〈ほぼ日関西版〉 明るい家族相談室 たのしきかな、家族。続編


相談12 自作米主義の祖母。

自作米絶対主義の祖母について相談します。

田は祖父と祖母がやっていたのですが、
1年半前に祖父が亡くなりました。
祖母も含めた家族会議で、
ほかの家族はみんな外で仕事を持っているので
田はやめようということに決まりました。
しかし、次の日に
「やっぱり田は近所の人にお金を払って
 やってもらうことにした」
と、祖母は勝手に約束を取りつけてきました。
田舎ですので、世間体もありますし、
祖母は前々から
「いまの人はあまりこういう仕事はしたがらねぇ」
とこぼすことも多く、できる限り協力してきたので
これにはこちらも怒りました。

しかし、祖母は逆ギレし最後には
「米がなければ野垂れ死にだよ!!」
と吐き捨てて部屋に入っていきました。
結局米は、近所の方がやってくれています。

その後は、食事の時間に
茶碗に盛られた米の量をチェックしてきて
「いまの人はあんまり食わねぇ」と言ったり、
パンを食べていると
「いまの人はそういうもんを食べるんだねぇ」
などと、いまさらながらのいちゃもんが止まりません。
はじめは反抗していましたが、
こっちの言うことを理解しているのかいないのか
よくわからない返答です。
こちらも、相手しないのがいちばんと無口になり、
重苦しい雰囲気のときもあります。

米が嫌いなわけではないのですが、
おいしくごはんを食べられる日が来るには
どうしたらいいのでしょうか。

(自作米絶対主義の孫)


答え
かおり 米粉を使って
ホームベーカリーでパンを作るのが
すごくはやったの、覚えてます?
ほぼ日 はい、ありましたね。
米粉を使うホームベーカリーは
発売当初は売り切れたりして、
8ヶ月待ちなどでした。

かおり 米粉のパンは
食感がモッチモチらしいですね。
ほぼ日 このおばあさんは、米粉のパンを
知っているのかなぁ。

かおり お米はパンにしてもおいしいんだよ、とね。
相談文によると、おばあさんは
おじいさんといっしょに
長いあいだ、お米を作ってこられたわけですよね。
ほぼ日 ええ、思い出もたくさんあるでしょう。
かおり そしてなによりも‥‥
「米がなければ野垂れ死にだよ!!」
このセリフは、すごいですね。
ほぼ日 ほんとうに。
かおり 昔の方なので、米がなくなるということに
危機感があるのでしょう。
ほぼ日 しかし、いちゃもんをつけて
人が食べる米の量まで
チェックしてくるのがちょっと‥‥。

かおり 家族全員の米の量をチェックし、
「いまの人はあんまり食わねぇ」。
おばあちゃん、踏み込んでますね。
ほぼ日 「今日は少なめによそって」とか
言おうもんなら、もう。

かおり 自分が作ってきた米を
否定されたような気分になるのでしょう。
しかし、食料の自給率が下がっている昨今、
おばあちゃんの言っていることは大事だと思います。
これまで田んぼをやってきて
「米があるから大丈夫だった」と
切り抜けてきた歴史があるのではないでしょうか。
ほぼ日 そうか。
その田を、急にやめることは‥‥。

かおり ええ。ひと晩よく考えられたのでしょう、
翌日結論が変わるのもありえることです。
ほぼ日 そしてその大きな不安を
家族はわかってくれない、という怒り。

かおり しかも、唯一の味方であったであろう
おじいちゃんがいないのです。
ほぼ日 「米がなければ野垂れ死にだよ!!」
おばあちゃん、
吐き捨てて部屋に入るんですもんですね。

かおり それが家族にまったく
響いてないとこがすごいですね。
おばあちゃんは、骨身にしみて
実感できるのでしょうけど。
ほぼ日 おじいちゃんがいてくれればねぇ‥‥。
「なぁ、おじいちゃん」
ということなんでしょうね?

