだけが飽和する都会に、
新しいヒーローが誕生したところで次の作品だよ! |
アジコ |
はい!
お次はハンドル・ネーム、
ユウさんからの作品でーす! |
アジオ |
ああ、よかった!
人がいる! 向こうに人がいるよ! |
アジコ |
手前の机とパイプ椅子が、
また一層のチープ感を醸し出してるけど
とりあえず他の施設もありそうね。 |
博士 |
しかし人々のローテンションぶりは
相変わらずじゃな。 |
アジコ |
見てよ。後ろの女の子。
とても楽しい乗り物にはしゃいでる顔には
見えないわ。 |
アジオ |
死骸を運ぶアリの行列でも見つめてるような
表情だもん。 |
博士 |
運転手に至っては、つげ義春のマンガでよく見る
「顔全体を塗りつぶされた人」じゃないか。 |
アジコ |
ミニSLの車上でどうしてそんなに
絶望的になれるのかしら? |
博士 |
終戦直後を思い出しておるのじゃろう。
あの頃はみんなすし詰め状態で汽車に乗り、
闇市へ買い出しに行ったもんじゃ。 |
アジオ |
いつの時代じゃ! |
アジコ |
でも不思議ね。
きっと当時は楽しかったなずよ。
家族でレジャー施設! しかもミニSLだもん。 |
アジオ |
その楽しかった思い出を残すために、
写真を撮ったんだもんね! |
博士 |
味写の妙味はそこなんじゃ。
「楽しかった思い出」が
「楽しかったはずの思い出」になる。 |
アジコ |
そういえば旅行や行楽で撮った写真が、
後で見てガッカリっていうことはよくあるわね。 |
アジオ |
頭で思い描いていた風景と
現実のギャップに戸惑うことはあるよね。 |
博士 |
しかしそこで
「そんなはずはない!」と考えることで、
当時の気持ちに帰ることが出来る。
あの頃の自分はなにを大切に想って、
どんな将来を考えていたか?
そんな写真には写らない「気分」は、
案外こういう味写を見ることで
よみがえってくることが多いのじゃ。 |
アジコ |
イヤね。急にカッコ付けて。
なにが「写真には写らない気分」よ。 |
アジオ |
ウンコもらしのクセに。 |
博士 |
だからアレは
ジョン・ケージの前衛‥‥! |
アジオ |
では読者のみなさん!
みなさんからの前衛的な作品を
お待ちしてま〜す! |
アジコ |
チャオ! |