あきんどゴコロ

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ポルトガル北部の田舎町で
民芸品店を営む者です。
週に2〜3回の割合で、
旬のとれたて野菜や果物が
どっさり乗っかった箱を頭の上に乗せて、
お百姓のばあさん(推定75歳)が
売りにやって来ます。

今日も来ました、店の戸口に詰めよって
「さくらんぼいらないかい?」と。
「いらない」と言っても聞こえないふりで
どかどかと店内に押し入り、
「ほら、ごらんよ、
 美味しいよ〜、安いよ〜」
「いや、でも、まだ家にいっぱいあるから、
 夫とふたりじゃ食べきれないし、
 腐らせちゃうし。」
と断るも、
「今日はこれでもう家に帰りたいんだよ、
 雨も降ってきたし。
 たったの○オウロ
 (=ポルトガル語で黄金を意味する。
   ユーロのことをばあさんは
   いまだにオウロと誤解している)
 でいいから。置いていかせておくれよ」
とくる。

「・・・わかった、じゃあ1キロだけね」
「ああん、1キロなんて
 ちょびっとじゃないか、
 2キロにしときな」

(じゃんじゃん袋に詰めるばあさんの横で)
「ちょ、ちょっと待って、
 そんなにいらないです!」
「大丈夫だよ、
 箱に広げとけば傷まないから。
 ビニール袋はダメだよ。腐るからね。
 余ったらジャムにしな。
 作り方知ってるかい?
 砂糖を1キロ入れてね、
 ああもう、こっちの赤いのも
 全部置いとかせとくれ。
 お金がなけりゃ今度でいいから。
 いいかい? ここに置いとくよ』
「いや、そういう問題ではなくて・・・
 あの、ああ・・・」

結局今日も、
さくらんぼを4キロも買ってしまいました。
計7ユーロで。
確かにすごく美味しいし、
安いんですけどね。
今度こそ買わないぞ、
と心に決めるのですが、
毎回そんなやりとりを繰り返し、
いつもうちの冷蔵庫の中は
ばあさんの野菜や果物でいっぱいです。
あまりのばあさんの強引さに、
いつも負けちゃう私。
でも、いつか来なくなったら、
淋しいだろうな。
(BARBA e CABELO)


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