かおり おばあちゃんはいつも
天に向かって拝んでると思います。
「おじいちゃん、聞いて、聞いて」って
話しかけてると思う。

そうだ。こうなったら
おばあちゃんのセリフにすべて
「そうやな、おじいちゃん」
をつけて聞いてあげればいいんじゃないでしょうか。
「米がなければ野垂れ死にだよ!!
 そうやな、おじいちゃん」
「いまの人はそういうもんを食べるんだねぇ、
 ね? おじいちゃん」
ほぼ日 ほほう。
かおり そうすれば、
「かわいそうやな」
「昔の経験で、こういうことを言ってるんだな」
「昔の経験ははずれないから
 あながち無視できないな」
家族がこう思えるのではないでしょうか。
ほぼ日 そうですね。
かおり 米以外のものは、
隠れて食べればいいんです。
みんな外で仕事もってるんだから、
外にいるときにパンやパスタを食べたらいいね。
ほぼ日 正直言って、家族のみなさんは
田んぼを手放したいんでしょうね。

かおり そうなんでしょう。
でも、田を売り払ったら、おばあちゃんは弱ります。
ほぼ日 アウトでしょう。
かおり そういったすべてが
「米がなければ野垂れ死にだよ!!」
という言葉に込められているのだと思います。
急に別のことをしろ、考えろ、と言われても
できないのが人間です。
おばあちゃんには一生、お米にかかわることを
させてあげるのがいいのではないでしょうか。
たとえば‥‥
ほぼ日 たとえば‥‥
かおり おにぎり屋さんとか。
ほぼ日 おにぎり屋さん。
かおり 畑の作業はきつくてできなくても、
おにぎりは作れるかもしれない。
ほぼ日 「米がなければ野垂れ死にだよ!!」
かおり なんで意味もなく突然言うんですか。
ほぼ日 いや、いい言葉だなぁと思って。
「米がなければ野垂れ死にだよ!!」

かおり 私たち、気づいてなかったですね。
ほぼ日 ええ、忘れてました。
かおり この言葉をTシャツにプリントして
外国の人とかに着てほしいなぁ。
タトゥーの文句に迷ってる方は
“米無野垂死”とかいかがですか?
うちら、米をもっと大切にせないかんよね。
ほぼ日 でも、このご相談は、米でよかったですよ。
いろいろ、ほかのものがありますから。

かおり 米は、いろんなものに作りかえられますし
おいしいですし。
ほぼ日 ごはん合うおかずを考えるとか、
楽しい方向にもっていきましょう。

かおり おばあちゃんが
「あっ、あいつらパン食べてる」
と思って食卓に入ってきたら‥‥
ほぼ日 米粉のパンを差し出してこう言う。
「お米でこんなこともできるなんて、すごいなぁ」

かおり 「おばあちゃんのお米、
 こんなふうにしてもおいしいんねんなぁ」
「お米がどれだけ世の中で大切にされてるか、
 この米粉パンが語ってるやろ」
ほぼ日 「米のホームベーカリーは8ヶ月待ちやで」
「やっぱりお米やでぇ」

かおり 玄米ピザも、おいしいですよね。
ほぼ日 玄米ピザ?
玄米粉で作るんですか?

かおり いや、炊いた玄米を薄くのばして、
ピザのようにカリカリに焼いたものだと思います。
ほぼ日 そんなん、あるんですか。
かおり そうなんです。あるんですよ。でね、
「いまの人はそういうもんを食べるんだねぇ」
とおばあちゃんがイヤミを
言っていきたとするでしょ?
そしたらここぞとばかりに
「おばあちゃん。これ、玄米やで」
ほぼ日 「これからは全部な、米やでぇ!」
かおり 食卓で、そんな話題になったら
おばあちゃん、喜ぶのではないでしょうか。
何かにつけて米の話題に持っていくとかね。
私の中で米といえばまず『座頭市』なんですけど、
勝新が美味しそうに食べるんですよ、ごはんを。
白眼で笑いながらなんで腹立ちますけどね。
ほぼ日 漁師さんの家で、肉を食べてたら
お父さんが不機嫌になったりすることも
あるようですね。
たまにはパンもええんちゃう?
という気持ちもわかってほしいところです。
かおりさんのご家族も
QFDの服しか着たらあかん、とか
そういう不文律があるでしょう?
かおり うちはみんな私の服着ないですね。
“頭おかしいと思われる”とか
“外出るん恥ずかしい”とかってね。
私普通に外出てますけどね。
ほぼ日 そうなんですか。
かおり はい。
ほぼ日 それでは、今日のまとめ、いきましょう。





米がなければ野垂れ死にだよ!!

2013-12-01-sun

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